アメリカの絵本:『もりのなか』『わたしとあそんで』『ちいさいおうち』『スイミー』不思議な売り家の話

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もりのなか

作・絵: マリー・ホール・エッツ 
訳: まさき るりこ
出版社: 福音館書店

発行日: 1963年12月20日

 マリー・ホール・エッツ (Marie Hall Ets)は 1895年アメリカ ウィスコンシン州生まれ。動物と親しんだ幼少時代が、のちの作品に大きな影響をあたえているそうです。

シカゴでソーシャルワーカーとして働きました。「セシのポサダの日」(冨山房刊)でコルデコット賞受賞。「海のおばけオーリー」(岩波書店刊)などたくさんの作品を残して、1984年に亡くなりました。

「もりのなか」は、アメリカでは1944年に出版された本で、たちまち話題になりました。絵本といっても全ページ、モノクロなんですよね。表紙に色があるのでびっくりしました。

「ぼく」が森の中で動物たちと出会い、遊び、別れるまでが淡々と描かれます。

1945年に栄誉ある「コルデコット賞(Caldecott Medal)」、つまり優れた絵本に与えられる賞をもらうのですが、なんとこの人は生涯に合計で6回ももらっています。

 

おはなし

ぼくは紙の帽子をかぶり、新しいラッパをもって森の中へ散歩に行きます。

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ライオンは、まず髪をとかしてから王冠をかぶり、ぼくのあとについてきます。

次々に多くの動物たちがグループに加わります。ぞうやクマ、カンガルー。

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コウノトリまで。さるはすごくおしゃれですし。(説明すると無粋なので省略)

で、ウサギだけは内気でしゃべりません。(集団の中には当然そういう子もいるでしょ)。

ぼくはすべて自然に受け止め、全員の動物を受け入れます。

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 「もういいかい」と目を開けると森には誰もいなくて、そのかわりにおとうさんが立っていました。

おとうさんが言います。

もう遅いから帰らなくちゃ。動物のみんなはまた今度まで待ってくれるよ。

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またこんど さんぽに きたとき、さがすからね!

 これで終わりです。

あれ、ウサギはどこ?と一生懸命さがしたりします。でも意味や解釈はいいのです。子供の空想の世界なのですから。不思議の森で遊んだ読者も、親の声で現実に引き戻されて、それもまたホッとする場所です。読後のふしぎな幸福感を言い表すことばを、私は持っていないのが残念です。しばらく 余韻に浸っていたい。

 

 

つぎも

マリー・ホール・エッツ (Marie Hall Ets)

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『わたしとあそんで』

文・絵: マリー・ホール・エッツ
訳: 与田 凖一
出版社: 福音館書店

発行日: 1968年08月

アメリカで1955年に出版された本です。

youtubeで英語読み聞かせを見つけて嬉しかったな。読んでもらうと私も絵に集中できるから。読んでもらうってこんなに贅沢なことだったのだと思いました。

エッツは『もりのなか』ではモノクロでしたが、今回はクリーム色と、女の子のブロンドの髪のために黄色、そしてわずかな茶系統の色で仕上げています。

好きなところは、女の子の目、表情と、おひさま

目がくりくり、右へ左へ動きます。

体はじっとしたまま。

さっきは逃げていった動物や生き物が寄ってきます。

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ああ わたしは いま、とっても うれしいの。

とびきり うれしいの。

なぜって、みんなが みんなが わたしと あそんでくれるんですもの。

エッツの幸せな幼年時代が見えるようです。

 

話はそれるんですが、森の中、といえば思い出すこと。

以前アントウェルペン近郊の村で見つけた不思議な売り家の話です。

 歩いていると

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ああ、家を売り出したんだな。どんな家かのぞいてやろう。

野次馬根性まる出しです。

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ユニークな日本風邸宅、8160㎡!

見当もつかない広さ。それと「日本風」って?どこが?

まあまあ、ツッコミはやめて。覗いてみよう。

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森の中の一軒家。それにしても敷地が広い。子供の遊び場、遊具もちらと見える。

あ、望遠レンズ持っていたっけ。

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でもやっぱりよく見えなかった。

うちに帰ってから不動産屋のHPへ行ってみたら、日本円にして一億円ちょっと、でした。高いのか安いのか、はたして買う人いるんだろうか…そんなことを思ったある日の散歩でした。

 

ちいさいおうち (岩波の子どもの本)

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ちいさいおうち (岩波の子どもの本) 1954
バージニア・リー・バートン (著, イラスト), 石井 桃子 (翻訳)

 

アメリカの絵本の古典、1942年の作品です。

主人公はちいさいおうちで、はじめは自然の中で幸せいっぱいに暮らしていましたが、次第にまわりの環境が変わって、都市化が進んでいきます。便利になる一方、緑や自然やゆとりが失われていきます。 

この絵本は読み聞かせには注意を要する絵本、つまりちょっと長く、ちょっと重いテーマなんですね。小さな子供は飽きるかもしれません。

絵をじっくり眺め、ちいさいおうちの表情の変化を読み取っていく必要があります。

ちいさいおうちの顔(表情)が微妙に変わっていくのを見て、心情に共感できたら、すばらしい読書になると思います。

はじめは口元がにっこりしていたおうちも

この絵になると、かわいそう。

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うるさくて窮屈です。まだここに建っていることが不思議ですよね。

いなかののどかな日々を思い出し、あそこに帰れたらなあ、と夢見る日々ですが、自分ではどうしようもありません。

 あるとき、ちいさいおうちを建てた人の、孫の孫の、そのまた孫にあたる人がやってきます。

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そしてお引越し。

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いなかでは、なにもかもが たいへん しずかでした。

この一文で物語は終わります。

f:id:cenecio:20160719174043p:plainバージニア・リー・バートン(Virginia Lee Burton, 1909- 1968)

f:id:cenecio:20160719173759p:plain右端がバートン

Women Children's Book Illustrators--The Folly Cove Designers & Virignia Lee Burton 

最初の絵本、『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』(CHOO CHOO)

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これは長男アーリス(アリスティデス、1932年2月17日 - )のために書きました。

 

第2作『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』(Mike Mulligan and His Steam Shovel)

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次男マイケル(1935年8月30日 - )のために書きました。

『ちいさいおうち』は夫のために書いたそうです。1964年春に日本にも来ました。

 ところがこの人、絵本以外にも凄かったんです。今回調べて初めて知りました。

テキスタイルデザインという分野!

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Folly Cove Designer print, Winter Boarders by Virginia Lee Burton Demetrios, 1941

https://jp.pinterest.com/pin/71635450293370488/

 で、MOEが特集号を組んでいたなんて、ちっとも知らず。

f:id:cenecio:20160719184504p:plainMOE 2009年9月号

ああ、もう遅いよ~って。

 

 

今日の一枚

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通販で送られてきたビールを並べてうっとりしていたら、アリスが邪魔をする。

 

スイミー 小さなかしこいさかなのはなし

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スイミー 小さなかしこいさかなのはなし

作: レオ・レオニ
訳: 谷川 俊太郎
出版社: 好学社 

初めての出会いは、子供たちが持っていた小学校の 国語教科書です。そこにお話が載っていて、しかし絵本ではないので、絵はこの本で初めて見ました。絵が美しい!

 

話はみなさん知っているでしょう。

小さな魚たちがみんなで集まって力をあわせ、大きな魚を撃退する話です。

「みんな いっしょに およぐんだ。うみで いちばん おおきな さかなの ふりして!」

スイミーはおしえた。けっして はなればなれに ならない こと。みんな もちばを まもる こと。

みんなが 一ぴきの おおきな さかなみたいに およげるように なったとき

スイミーは いった。「ぼくが めに なろう」

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ぼくが めに なろう。有名なせりふです。

スイミーだけ体の色が黒いからです。

 

翻訳者の谷川俊太郎レオ・レオニを評して、

「絵本作家という存在が、本質的には絵描きであると同時に、詩人なのだ」といっています。

 

スイミーが海の中で出会う生き物たちがおもしろい。

にじいろの ゼリーのような くらげ

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すいちゅうブルドーザーみたいな いせえび

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ドロップみたいな いわから はえてる こんぶや わかめの はやし

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そして かぜに ゆれる ももいろの やしのきみたいな いそぎんちゃく。

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うなぎ。かおを みるころには、しっぽを わすれてるほど ながい。

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うなぎ、傑作です。ルナール「博物誌」

(フランス語原題:Histoires naturelles  Jules Renard )の

蛇。長すぎる。(Le serpent. Trop long.)

を思い出します。

 

レオ・レオニ Leo Lionni(1910-1999)

こんなユニークな人、どこから現れたんだろう。

調べてみると、ユダヤ人でオランダ生まれ。

裕福な家庭に育ち、美術品収集家の叔父の影響で、ピカソやクレーなどの作品が身近にあった。イタリアに移住するも、1939年、ファシスト政権誕生と人種差別法公布により、アメリカ合衆国に亡命。

フィラデルフィアの広告代理店NWエイヤーに就職する。ニューヨークで複数の新聞社で美術担当編集者、グラフィックデザイナーとして働きながら、美術学校や大学で講義を行い、各都市での巡回展も開いた。

1945年にアメリカ国籍を取得し、1953年にはアスペン国際デザイン会議の初代会長を勤める。エリック・カールの才能を見出し、ニューヨーク・タイムズ広報部への就職を世話した上、編集者を送り絵本の仕事も勧めた。1959年、孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』で絵本作家としてデビューを果たした。

1962年、再びイタリアに戻り、自身の本のイラストレーターや、彫刻の活動を始める。以後およそ40冊の絵本を発表する。1970年以来想像上の植物の構想を練り始め、1976年に「平行植物」の題で学術書の体裁で出版された。

1999年、イタリアのトスカーナ州で死去。(ウィキペディアから)

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Leo Lionni AIGA | 1984 AIGA Medalist: Leo Lionni 

エリック・カールの才能を見出し、ニューヨーク・タイムズ広報部への就職を世話した上、編集者を送り絵本の仕事も勧めた。」ここがすごい。

わたしにとって、二人の作風は似ている。兄弟のようである。

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worlcampuslled462fa12x01 [licensed for non-commercial use only] / Leo Lionni by Kyle Van Den Berghe