ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

中国の羨ましいところ -3-

中国について前回は、特に羨ましくもなんともないことを書いたが、今日は羨ましく思っていることを書いてみたい。

羨ましいなと思う点は三つある。①高い起業熱 ②再生エネルギーへのシフト ③男女共同参画社会、である。 

①国民の、特に若者の起業意識が高い。

ベンチャーが盛んなのは国民性に関係があるだろうか。日本人は会社や組織に入ることを好む傾向があると思う。友人のベルギー人が「ベルギー人も同じよ。勤め人がいいと思ってる」というので、「違うわよ。新聞のこの統計によると、ベルギーの昨年度の起業件数はEUでも上位よ」と見せてあげた。

「どれどれ、いったい誰が起業してるのかしら。…え、みんな移民じゃないの!」

移民してきたポーランド人はじめ東欧の人たち、ポルトガル人らが個人で商売を始め、順位を押し上げていることを知って大笑いしたものだ。

 中国人は子どもでも「将来は社長になる」つまり自分の会社や店を持ちたいと言う。自立心旺盛なのだ。(これは韓国人も同じ)

昨今は技術の革新のスピードは目が回るほど速い。新しいアイディアを出し、新しい製品を考える。それに対し投資家などが敏感に反応して投資する。国も様々な優遇措置で支援するので、起業に適した環境が用意されているといえる。失敗してもまたやりなおせばいいと思っている。成功した場合、事業展開のスピードも速く、前回見たシェアサイクルのように、多くの参入があって一気に活気づくのだ。

 

②再生エネルギー 中国は2050年までに全電力の8割目標

先日のNHKの「クローズアップ現代中国“再エネ”が日本を飲み込む!? - NHK クローズアップ現代+をご覧になったかたも多いと思うが、再エネで作る電気が割高だと思っていたのにこんなに安いの⁉とビックリした。

上海のあるパネルメーカー。太陽光パネルの出荷でも世界一であるが、太陽光発電で火力や原子力よりも低い価格を実現したという。国内に発電所は300以上あるそうだ。現在は、こうした発電所のインフラを丸ごと他の国に輸出しようとしている。

中国では他にも多くのベンチャー企業が育っており、ある風力発電のメーカーは世界30か国で取り引きがあり、コストの低さと壊れにくい耐久性が売りなのだという。風車も5年に一度解体するなど、アフターサービスも徹底する。

これほどの猛進撃のわけは、深刻な大気汚染と福島原発事故のショックだという。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b1/KerncentraleDoel01.jpg/800px-KerncentraleDoel01.jpg

写真:Doel Nuclear Power Station - Wikipediaアントウェルペン市の原発。まち中から見えるので常に原発を意識せざるを得ない。テロ攻撃を恐れる割には警備が手薄なのが不思議だし心配であるが。

スタジオに呼ばれたゲストの中国人学者がこう話している。(話は日本語)

原発と比べると、中国の場合、再生可能エネルギーは、もっといい電源だというふうに認識し始めた。その結果として、例えば今年の1月から9月まで、太陽光発電が実は4,300万キロワットもできたんですね。これは大体、原発の9基分に相当します。

かたや日本では、再エネ市場は震災のあと一旦は盛り上がったが、その後低迷し、倒産も増えている。なぜ日本はうまく行かないのか。

放送を見てちょっと呆れたが、やはり日本特有の壁だった。

まず高いコスト、さらに工期に数年かかる。そのほかいろいろあるが、電気をせっせと作っても「送電線の空きがない」。本当にないのか大学の教授に頼んで調べてもらうと、空き容量がゼロと公表された送電線は、2~18%程度しか使われていなかった。ではなぜ空きがないと言ったのだろう。

原子力発電所は、現在、稼働していません。それでも、将来の再稼働に備え、送電線の容量を確保しておかなければならないというのが電力会社の考えです。

電力会社の考えは政府の考え。さらに株主や金融会社の考え。つまり原発を止めることはできないというわけだ。ずっとしがみついていくんだろうか。地震はまた起きるかもしれないし、事故もテロもないとは言えないのに。

ぜひとも再エネのほうに舵をきってほしいと思う。まだ今なら手遅れではない。このまま世界から取り残されていいのだろうか。日の上る国と言われているのに、自分から沈んでいく、そんなばかな!と私は心配でならない。

また最近の報道によると、中国の国有自動車メーカー、北京汽車(BAIC)は2025年までに全てのガソリン車の販売を停止すると発表した。

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中国“再エネ”が日本を飲み込む!? - NHK クローズアップ現代+

(グラフはこちらからお借りしました↑)

business.nikkeibp.co.jp

こちらの記事はSPYBOYさまから教えてもらったものです。ほんとうにタメになる。日経もどんどん記事にしてほしいですね。『今週のニュース3つ』と日本の成れの果て:映画『ビジランテ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)

 

③女性が働く社会

これもまたSPYBOYさまの記事にもあって、前々回「中国のことを話そう-1-」で紹介したのであるが、中国では女性はみんな働いている。また組織の高い地位で生き生きと働いている印象がある。

私は昔、中国人の学生が「今度母が来るんです」と言ったとき、息子の顔を見にくるのかと思った。実に日本人的発想で恥ずかしい。遊びや観光ではなく、出張や仕事で来るのである。

「お母さんはどんなお仕事?」

「雑技団の団長やってます」。

世界中を回る雑技団の団長さんは忙しい。日本での日程も余裕がなくて、息子と立ち話程度しか時間がなかったらしい。(その息子は京都大学に進学した)

社会主義国の女性はみんな働いている。ナチスドイツと戦ったソ連でも女性兵士は多かった。戦闘機乗りだったユダヤ人女性やスターリングラード攻防戦を戦った女性兵士たちの手記を読んだことがある。

一方ドイツでは、女性は家庭を守り、子どもをたくさん産むように奨励され、銃後の守りに徹したようで、この対照的な女性の在り方は興味深い。

日本でも口先だけじゃなく、女性が活躍できる社会を作らねば、と切に思う。高い教育を受け、優秀な女性たちはたくさんいるんだから。もっと高いポストを与えてほしい。

人口減少というのなら、移民受け入れよりまず女性たちだろう。働きたい女性は全員活躍できるようにしてほしい。そのためには出産・保育施設などの環境づくりはもちろんのこと、男性側の意識も変えてもらわなくちゃ。

ここまで三点あげたが、他に私が気になるのは芸術・文化事業の振興についてである。

欧米では日本学や日本美術などへの関心が薄れつつあるようだ。といっても今に始まったことじゃなくて、ここ10年くらい、ヨーロッパのあちこちの大学で日本学の専攻が閉鎖されるという話を聞いてきた。

朝日新聞で以前読んだ記事では、日本美術研究者が高齢化し、引退するとあとを継ぐ人がいない状況だという。中国・韓国は財団を作り、普及活動に熱心である。たとえば資金提供して韓国美術の常設コーナーを作ったり自国から研究者を送って指導にあたったり、展覧会開催にも資金援助をしている。中国も資金をふんだんに使って文化事業の助成に積極的だ。

文学作品の翻訳などにも言えることだし、日本が自慢に思っているアニメ関連でも、世界最大のアニメーション映画祭、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭は、韓国とパートナーシップを組んで、アジアでの新映画祭を立ち上げると言っている。

仏アヌシー国際アニメ映画祭主催者、韓国で2019年に新映画祭を発足(映画.com) - goo ニュース

 

🌸『日本のアニメーションの100年』

という最近フランスで出た本の紹介です。

このテーマの催しもフランスではたくさんやっています。

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 取り留めなく中国のことを、思い出話も含めながら書いてきたが、これで終わる。

 

 

報告:

アトリエ銭湯さん、トゥールーズでサイン会を開く。立っている人はたぶん出版社の人。(一石二鳥出版という名前!)

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アトリエ銭湯さんからお礼のことばをもらいました。嬉しい!

「どうもありがとうございます。

日本語のブログで鬼火に関する大きい記事があってとても嬉しいです。」

↓この記事のことです。

浸透し深化する日本のサブカルチャー-3- 妖怪を愛するフランス人&水木しげる - 

今見てきたらFacebookのシェアが65となっていて驚きました。アナリティクスで調べたらほとんどがフランスでした(笑)。

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