怒りの集積所、黄色ベスト運動は…。
*前の記事:マリアンヌの壊れた顔も象徴 &北海道の女子高生がフランスで主役だった話 黄色ベスト-1- -続き。
毎日黄色ばかり見ていてさすがに飽きた(笑)。
ところで皆さんも安全ベスト(反射ベスト)をお持ちだろうか。私は町内会の夜回り当番の時「はい、これ着て!暗い夜道、目立つようにね」と手渡されるので、おとなしく着用している。
思い起こせば、ベルギーにいるときはよく見かけていた。例えば子どもたちの自転車での登下校。
この写真はネットからちょっと借りてきただけだが、確かベルギーでは子どもが夜道を自転車で走るとき着用が義務だったな。あとでオランダ人に聞いてみたら「いや、オランダでは別に義務じゃないよ」と言っていた。あんなカッコ悪いもの着たくない、とも。それでも自家用車の中に何枚か携行しているそうだ。それは義務化されている。
ベルギーの子どもたちは早くから慣れているから抵抗がないんだろうか。カッコいいデザインやキャラクターをくっつけたら人気が出るのでは?ヘルメットにはものすごい種類の形やデザインがあるのだから。自転車王国だもの。
さて、黄色ベストさんたちは一応成功を収めたのではないだろうか。
大統領はあのデモは正当なデモ、正当な要求だったと認めた。無節操な暴力行為は非難したが、自分の責任も認め、次のようなことを約束している。最低賃金は1カ月あたり100ユーロ(およそ13000円)引き上げるほか、残業代を非課税にする。年末の特別手当などを出す。2000ユーロ以下の年金は非課税にするなど。(←全部じゃなかったかも)
(参考:フランス2 大統領演説のビデオEmmanuel Macron)
フランス2ではいろいろな立場の人にインタビューしていた。最初にこの運動を始めた黄色ベストのひとりが、自分はこれで一旦降りると言った。しかし報道によれば半数以上の人たちがまだデモを続けると言っており、12月15日もデモが呼びかけられている。燃料税引き上げに抗議して始まったデモは、これまでため込んだ不満が一気に爆発し、今や反政府デモ、マクロン政権の改革にNOを突き付ける運動に変わっている。
ところで「2000ユーロ以下の年金は非課税にする」の話だが、ニュースの中でインタビューに応えていた男性もこれより少し低い額だった。2000ユーロは26万くらいだ。日本でこの額もらえる人はどのくらいいるだろうか。日本ではそこに課税されてうんと減る。いや、そもそも年金もらえるんだろうか。
Looks like the french people is fed up with Her Majesty Emmanuel I #MacronDemission pic.twitter.com/4eByO58uS8
— Tito Viera 🇨🇱 (@hectorviera) December 8, 2018
第二幕?大丈夫かな。支持率は20%を割ったらしい。私は 10月にコロン内相が辞任したとき、もう危ないんじゃないのと思った。コロンさんはマクロン政権に対し、謙虚さが足りないと批判していた人。大統領に何か言える最後の人だったかも。他にも閣僚は何人も辞めていった。
一番のショックは、国民の人気が高かったエコロジスト、ニコラ・ユロ環境相だ。この夏に「もう嘘をつきたくない」と言って辞めた。なんと大統領にも奥さんにも告げず、ラジオで辞意を表明、というのだからもうびっくりだ。→https://ovninavi.com/demission_hulot_ministreenvironnement_derugy/
フランスのことを心配してもしかたがないが、あと2~3点書いておこう。
日本でもデモや抗議集会には、弁護士さんやお医者さんがボランティアで来てくださる。ありがたいことだ。何かあったらすぐ相談できる。
黄色ベストのデモではこんな風だった。
ボランティアの弁護士さんたちが黄色いベストを着て「憲兵隊とトラブルがあったらご相談ください」と言っている。
お医者さんは赤い十字のついた白ヘルメットをかぶっている。あの激しいデモの中ではきつい仕事だろう。
オランダ紙の撮った写真が気にいっている。
①楽しい黄色ベストファッション。
②連帯を表すために、窓から黄色いベストを提げるマルセイユの集合住宅。
オランダでは政治家もベスト着用でデモ行進
Nederlandse politici dragen gele hesjes warm hart toe | NOS
フランスと同じ12月8日にデモがあった。日本の新聞には「ベルギー・オランダに飛び火」と、まるで悪いことのように書かれているが、両方ともフランス国民に連帯の気持ちを表す行進だった。ブリュッセルでは一部暴れた人たちがいたようではある。しかし報道の偏りには注意が必要。日本では暴徒の映像ばかり流しているが、あの多くは壊し屋(Casseur)でこれまでも様々なデモに現れては破壊行動に走っていた。また便乗して窃盗・放火に加わるグループも黄色ベストではない。政府系BFMhttps://www.bfmtv.com/のTVカメラに向かって、偏向報道に抗議する黄色ベストたちもいたとメディアが伝えている。
オランダのデモ参加者はおよその数だが、首都アムステルダムで200人。ロッテルダムやマーストリヒトでそれぞれ200人、ハーグで100人。写真でわかるように平和的なデモだ。逮捕者は三人でその理由は花火を打ち上げたからと、なんとものどかである。もちろんオランダ人だって社会に不満はある。格差や貧困、移民問題はヨーロッパ、世界中で共通の問題だ。しかしルッテ首相自らこう述べている。「私たちはみんな黄色いベストを着ているのだ」と。
政府、政治と国民の距離が大変近いのがオランダの特徴だ。皆で国の問題を考えようという風土と歴史がある。よく議論し、違う意見や価値観も尊重する。それは小学生のうちから学ぶのだ。また格差があるといっても、フランスや日本に比べたら貧富の差は非常に小さいと思う。政治に大きな不満はないだろう。国連の『世界幸福度ランキング2018』でも第6位。(①フィンランド②ノルウェー③デンマーク④アイスランド⑤スイス。日本は50位にも入っていません)
むしろ世界中で一緒に考えなければならない環境問題や原発や動物保護などに関心が高いようだ。
オランダといえば猫ボート
運河に浮かぶ、猫カフェならぬ猫専用の船が今年50周年ということで、大きく報道されていた。↓水面に船の窓からの灯りがうつって美しい。
だいたい50匹ほどが暮らしている。全部保護した猫だが、二つのグループ、定住猫と里親募集猫とに分かれる。
ちょっと写真を2枚切り抜いてみた。左カスミちゃん、すごい貫禄だな。日本名がついているのはこのカスミだけ。10歳のペルシャ猫で、性格は見た目と違ってすごく優しいんだって。もう2回引き取られたけどそのたびにボートに戻ってくるので、以来ここで幸せに暮らしているのだそうだ。右ジスカちゃんは、うちの猫に似ているのでなんとなく載せた(笑)。猫で和んだところで今日は終わります。
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追記:12月13日
パリで撮影していた新作の映画、無事にクランクアップしました。日本では「暴徒化!」ばかりが報じられているようですが、多くのスタッフやキャストも撮影の無い週末は様々なデモに参加していて、映画もデモもストも!日常と地続きで当たり前にあるというのがこの半年の滞在中の一番の気付き、でした。
— 是枝裕和 (@hkoreeda) December 13, 2018
追記:2019年1月
"street medics"救護班
https://twitter.com/afpfr/status/1087111527889543171