戦車をめぐるアレコレ ガルパンからギュンター・グラスまで-2- (Chupki)

前回記事:第一次大戦の終わりから100周年。だが非道な殺戮が再び始まるまであとたったの20年・・の続きです。

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WWI tanks - Picture of Royal Museum of the Armed Forces and of Military History, Brussels - TripAdvisor

(写真:第一次大戦の戦車コーナー。ベルギー王立軍事博物館 2016年3月)

前回の「化学兵器」は第一次大戦最大の負の遺産と言われている。またこの大戦の特徴として、「塹壕戦」も挙げられるだろう。砲弾が飛び交い、雨が容赦なく兵士たちを襲い、不衛生で泥だらけの兵士たちの姿は、文学や映画にも描かれ、その悲惨な状況は私たちも想像してみることができる。

チャップリンの『担へ銃』(1918年)は、西部戦線に送られた新兵のドタバタ戦争喜劇である。当初、戦争を茶化すとは何事だと抗議もあったそうだが、チャップリンは自分の反戦思想を、戦争の滑稽さや愚かさを伝えようと強い覚悟で制作にあたった。

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Shoulder Arms (1918)

顔面損傷

私は塹壕戦の何たるかをまるでわかっていなかった。塹壕戦は顔をやられるのだ。手や足ではなく。なぜなら塹壕から首を出して偵察したり銃撃したりするからだ。爆弾の破片や石などでも顔や目をやられる。頭を打ちぬかれれば即死だが、顔のケガ、いわゆる「顔面損傷」はその後の人生に辛く暗い翳を落とす。

報道などでご存じと思うが、戦後100年たって、負傷者の写真や医学的な資料などの著作権が切れ、隠された戦争の一面が広く知られるようになった。変形し、破壊された顔面。正視するのもはばかられる無惨な傷跡。ショッキングな写真や肖像画に加え、治療に当たった医師たちの手術(身体の他の部分から皮膚を移植したり)のようすなどもわかるようになった。

顔を失うことは死よりもつらいと兵士は語る。生きて帰れたのに自身の子どもには忌避され、家族の心にも大きな傷を残すのだ。

ある英陸軍の軍曹は、顔を撃たれたあと病院から母親に手紙を書く。それが数十通が残っている。

「自分の顔を見るたび腹を抱えて笑ってしまう」

「醜いアヒルの子を受け入れる心の準備をしてね」…など。

これは東京新聞の記事から引用した。大戦終結100年の特集記事のひとつで、よくまとまっているので紹介したい。うちは2紙購読しているのだが東京新聞は良い記事が多く、webでも読めるのでこうして人に薦めることもできる。東京新聞:「壊された顔」戦争の傷痕 英兵士手紙「封印された史実」語る:国際(TOKYO Web)

 

戦車

第一次大戦は飛行機や潜水艦などいろいろなトピックスがあるなかで、戦車はちょっと笑っちゃう。というより今から見ると、え、これが?と思うような形があって可笑しい。

ベルギー王立軍事博物館はものすごい数の収蔵品を誇り、Mark IV Male tank Lodestar IIIとか、ルノー FT-17などから始まり、いろいろな国の戦車が時代ごとに並んでいる。

戦車の登場は画期的だっただろう。「陸上軍艦」と呼ばれ、塹壕戦の打破が目的で、海軍大臣だったチャーチルが中心となって開発を進めたということだ。でもひっくり返ったり故障続きだったり、機関銃弾はへっちゃらでも大砲には耐えられなかったり、中の乗員への健康被害も問題だったようだ。(第一次大戦の話題 ここまで)

 

ガルパン(=ガールズ&パンツァー)デビュー

戦車といえば、私はガルパンノーベル賞作家グラスのことを思い浮かべる。戦車なんかちっとも興味がなかったのに、なんでまた戦車に乗る女子高生のアニメを見に行くことになったのか。(ガールズ&パンツァー - Wikipedia

去年の春、山手線(東京都心を環状運転する電車)がガルパンでラッピングされたことがある。車体も中づり広告もすべて。今ちょっと画像を探して借りてきた。

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https://kk1up.jp/archives/n98921.html

なんなんだ、これは?

というのも私はまだ「ガールズ&パンツァー」がなんであるか知らなかった。帰宅して家族に聞いてみるとみんな知っていた。

「ああ、今ガルパンのゲームの宣伝してるね、山手線で。」

調べてみれば、iOS/Android向けゲーム『ガールズ&パンツァー 戦車道大作戦!』の宣伝で、内回り1編成だけということだった。しかしこのこともすぐに私の頭から消え去った。ゲームなんかやらないしこの種のアニメも見ないし、一生関係ないなと思ったものだ。

ところが夏になり、私が年間パスポートを持っている映画館CHUPKIにガルパンがやってきたのである。20席しかない、クラウドファンディングで作った小さな映画館。こちら↓

chupki.jpn.org

2017年8月のラインナップをご覧あれ。すばらしいではないか。

https://www.tabatime.net/wp-content/uploads/2017/08/DFYzVysUwAAfW8Y.jpg

『この世界に~』なんて何度見てもいいし、チェコとロシアのアニメーションは学生時代からファンだし。夏休みを意識したすばらしいラインナップだ。

よし、この際『ガールズ&パンツァー 劇場版』(GIRLS und PANZER der FILM2015年)なるものも見てやろう。・・・というわけで19人の若者に混じり、ヨーダよりちょっと年下なだけの私は晴れてガルパンデビューを果たしたのである。

感想は長くなるのでやめる。一つだけ言うと、フィンランドチーム、金沢港を母港にする継続(けいぞく)高校という設定がおもしろかった。また名前オタクの私としては、女子3人の名前がミカ、アキ、ミッコというのがツボだった。この名前はすべてフィンランドでは男性の名前。またクレジットタイトルを見ていると、「フィンランド語指導」という項目まであり、もちろん他の言語指導・監修もあり、細かいところまでよくできているなと思った。

 

武装親衛隊で、戦車の砲手だったギュンター・グラス

それは激震だった。

小説『ブリキの太鼓』など多くの著作があり、版画家、彫刻家でもあったギュンター・グラス(Günter Grass, 1927- 2015。1999年ノーベル文学賞)が、自分の過去を赤裸々に語る『玉ねぎの皮をむきながら』(2006年)を発表したときのこと。世界中大騒ぎだった記憶がある。私はその時、「親衛隊」だった事実がショックというより、よく今まで秘密にしていたな、苦しかっただろうなと思ったのを覚えている。

グラスは当時のごく普通の軍国少年だった。祖国が敵に包囲され、また赤軍に脅かされていると思っていたし、総統のことは純粋な気持ちで信じていたという。ナチスプロパガンダに年少の人間は感化されやすいのだ。

17歳になると武装親衛隊に入隊(17歳から許可)、第10SS装甲師団「フルンツベルク」に編入された。それ以前はヒトラー・ユーゲント下部の少年団や労働奉仕団などに所属していた。

またグラスは大変なミリタリーオタクで、日本の戦艦や空母などについてもよく知っていた。重巡洋艦「古鷹」や「加古」の装備や速度についてすぐにでも長々と解説できるほどだと語っている。

『玉ねぎの皮をむきながら』(依岡 隆児訳、集英社)はとてもおもしろい。どんな戦車に乗っていたか、戦闘はどうだったか、興味のある方はお読みください。

 

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Günter Grass: the man who broke the silence | Books | The Guardian

 

そういえば前にグラスのことをちょっと書いたな、と思い出したので過去記事を貼り付けておきます。

cenecio.hatenablog.com

 

ではまた~!