ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

おかしな結婚式 (チェコのカッパ-2-) +カッパの周辺・雑記

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おかしな結婚式 大型本 – 1986/8
ボフミル ジーハ (著), ヤン クドゥラーチェク (イラスト), 井出 弘子 (翻訳) 95ページ
出版社: 童心社 (1986/08)

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今日もカッパの話なのですが、初めて読む方は前回記事で、チェコのカッパの基本知識仕入れてくださいね。民話や伝説を扱っているのではなく、子ども向けに書かれた作品を読んでいます。

さてこの本には、カッパは何匹も出てきます。カッパならではの特徴はあまりなくて、私たちと似ている人間臭いカッパです。

このスターレク爺さんはカッパの親分。銀の池に住んでいる。

いつも家来のナマズを従えている。水の中でも親分、そして陸の野原や森においてもやっぱり親分。長老といった風格ですね。

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ターレ

ターレクには気にかかることがある。

鯉のベーナが結婚式を挙げたがらないことだ。ベーナはもう若くもなく、長いことヨハンカ(同じく鯉)と連れ添っていて、子どももたくさんいる。

しかしけじめとして式を挙げてもらいたい。ターレ説得にあたるのだが、鯉のベーナは反抗的だ。頭にかぶった麦わら帽子は脱がないし、パイプタバコを吸っている。タバコはカッパにだけ許されていることなのに。

「ときどき王冠をかぶったりしているそうじゃないか」とスターレは問いただす。

「子どもたちと王様ごっこをしていたもんで」とベーナ。

 

ねえ皆さん、この辺で「ええっ?!」と思うでしょう。鯉って魚なのに帽子や王冠かぶったりパイプくわえたりするわけ?

そう、お話を作った人(回をあらためて紹介する)と絵を描いた人は別なのですが、初めて絵を見たとき、お話にそぐわない気がして仰天しました。

なんと可愛い装飾的な鯉であることか!しかもどうやって描いたの?と思いました。

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パイプをくわえているのがベーナ。隣がヨハンカ。

ベーナはしぶしぶ、スターレクのいうことを聞いて結婚式をあげる約束をする。

「これからすぐ家へかえり、ちゃんと用意をするのだ。水曜日、太陽が森の上にのぼったら、おまえたち二人は、結婚のパレードのなかにいるのだ。仲人には、カワカマスとカワスズキがなる。・・・

 ヨハンカには、わしの持っているベールのなかで、いちばんよいものをおくるから、それを着せなさい。」

結婚式は、皆が集まって美しいふるさとのことを喜び合う、口実のようなもの。

しかしベーナはお祭り騒ぎが嫌いだし、こんなに歳をとっているのに今さら式などおかしいと思っている。その気持ちにヨハンカも共感している。

そんな二人をよそに、式の準備は着々と進む。

 

子分のカッパたちを一部紹介。

左:バイオリン弾きのカッパ  中:笛吹カッパ  右:おしゃれな銀色カッパ

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結婚式の知らせをうけて、魚はもちろん、カエルやザリガニ、昼の小鳥、夜の小鳥たちも大喜び。

皆が集まって御馳走を食べたり、音楽を楽しんだり花火を見たり、とそれはそれは華やかなのだから。また晴れ着で着飾り、自分の美しさをみせびらかすチャンスでもある。

どれもこれもコピーしたいくらい、絵がおもしろいのです。

いくつか紹介します。魚と鳥です。

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私が気にいっているおばあさんの魚です。

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鉄砲を持って見張りをするフクロウ。 

次の4枚、このインパクトに勝てず、やはり貼り付けてしまいました。

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さて結婚式。おめかししていますね。

左下:ヨハンカのベールの美しいこと。

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結婚式の準備はOKです。 これでめでたしめでたし、と終わると思うでしょう?

違います。

「まあ一回だけ、結婚式をがまんしてくれよ」と

カッパに懇願され、逃げない約束をする二人。

 ベーナ「やりたいようにやるがいい。わしは目をつぶり、ふれをふせて、息をとめることにする。結婚式のときは、ただの丸太のように見えるだろうよ」

ヨハンカ「わたしも丸太になるわ。ねえ、ベーナ、結婚式がすんだら、一緒に目をさましましょうよ」

 

当日、結婚式のために皆が集まっている。スターレクの挨拶が始まる。二人はまだ出ていかない。控えの間で聞いている。

立派な挨拶に、皆が拍手を送っている。

ターレクが続ける。

 

一晩考えたのだが、結婚式に花嫁花婿が一緒にいなければならないとは、どこにも書いてない。もしかすると二人は村から散歩に出て、ふたりきりでアシの間を泳ぎ回ったりしたいかもしれない。二人を無理にここに立たせようとしたのはまちがいであった。

二人の生活がこれからも変わりなく続きますように。これからの日々がみんなの喜びとなり、わたしたちを取り巻く美しい自然を楽しむことができますように。

 

ターレクが話し終わったとたん、結婚式の楽しい気分が爆発した。そのあと皆でおおいに楽しんだ。スターレクはこの世で一番賢いカッパだと褒め称えられた。

 

そして鯉の二人は、というと、アシの間の、二人きりになれるところへ入っていった。

 おしまい。

 

カッパの周辺・雑記

最初に言及から(shellさま)。

わたしは実は・・カッパが怖いのです。苦手なのですよ・・・笑*
鱗をもたない生き物で、ナマズとか山椒魚などの皮膚の感じがしますね

わかります。あのヌルヌルがいやなんですよね。

逆に『おかしな結婚式』の初めの方に、こんな一節があります。カッパから見た鯉の描写です。 

p12

鯉はどうやっても鯉でしかありません。体じゅううろこだらけで、ひればかり。

ものしらずでなににでもおどろくし、なまけもので、礼儀なんてものはこれっぽっちもわきまえていないのです。

完全に 上から目線!チェコではカッパは偉いのです。自然界の主みたいな感じもすれば、浪士さまのあこう劇場の登場人物みたいなカッパたちも出てきます。

ヨーロッパでは「カッパは川の水死体」という説もあります。水の流れでゆらゆら動いているように見えるのです。

 

簡単にカッパ作品の作家たちについて。

『おかしな結婚式』

お話:ボフミル・ジーハ(Bohumil Říha)

1907 - 
チェコスロバキアの作家。
元・チェコ作家同盟書記,元・国立児童図書出版所所長。
ボヘミア生まれ。
教師や視学官を経て作家となり、1930年以降新聞や雑誌に作品を発表し、’52年チェコ作家同盟書記となり、’56年国立児童図書出版所所長を務める。’75年チェコスロバキア国民芸術家の称号を受け、’80年国際アンデルセン賞を受賞する。作品に「ぼくらは船長」(’63年)、「ビーテクのひとりたび」(’73年)など。

コトバンクより引用

挿絵:ヤン・クドゥラーチェク(Jan Kudláček 

1928-

モラヴィア地方、モラフスキー・クルムロフに生まれる。プラハの国立美術学校を卒業後、カレル大学で芸術史を学ぶ。1957年に造形美術アカデミーを卒業してから、子どものためのイラストを描く仕事に従事する。柔らかな色調で幻想的な作風を特徴とする。

幼いころ過ごした自然豊かな故郷の生物のほか、池や川の世界、とくに魚やカッパを好んで描く。

1972年に外国語の出版物を扱う出版社より、ルケショヴァーの本のイラストを依頼される。1971年に『ペトルーシュカ(Petruška, 1970)の挿絵でブラティスラヴァ世界絵本原画展入賞。ルケショヴァーと組んだ四季をテーマにした4部作のほか、『チョウさんさようなら』、カッパの世界を描いた『カッパたちはどうやってナマズたちをなだめたか』などがある。

国際子ども図書館 チェコへの扉』より引用

 ヤン・クドゥラーチェク 仕事場など

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Vzpomínání se závany motýlích křídel aneb významné životní půlkulatiny ilustrátora a malíře Jana Kudláčka

ヤン・クドゥラーチェク インタビュー(チェコ語。個人メモ)

www.youtube.com

Malíř a grafik Jan Kudláček - Oficiální stránky Obce Dolní Dubňany

ルケショヴァーとタッグを組んだ作品が素晴らしい。

 ヨゼフ・ラダについてヨゼフ・ラダ - Wikipedia

チェコ近代絵画におけるもっとも「チェコ的」で独創的な画家。カードや絵葉書など多数キオスクなどで売っている。うちにも数十枚のコレクションがある。

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絵本画家でもあるが、大人の小説の挿絵もたくさん手掛けています。

あとカッパは現在でもよく扱われています。最近のカッパ氏ですね。

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 カッパ関連、短いですがここで終わります。

 

*たまうきさまの記事(2017-03-05) 多層球について

りんさまのコメント

故宮博物館展に行ったとき、似たようなのを見ました。あとはNHKのテレビです。

すごいですよね。すべて計算されて彫られているんですよね。それをドイツ人だったか、どこかのヨーロッパの人が、解き明かしたとか?

りんさま、勝手に引用してごめんなさい。正しいです。NHKでやったのも知っています。見ていないんですけど。りんさまのコメを見て、すぐに記事に入れようと思いました。私が個人的に思い出したのはこの本です。

エンデ全集〈1〉ジム・ボタンの機関車大旅行  – 2001/6/18
ミヒャエル エンデ (著), 上田 真而子 (翻訳)

出版社: 岩波書店 (2001/6/18)

p59「そうそう、象牙細工師も~」から読んでください。

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 ヨーロッパでも古来から象牙の教会調度品・美術品はまず多くあるし、博物館にも中国の作品が飾られています。

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多層球は世界中に散らばっており、エンデはもちろん実際に現物をみたことがあると思います。エンデは日本にもすんでいたし、後妻は日本人でしたから、日本の専門店や博物館で多層球を見たかもしれませんね。

 中国人が手を使ってやった気の遠くなる作業が、ヨーロッパの卓越した旋盤技術で再現もできるらしいです。(NHKの番組を見ていなくて残念)。

下の動画はドイツじゃなくて台湾の人があげているもの。1分以内で多層球が完成。

www.youtube.com