ズーレンボルク( zurenborg)地区を訪ねた。
コーヘルス・オスィ通りを中心とした一帯に、様々な建築様式の館が多数立ち並んでいる。考えうる限りの、いや考えもしなかったような奇抜なアイディアのものまでとにかく装飾過多のめくるめく建築群に圧倒される。建築のことはさっぱりわからないのだが、とりあえず中心の通りから眺めていこう。(訪ねた通りの名前を全部書き出す)
・Cogels-osylei
・Gen.Vapiaumontstraat/
・ Waterloostraat
・Guldenvliesstraat/
・Gen.van Merlenstraat/
・Transvaalstraat/ Pretoriastraat)
Cogels-osyleiの Osyというのは、アントウェルペン銀行創設者で議員でもあったJean Jozef Renier Osy男爵のこと。オランダ・ロッテルダムの裕福な家の出身だが、アントウェルペンに住み、ズーレンボルクの土地を購入した。死後、息子やCogel家に嫁いだ娘たちが遺産を相続し、地域は発展していく。
コーヘルス・オスィ通り
1番地 Brabo
バルコニーに甲冑姿のブラボー像。これはJules Weyns(1849-1930)の作品で、この地区で多くの像を手掛けた。
2-4番地 Brydel とDe Coninck
二人はコンシャンス(Hendrik Conscience1812 – 1883)作「フランドルの獅子」の登場人物である。ちなみにゲントには二人の銅像が立っているし、通りにも名前がついているくらい、フランダース地方ではちょっとした英雄扱いだ。
建物の右端にマリア像が見える。これはアントウェルペンの伝統にならったものだ。
↓ライオンの後ろに二人の名。その下に4つの王冠(水色)はDe Coninckの4つの頭絡(頭絡とは馬の頭部にはめる馬具のこと)これはBrydelのシンボルである。
建築家:F.van Dijk(1853-1939) 彼はJ.J.Windersとともに王立美術館の設計もした。
5-7番地 コウノトリ(左)と氾濫(右)
左の、家青地のプレートに Ooievaar(コウノトリ)とある。このように家に名前を付けるのは16世紀アントウェルペンの伝統だったが、19世紀にこの地で復活させている。2階の窓の真ん中に台座が残っているのが見えるだろうか。かつてはここにコウノトリがとまって魚をくわえていたとか。たぶん飛んでいってしまったんだろう。
この建物の建築家Frans Smet-Verhas(1851-1925)は、以前見た船首の家(「12月31日不思議な建物」参照のこと)を手掛けた人で人気者だった。レンガの色使いが独創的で、赤や黄色、青のレンガを絶妙に組み合わせ、美しい文様を生み出す。
ついでに Smet-Verhasという名前の”Verhas”は奥さんの苗字である。こうやって並べて名乗るのは、生まれ故郷のWaaslandの伝統らしい。
6-12番地 Carolus Magnus(カール大帝)
自然の石を使っているのが特徴。塔はアーヘン大聖堂(*)を意識しているとか。二つの塔の間にカール大帝。2階の窓の上には美しい半円のモザイク、右に王冠、左に頂に十字架のついた宝珠が見える。この写真ではよく見えないが、玄関前に石のベンチがあって、訪問客が腰かけて待つこともできるそうだ。
9-17番地 風車、ミネルバ、大きな熊
屋根の上に風車のミニチュアやミネルバの顔が乗っている。右の家、熊の像は見えづらいが拡大すると、
手に七つの星がついた盾を持っている。また二つの塔に挟まれた階段状の破風は、ネオ・フランドル・ルネッサンス様式というらしい。アントウェルペン旧市街にあるVleeshuis(肉屋のギルドハウス)を思わせる。
追記 :別の日の写真 ちょっとはましか…💦
22番地 Den Valk 24番地 De Heerlyckheid van Suerenborgh
最近補修したのだろう。玄関ドアの見事な細工、モザイク模様にうっとりする。
25-29番地 In de Sterre, de Sonne, en de Mane
レンガと自然石の組み合わせが美しい。「市庁舎」というあだ名を頂戴していたらしい。
まだ一本の通りの半分も来ていないいないのだが、今日はこれで終わりにする。
*参考:アーヘン大聖堂
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ズーレンボルク( zurenborg)地区続き
コーヘルス・オスィ通り 28-30番地 Lubaと't Lelieke
私の写真には't Leliekeの方しか写っていないので、2軒で一組であるため、Lubaをフランダース政府からお借りする。
Luba
Cogels-Osylei 28-30 (Braeken, 06-07-2011, ©Vlaamse Gemeenschap)
コンゴのルバ族のことかな。
ロータリーに出た。32-37番地
輝くばかりの白い建物が四辻を囲み、整然と落ち着いた雰囲気を醸し出している。12戸の白い集合体は「白い宮殿」と呼ばれている。バロック風の装飾が美しく、ロワール河のシャンボール城を思わせるとか。
ここからちょっとGeneraal Capiaumontstraatに入ってみる。
Gen.Capiaumont通り 2-4番地 Euterpia
古典様式美への賛歌のような建物。金色の像がEuterpiaで詩のミューズだそうだ。二本のフルートを吹いている。私の写真はよくないけど、左側、庭に通じるポーチも庭も本当はもっと美しい。
また戻って Cogels-osylei 続き
50番地 De Zonnebloem ひまわり
アールヌーボーのおしゃれで可愛らしい作品。金のひまわりが印象的。二階のバルコニーや入り口の階段など、センスを感じる。住むならこんな家がいいな。
美しい字で「ひまわりの家」と書いてあります。
52番地 De Tulp チューリップ(右側)
尖った白い破風の上にチューリップ。鉄の細工は装飾だけなく、実用も、つまり支柱の役割も果たしている。またベランダが家の幅いっぱいというのもおもしろい。
54番地 Het Klaverblad クローバー
下 「チューリップ」 拡大。
凝っている。
下 「クローバー」レリーフ 拡大
55番地
Morgenster 金星
ここは「最も美しい家の一つ」と言われているのだとか。張り出した軒( コーニスcorniceというらしい)や丸みを帯びた窓とその飾り、3階の丸い目のような明りとりなどを、人々は愛でるのである。
56-58番地 Torenhuis 塔の家
バルコニーがたくさんついたコテージ風の家。といってもこれで2軒分である。
65-71番地 Scaldis スヘルデ川
イタリアのパラッツォ風の4軒。真ん中の家はベネチア・ゴシックの影響を受けているとか。軒の上に立つ像は、ポセイドンなど水に関係のある神々だ。16世紀、アントウェルペンの黄金期にイタリア人の商人もたくさん住んでいたらしい。
ちなみに、家の名前はスヘルデ川以外に、当時の芸術家集団De Skaldenも示唆しているらしい。メンバーの一人Louis Luyckxは1902年にイタリアを訪れたかも…とガイドブックにある。
70-72番地
De Biekens 蜜蜂
左右対称の2軒の家。
見づらいかもしれないが、中央のレリーフにミツバチの籠、入り口ににミツバチや花が描かれている。
68番地
Sint-Jozef 聖ヨゼフ
アールヌーボーの建物が多い中、ネオゴシックの構えで、荘重な感じ。とんがりに小さな尖塔が並ぶ。四葉のトレサリーや十字架やヨゼフ像など、教会みたいだ。
ところで現在入居者の駐車が気になる。これが車庫?ここで止まるわけ?
おかしいから別の日に来て、また撮ってしまいました。
コーヘルス・オスィ通り続き
46-48番地 De Roos 薔薇
建築家Jules Hofmanはオランダ人で、アントウェルペンのアカデミーで勉強した。オルタの影響を感じる。ただ残念なのは昔の写真をみると、玄関ドアの上にも豪華な薔薇のポーチがあったのに、取り外されてしまっていることだ。
59-61番地 De Zonnewijzer / De Dierenriem
80番地 Quinten Matsys クイントン・マセイス
建築家J.De Weerdt(1867-1942)の作品。ベルギーにおけるアールヌーボー建築で、最も有名なもののひとつ、と言われているそうだ。またこれは、オルタが1896年に建てたブリュッセルのSaint-Cyrのコピーでもある。
画家クイントン・マセイスの顔は家の上部に、つまりトップの鉄細工のすぐ下、丸い枠のところに。そしてなんとも印象的なのが、そこのバルコニーの手すり。蠅だ。
De Vliegと解説にある。
また玄関先の階段も美しい。
さてここからワーテルロー通りへ。 順不同です。
Waterloostraat 26-28番地 De Mot 蛾
小さな可愛いバルコニーの手すりがお見事。「蛾」という名前も奇抜だが、何か所かに描かれている絵を見ると、蝶じゃないのと思ってしまう。
30 番地 Napoleon
先ほど見た建築家J.De Weerdtの作。De Weerdtらしさがあちこちに。モザイクのナポレオン二も注目。天然石を使ったすてきなお宅である。
39番地 Mouettes カモメ
De Weerdtの作品! 3階には、飛んでいるカモメの鮮やかなモザイクが見える。
2階の豪華なバルコニーがとりわけ目を引く。この地域で最も美しい家のひとつ、と言われているのもうなづける。