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猫カフェ と ポーランドの連帯

猫カフェ、行ってきた!ネコミン不足だったもん。(写真はマティス)

ブリュッセルで唯一、いやベルギーでもまだほかの都市にはないと思う。

可愛い猫たちを紹介するね。

Le chat touille

rue Tasson-Snel 11 1060 Saint-Gilles

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場所はルイーズ(Louise)で降りて、シャルルロワ通りを下っていくと、左に入る道。

散歩するのに最適のショッピングエリアを通り、昔を思い出した。この映画館であれを見たなあ、このカフェ入ったよね、なんてひとりごちながらのんびりと歩いていった。

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ベルギーに野良猫はいないことになっている。すぐセンターに保護されるのだ。すくなくとも都市部の話だが。以前ルーヴェンに住んでいる人のブログで、野良猫の母親と赤ちゃんの面倒をこっそりみている話を読んだことがあるから、きっとノラはいるはず。

保護センター (World Animal Handicap Foundation W.A.H.F) から猫を譲り受けてきて、ベルギー初の猫カフェを開いたのは、モニカさん(写真、入り口に立つ女性)。2014年当時、ベルギー国内で話題になり、取材で大忙しだったようだ。あれから1年半、どんな様子かな。ワクワクしながら、店の中へ。

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中に入ると、窓際に岩合光昭写真集「ねこ歩き」が置いてあった。

水曜から日曜まで12時開店。私が最初の客だった。早速やってきたのはこの子。

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マティス(Matisse)「ねえ、早く遊ぼうよ」とせがむ。

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なんとか私の気をひこうとゴロゴロ転がる。急いでコートを脱ぎ、「わかったよ、ネズミのおもちゃで遊ぼうね」うちの猫と同じ遊びをしばしする。

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この様子を上からじっと見ているのは黒猫ミルコ(Mirko)。とりあえず傍観。

去年12月に来たばかりなんだって。まだ1歳だからちょっと小さい。

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こちらも黒猫、名前を聞くのを忘れたので「タビ(足袋)」と呼ぶことにする。白い靴下をはいて白いよだれかけをしているみたいに見える。高いところが好きで、たいてい上にのぼって、静かに窓の外を見ている。孤高のタビ。

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注文のビールが運ばれてきた。

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初めて見た猫ビール!De Poes はオランダ語でメス猫という意味で、作っているのはあの有名なブリュージュの醸造所 Huisbrouwerij De Halve Maan である。本来はグラスにも猫の絵がついているはずなのだが、うるさいことは言わないで味わってみよう。

う~ん、フルーツっぽい爽やか系。とおもいきや、ちょっと苦味もあっていい感じ。

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おや、孤高じゃなかったの?夏目漱石の猫じゃあるまいし。

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あたしのだってば!!

(「やめなさい」と後ろでモニカさんの声がする)

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きみがドルチェ(Dolce)か。お利口さんだね。挨拶にきてくれたの?

カフェオーナーのモニカさんは、保護センターで猫を選ぶとき、神経を使うという。猫カフェ店員(つまり猫)は、ストレスに晒される仕事だ。知らない人間や小さな子供たちが入れ替わり入ってきて、触られたり、追い回されたり、大きな声を出されたりするのだから。モニカさんは猫の性格を綿密にチェックする。人になつきやすい、社交性のある猫を選ぶ。容貌は考慮に入れないそうだ。

しかしこのドルチェは名前とは正反対らしく「ちょっと攻撃的だから気をつけてね」とモニカさんに念を押された。そしてなんと今日引き取られていくのだ。

 

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もうじきお迎えがくるんだってね。

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こういう性格の猫こそ、なるべく早めに暖かい家庭を捜してあげるのだという。

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注文した「チコリとブルーチーズのサラダ」を用意するモニカさん。食いしん坊の猫3匹 タビ、マティス、ミルコがのぞきこんでいる。

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食べていたらトラヴィス(Travis)がやってきた。トラヴィスは皮膚病にかかったことがあって、そのためか怒りっぽいんだって。そんなことないみたいだけど。青カビのチーズはさすがに食べないでしょ。

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窓辺が好き。とにかくマイペース。

カフェのつくりについていうと、床下の小部屋に降りる出入り口が、この窓の右手前にあり、猫たちは休みたいときはいつでもおりていける。

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お迎えの女性がキャリーケースを持ってやってきた。昔飼っていた猫の匂いがするらしく、マティスとトラヴィスがクンクンと調査中。もらわれるのは君たちじゃないんだよ。でもドルチェいなくなると、ちょっと寂しくなるねえ。

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ずっと寝ていたキチュー(Kitchou)が目を覚まし、(起こしてゴメン)

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やってきた。どういういきさつでセンターにいたんだろう。

ちなみに姉妹のKittyのほうは先にもらわれていったそう。つんとおすましのスノッブさんなんだとか。

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あんた、何食べてんの?と覗き込んでクンクンやってから、フンと行ってしまった。

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険悪な一瞬。ドルチェがけしかけたみたい。でもすぐに収まった。

 

お客さんは私以外に5人。(プライバシー尊重のため、載せられない)

みなさん、何度か来ているらしい。そしてドルチェを引き取る女性を中心に、どこかの家に遊びに来たみたいにみなで歓談した。女性は病気で入院しなければならなくなり、自分の飼い猫を泣く泣く手放した。帰宅してみると、心に穴が空いた感じだ。それでセンターと連絡をとって、ここを紹介してもらったというわけである。

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よかったねえ、ドルチェ。そして嬉しいことに、私が帰るころには、ドルチェは私の脚に体を摺り寄せるようになったのである。そうなると可愛くてたまらない。

 

店に入ったときすぐにわかったのだが、モニカさんが猫たちに話しかける言葉はポーランド語だ。動物や赤ちゃんに話しかけるのは母国語をおいて他にない。

モニカさんはワルシャワ出身だという。バックパッカーだったころ、ポーランドに行ったことがあるよ、ポーランド語も習ってたと言うと「ほんと?いつ?」。レフ・ワレサ率いる「連帯」(Solidarność)運動のころ1981年だよと答えると、遠くを見つめ、「食料や日用品など、戦時中と同じ配給制だった暗い日々を、両親からさんざん聞かされたものだわ」と振り返った。

まさか2016年のベルギー猫カフェから、一気に1980年のレーニン造船所のストライキと連帯運動に飛んてしまうなんてね。

1980年代、ポーランドはめちゃくちゃカッコよくて、世界中の注目の的だった。もちろんそれ以前からポーランド文学と映画は非常に高い評価を受けていて、特に映画は日本でもコアなファン層を形成していた。

しかしなんといっても1980年だ。この年、社会主義国で初めて、ポーランドは全国規模の、独立自治労働組合を結成したのである。これが反共運動へ発展し、波状し、その後のベルリンの壁&ソ連崩壊へとつながるわけで、今振り返れば初めの一歩だったわけである。

1981年にはワレサ(正しい発音はヴァウェンサ)委員長は日本にもきて、新幹線内で修学旅行生らと写真に収まっていたのを思い出すなあ。

1981年夏は公共交通機関のストライキで、ワルシャワから動けなかったため、市内をくまなく歩いた。宿は小学校の先生をしていたという人の質素なアパートだった。

国鉄中央駅の出口、列車から降り立った旅行客を待ち受ける人々がいた。自宅を宿として提供したい民間人である。紙に金額を書いている人もいれば、声掛けする人、じっと見ているだけの人、とさまざま。品の良さそうなご婦人が目にとまり、そちらのお宅に1週間泊まった。支払いはドルで、日本円にして2千円くらい。この人たちはドルが必要なのである。ポーランド通貨ズウォティには価値がなく、また極端な品不足のため、そして配給の食品では足りなくて、ドルショップで買い物をせざるをえなかったらしい。

若いバックパッカー向けに、キャンピング施設も市内から遠くないところにあって、見せてもらったら清潔で安くて(日本円で千円未満)感心した。

 

さてそろそろ帰るよ。

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もう帰るの?あんまり遊んでくれなかったわね。

何言ってんの。ずっと寝てたくせに。

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マティス、なかよくしてくれてありがとう。遊んでもらったのは私のほうだった。明るくお茶目で場を盛り上げるタイプだね。

みんな元気でね。そしてよい飼い主さんに巡り合えますように。

 

猫カフェレポート、終わります。