ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

フランスSushi Shop 進化する寿司とその無尽蔵なアイディア -2-  

フランスの寿司がすごい。

と言ったら何を今さらと思うかもしれない。ずっと前から人気なんだって聞いてますけど、というのが平均的な反応だと思う。10年くらい、いやもうちょっと前だったら「な~んちゃって寿司店」が雨後の竹の子のように増えてきて、衛生上問題のある店舗に続々と指導が入っている、といった話をフランスでもオランダでも聞いたものだ。その後改善され、品質も上がり、スーパーにもパック詰めがたくさん並んでいるし、家庭での巻きずし作りはちょっとした流行にさえなっている。

私が今日取り上げたいのは、フランス大手寿司チェーン”Sushi Shop”である。ここの寿司は、私たち日本人が考える寿司とは違う道を歩んでいる。西洋との融合、それともアウフヘーベン(どこかの知事さんの好きな言葉^^)、いやもしかしてガラパゴス化するのかも。その進化は留まるところをしらない。恐るべし!フランス人の食への情熱とセンスに私はひれ伏そう。

たとえばこれは、 Sushi Shopの新作のひとつ。

HokkaidoTulip 北海道チューリップ

https://www.sushishop.fr/fr//Components/AdvancedTemplatingWidget/current/img/caviar/hokkaido_tulip.png

白いのはフロマージュ・フレ(発酵させただけで熟成させていない生チーズ)、中にはワカメ、カブ、赤玉ネギ、黒コショウが入っている。名前の「北海道」はイクラが乗せてあるからだと思われる。下にシャリが入っている。と思う。そうでないとフランス料理のアントレの一品になってしまう。

 

RussianCalifornia ロシア風カリフォルニア

https://www.sushishop.fr/fr//Components/AdvancedTemplatingWidget/current/img/caviar/russian_california.png

上の赤いのはビーツ。ロシア・東欧諸国でよく食されている。生サーモンのタルタル、バジル、松の実、フロマージュ・フレをシャリで巻いてある。

 

Mango & CrabGunkan マンゴー&蟹の軍艦巻き

https://www.sushishop.fr/fr//Components/AdvancedTemplatingWidget/current/img/caviar/mango_crab.png

材料は見てわかるとおり。マヨネーズとポン酢を合わせたソースであえたとのこと。

こうした華やかで創造性豊かな寿司の品々を詰め合わせたボックスがこちら。なんともカラフルだ。

https://www.sushishop.fr/widget-7244-origin/Autour-du-caviar.png

真ん中にキャビアをおいた寿司ボックス。これは1998年創業の Sushi Shop社が20周年を記念して売り出したキャビア入り特別バージョンである。Autour du caviar

https://www.sushishop.fr/Components/AdvancedTemplatingWidget/current/img/caviar/box-open.png

ベルギーの高級チョコレート店の豪華ボックスを連想させる。何かのお祝いの席で、これを贈られた人が蓋を開けたときの驚きはどんなだろう。

他にも様々なボックスデザインがあり、凝ったモダンで斬新なものや重箱を思わせるものなどいろいろ。見るだけで楽しい。

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http://www.stylistic.fr/wp-content/uploads/2015/09/sushi-shop-london-box-660x373.jpg

巻きずしを見ると、色の組み合わせや味のコンビネーションに腐心して丁寧に作ってあるのがわかる。

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学生が始めた冒険 めくるめく成功ストーリー

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(↑Sushi Shop経営陣トリオ。写真右のマルシアーノ氏Grégory Marcianoが創業Grégory Marciano: sushi story

 

どんな人が始めたのかと思ったら二人の学生だったという新鮮な驚き。マルシアーノ氏はパリで法律専攻の学生だったが、1995年に1年間アメリカに留学した。そのとき出会ったのが寿司。寿司ならパリの日本料理店で食べられるし、値段はバカみたいに高いけど珍しいものではなかった。ただアメリカでは気軽にテイクアウトができる。出前もしてくれる。値段も高くなく繁盛していた。

フランスに帰国し早速調べてみると、これだけ多くの日本料理店があるというのにそんなサービスをしているところはどこにもない。おもしろいな、やってみたい、とうずうずした。法律よりこのビジネスに挑戦してみよう。そして竹馬の友(写真左、商学部の学生)を誘って二人で30㎡の小さな店を出すのである。もちろん料理人(日本人)は雇った。

若く経験もなく予備知識のないことが逆に強みで、恐れを知らず、失うものはなかった。この新しい形態の寿司ショップはその後の6年で、1年につき1店舗を増やすという成長ぶり。2000年代に入ると和食ブーム・寿司ブームがフランスやヨーロッパ中にわき起こり、二人は瞬く間に先駆者・トップランナーとみなされるようになる。

三人目の共同経営者(写真中央)が現れる。彼がフランチャイズチェーン方式を提案したのだ。パリから地方の町へ、そして今や中東の3か国も含め、12か国で展開し、160店舗を構える。2017年には2億200万ユーロの売り上げがあり、その半分は宅配だったそうである。

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(写真左:ロンドン 右:ジュネーブにあるSushi Shopレストラン)

 

成功の秘訣を聞かれても、実はこんな大成功は予想外だったという。ポイントはタイミングがよかったといえるだろう。つまり爆発的な寿司ブームだ。それからよい素材、新鮮さ。店を開いた場所もよかっただろう。もちろんハードワークもした。

食の激戦地ロンドンでも広めていきたいし、大規模スーパーマーケットのコーナーで販売もしたい。

だけどいずれ別の道、新しいチャレンジを始めるかもしれない。それはいつかはわからないが、今はSushi Shopを育てていく。

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2016年は、思い出を込めて、マルシアーノ氏がアメリカ時代に食べたもの、彼の原点ともいえる寿司メニューを提供した。

 

*お断り:2年前にベルギーで読んだ記事を中心にまとめています。現在は違う点があるかもしれません。 写真なども記事からお借りしました。

Grégory Marciano: sushi story

 

柚子やワサビ、日本の食材が人気

2000年代に入ってから、昆布やカツオ、シイタケでとった出汁を使ったり、レモンやオレンジに代えて柚子やすだちを使ったりして、自分たちの料理にうまく日本のやり方を取り入れる料理人が増えている。海苔は黒くて不吉な感じと前は言っていたのに、今はワカメも含め海藻類は抵抗がないようだ。料理に日本酒も使うとか。最近はポン酢が流行っているみたいで、自家製という意味だと思う。

話は逸れるが、パン粉(Panko)が普通に売っているのも驚いた。アメリカの料理番組でも「お宅にあればここにパン粉を振りかけて焼きます」などと言っている。

グルテンフリーのパン粉(笑)もある。さすがだ。

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今日はここまで。また続きを書きます。

 

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