フランス語で 90は ”4 × 20 + 10” 

 トランプ氏の暴言や、無知から来る妄言などを聞いていて、あれ、日本でも一時期よくこんな感じの発言を聞かされていたなあと思った。

昨日、よんばばさまの記事

佐和隆光著『経済学のすすめ』は怒りと祈りの書 - よんばば つれづれ

を読んでいて、一挙に過去の怒りが蘇ってきたのだ。あの人だ、元東京都知事である。知事の話はあとまわしで。

よんばばさまの記事をぜひどうぞ。

「人文知と批判精神の復権」言い換えれば「モラル・サイエンスとしての経済学の復権」によって、経済学は真に人間の幸福に資する学問になりえるのだ・・・。

(記事から抜粋させていただきました)

 

さて、石原慎太郎氏の度重なる暴妄言(ぼうもうげん。造語です)や差別発言に呆れかえっていた日々を思い出したわけである。「三国人発言」や「爆弾仕掛けられて当たり前発言」など実に華やかな暴妄言集が存在する。

女性としてめちゃくちゃ腹がたつのは例の「ババア発言」だ。みなさん、覚えていらっしゃるだろうか。2001年のインタビューで、とある学者の意見としてこのように紹介した。

「文明がもたらしたもっともあしき有害なものはババア」

「女性が生殖能力を失っても生きてるってのは無駄で罪です」

 

 

蒸し返しても仕方がないので、次に移る。

今日取り上げたいのは、石原氏のフランス語の数に関する、失礼極まりない発言である。国内外のフランス人、フランス語関係者・学習者を唖然とさせた。その後、発言撤回を求めて提訴もされたし、フランスのル・モンド紙はじめ多くの新聞にも載ったし、騒動は数年尾を引いた。

2004年のことで、だいぶ前なので簡単にまとめておく。「首都大学東京」の開学を控えたころ、彼はこのような発言をした。

 

私はフランス語昔やりましたが、数勘定できない言葉ですからね、これはやっぱり国際語として失格しているのもむべなるかなという気がする

 

(2004年10月19日、The Tokyo U-club 設立総会における都知事の祝辞より抜粋)

http://www.ishihara-frago.com/gorokujp.html(全文はこちら)

なお、この時のビデオ録画は、その翌年マリック・ベルカンヌ氏による提訴までの9ヶ月間、東京都のHP上に公開されていた。上記サイトは石原氏発言をまとめたもの。

と言いつつも、

「私はね、フランス文学が好きで、フランス語が好きで、本当は京都大学の仏文に行こうかなと思ったら親父が死んだんで、公認会計士になりなさいというので、違う大学に行ったんだけどね」

(2005年7月15日 石原都知事定例記者会見より抜粋)

フランス文化には造詣が深いようである。みなさんもご存じだと思うが、一橋大学在学中の1956年『太陽の季節』で芥川賞を受賞している。フランス語は大学の第二外国語と思われる。

 

ついでに、英語に関しても、このような妄言を披露している。

英語なんてのはいい加減に使ったっていいんだよ、通じるんだよ。英語ってのはかなりいい加減な言葉だから、文法にもそれほど詳しくない。例えば "Long time no see." って「久しぶり」ですね。あんなの、言葉を並べただけで、慣用句にもなってないでしょ。それが通じるんだからね。

一番いいのは、イギリス人も真似してやったらいいんだけど、南太平洋で流行ってるピジョン・イ ングリッシュ、鳩の英語。あれが一番簡単だよ。 "I go Tokyo three day." 「私は東京へ行く」。"three day past" って言ったら「三日前に行った」。"I go Tokyo three day future." って言ったら三日後に行くんだよ。

エスペラントみたいに実に簡単でね。英語なんてその程度でいいんだよ。

(2006年4月7日 石原都知事定例記者会見より抜粋)

 

ありがたい英語のレッスンだが、これ以上暴妄言集に付き合っている暇はない。

 

今日のトピックスはフランス語の数である。

というのも今までshellさま、マミーさま、anne nevilleさまなど数人が話題にしているし、私も一度書きたいテーマだったので。

 

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(Paris, 2016年3月)

  

みなさん、”17” と言ってみて。

17 は日本語で 10+7。私たちにとっては当たり前なことで、7+10とは言わない。しかし英語ではそう言う。

seventeen セブン・ティーン。不思議だが、英語ではそういうんだな、と誰もつべこべ言わずに覚えたと思う。(ちなみに独語、オランダ語もこのタイプ)

フランス語は dix-sept ディセット で10 + 7。日本語と同じ。

 

20 進法の混在

フランスのフランス語は 10 進法と 20 進法が混ざっているので、独特な数体系を成している。石原氏はこのことを言っている。

20 vingt ヴァン

60 soixante ソワサント

70 soixante-dix ソワサントディス 60 + 10

71 soixante et onze ソワサンテオンズ 60+11

80 quatre-vingts キャトルヴァン 4 × 20

90 quatre-vingt-dix キャトルヴァンディス 4 × 20 + 10

フランス人の頭の中ってどうなってるの、と思うでしょ。私もそう思う。私たち外国人でフランス語学習者は、人にもよるかもしれないが、頭の中で「計算」をしていることが多い。

78=60+10+8、このように分けて考え、soixante-dix-huit ソワサント・ディズュイットというふうに。同様に、

99 =4 × 20 + 10 + 9 quatre-vingt-dix-neuf カトル・ヴァン・ディズヌフ 。慣れてくればすぐに出るようになる。

フランス人は、99”は”quatre-vingt-dix-neuf”という名前だと思っている。

 

ベルギーのフランス語では

20 進法が80だけに残った。 80 quatre-vingts 4 × 20

そして実にありがたいことに

70 septante セタント

90 nonante ノナント

簡単だ。

私はフィギュアスケート(日本人選手熱烈応援!)を見るのだが、ベルギー仏語放送だと点数がわかりやすい。特に減点が何点で、演技構成点が何点で、合計すると何点…といった場合、ベルギー仏語は耳で聞いて素早く理解できる。フランスのは、私の頭が悪いからだと思うが、計算に時間がかかる。

ちなみにスイスのフランス語は 10 進法に統一した。なので

80 huitante ユイタント

ええっ、こんなに楽でいいの!っていうくらい、めちゃくちゃ楽で嬉しい。

 

 

スターウォーズの対象年齢は20歳から79歳?

こちら annenevilleさまの本日のブログ

フランス語が話せるという事について(^^) - わたしは話せませんけど。 - anneneville’s diary

キャリー・フィッシャーのフランス語を取り上げてくれている。1977年の”Star Wars”公開に合わせたインタビューである。(youtubeは記事内にあります)

annenevilleさま、ありがとうございます。

 

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Carrie Fisher "Star Wars" Interview in France 1977

おお、懐かしい!お二人とも若いですね。

フィッシャー嬢は19歳。ハリソン・フォードは35歳。私は 『アメリカン・グラフィティ』(1973年)を見ていたからH・フォードは知っていた。

 フィッシャーは女優として活躍の場を広げるべく、フランス語を特訓していたらしい。だからインタビューでも堂々と落ち着いた受け答えをしている。英語なまりも少ない。

 

し・か・し

数ではやはり苦労するんだな。可愛らしい間違いが実に微笑ましい。

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「この映画はどんな年齢の観客層を想定しているのですか」と聞かれたフィッシャー。

「あらゆる年齢ですよ。20歳から80歳までの」と言いたかった。さきほど見たとおり、

80 (quatre-vingts)=  4 × 20 というべきところ

60+20 と言ってから、しまった、間違ったとわかり、なぜか

79 と言ってしまう。しかもこれは正しいフランス語で。

「ええと、わからなくなってしまいました」そうして両手で顔を覆うしぐさがなんとも可愛い。

 英語字幕があるのでyoutubeでどうぞ。

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(Paris, 2016年3月)

 

英語でも昔は20 進法

石原氏は教養ある方だから当然ご存知だと思う。

今、手元にある研究社のカレッジライトハウス英和辞典で

”score”を引いてみる。scoreには20という意味があり、黄色下線部

four score and seven years ago

87(4×20+7)年前となっている。

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今日はフランス語の数の数え方でした。

フランスからも数学者やノーベル賞受賞者など数十名と数多く出ているので、なんら弊害はないと思います。

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 (Paris, 2016年3月)