フランス人の作るドラゴン納豆 & カマルグの合鴨農法 -3-  

食・グルメの第三回。

きのこ→すし→なっとう…しりとりにもならず、どんな韻も踏んでいないのが残念ではあるが。今日は「フランス人と納豆」である。皆さん驚かれるかもしれないが、私は納豆はフランス人にイケると前々から思っていた。だってあんな臭いチーズを大量に食べる国民だもの。納豆なんかどうってことないだろう。しかも納豆はあまり匂わないタイプやほとんど粘らないのもいろいろなのがあるし。フランス人は発酵食品好きだし、菜食主義の人も多く、健康な食品に高い関心を寄せているから。

とはいっても実際にフランス人が自分で作って売り出すとは思わなかった。フランス国産納豆、その名もドラゴン納豆 NATTO DU GRAGON。フランス在住の日本人で知らない人はいないと思う。ホームページNatto du dragon : en Japonais。(日本語バージョン)

作っているのはこのかた、ローラン・ヴィラット氏(正しくは苗字のところがもっと長くてLaurent Villatte de Peufeilhoux。以後短く「ヴィラットさん」。HPから写真をお借りしてます)

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パーケージの絵がドラゴンに見えるかどうかの議論は置くとして、「納豆」という漢字もちゃんと入っており、ギアさまなら「納得」と言いそう。(先に言っちゃった^^)

いや大事なのはそこじゃなく右下のABラベル、これはフランス政府のオーガニック認定が素材である大豆に与えられている証。遺伝子組み換えではない有機栽培の大豆。EUの葉っぱ模様のマークもあるが(註:現在はドラゴン納豆のパッケージにもついている)、フランスはEUの基準よりも厳しいと言われている。

https://franponais-bio.webnode.jp/_files/200000003-1bbe11cbb8/AB%20marque.jpgLabel Agriculture biologique — Wikipédia

ところでなぜドラゴンなのか。

納豆を作っている町はドラギニャンという。ウィキペディアで見よう。

f:id:cenecio:20171230101632p:plainドラギニャン - Wikipedia

ドラゴンの紋章がついている。町の名前ドラギニャンは、大昔この地の山に住んでいたドラゴン伝説から来ているとか。

https://previews.123rf.com/images/clodio/clodio1402/clodio140200202/25852129-draguignan-var-provence-alpes-c%C3%B4te-d-azur-france-vue-panoramique.jpg

ドラギニャンは赤いピン↓のところ。黄色の丸(カマルグ)、緑の丸(トゥールーズ。ちょっと切れちゃってすみません💦)はあとで必要になるので。

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南に下ればサントロペやカンヌがある。この辺一帯は第二次世界大戦中の1942年、イタリア軍に占領されたいわゆる「イタリア南仏進駐領域」だったという。そんなことも今回初めて知った。

さてヴィラットさんってどんな人だろう。ドラゴン納豆のホームページには略歴などは書いていない。するとありがたいことに今年の初め、EUマガジンがヴィラットさんのインタビュー記事を載せてくれた。↓皆さんもこちらでお読みください。

EU MAG 母国でこだわりの納豆を広めるフランス人

おもしろいのは、ヴィラットさんの祖父が明治時代に観光客として日本を訪れていたこと。自宅に琵琶など日本の物があって、日本びいきの家庭で育ったこと。

そうした背景があって、1973年25歳のとき、青年海外協力隊員向けのフランス語教師として来日。納豆は最初は気が進まなかったが、日本人の友人に、3回食べたら好きになると言われ、食べ続けたら本当においしいと思えるようになったという。

3年の滞日後フランスにもどり、今度は在仏の日本の大手商社などでフランス語を教えた。納豆はパリの日本食料品店で入手できたのだが、気候のよい南仏ドラギニャンに家族で移住することになった。すると日本食品の入手は困難になった。

そんなとき日本人の友人が納豆菌をプレゼントしてくれた。それをきっかけに、買えないなら自分で作るしかない、と思い切った決断を下す。ちょうどその頃、イギリス発の狂牛病が問題になっていて、ヨーロッパ中をパニックに陥れていた。ちょっと思い出してみても集団ヒステリーのようだった。肉食への懐疑や嫌悪が広がった時期である。

ヴィラットさんは考えた。肉に代わるたんぱく源として納豆を売り出すことはできないか。思い立ったら吉日。茨城県水戸市へ赴き、納豆作りのノウハウを学んだ。その後自宅に工房を構え、試行錯誤しながら納豆を作り続ける。もちろん本業(フランス語講師)のかたわら。安定した味と質にたどり着くまでに数年を要したが、日本人の客からの率直な感想やアドバイスが大いに役立ったということである。

http://www.fopoleopro.com/wp-content/uploads/2014/05/carte_soja.png

↑この地図の色の濃い地域が大豆生産が盛んな所。ヴィラットさんはトゥールーズ最初に挙げた地図の、緑で囲んだ所)から有機栽培・高品質の大豆を取り寄せる。

ヴィラットさんの一日はこの大豆をえり分けることから始まる。週に約350パックのペースで生産している。1パック150gと大容量で、4.33ユーロ(本日のレート1€≒128.42円)だから、リーズナブルな値段である。現在、通信販売が中心で、以前はベルギー・オランダなどにも発送していたが、品質を維持するためにフランス限定で販売しているという。

日本人の常連客は「子どもの頃に日本で食べていた納豆の味が、ちゃんと再現されている」と賞賛する。またフランスでドラゴン納豆しか食べていない子どもが、一時帰国してスーパーの市販品を食べると「おいしくないよ。ドラゴン納豆でないと嫌だ」と言ったとか。またフランス人の常連さんで、1~2か月ごとに40パックも注文する人がいたので、電話でわけを聞いてみると「納豆は動脈硬化で病んでいた私の母を救ってくれました。だから毎日食べているのです」と返した話など。ここには紹介しきれないので、どうぞ記事を読んでいただきたい。

フランスならではの納豆の食べ方は参考になる。

ヴィラットさん:

「サラダに添えて食べるフランス人が多いかな。夏には、オリーブオイルをかけて冷たいラタトゥイユと一緒に食べてもいい。チャーハンを作る時、ハムの代わりに納豆を入れるのもおいしいよ。また、フォークでつぶしてトーストにペーストし、薄く切ったトマトを載せてビネガーをかけると、アペリティフ(食前酒)のおつまみにも」

「わが家の子どもたちは生卵をかけたものが好き」

私はヴィラットさんのお子さんとハイタッチしたい気分である。

 

カマルグといえば

*カマルグ自然公園は上の地図黄色い丸

私がフランス語を習い始めたころ、カマルグといえば馬、馬といえばカマルグだった。というのもフランス語の教科書に写真が載っていたから。うっとりするような野生の馬たちが駆けている写真。カマルグは馬や牛や鳥たちの天国だと書いてあった。(教科書の写真はもうないので↓市販のポスターを載せておく)

https://www.plisson.com/media/catalog/product/4/0/4037152_3124_507.03.115_1.JPG

https://www.plisson.com/media/catalog/product/4/0/4037152_3124_507.03.115_1.JPG

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/c0/Saintes_Maries_de_la_Mer-F%C3%AAte_du_cheval-20110717.jpg/800px-Saintes_Maries_de_la_Mer-F%C3%AAte_du_cheval-20110717.jpg

(こちらはサントマリ・ドゥラメールSaintes-Maries-de-la-Merという村の祭りの様子。皆本当に美しい。しかもお行儀がいいんだな。写真はウィキペディアCamargue (cheval) — Wikipédia)

 

なんとも羨ましいことに、アンさんが去年行ってきたというではないか。

アンさんのカマルグ紀行はこちら。なぜカマルグなのか、その熱~い想い、思春期の思い出などを振り返りつつ、ガイド付きのツアーの様子が綴られ、馬やフラミンゴの写真も載せている。

anneneville.hatenablog.com

 

そしてカマルグで米を買ってきたという。そう、この地方は有数の稲作地帯なのだ。そして最近あちこちで紹介されているからご存知の方もいらっしゃると思うが、 日本の合鴨農法をやっている男性がいる。(写真はビデオから切り抜いています)

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ベルナール・プジョルさん。カマルグ米の農家を営んでいる。

ある日、息子が日本から帰ってきてこう言った。「パパ、日本では水田の雑草をアヒルに食べさせるんだ。うちでもやるといいよ」それは日本の合鴨農法のことだった。合鴨やアヒルは雑草や虫を食べるが、稲そのものは食べない。EUの殺虫剤規制は大変に厳格で、250種類にものぼる成分が禁止されている。プジョルさんも殺虫剤はやめたかった。合鴨農法こそ稲作の未来を担うのではないかと考え、8年前に実践に踏み切った。だが他の農家は従来のやり方を守り、追随してくれる人は今のところいない。孤立しているのかと思いきや、あちこちから取材を申し込まれ、いつも人に囲まれている。

 

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ヒルたちを「小さな労働者」と呼ぶプジョルさん。しょっちゅう話しかけているところがとてもいい。30ヘクタールの広さの耕作地に1200羽のアヒルを放している。

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でもひとつだけ問題がある。1年もたつとアヒルは丸々と太って大きくなりすぎ、稲を倒してしまうのだ。すると買い替えなければならない。もっとゆっくり育って長く幸せに生きてほしいとプジョルさん。次は体のサイズの小さいタイプのアヒルを試してみようと言っていたが、その後どうしただろうか。

今日はここまで。

ではまた~!

 

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