〔前回よりニュースの続き〕
こだまでしょうか、いいえ、だれでも。
待ちに待った金子みすゞ詩の英語翻訳と短い生涯を紹介する本が、美しい挿絵入りでアメリカの出版社から出た。
金子みすゞを知らない人でも、2011年の震災後に繰り返し流れたこちらのCMはご存知だろう。
ACジャパン CM こだまでしょうか (英語字幕付) AC JAPAN COMMERCIAL ENGLISH SUBTITLED
アメリカの「金子みすゞサイト」はこちら。(そこにもこのCMが紹介されている)
Are You an Echo?: The Lost Poetry of Misuzu Kaneko
本の表紙を見てみよう。
ハードカバーで全64ページ。発売:2016/9/13
Chin Music出版。対象: 4 - 8歳となっている。つまり子供向けに、童謡詩人を前面に出しているようだが、もちろん彼女の詩は世代を超えて誰が読んでもいいし、いつでも新しい発見や喜びがある。さきの「こだまでしょうか、いいえ、だれでも」の一行について、2011年の3月にはどれほど考えさせられたか。 みなさんもそれぞれ解釈をお持ちだと思う。
みすゞの本は、 AmazonなどWEB上の内容紹介では、一篇だけ「大漁」をひいている。
大漁
朝焼け小焼だ
大漁だ
大羽鰮(いわし)の
大漁だ。浜は祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう
Big Catch:
At sunrise, glorious sunrise
it s a big catch!
A big catch of sardines!On the beach, it s like a festival
but in the sea, they will hold funerals
for the tens of thousands dead.
私の大好きな詩だ。5年ほど前、試しに詩を数篇オランダ語に翻訳してみたことがあった。オランダ人と友人の一人に贈ったのだが、今思うと恥ずかしい。残っていないことを祈る。
「弁天島」はこんなふう。
この本には羽尻 利門(はじりとしかど)さんの挿絵がついている。上記のサイトで何枚か見られるのでのぞいてみてほしい。↓こちらは羽尻さんの個人サイト。
マミーさんも「おひさん、あめさん (金子みすゞ童謡絵本) 」を取り上げていたし、はてなではすでに多くの人が金子みすゞについて書いている。
なしのしん
これもいい絵本だ。
両方とも JULA出版局から 2002年出版、「元気いっぱいの、おちゃめな、おてんばなみすゞの姿」に出会える、と解説にある。子どもがお母さんと一緒に、絵を見ながら読めるのが嬉しい。
両方の絵本に詩を選んだ矢崎節夫さんは こんな人。
童謡詩人金子みすゞの全作品を発掘、『金子みすゞ全集』を編纂し、1984年日本児童文学学会特別賞受賞、1993年『童謡詩人 金子みすゞの生涯』で日本児童文学学会賞受賞。(ウィキペディア)
教育出版の「小学校国語 五年生」には矢崎節夫さんの書きおろし「みすゞさがしの旅」という文も載っている。
金子みすゞの詩との私の出会いは、20年くらい前で、うちの子供の小学国語教科書である。そこに「わたしと小鳥とすずと」が載っていて、初めて読んだときの衝撃は忘れられない。
だれ、この人?こんな凄い人、今まで知らないでいてどうしたことだろう。
1903年(明治36年)生まれ?私は一度も教科書でもどこでも出会ったことがない。いったい何故なの?
そういった無数の疑問が頭の中をグルグル駆けめぐったのだが、金子みすゞは「再発見」されて、そのころやっと一般に知られ始めた時期だった。うちの子どもたちの世代はラッキーだったな。
そして私は内心にんまりする。英語に訳されれば、他言語に翻訳される可能性はきわめて高くなる。おそらくオランダ語にも訳されるだろう。 柴田トヨ『くじけないで』も英語に続いてすぐにオランダ語版が出た経緯があるから。そうして世界中の人にみすゞが読まれるのだ。そうなるといいなあ。
水着を着る自由
8月のニュースでは、皆さんには興味がないかもしれないが、「ブルキニ水着騒動」ーこれが私にはちょっとした関心事だった。つまりイスラム女性の着る、長袖長ズボンの水着ブルキニ。ブルキニ (burkini, burqini) とは、「ビキニ」と「ブルカ」を合成した造語である。
Boerkini op strand van Cannes weer toegestaan | NOS
イスラム女性は体の美しいところを隠さなければならない。そこでレバノン系オーストラリア人のデザイナー、アヘダ・ザネッティ (Aheda Zanetti) がブルキニ水着を考案、商標登録もして、2004年から販売をしている。ブルキニはご覧のように、手足の先と顔だけが出て、体の線が目立たない作りになっている。
「ブルキニ禁止令」はこの夏、南フランスのリゾート地で猛威をふるった。最初に禁止の御触れを出したのはカンヌ市長で、7月28日~8月31日まで着用禁止を宣言した。
次々と右へ倣えする自治体があらわれ、様々な理由(*)をつけて、海水浴場やプールでのブルキニを締め出した。
当然、フランスの社会党やカナダの首相などがこの禁止令を非難し、新聞は毎日この件で記事を載せていたので、どう決着がつくのか見守りたいと思った。
以前、ベルギー在住のアルジェリア人女性が話してくれた。「実家は海の前にあって、すごくきれいなところなの」と言うので、「いいなあ、毎日好きなだけ泳げるわね」と返した。すると寂しそうに
「小さいときはね。今は無理。あそこでは、ベルギーみたいに普通の水着で泳げないの。イスラム教徒はブルキニを着るか、泳がないかのどちらか。私はあの変なブルキニは着たくない」
海で泳ぎたいイスラム信者の女性には、ブルキニを着るしか手がないのだ。それを禁止だなんて!子どもと海で遊びたいお母さんはどうすればいいの?
すると8月末、フランスの最高裁にあたる機関が、禁止措置は個人の自由という基本的自由を、明確かつ違法に侵害するとした初めての判断を下した。
やれやれ、フランスはまともだった。
*宗教を誇示する、治安を乱す、女性を蔑視した着衣である、等々。
最後に わがやの蝶 のこと。
人のお宅を羨ましがっていたのだが、この夏拙宅にもクロアゲハがやってきて、3匹巣立っていった。卵から飛び立つまでをずっと見ることができた。
太って模様がはっきりしているのがクロアゲハ、それ以外はナミアゲハ。
そろそろかえる頃だなと思う朝は、抜き足差し足、忍び足で見にいく。
そおっとカーテンを開けると、私より早起きでもう殻から出て羽を乾かしている。
じゅうぶんに羽が乾いたら、優雅に飛び去ってしまう。
夏の風物詩?とんでもない。秋の蝶もいるのだ。
今現在、幼虫が8匹ほどケースの中にいる。さなぎのまま冬を越すこともあり、次の春を待って、3月などの暖かい日に飛び立つのである。
生き物と暮らす日々は愉し。