生まれ育った国を大切に思うのは当たり前ですね。
だからここ数年、海外のメディアで、日本の労働環境(長時間労働、ブラック企業、過労死・過労自殺)に関するニュースをあまりに頻繁に目にすると、日本のイメージをひどく損なっていると思い、気が気でならない。どう見ても日本はまともな国ではない、と映るようです。
さらにイジメ問題、とくに最近では福島出身の子どもたちが悪質ないじめに遭っていること。また私は無知だったが、深刻な「大人のひきこもり」についてオランダ語新聞が詳細にレポートしていた。日本は病んでいるなあと思わざるをえない。
前回から、外から見ると日本がどう見えるか、あくまでも私の体験の範囲内ではあるが雑感を書いている。
世界が驚いた!ニッポン、スゴイデスネ!
というテレビ番組があるのは皆さんもご存じだと思う。きっと日本にも凄い所がたくさんあるのだろう。だけどこの自画自賛なタイトルにまず違和感を感じる。
昔、フランス人のお宅に夕食によばれたとき、お母さんが「今日はうまく鶏が焼けなくてごめんね。オーブンのせいなのよ」と言い訳したら、すかさず友人が
「お母さん、日本人だったらこういうとき、自分の腕が悪くて、と言うのよ。オーブンが壊れていたとしてもね。そしておいしい料理を出してくるのよ」
そのあと謙譲を重んじる国民性について滔々と述べたてて、かわいそうなお母さんを困らせたことを思い出す。
日本がどれだけ凄いかを視察団に見せるというコンセプトのこの番組、一度だけ見たことがあるが、よりによって列車に関する回だったから苦笑してしまった。時間通りに走らせるための様々な工夫や、駅職員と運転士の連携など、一般人には思いもよらないことばかり。視察に来たドイツ人らが感心し、驚いていた。
確かに日本の電車や長距離高速列車は速いし遅延も少なく、本数も多くてスムーズな運行が売りである。が、東京など首都圏の電車の混雑ぶりは、非人間的に映るようだ。
1990年代にフランスの大臣クレソンの「日本人は兎小屋のようなアパートに住み」発言もあったが、ラッシュ時の通勤電車については 家畜列車か、ユダヤ人を載せて強制収容所に向かう貨車並み、と表現した人もいる。
比喩の的確さに思わずうなってしまった。乗車率が何パーセントという問題ではなく、見た目の印象を述べているのだと思う。
「最近はロンドンもそうよ」とイギリス転勤になったベルギー人が、おととしだったか言っていた。ラッシュ時の混み方は東京だけではないようだ。
以前、北陸新幹線を利用したときにhttp://cenecio.hatenablog.com/entry/2017/01/12/162636
苦言を呈したのだが、要するに鉄道会社側に「快適な旅を提供する」という発想がないのではないか。ヨーロッパでは長距離列車は座席指定が原則である。荷物置き場、自転車置き場があり、朝早くと夜遅めの時間帯には割引料金を設けて混雑を避ける工夫もある。
日本では、詰め込めるだけ詰め込む。自由席車両が満席で、通路にも立てないとなると指定席に誘導して通路に立たせる。
早くから指定席を予約して、楽しい旅行に出かけようという乗客にはなんともお気の毒なことだ。トイレに立とうにも、人だけでなくスーツケースやベビーカーでぎっしり。(最新車両には荷物置き場が設置されているが)
最近は海外からの個人旅行客も多いし、週末や連休は発券時にすでに混雑することは予測できるだろうに。乗客数に制限をかけたり増便したりしないのだろうか。苦情は受け付けているらしいが、改善する気はないのかな。どこが「おもてなし」なの、どこが「スゴイデスネ」?と思ってしまう。
そこで突然思い出したあの写真!「スゴイデスネ」ってあれかな。
今、アムステルダム近代美術館で、エド・ファン・デア・エルスケン(Ed van der Elsken1925-1990)回顧展をやっている。エルスケンはオランダを代表する写真家で、1959年に初来日してから、東京や大阪で多くの写真を撮っている。
1966年の写真。
ニッポン、スゴイデスネ!これだ!
頭の痛いクジラ問題・イルカ漁
日本人は「クジラやイルカを殺戮し、食べる野蛮な人たち」というイメージ。
みなさん、クジラ食べますか。私は子どものころ食べたことがある。缶詰だけれど。
先日、谷口ジローの記事で紹介した『孤独のグルメ』の原作者、久住昌之さんは、インタビューの中で、好きだった給食として「クジラのノルウェー煮。サイコロみたいに切ってある鯨肉がトマト味で煮込んである」と話していた。久住さんとは同じ世代なのに私はこれを知らない。
イルカについてはおととい新たな動きが。ますます頭が痛くなる。
JAZA(日本動物園水族館協会)は追い込み漁を「残酷」と非難する世界動物園水族館協会(WAZA)の警告を受け、2015年5月、この方法で捕獲されたイルカの購入禁止を決定している。
しかし、新江ノ島水族館と下関市立しものせき水族館「海響館」が「今後も太地町からイルカを購入したい」として、JAZAを退会したことが4月1日、分かった。
イルカ漁がテーマのドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』は、2009年にオスカー賞を受賞して、和歌山県太地町の赤く染まった海とともに、世界中の多くの人々の脳裏に刻み込まれてしまった。殺し方の残酷さとイルカをビジネスにして潤う行為が批判されている。
クジラ漁に対しても非常に敏感な反応がある。
昔はヨーロッパ・アメリカでも捕鯨をしていた。鯨油は主に灯火用に、鯨のヒゲは甲冑、帽子、コルセットの骨(下の絵参照)などに使われた。
捕鯨を非難するヨーロッパの人たちの言い分はー
食文化は時代とともに変わっていくべきだ。現代ではクジラやイルカを食べなくてもほかの食べ物、魚介や肉などたくさんあるではないか。そしてクジラやイルカは高度な知能を持っており、人類共有の財産として大切にしなければならない。ざっくり言ってこんな感じ。
日本人も大昔、犬を食べていたらしい。大陸由来の犬食文化 - Wikipediaがあったことは明らかになっている。アジアの国々では現在も伝統として犬食をしているが、日本人は再び犬を食べるだろうか。答えは否だろう。
クジラ問題をめぐる個人的な思い出
①世界中で広く使われている、第二外国語としてのドイツ語教科書(ヒューバー出版社)中級には、こんな箇所がある。
定年退職したらやりたいことのリスト。趣味などのほかに「社会に役立つボランティア活動」が挙げられていて、挿絵が捕鯨反対のデモ行進だった。
え?ボランティアの代表例が捕鯨反対団体で活動すること?ドイツ人の教師に驚きを伝えると、教師は言いにくそうに
「君たちがもう鯨肉を食べていないのは知っているけどね。でもさ、渋谷に専門店があるでしょう。109のそばに。あんな目立つところにあって間が悪いね」と。
ここでもまたビックリ仰天。私はその店を知らなかったのだ。いやはや、渋谷にはあまり行かないからだが、クジラ専門店があるだなんて考えてもみなかった。
(参考までに↓ ここです)
②ベルギー・ブリュッセルの連続テロから1周年を迎えた。あのころは毎日TVを見て、新聞数紙をオランダ語とフランス語で読んでいた。
日本でもあると思うけど「よく読まれている記事TOP5」。DeMorgen紙、3月25日(テロ3日後)のTOP5は今でも忘れない。過去記事に貼り付けたから今引っ張ってきたが、こんなふうだった。
左から順にテーマは ①テロ ②テロ ③捕鯨 ④テロ ⑤テロ
捕鯨の記事は「日本がクジラ333頭を殺した。ほとんどが妊娠中だった」というもの。
Japan doodt 333 walvissen, meesten waren zwanger | walvissenjacht | De Morgen
国際的な非難勧告も無視し続ける日本に対して容赦ない内容。また読者の関心の高さもわかる。
③ もっともショックな思い出
東日本大震災のあと読んだオランダの全国紙。震災と福島の記事がたくさん載っており、記事下のコメント欄もたまに読んでいた。そのなかに捕鯨反対活動家とおぼしき人の意見があった。
「これまで何十年もグリンピースや他の団体が活動してきても、日本は捕鯨を止めようとしなかった。なのに1回の地震で止めるのだ。船が流されてもう漁に出られないから。それなら時々地震が起こってくればいいのに…」
実際のコメントはもっと長いし、もっとひどいことが書いてあるのでここには書けない。これが本音の人がたくさんいるのだー そう思うと背筋が寒くなった。そしてこうしたコメントは消去されるはずだと思い、証拠としてプリントアウトしておいた。
これは石巻の捕鯨が津波によって壊滅的な被害を受けたことを言っている。捕鯨反対の人たちは日本の地理に詳しくて、地名や数字をそらんじている。
以上、日本の悪いほうのイメージでした😢
参考:ロッテルダム港、鯨肉経由拒否
ポートフォリオ・オランダニュース - ロッテルダム港、鯨肉経由拒否
2013-06-27 06:14 (木曜日)
ロッテルダム港は船主とコンテナターミナルに対し、鯨肉を取り扱わないよう呼びかけ、これを欧州他国の港湾にも導入して欲しいと発表した。アイスランド国籍の船「Samskip」はロッテルダム港を経由し毎年50基近い鯨肉を積んだコンテナーを運んでいる。ロッテルダム港から別のアジア国籍の船舶が日本向けにこれを輸送しているという。
「ロッテルダム港は関係する船舶会社と話し合いを進めてきており、彼等もこれに同調の意向を示した。」とロッテルダム港のスポークスマン。同港は、捕鯨反対の署名運動やグリーンピースそして世界自然保護基金(WWF)からの圧力で今回の決断となった。
「鯨肉が実際にオランダ市場に入ってきているわけでないので、このキャンペーンはあくまでも呼びかけであり法律ではない。ただ、感情的な問題が大きい。従業員たちが休暇で鯨ウォッチなどに行き捕鯨を嫌うなど、あくまでもセンシティブな問題。」
アイスランドでの捕鯨シーズンは始まったばかり。ロッテルダムに寄港できないとなると他の欧州の港を選ぶ公算が高い。おそらく英国の港に入港するのではないかと見られている。
世界自然保護基金によれば港湾も積荷に社会的責任を取り入れるべきだとし、「保護対象の植物や動物が違法に取引されている。積荷の中身の検査は非常に難しいが、港湾がこれに協力すべき。」と述べている。
これに対しロッテルダム港はこれを実施する計画はないと拒絶。あくまでも当局や政府の管轄である。バングラデッシュから運ばれてくる児童労働者のつくった衣類に関しても同様である。」
ルモンド紙記事
佐々木監督のドキュメンタリと本
2018年8月12日朝日新聞
アメリカでも上映