『わにくん』 Krokodil, Krokodil &『葉っぱのきもち』Alle meine Blätter

恐ろしく美しい本。

ビネッテ・シュレーダー 、恐るべし!

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作: ペーター・ニクル Peter Nickl
絵: ビネッテ・シュレーダー Binette Schroeder
訳: 矢川 澄子
出版社: 偕成社

 

おしゃれで気品あるシュールさに満ちた、そしてあちこちに目くばせとアイロニーがいっぱいの楽しくて、ちょっと毒のある絵本、思い出深い本です。

 

まずはどんな人が絵を描いているか、興味しんしんでしょう?

 

挿絵画家 ビネッテ・シュレーダー(1939年ー)

ドイツ出身で、スイスのバーゼルにある実業学校で、商業美術及び石版印刷を学ぶ。1969年、30歳ではじめての絵本「お友だちのほしかったルピナスさん」を発表。以来、「こんにちはトラクター・マクスくん」や「ぞうさんレレブム」「ラウラのふしぎなたまご」などを世に送り出す。

夫のペーター・ニクルと共同で、「ラ・タ・タ・タム」「ほらふき男爵の冒険」等の絵本を上梓した。

ブラティスラヴァ世界絵本原画展では“金のりんご賞”を受賞、他にドイツ児童図書賞、夫婦共作の「わにくん」では“スイスの最も美しい本賞”とライプチヒ図書展の“世界で最も美しい本賞”を受賞。

 

わにくんはナイル川のほとりに住んでいる。

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蓮の花を一輪、足で摘み取り、優雅に構えています。

あるとき、スフィンクス見物に来たご婦人から、パリにわにの店があることを聞き知ります。「まあ すてき、わにの みせに つれていきたいこと!」とご婦人が言ったのです。 (矢川 澄子訳)


好奇心の強いわには、その店を訪ねる決心をします。

船に乗り、それから下の伯爵のヨットに乗せてもらいます。

左端にも小さいですが、別のわにが見えますね。

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そのあと汽車に乗ります。汽車の腹に Marseille - Paris と書いてあります。


わにはシャンゼリゼの街角で、カフェに入り、ちょっと休みます。

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なぜか人間どもは、ぐったりとだらしなく眠り込んでいます。

わには気取ってコーヒーを注文し、飲みます。

そのあと

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シャンゼリゼ大通りを凱旋門に向かって歩いていきます。

通りには火のついたタバコやら新聞やら傘などのゴミが捨てられています。

人間はおびえて隠れています。わには

「しゃなり しゃなり きどった あしどりで おおどおりを ひやかしあるき。

やがて うわさに きいた その わにのみせに ゆきついた」矢川 澄子訳)

 

そこで見たものは…!!!

ここでやめておきます。びっくりの結末です。ぜひご自身でどうぞ。


チェコで切手にもなっています。1989年ブラティスラヴァで受賞した記念でしょうか。

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ビネッテ・シュレーダー

 

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Binette Schroeder (Open Library)

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Internationale Jugendbibliothek - Schulen

 

絵の緻密さと色遣いの妙にはまり、すぐに別の作品も読みたいと思ってしまいます。

 

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葉っぱのきもち  – 1989/12
ヨゼフ ・グッゲンモース  Josef Guggenmos (著),

イルムガルト・ ルフト Irmgard Lucht (イラスト)

ひらのきょうこ(訳)

1971年ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞。

 

扉にこう書いてあります。

さかなになるような葉をあつめてくれた

わたしの子どもたち、ファンとアンネに

    - イルムガルト ・ルフト

 

葉っぱのコラージュが見事な美しい絵本です。

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葉っぱは鳥たちを羨ましがります。

どこにでも飛んで行けて、たくさんのものを見られて、そして自分が見てきたことを仲間内でピイチクにぎやかにおしゃべり。

シシリア、地中海、ナイル川、アビシニア、コンゴスーダン、ぞう、かもしか、きりん、といろいろな言葉が飛び出します。

 

でも鳥にも知らない世界がある。それは海の中。

ある日のこと、風が木から木へ、茂みから茂みへ、秘密のもうしあわせを伝えました。

すると葉っぱは海の水の中へ落ちていきます。

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そうして魚になり、卵を産み、・・・ところが一人の漁師に見つけられてしまいます。

さあ、どうなる?

筋は最後まで言いません。

 

こちらがイラストを担当したイルムガルト・ ルフトさん。

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http://www.ecoledesloisirs.fr/auteur/irmgard-lucht

フランスの出版社サイトから借りてきました。

1937年ボンに生まれ、フランクフルトで幼稚園の先生をしていたことも。その後、フランクフルトの劇場でコスチュームや小道具などを担当した。ケルンの美術学校に学び、ポートレートを製作。母親になってから、絵本とイラストの世界で活躍している。

 

コラージュ

誰しもこどものころ、一度はやったことがありますね。雑誌からきれいな写真を切り抜いたり、それらを組み合わせて貼り付けたりして遊びました。

葉っぱだって誰でも一度は夢中になったでしょう。本にはさんでそのうち忘れられてしまった、そんな葉っぱのことを思い出しました。

この本の葉っぱたちの、なんとまあ個性的で表情豊かなこと。

なかなか出会えないタイプの絵本の一つです。

                  ー終わり

 

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写真:六本木ミッドタウン、平日の昼下がり。子連れが多く、この地域の平均年齢はここ10年でグッと下がりました。それがミッドタウン計画のねらいでもありました。