トイレがむき出しの部屋
ここ数年は貸し物件を多く見る機会がありました。昔、といっても私たちがフランスから帰国して部屋を探していた頃ですが、あれからずいぶんと変わりました。
最近の事情がもの珍しくて好奇心をそそられ、ついつい熱中してのめり込んでしまうのです。物件を探しているのはうちの子どもたちなのですが。
まずインターネットで探せる。なんと便利なことか。住みたい場所や条件を入力すれば何十という物件が見られるし、毎日新たな物件が届き、気にいったものがあったときだけ内覧を申し込めばいいのです。
単身者・学生向け物件ではクーラーやミニキッチン(小さな冷蔵庫つき)、照明器具、ロッカーなどは普通についていることが多い。ロフト付きの部屋もよく見る。敷金・礼金なしというのもけっこうある。
ミニマリストやシンプルライフ派にとって言うことなしです。ありがたいことです。寝具があればすぐにでも泊まれますからね。
しかし私がもっとも驚いたのは、このようなタイプの部屋です。
写真:こちら東洋経済オンラインの記事↓から借りています。
若者が「東京四畳半暮らし」にハマる理由 | 三浦展の研究ノート「街を読む、データを歩く」 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
この部屋は4.2畳。入ると左にシャワー、そしてハイテクなトイレが間仕切りもなくどんと置かれている。その真上にクーラー。
手洗い・洗面・流し台は一緒。シンク下にドラム式洗濯乾燥機が組み込まれている。
その向こうにはベッドがぎりぎり置けるスペースがあるだけ。壁のポールに服やカバンなどが提げられる。(窓が3か所あるのは意外ですね)
家は寝るだけの場所なのだし、スマホさえあれば用は足りるのだから…と考える若い男性たちに、こうしたタイプの部屋は人気があって、空いてもすぐに埋まってしまうんだとか。
みなさんにとっての驚きは何ですか。
やはりトイレに仕切りがないこと?
衛生面が気になる?
人を呼べない?
絶対に住みたくない?
東洋経済の記事のコメント欄にざっと目を通しましたが、そうした意見も多かったです。
私は全然驚きませんでした。というのもそうした部屋に住んだことがあるし、よその家でも便器が部屋の片隅にむき出し、というのを見たからです。ただしフランスの話ですが(^^)。
私の驚きは洗濯機のほうです。今や単身者向けの部屋にはどんなに狭くてもドラム式洗濯機がついているんじゃないかと思うほど。おかしいでしょ。
(写真はすべてアールエイジPR (@earlyagepr) | Twitter)
どれも四畳半から6畳の部屋です。当たり前のように洗濯機があるのが驚きです。乾燥もできるので部屋やベランダに干さなくていいんですね。
また洗濯機の話題から逸れますが、この狭さなら絶対に要らないと思われるバスタブを付ける部屋もありました。
部屋は6畳未満ですが、一階の共用部にバイク置き場があったりとか。
個性を打ち出した物件がいろいろあって、見るだけでおもしろいです。ここまでの写真:アールエイジPR (@earlyagepr) | Twitter
さて、昔は四畳半暮らしといえば、風呂なし(→銭湯にいく)、トイレ共同、たぶん台所も共同であったと思います。洗濯は都市部にはコインランドリーがありました。
*日本初のコインランドリーは、1966年(昭和42年)5月に東京都北区の銭湯「加賀浴場」に設置されたもの。(ウィキペディア)
ヨーロッパの事情をみても、一人暮らしは洗濯機など持たない。バスルームかキッチンのスペースがないと、水回りをまとめるという意味でも洗濯機は置けないからです。しかもあちらでは温水で洗濯をするのが普通ですし。学生や単身者は実家が近ければまとめて持ち帰ったり、コインランドリーを使っていました。
以前、コインランドリーといっても、日本からは想像もできないおしゃれなカフェになっているコインランドリーカフェについて記事を書きました。若い人たちの集いの場であり、もちろん一人でやってきても自宅の延長みたいな感じで使える、街の憩いの場です。
↓こちらベルギーのコインランドリー記事。
トイレがむき出しの話に戻ります。
私が1980年代にパリで1年間住んだ部屋の話です。8畳くらいの寝室は天井が高く、絨毯敷きでした。別にシャワーとトイレと洗面所がある一室があり、ここはタイル敷き。そこにおそらく大家さんが「煮炊きできたら便利だろう」くらいのことを考えて、ガスコンロを設置したのでしょう。初めて見たときは呆れました。まあ、ちゃんとした料理はしないのですが、お湯をわかしたり何かを温めたりはできるので助かりましたけど。
ところで、日本のハイテクトイレはヨーロッパでも人気です。まだ今のように評価を受ける前、10年位前の話ですが、ヨーロッパの便器は水を使い過ぎるという記事を読んだことがあります。イギリス人が書いていて、それによると日本の優れた便器と比べて洗浄水量が7~8倍必要だ。日本人は節水してもきれいに流れるように、便器内部の形と水の勢いを工夫している…といった内容でした。
日本の流麗なフォームのハイテクトイレは、むき出しで置いてあってもさほど違和感はないかもしれませんが、やはり自分がその部屋に住むとなると別ですね。
幽霊の出る部屋
だいぶ前のこと、息子が初めて部屋探しをしていたときのこと。一緒に物件をあれこれ見ていて、「これなんかどう?緑いっぱいの文教地区でこんなに安いし、しかも築年数も10年未満だよ」といいます。どれどれ、と隅々まで読んでみたら案の定「瑕疵(かし)物件」と小さくありました。
瑕疵物件(事故物件)、つまり何らかの事件現場だった物件のことです。または自殺かもしれません。特に事件性もない孤独死であったかもしれません。いずれにせよ不動産業者は、そのことを説明する義務があるようですが、細かい規定はないようです。たとえば何人目の入居者まで告知するのか、事故後何年たったらしなくていいのかなど。
家賃はかなり低く抑えてあるので、それが魅力で納得して入居する人もいます。(先の物件はすぐに決まりました)。逆に黙っていて普通の入居料を取る大家もいるそうです。
残穢(ざんえ)-住んではいけない部屋-( 2015年)
というホラー映画がありましたが、みなさんご存知ですか。
借りる側としては、そんな訳あり物件に知らずに住むなんてことは避けたいものです。
今はそうした物件を調べるサイトがあるのです。事故物件公示サイト「大島てる」といい、大島てる氏が運営していて、誰でも無料で情報を共有できます。
グーグルマップの地図の上に、事故物件を炎で表し、それぞれの物件について「住所」「事故の発生した日付」「事故の内容」「写真」の4つを掲載しています。
【大島てる】圧力があっても削除しない! 大島てるが事故物件にこだわる意外な理由とは?|住まいの大学
またはこちら: 事故物件借りちゃった人の末路:日経ビジネスオンライン
私も思わずあちこち知っている場所を検索してみました。確かに自宅からあまり遠くないところで起こった殺人事件などが載っていました。
しかしこんなに全国各地の情報をどうやって集めるのかと思うでしょう。当初は自分たちで情報を収集していたのですが、投稿制にしたのだそうです。それにより情報の質も向上し、また多くの人がチェックしているおかげで、部屋番号などの間違いもすぐに正されるそうです。
現在では日本だけでなく、外国(韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ)の事故物件も対象に広げており、掲載物件は4万以上、一日の平均閲覧数は約100万といいます。
大島てる氏は39歳。東京大学経済学部を卒業したあとコロンビア大学大学院へ。中退した後、家業である不動産屋を継ぐ。「てる」は祖母の名前だそうです。
おもしろい世界があるものですね。
終わります。
🌸おまけの写真
アールエイジPR (@earlyagepr)のサイトの写真はどれもきれいでため息がもれます。
フランスのインテリア雑誌から。
広い家でもわざわざ寝室にバスタブを置くなど日本では信じられないですが、湿度が低いことも関係あるでしょう。ちなみに排水口はタブの真ん中にあることが多い。カップルが向かい合って座るのに、片側にあると一人がお尻の下に排水口が来て、都合が悪いからだそうです。