ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

グリム童話『おおかみと七ひきのこやぎ』 民話『一番きれいな小ネズミの娘』

みなさん ご存じ

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🌸おおかみと七ひきのこやぎ DER WOLF UND SIEBEN GEISSLEIN(Felix Hoffmann)

作: グリム童話
絵: フェリクス・ホフマン
訳: 瀬田 貞二
出版社: 福音館書店

発行日: 1967年4月1日

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 どの挿絵画家のバージョンで読むかによって印象も違ってくると思います。我が家はこのスイスの画家ホフマン(Felix Hoffmann)。2012年に原画展があったみたいですね。行きたかったな。


おかあさんが美人でおしゃれ。7匹のこやぎの母親だなんて!働き者のシングルマザーです。

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この絵を見ただけでもう好きになります。絵が好きかどうかはとても大切です。お母さんは服を着て二足歩行なのに、7匹のこやぎたちは四足なんですよね。

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おおかみは声をきれいにするために、村の雑貨屋でチョークを買います。主人がおおかみを顧客として迎え、普通に売ってやるところがまずおかしい。さらにチョークを食べてきれいな声にする、というところも子どもたちに大変うけるところです。

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足を白くするために粉屋行きます。ここでも簡単に白い粉が買えるところも楽しい。

そして白い足をこやぎたちに見せて「あけておくれ、こどもたち。おかあさんが かえってきたよ」

まんまとだまされたこやぎたち。さあ、大変!! 

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こやぎたちは隠れようとしますが、6匹が食べられてしまいます。7匹目の子、柱時計の箱のなかに隠れた子だけは見つからず、母親が帰ってくると一部始終を話します。

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キュリオブックス 【Der Wolf und die sieben Geisslein】

母親は狼の腹からこやぎたちを助け出し、かわりに石を詰めて、再び腹を縫い合わせました。目が覚めた狼は、そのあと井戸に落ちておぼれ死んでしまうのです。

「おおかみ しんだ!おおかみ しんだ!」

みなで井戸の回りをグルグルまわりながら、踊りました。

 ・・・という、とってもかわいそうなおおかみの話でした😢

え、違うでしょ。狼は「悪」なんだから、悪を退治した勇敢なお母さん、母子家庭で、一人奮闘するお母さんの話でしょう。そう言う人もいるでしょうが、どうしてもそうは思えません。私は子どものころ、お腹を縫い合わせる場面が嫌いでした。それに現実のオオカミも、キツネと並んで好きな動物のTOP5に入ります。

 

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こちらは本の裏表紙。一家のお父さんの写真が壁にかかっています。オオカミに襲われて命を落としたんでしょうか。子どもたちに聞いてみるといいですね。

 挿絵を描いた人 フェリクス・ホフマン。

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 <フェリクス・ホフマン>
911年、スイス・アーラウ生まれ。75年没。バーゼル美術学校(スイス)で学んだ後、カールスルーエの州立美術学校(ドイツ)で木版とイラストレーションを学ぶ。石版印刷や銅板印刷の現場で経験を重ね、その後は美術教師をしながらスイス各地にフレスコ壁画やステンドグラスを、また本の挿絵や装丁の仕事を多く残した。壁画はアーラウ市の門、教会、小学校などに、ステンドグラスはアーラウ市庁舎、教会などで今も見ることができる。日本で出版された絵本は『ねむりひめ』(1963年、福音館書店)『おおかみと七ひきのこやぎ』(1967年、福音館書店)など多数ある。

 

 

🌸La plus mignonne des petites souris 

『一番きれいな小ネズミの娘』

フランスで買った絵本です。

出版社:Père Castor Flammarion フラマリオン社のPère Castorシリーズの一冊

出版年:1953年

↓ うちのは古くて左側、色がとんでいます。

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表紙を見ただけでもうわくわくします。 わが家はハムスターを飼ってて大のネズミ好きですから。(*全部のページはスキャンできません)

最初のページ

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これがネズミのミナカジル家(注:Rongetoutとはなんでもかじってしまうという意味なので。皆齧る!…この訳語を当てたのはうちの夫です^^)のお宅です。

ミナカジル氏とミナカジル夫人には、それはそれは美しいお嬢ちゃんがおりました。

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ダンスも編み物もでき、お菓子も焼ければピアノだってひけるのです。

そろそろ嫁にやる年頃だ、うちの娘にふさわしいのは、世界で最も強い者でなければならない。そう思ったミナカジル氏は

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婿捜しの旅に出ます。ヘリコプターで。

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はじめに 上へ上へ高く飛んで、太陽の宮殿に行きました。

うちの娘の婿になってくださらぬか。あなたは世界で一番強いおかただ。

ミナカジル氏はそう言いました。

しかし太陽は思いもよらぬ返答をしました。

いや、それは間違いだ。わしより雲のほうが強い。雲はわしの姿を隠してしまうからな。

ミナカジル氏はペリコプターで下へと飛行し、雲のところへ行って聞きます。

すると雲は、自分をさっとふきはらう風の方が強いと言います。

 

ミナカジル氏は風車小屋に住む風のもとへ向かいます。

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雲のいうことは間違っている。あそこに建つ古い塔の方が強い。

わしがいくらびゅーびゅー吹いてもびくともしないからな。

 

ミナカジル氏はもうすっかり疲れていましたが、塔に向かって話しかけます。

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いやいや、残念だが、風は間違っておる。

わしより強いのは ネズミじゃ。ネズミはわしの一番丈夫な梁を ガジガジ齧りよる。

やつが齧り終えたときにゃ、わしは倒れてしまうだろうよ。

 

そこでミナカジル氏は そのコネズミに会いに行きます。

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うちの娘の婿になってくださらぬか。小ネズミの中で一番きれいな娘じゃ。

コネズミは答えます。

お宅のお嬢さんのことはよく存じ上げております。

嫁にいただきとうございます。

 

めでたく二匹は結婚しました。盛大な式でした。

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ミナカジル氏はとっても満足です。なぜって娘は、

太陽より強い雲、

その雲より強い風、

その風より強い塔、

その塔より強いネズミのところに嫁いだのですから。(終わり)

 

あれ、聞いたことがある話だけど…?

 『ネズミの嫁入り』ですね。小学館の絵本サイトによると、古代インドの寓話集にまでさかのぼるそうです。世界中の国で語り継がれているようです。

それにしてもミナカジル氏、リッチなのはわかりますが、太陽だの塔だのと娘を結婚させようなんて、おかしな話です。しかしこれは比喩なんでしょうね。ネズミはネズミと結婚するのが一番いい、身分相応だし、幸せな結婚生活が築けるだろう…ということでめでたしめでたし。

 

絵を描いた人はこちら。

f:id:cenecio:20160829162909p:plain挿絵画家、絵本作家 Étienne Morel (1924-1969)

対象年齢3歳から。今でもアマゾンで買えます。

レビューを見ると、皆さん絵の美しさを絶賛!レトロで可愛いし、ユーモアもあるし、気品も感じます。フランス語のテキストも簡潔でとてもいいと思います。

Étienne Morel氏は他にもたくさん作品があります。

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「赤いめんどり」という作品。絵を見ただけですぐわかるほど、スタイルが確立されていますね。

 絵本キャンペーンの写真が可愛いので 最後に乗せておきます。 

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追記:

参考までにこちら。

http://www.adiabatic.org/IP/stories/20110528mouse.htm