パリでもブリュッセルでも 街の真ん中でシイタケ作り-1-追記:2019年

今日はシイタケの話です。

シイタケは英語でもフランス語でも”shiitake”、フランス語は別の言い方もあるが「シイタケ」でも普通に通じ、今やシイタケはヨーロッパで思いのほか浸透している。

シイタケに入る前にキノコの思い出をちょっと書いてみよう。

フランスではキノコは料理の大切な付け合わせのひとつなので、マッシュルームはもちろんのこと、モリーユ茸(Morille)やムスロン茸 (Mousseron)など季節によって違うキノコを食べることができる。そしてキノコについて語りたがる。私のような無知な人間をつかまえては蘊蓄を傾けたがる。

世界三大キノコといえば、トリュフ、マツタケと並び、セップ茸 (Cèpe)がある。あるときフランスのステイ先の旦那さんが満面の笑みを浮かべて言ったものだ。「ほら、これ!これがセップだ。分けてもらったんだ。君は運がいいなあ。今日はこれを食べよう」。しかしどんな味だったか全然覚えていないのが悲しいところ。豚になんとか…ってやつ。

そうだ、セップはイタリアではポルチーニ(porcino)と言い、その名は「豚」から来ているんだそう。ポーランドではボロヴィックと呼ばれ、あの人たちもよく食べている。きっとヨーロッパ中で広く食べられているんだろう。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2a/Boletus_edulis_2008_edit.jpg/250px-Boletus_edulis_2008_edit.jpg

(写真:セップ Herkkutatti – Wikipedia

キノコといえばキノコ狩り。皆さんもいらしゃるんだろうか。野山や森を歩きながらキノコを探す。なんと贅沢なレジャーだろう。ただ私は子どものとき数回行ったことがあるだけ。

キノコ狩りといって真っ先に思い浮かぶのはチェコ共和国のことである。チェコ人の国民的ホビーと言ってもいいくらい。いつだったか、このチェコ人のキノコ熱を「日本人の潮干狩りイベントの10倍くらいの情熱」のように書いてあるのを読んだ。でも潮干狩りはそんなに一般的かな?我が家はよく千葉県に行っていたのだが、もちろんタダではできない。何キロまでいくら、超過分はいくらと料金を払わなければならない。

それに対し、キノコ狩りは自然の恵みを分けてもらう太っ腹なイベントである。チェコ人は秋になれば雨の上がった週末など、皆が一斉にキノコのため森を目指す。必要なものはキノコ図鑑(*1 毒キノコを見分けるため)キノコを入れる籠(*2)キノコを採るナイフ(*3)、それだけ。

https://www.databazeknih.cz/images_books/17_/170006/big_cesky-atlas-houby-170006.jpg*1

https://img.cncenter.cz/img/3/article/3485827_houby-v0.jpg?v=0*2

Češi loni nasbírali lesní plody za 5,1 miliardy, na houby vyrazilo sedm z deseti českých rodin | Reflex.cz

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Opinel Houbařský nůž - leshoubeles

…と、ここまで書いてきて実は私、チェコでは一度も行ったことがないのである。「秋になったら行こうね」「おいしいキノコ料理食べようね」と言われても私が滞在できるのは夏の間だけだったから。でもその情熱は話の端々からもよくわかったし、乾燥キノコをストックしてある棚やキノコ柄のテーブルクロスを見れば、半端ないキノコ愛が伝わってくる。

チェコにはキノコ狩り用のグッズ専門店がある。籠だって様々なデザインのものがあり、背負うタイプもあるし、普通の長靴から膝上までの長靴、キノコを干して乾燥させるドライネット(網)など、見ているだけで楽しめる。

たくさん採れたら干して保存する。小分けしてビニール袋に入れておけば、家庭で食べても贈り物にしても市場で売ってもよい。キノコ類は干すと栄養価も増し、旨味が出て味も変わるのがおもしろいと思う。

  

シイタケを作る人たち

日本にも何十何百という種類のキノコがあるのだろう。でも都会で手に入るのは栽培もので、せいぜい5~6種類かな。

先日お蕎麦のモゼムさんのサイトを覗いたら「クリタケの幼菌」の写真を載せていた。見るからにおいしそうだ。他にも天然の舞茸の写真があった。

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http://sobamozem.com/mozem_biyori/

私は日本のシイタケがとってもおいしいと思っている。冬茹(どんこ)など最高だ。中国人の友人も日本産の冬茹は別格で夢のようにおいしいと言っていた。

ところで私は、シイタケは家で簡単に栽培できるものだと思っていた。というのも子ども時代、自宅で栽培していたのだ。隣の家との隙間だから狭いが、日が当たらなくて湿度が理想的なスペースがあった。いわゆる原木栽培(ほだ木を利用)というもので、ご存知のかたいらっしゃると思うけど、1m位の長さの木にシイタケ菌を打ち込み、育つのを待つだけ。しばらくすると魔法みたいにシイタケが生えてくるのだ。ぷっくりしたツヤツヤのシイタケが次から次へと。しかも翌年は何もしないでも生えてきたのでまさに魔法だと思った。木は10本程度だったと思う。家族が食べる分だからそれで十分。

そのシイタケをブリュッセルの街なかで栽培していることを知ったときは「マジで~!」だった。

 

シイタケ三銃士 ブリュッセルの真ん中でシイタケ栽培

Bienvenue sur le site du Champignon de Bruxelles!

三人の若者たちが始めたビジネス。それも学生時代に読んだグンター・パウリの本「ブルーエコノミー」(The Blue Economy: 10 Years, 100 Innovations, 100 Million Jobs)に感化され、「循環型経済」を実践していこうという心意気から始まった。

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そのシイタケ三銃士とはこ~んな明るい若者たちだ。左からチボーさん、カンタンさん、アドリアンさん。

これまでは、資源を使ってものを作り消費して捨てる、で終わっていた。これからは捨てるのではなく再び資源として使い、循環させよう。そうした持続可能な経済と社会を実現していこうという考えである。EUでもこのようにうたわれている。

循環型経済とは、より持続可能な方法で資源を無駄なく利用すること。製品のライフサイクルを利用することにより、あらゆる原材料、製品、廃棄物を最大限に活用し、温室効果ガス削減とエネルギーの節約を目指す。

EU MAG EUが取り組む「緑の未来」への投資

彼らも高らかにうたっている。HPの初めにこんな嬉しいことが書いてある。

Le Champignon de Bruxelles c’est l’union de la sagesse du Japon et du folklore Belge. La fusion du shiitake et de la bière!

ブリュッセルのキノコ、それは日本の知恵とベルギーのフォークロア(=有形無形の文化遺産)との融合。シイタケとビールの結合である)

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ではビールとどうつながるのか。

それはビールの搾りかすを利用するのだ。これまでビールを作ると廃棄されていた搾りかす、こうした身近なものに着目し再資源化するのが循環型のポイントでもある。搾りかすを回収し殺菌して菌床として利用する。HPにはこのようなわかりやすい循環図を載せている。絵をみればだいたい理解できると思うので解説しないが。

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また、使われていない建物の地下空間という理想的な場所も見つけた。ここをキノコ栽培の拠点にする。このアイディアを引っ提げてクラウドファンディングで資金を集め、ブリュッセルの公的機関からも補助金を受けて起業した。また三人は農学や経営学を専攻しており、必要な知識は備えている。

見学ツアーもあって賑わっている。↓地下空間の美しいこと!

https://i2.wp.com/www.lechampignondebruxelles.be/wp-content/uploads/2016/07/DSCF4342-2.jpg?resize=1024%2C683&ssl=1

Visites des Caves de Cureghem - Le Champignon de Bruxelles

 

パリの真ん中でも!

これも驚いた。パリ18区、昔住んでいた地域だ。そんなところでシイタケ栽培?それを教えてくれたのは、朝よく見ているフランス2(NHKBS)のニュース。20階建てのアパルトマンの地下駐車場でシイタケを作っている若者たちがいるという。(↓中にビデオがあります。)

Métiers de demain : un maraîcher dans l'immeuble

https://images1.persgroep.net/rcs/-Hre5IgR9OJdhMZSjl0qx7n5aRU/diocontent/112682439/_fitwidth/694/?appId=21791a8992982cd8da851550a453bd7f&quality=0.9

https://www.ad.nl/buitenland/dichtgeslibd-parijs-hoopt-na-autovrije-dag-op-groene-revolutie~af04f6646/

農学博士でもあるシャンパニャ(Théophile Champagnat)さん。駐車場を栽培施設に変える許可をパリ市からもらい、この事業を始めた。毎週20キロのシイタケやマイタケなどを収穫している。配達もパリの街中なので自転車でスイスイ。客側も新鮮なものがすぐに届くので喜んでいる。「若者らしいチャレンジ」「新しい経済モデル」だと国内外の新聞で報道された。

HPには”SHIITAKÉ, le cèpe japonais”(「シイタケ、日本のセップ茸」)と書いてあり、ちょっと嬉しい。

 

コソボ 欧州最大規模のシイタケ工場「ヒラノ・マッシュルーム

今年7月、NHKワールドで見たベジヤナ(Besjana)さんとシイタケ工場のリポート。(番組名:Cultivating Better Ties)。いやあ、コソボとは!しかもヨーロッパで一番大きな工場で、多くの国に輸出しているという。

それよりもベジヤナさんの身上が仰天だった。コソボの紛争でけがをし、NGOの招きで家族と一緒に来日、治療を受けた。50回にもおよぶ手術に耐え、無事に回復して帰国。

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(↑↓写真:NHKワールドから切り抜いた画像)

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( 職場のベジヤナさん) 

自分を「コソボで最も幸せな人間」と言っていた。シイタケを作りつつ、平和をつくり、人と人の繋がりもつくっている。

マイタケやエリンギも生産し、輸出が始まったそうだ。

会社のHPはこちら↓。写真がとってもきれいでおしゃれ。 

Hirano Mushroom | Shiitake and Wild Mushrooms

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会社のサイト内写真ギャラリーの中で個人的には ↓これが印象的だった。コソボ治安維持部隊(参加国36か国、兵力約16000人)の兵士たちが見学に来たときの写真。こんなに優しい顔をするんだと思って胸が熱くなった。

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シイタケの話はここまで。

食とグルメのネタは、去年の「2017-12-26ノルウェー人飛行士の造る日本酒~」以来です。けっこう溜まっているのでどんどん書いていきたいと思います。

ではまた。

🌸追記:11月28日

🌸追記: