今日は、ベルギーのアラン・ドゥ・アルー(Alain de Halleux)監督のドキュメンタリ映画”BEYOND THE WAVES”(2018年)を紹介する。主役は参議院議員の山本太郎氏。ベルギーでは今年の2月に封切られ、日本では昨日25日、京都大学で初の上映という運びとなった。残念ながら私はいまだ見られていない。東京の上映も満席で受け付けてもらえなかったので。次回に期待している。
*追記:11月28日 キャンセルが出たので行けることになった。12月1日見てきます。
普通映画を見たらレビューを書くのだろう。私が見てもいないのに今日この記事を書くのは、自主上映を促す一助となれば、と思ってのことである。
しかもこれは4月に書いた記事に加筆・修正したものである。当時Facebookやtwitterに載せてくださった多くの方々に心からお礼を申し上げたい。ありがとうございました。(前記事は削除しました🙇)
山本太郎の闘い
かつて俳優だった山本太郎。趣味はサーファー、波乗り。タイトルの”BEYOND THE WAVES”もここから来ている。人生を謳歌し、お気楽な生活を送っていた男は2011年3月、波は波でも東日本大震災の津波によって目を覚まされる。そして福島原発事故を契機に反原発運動を開始し、芸能生活とも縁を切る。2013年には参議院議員選挙に東京都選挙区から無所属で出馬して当選した。その後は日本社会の歪み、様々な問題を提起し、議会でも街頭でも抗議活動でも日々奮闘している。高い強固な壁にぶつかっていく・・・といっても山本の場合比喩ではなく、本当に警察のバリケードに向かっていくこともある。その様子はまさに「ドンキホーテ」の姿に重ねられ、「原発に戦いを挑む日本のドン・キホーテ」De Japanse Don Quichot die tegen kernwapens vecht | De Tijd
というタイトルのオランダ語レビューがあり、私のタイトルもそこから取った。
反原発運動の山本は、ひときわ目立つ特異な存在として、福島のドキュメンタリ映画を撮っていたアルー監督の目に映っていた。のちに山本のもとに赴き、企画を持ち込んでこの映画が作られる。山本の強烈な個性と行動力、熱い想いや怒りと共に沖縄までも追いかけていく。
アルー監督は『チェルノブイリ・フォーエバー』『福島へようこそ』などの作品ですでに幾つもの賞に輝いている人で、1957年生まれの61歳。ルーヴァン・カトリック大学で原子化学(Sciences chimiques /nucléaire)の学位を取る。その後ベルギー国立高等舞台芸術学校(INSAS)を卒業した。
ベルギー版の予告編
(Sphinx cinema 2018/01/22 に公開)
ベルギー版の映画紹介をざっくり訳しておく。(原文オランダ語)
BEYOND THE WAVESは山本太郎という男の輪郭を描き出す。もと人気俳優で現在国会議員、日本人としては非典型の男。彼の日々の闘いを通して、日本という国の姿が鮮やかに描き出される。それは、ナショナリズムが勢いづき、外国人排斥が声高に叫ばれ、再軍備を狙う日本の姿である。そうした流れに抗う男の目に映る日本の一面を映し出す。
太郎の闘いに伴走しているうちに見えたもの、それはわれわれ自身の姿、鏡に映し出された像ではないのか。日本はベルギーとかけ離れた遠い国なんかじゃない。われわれは自分で思っているよりもずっと山本太郎に近いのだ。
アラン・ドゥ・アルー監督
Alain de Halleux - Réalisateur(-trice) - sur Cinergie.be
サイト内にあるお写真。↓猫と一緒のがすごくいいと思う。
『福島へようこそ』予告編
『福島へようこそ』ポスター
福島へようこそ Welcome to Fukushima - MESSAGE IN A BOTTLE
↑サイト内で全編が見られる。
京都大学での上映会(2018年11月25日)
引用
福島原発事故後、俳優から参議院議員となった山本太郎氏の活動を描いたドキュメンタリー映画 “Beyond the Waves”(ビヨンド・ザ・ウェイブス)の日本初上映会が2018年11月25日(日)、京大11月祭開催中の京都大学吉田南キャンパス(京都市左京区)で開かれ、上映後、監督のアラン・ドゥ・アルー氏と出演した山本太郎氏が来場者の質問に答えた。京都大学社会科学研究会ピース・ナビが主催、ビヨンド・ザ・ウェイブス自主上映連絡会が共催した。
映画上映に続き、スカイプを使って監督と会場を繋いで質疑応答があり、山本太郎氏もいらして質問に丁寧に答える、しかもそれをTwitcasting録画で見られるという、実に充実した企画である。委員会の皆さんに心から感謝します。お疲れさまでした。
東京では専修大学にて12月1日、尼崎市2019年1月14日、ほか熊本、広島でも上映予定。
監督のお話(質問に答えて)
忘れないようにちょっとメモしておこう。
チェルノブイリの映画『チェルノブイリ・フォーエバー』が完成した2週間後に福島の事故が起こった。日本の友人からドキュメンタリ映画を撮ってほしいと頼まれたが、もう原発は嫌だ、こりごりだと断った。しかし何度も懇願され、ついに折れて『福島へようこそ』を作った。そのとき太郎さん(*このように呼んでいる)に出会う。
日本での映画制作において印象的なことは?と聞かれ、こう答えている。日本では排他的な風潮が、とか国粋主義が高まり…などと思っていたのに、ベルギーに帰国してみたらヨーロッパも同じだった。それが驚きだった。世界中で同じ現象が起きていたのだ、それを理解するのに「日本」が役にたった。理解が自分のなかで一層深まることになった。
問題は人々が真実を見ようとしないことだ。向き合わないことだ。否定する。たとえば放射能は見えないが、結果や影響は見えるのに見ようとしない。私が伝えたいことはみな太郎さんが言っている。彼は社会の様々な問題を直視し、人々にも目を向けさせる。
砂の城の喩えが印象的。
砂の城は一生懸命作っても波にさらわれ、なくなってしまう。だが作っている最中はそんなことは考えない。波になんか負けない、勝つぞという心意気で作っている。少なくとも子どもはそういう気持ちを持っている。
それと同じことが映画制作にも言える。自分が選んだこの道で世の中を変えたいと思っている。変えるつもりで作っているし、変えようと闘っている。勝ち負けは関係ない。勝ちにはこだわらない。いつでも闘うのだ。
太郎さんも同じで、ファイティング、闘うこと自体に意味を見いだしている。太郎さんに聞いてみたら、俳優業でサーフィンやっていた頃より今の方が幸せだと言っていた。私も同じ。太郎さんは毎日何時間も仕事をしている。私もそうだ。私も太郎さんと同じように幸せだ。(ざっとこのような内容です)
🌸映画「ビヨンド・ザ・ウェイブス」の自主上映に関するサイトはこちらです。
ビヨンド・ザ・ウェイブス自主上映連絡会 | あなたの町のビヨンド・ザ・ウェイブス自主上映会をお手伝いいたします。
🌸専修大学上映会 ポスター
楽しみです。
アッシュ監督のツイート(上映当日、たまたま通路挟んで私の右側に座ってらした)
Honored to attend screening of “Beyond the Waves”. Q&A via Skype w/ Belgian dir Alain de Halleux & surprise appearance by protagonist politician Yamamoto Taro. Fascinating glimpse into Yamamoto-san’s activism post-Fukushima as well as look into current political climate of Japan. pic.twitter.com/6M1pyePNNd
— Ian Thomas Ash (@DocumentingIan) December 1, 2018
ツイッターから拾いもの。どなたかわからなくてすみません。