ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

編み物をすればみんなしあわせに、世界は平和に!(編み物男子②)

秋風が吹くと毛糸が恋しくなり、編み物をしたくなる。

だけどここ数年、私は毛糸や編み棒を見ないようにしている。なぜって一度始めるとのめり込んで他のことに気が回らなくなるから。自分の性分は熟知している。他にやるべきことがたくさんあるし、年をとってくると優先順位というものがあるのだ。ルリユール(製本)だって今は避けているくらいだ。これも一旦始めたら部屋から出てこなくなる。

子どもたちが小さいころ、暑い夏以外はよく編み物をしていた。セーターとか小物がほとんどで、キャラクターなどの編み込みも自分で図を描いていた。近所や知り合いのお子さんたちにも、教えていた学生たちに子どもが生まれた時は、プレゼントはいつも「編んだもの」だった。いつも編み針と毛糸をカバンに入れていて、電車でも待合室でもさっと取り出した。80年代の私はルリユール一筋、90年代は「編みだおれ」だった。

フランスにいた時は、子どもたちを学校に連れていくのに片道電車で40分くらいだったから、行きでセーター前身頃、帰りに後ろ身頃が編めた。編み図は頭の中に入っているので持ち歩いたこともなかった。フランス人は興味深そうによく声をかけてきて、お喋りも弾んだ。

去年のエントリ

cenecio.hatenablog.com

「中学体育に銃剣道」ではなく、銃剣道の木刀を編み棒に持ち替えて男女とも編み物をやったらどうか、編みぐるみのテディベアを製作するのを必修にしたらどうかと書いた。そのあと創作テディベアの全国コンクールやってもいいな。頭の柔らかな中学生はいろいろなアイディアを出してくるだろう。編み物をする中学校の教室風景を想像しただけで平和なしあわせな気分になる。

なのに日本は平和とは逆の方向に進もうとしている。そんなことを嘆いていると、2月の平昌五輪で、これ以上ないという平和な光景を目にした。ご存知の方も多いと思うが、フィンランド選手の「編み物男子」一団である。実はロシアのソチ五輪ですでに彼らを見ていて、本当に驚いたものだ。

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(↑この写真はソチ五輪時)

スノーボード男子スロープスタイル」という競技だ。実際に滑る選手は写真中央の、フィンランド代表ルーペ・トンテリ(Roope Tonteri)選手。右はコーチでアンティ・コスキネン氏。編み物をするコーチとしてソチでも有名で、平昌でもせっせと編んでいた。

なぜ編み物かというと、ソチ五輪の前にフィンランドチームの心理士が「気持ちを落ち着かせるには、なにか他のことを考えたり手を動かすのがいいよ」と助言したのが始まりらしい。そして今回平昌では、アイスホッケー女子チームとジャンプ男子の選手が率先したそうだ。

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一体何を編んでいるのか、そんなにたくさんのモチーフをどうするかというと・・・

フィンランドの大統領に赤ちゃんが生まれたので、モチーフを繋げて「おくるみ」にして贈るということだった。

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色もデザインもすてき!選手やスタッフの愛情がたっぷりで、大統領夫妻も赤ちゃんもしあわせですね。

 

片手袋研究家と もう片方を編むアーティスト

ちょうどオリンピックのころ、「片手袋」を研究している人がいるのをメディアを通して知った。手袋が片方、と言えばすぐにウクライナ民話の絵本『てぶくろ』を思い浮かべる人は多いと思うが、そう、その落ちている手袋のことだ。誰だって片方、落としたことも見つけたこともあるんじゃないかな。

片手袋研究家の石井公二さんは、落ちている片方の手袋が気になって気になって仕方がなく、写真を撮り始める。2005年にはそれに「片手袋」と命名する。「片手袋」は落ちているものだけでなく、拾われたもの(見つけやすい場所に人が置いたもの)も両方ある。この片手袋の背後に落とした人や拾った人の物語を想像するのだそうだ。

またどうして片方だけ落ちるのか、そのメカニズムを探ったり、いつ、どこで片手袋は見られるかなどについて考察している。

詳しくはこちらで。片手袋とは?東京別視点ガイド : 「片手袋は呪い」なぜ道路に手袋が落ちているのか。その道30年、片手袋研究家に聞いてきた

ここからが編み物の話である。石井さんがすごいことを教えてくれた。こちらのツイートをどうぞ。

 うわ、すごい!柵にずら~並んでいる手袋のインスタレーション!こちらのAkiko Diegelさんというかた、生まれは日本、ニュージーランドで美術教育を受け、現在はスウェーデン在住だそうだ。(Akiko さんのサイトwww.akikodiegel.com

北欧柄は美しくて大好き。またバルト三国ラトビアのデザインもいいな。(↓知らない方のブログからちょっとお借りした)

https://i1.wp.com/xn--cbk4evexd2401bqoo.com/wp-content/uploads/2016/12/last.jpg?resize=450%2C600&ssl=1

http://xn--cbk4evexd2401bqoo.com/2016/12/09/latvian_mitten/

まあ、これくらいなら大丈夫。何が大丈夫かって?すぐに何か編みたいよお~!とは思わない。見てうっとりすればよいのだ。

ところが、である。

なんと和柄が出た!数日前のこと。

和文様の編み込みミトン&手袋』日本ヴォーグ社 (2018/10/19)

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内容紹介
北欧やフェアアイルの編み込みミトンに人気があり、日本的な柄に興味を持つ人も増えている中、和柄を編み込み模様で表現したレディスのミトン、レディスとメンズの5本指手袋を28点掲載。メインは『和のクロスステッチ図案帖』の著者遠藤佐絵子氏が伝統的な模様を手袋用にデザインしたもの、他に『こぎん刺し模様あそび』の植木友子氏オリジナルこぎん刺し図案を利用したミトン、フェアアイルニットに定評の風工房の和柄ものもあります。編み込み模様のミトン、手袋を編むときのテクニックとポイントを写真とイラストで紹介するページもあります。ミトンや手袋の作品集としてはもちろん、和柄の模様集としても楽しめる本です。 

和文様の編み込みミトン&手袋

和文様の編み込みミトン&手袋

 

大事件だ。もう、気になるなあ。本屋で立ち読みしてこよ。 

手編みといえば、1700年前のエジプトの靴下という記事を読んだ。

www.hazardlab.jp

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大英博物館の収蔵品で、エジプトに滞在していた学者が1913年〜1914年にかけて、ナイル河流域の遺跡から発見し、博物館に寄贈したものだそうだ。最近の詳しい分析により、「草花を使って緑やオレンジ、紫色など7色に染め分けられた羊毛を編んだ靴下」だということが判明。子ども用で日本の足袋のように指先が別れているとのこと。詳しくは記事をお読みください。

編み物が好きな人たちは何でも編んでしまう。こちら今年のハロウィーンの衣装。型紙などはなく、フリーハンドのかぎ針編みだそう。

 

knitted-camouflage ニットでカムフラージュ

最後に、編み物で一風変わった試みをしている写真家Joseph Fordさんの作品。

https://irorio.jp/wp-content/images/uploads//2018/01/221_Bus_Joseph_Ford_073_63.jpg

手編みのセーターが背景に溶け込んで同化するアート写真を撮っている。セーターを編むのは友人の女性、着ているのはモデルだとか。この男性はバスのシートと同じ柄のセーターを着ている。出典はこちら↓

https://josephford.net/project/knitted-camouflage/3070 

11月3日は手編みの日です。全国でいろいろなイベントがありますよ。東京だったら下北沢とか、https://www.amuuse.jp/amicole_amidaore.html

ユザワヤhttp://www.yuzawaya.co.jp/news/41881.html

などが有名です。

ではまた。