差別的でない表現ーポリティカル・コレクトネス

ポリティカル・コレクトネス(political correctness)

マミーさんがコメント欄で指摘してくれた「ポリティカル・コレクトネス」について、今日は短く。

トランプ氏勝利・ヒラリー氏敗北の一因に、アメリカ社会のポリティカル・コレクトネス疲れ」もあるのでは・・・このことは去年からあちらこちらで目にする。

 

マミーさんの前回コメント、部分引用。(全文は前回記事でごらんください)

(略)時々思うんです。
確かに、メディアや「良識ある上流階級」の人々は、「差別的な表現」を批判してきた。
でも、彼らの闘争はいつも表層的で「言葉狩り」以上のものではなかった。
一般の人々は、彼らのそんな態度に、欺瞞と偽善のみを感じていたのでしょう。(略)

 

かれこれ10年位、ずっと気になっていた。というのも私はアメリカの基準に照らし合わせると、劣等生だと思う。言葉使いに自信がなくビクビクしている。

 

こちらのアメリカ在住の梓弓さまのTwitter。

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言葉をもう一度簡単に説明する。

ポリティカル・コレクトネスは1980年代にアメリカで使われ始めた表現で、「用語における差別・偏見を取り除くために、政治的な観点から見て正しい用語を使う」、またその活動をさす。

 要するに「差別的な表現をなくしていこう」である。

 

日本でも

看護婦 → 看護師

保母 → 保育士

この辺はすでに馴染んでいるのではないだろうか。

「スチュワーデス」も今は「客室乗務員」とか「キャビン・アテンダント」と呼んでいる。他にもたくさんある。

 

アメリカでは「~man」がつくものは女性差別になるとして言い換えた。学習者としてはそのたびに用語をチェックしてきた。

警察官 policeman → police officer

消防士 fireman →  fire fighter

実業家 businessman  → businessperson

スチュワーデスstewardess → Flight attendants または cabin crew。

 

職業の性差だけでなく、人種・民族・宗教・ハンディキャップ・年齢といったところでも、差別のない表現が推奨される。

たとえばハンディキャップのある人は、現在 ”the challenged” が普通に使われる。この「チャレンジド」は日本語でも使われていて、就職のとき「チャレンジド採用」、転職したかったら「チャレンジド転職」というふうに使われる。(大手企業は積極的にこうした採用を行っている。)

 

「インディアン」(Indian)もいけない。アメリカ合衆国の先住民族を言うならネイティブ・アメリカン(Native American )ネイティブ・アメリカン - Wikipedia

カナダではファースト・ネーション(First Nations)ファースト・ネーション - Wikipedia

 

しかしアメリカではキリスト教以外の様々な宗教に配慮しようということで、

 

例えばクリスマスはキリスト教の行事であるため、公的な場所・機関、大手企業では他の宗教のことも考慮して「メリー・クリスマス」と言わずに「ハッピー・ホリデーズ」、クリスマス休暇も「ホリデーシーズン」(他の宗教の人たちも年末年始は休日になるので)と言い換えている。

クリスマスカードも「Season's Greeting(季節のご挨拶)」に書き換えられ、クリスマスツリーも「ホリデーツリー」となっている。
2004年の年末の記者会見では、ブッシュアメリカ合衆国大統領も「メリー・クリスマス」ではなく、「ハッピー・ホリデーズ」と述べた。(略)

しかし、これらに対しては伝統や文化の否定であるという意見もあり、論争となっている。

(ウィキペデアから引用。下線は私)

 

 もう一度、梓弓さまのTwitterからお借りします。

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私はこの内容が100%理解できるし、共感する。

wikiのこの箇所

クリスマスツリーも「ホリデーツリー」となっている

呼称は「ホリデーツリー」でも、アメリカではやはり本物のモミの木を置くだろう。美しく飾られたクリスマスツリーを、TVや写真で目にするから。

しかしベルギーではさらに一歩進んで、ツリーそのものも廃止したことがあった。

2013年のことである。

 

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写真:ル・ソワール紙よりhttp://actualite.lesoir.be/_belgique/sapin-bruxelles.html

 

これは、ブリュッセルの世界遺産になっている広場、グランプラスに飾られた「クリスマスツリー」のオブジェである。色は赤や白などに変わる。

従来の木のツリーはキリスト教色が強く、他の宗教に対する配慮に欠けるとして、2013年、フランス人デザイナーに依頼し、この形になった。

しかし設置前から、そして設置後も大変なブーイングだった。翌年は再び木に戻します、と観光局は早々と撤回した。

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(2015年12月、ブリュッセル、グランプラス)

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(同。馬小屋の聖家族も復活した。めでたしめでたし)

 

さきのTwitterでクリスマスカードの話が出ているが、ブリュッセルに住んでいたとき、私もアメリカ同様の「ハッピー・ホリデーズ」的な文言のものを作った。フランス語とオランダ語を並べて。

(前に載せたようなタイプのもの)

cenecio.hatenablog.com

 

 

私が通っていた移民学校の事務局からも、やはり宗教色ゼロのグリーティングカードをもらった。そうであるのが当たり前な感じだった。

しかし違和感を感じるのは私だけだろうか。キリスト教徒じゃないけど、「クリスマスおめでとう。ハッピーニューイヤー」と言ってはいけないの?

Twitter主さんの言葉を借りると窮屈な感じ。常に気にしていなければならない。うっかり言葉を間違えると、追及されるようないやな雰囲気に疑問を感じていた。

 

簡単にブリュッセルの状況を紹介しておくと

住人の三人に二人が、本人ないし親世代が外国出身である。地域によっては9割というところも幾つかあるようで、当然イスラム教徒の割合はキリスト教徒より大きい。「イスラム教が第一宗教」だそうだ。

オランダ語学校の話だが、ラマダンの翌日などはイスラム教徒にとって大切な祭日だから、彼らは全員学校を休む。15人のクラスで出席したのは、私のほかはキリスト教徒のコンゴ人とカメルーン出身の人だけ。それと先生。当然のことながら授業を先に進めるわけにはいかないから、この日、私たちも休みのようなものだ。イスラム教のカレンダーに従って計画を立てたほうがいいんじゃないの、と思ったことも。現在は変わっているかもしれないので、あくまでも2007年の話である。

そしてブリュッセルという街が特殊なのは確かだ。移民率が異常に高いので、ベルギーの他の都市ではまた違うから誤解なさらぬよう。

 

そしてトランプ氏。まもなく大統領に就任する。

この人はポリティカル・コレクトネスどころか、差別語を多用するし、ヘイトスピーチを堂々とやる。新しい大統領のもとで、ポリティカル・コレクトネスはどうなるのだろうか。今私は興味しんしんである。

 

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( グランプラス 2016年3月)