*前の記事イグルーをホームレスに!そしてホームレスは靴と足のケアが大事。貧困と孤独-1- -の続き。カテゴリー「貧困と孤独」を新しく作りました。
寒くなると毎年気になるのは、近所のノラ猫たちと顔見知りのホームレスの人々のこと。でもそう思うのは私だけじゃないんだな。前回頂いたコメントからもわかりました。
>この季節になるとホームレスの事は特に気になりますよね。他人事ではないです。
>夜は延々と歩き続け、昼間に眠るホームレスの人も居ると何かで読んだ気がします。寒さのためでもあり、夜に寝ていると暴行される危険回避のためでもあり…。
>この時期になると Podiatryを学んでる学生たちが靴や靴下の寄付を集めてホームレス支援のチャリティなどに持っていきます。
>ヨーロッパでの路上生活者に対する支援の輪は凄いと思います。こんな事を知ると日本人って本当に優しいのだろうか?と自問自答します
(抜粋ですみません。お名前は出しませんでしたが、ありがとうございました)
冬になると声掛けをしたり温かい飲み物を届けたりするブログ主さんも何人もいらっしゃる。他の人と情報と経験を分かち合えるのはいい。というのも、路上生活者でシェルター行きを望まない人はかなりいるからだ。人の世話にはなりたくない、過去を知られたくない。それぞれの事情を汲むべきだが、雪や霙の夜は、あの人は温かくしているだろうかととても気になる。
上のコメントにある「暴行」に至ってはもうかれこれ20年前くらいからだろうか、多発した時期もあった。道頓堀に投げ込まれて亡くなった男性もいた、「世の中の役に立っていないから死んでも仕方がない」と供述した少年たちの野宿者殺人未遂など、非情な事件が社会を震撼させた。しかし現在でも襲撃は絶えないそうだ。実態調査によれば特に夏に多く発生し、加害者は若者と10代の子どもたちで、殴ったり蹴ったり花火を押し付けたり…と深刻だという。
別の意味でショックだったのは、今年初めTVニュースで見たのだが、大阪の街の夜回りにイギリス人青年が参加していたことだ。欧米の人たちはフットワークが軽いから「あ、自分も手伝います」という感じなのだと思う。まあそれにしても、私などが外国に住んでいるとき「時間あるからイベント手伝いますよ」というのとはちょっとわけが違う。
今でも最も強く心に残るのは、釜ヶ崎(あいりん地区)のこども夜まわりという活動のことだ。2年前に見たドキュメンタリ映画『さとにきたらええねん』釜ヶ崎 こどもの里 - ベルギーの密かな愉しみのなかで、「さと」の子どもたち(中学生)が、ホームレスの人々に声をかけ、温かい飲み物やおにぎり、時には無料の医療券を配っていた。あの光景が忘れられない。
Grand froid : quand les citoyens se mobilisent
海外の試みもおもしろい。そしてとても温かい。行政に頼らず、個人や小さなグループ単位の活発な支援活動がある。少し紹介してみたい。
上の写真はイグルー(前回記事見てください。発泡スチロールの個人用シェルターのこと)に食べ物などを届ける活動。 家で温かい食事を作って持っていく。
下の写真は「誰の物でもありません。必要な人、どうぞお使いください」という札をつけ、温かい衣類などを街頭に置く活動。すてきなアイディアだけど、雨にうたれたらもったいないなと私は思ってしまう。(*追記)
他にリヨン(フランス)では「一晩お泊めします」という活動も。自宅に空き部屋のある市民があらかじめ登録しておく仕組みらしい。これは日本では考えられないなと思う。またちょっと話が逸れるが、これの別バージョンで、移民してきたばかりの人、特に若者、身寄りのない未成年を家庭に受け入れる活動もある。言語習得がスピードアップし、社会に溶け込むための細かいお手伝いができるという。
こちらはホームレス専用の自動販売機(イギリス・ノッティンガム)
ホームレス専用自販機、英慈善団体が設置 無料で必需品提供 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
日常生活で必要とするものが入っていて、ホームレスの人には取り出すための専用のキーが与えられている。たとえば水や栄養補助食品、靴下、生理用品、歯磨きセットなど。新鮮な果物やチョコレートやサンドイッチなどは、食料廃棄の削減を目指すスーパーやフードバンクなどが提供しているということだ。
一日の利用は三回まで。上限を設けたのは、自販機への依存を防ぐため。自販機はあくまでもホームレス支援策を補完するものだからである。
共感、体験、そして改善策を考える。
フランスは他の面でも先進国だと思う点がいくつかある。まず寒空の下で路上生活を体験してみる議員さんたちの試み。本当に一晩過ごしてみるのだ。きついだろうなあ。
(日本でも議員のみなさん、一泊の避難所生活はいかがですか?改善点が山のように出てきますよ)
Des élus dorment dans la rue: au grand froid les grands coups de com'? - L'Express
またホームレスの数の調査でもパリ市民の本気度がわかる。以前、国土省副大臣が「ホームレスは50人くらい」などとボケたことを言い、マクロン大統領の党「共和国前進」に所属する議員が「彼らは自ら路上生活を選択しているのだ」などと問題発言をしたことがあった。パリに住んでいたらそんな数で収まらないことは私でもわかる。何か政治的意図があるのでは、と批判が集中した。そこからがフランス人は早い。
ハッシュタグ「連帯の夜」(#NuitdelaSolidarité )のもとに集い、ボランティア1700人と職員300人が350のグループに分かれ、夜のパリを3時間歩いて調査したのである。
下はパリ市長アンヌ・イダルゴさんのツイートで、各区のホームレス人口が記載されている。
#NuitdelaSolidarité : Voici les premiers résultats présentés par mon premier adjoint @BrunoJulliard et mon adjointe @dversini, aux côtés des associations du secteur social, de l'@APHP, de la @SNCF, du @GroupeRATP et des équipes des parkings @VINCI. pic.twitter.com/0xCS7IlDiK
— Anne Hidalgo (@Anne_Hidalgo) February 21, 2018
のちに 緊急収容施設に入っている672人を合わせて、3624人と発表された。
地図にあるパリの広さは、東京でいうと世田谷区くらいの大きさだと言われている。郊外を含めずにこの人数。
東京23区と大阪ではそれぞれ1千数百人という調査がある。行政のほかに市民団体ARCHなど幾つかのグループがボランティアを募って行っている。(東京新聞にも「夜の調査員募集しています」の記事が載る)
夜見えにくい河川敷では昼間に調査、あとは夜間に市街地を回って数えるそうだ。しかし、日本のホームレスの生活スタイルは多様で複雑。ホームレスは働いている人が多い。このことは来日した外国人が一様に驚くことでもある。
都市部では昼間は廃品・空き缶回収などをしたり、ツテで小さな仕事をこなして、夜テントや段ボールの家に戻る人たちがいる。図書館や公共施設で過ごす人もいるし、いわゆる「ネットカフェ難民」も多いため、正確な数の把握は難しいそうだ。路上で定住する人が減ったからといってホームレス人口が減ったわけではないのである。
排除アート
都市部に住んでいればお気づきの方も多いと思うが、路上で生活させないために行政はいろいろな手をうってくる。たとえばよく見かけるベンチ。横になれないように一人分ずつの仕切り(ひじ掛け)がついている。あるいはお尻が全部乗らない半分の幅、しかも傾いていたりする。また座ったり寝転んだりができないように、地面にたくさんの鋲が打ち込まれた広場など。
「社会的困窮者の追い出し」を目的とするデザインは多種多様で、東京では至る所に見られる。一般に排除アート排除アート - Wikipediaと呼んでいる。(これに対し「アート」などと付けるのは止めてくれ、という声もあがっている)。英語では「敵対的建築」(Hostile architecture)というらしい。ところで素朴な疑問だが、北海道や沖縄にはこうしたものがあるんだろうか。
下の写真2点はウィキペディアから借りてきた海外の例。
新宿にあるオブジェ。
東京五輪に向けて、駅や通路、公園、河川敷などに定住できないようにますます厳しくなるのかな。大阪万博もあるし。上野公園や代々木公園にテントを張っている人たちはどこに行くんだろう。以前段ボールハウスの入り口に造花を一輪さしているのを見て、心が和んだことがあった。
さてもう長くなったのでまた次回。まだまだ続きますよ。
*追記
12月22日今朝見つけたツイート。
Helped my friends @WeberStateU tie some warm holiday wishes in downtown Ogden this week. As you can see, it was a lot of fun. @AnnagatorB @bendorger captured the story and photos for @standardex https://t.co/OxcyfLw8Zm pic.twitter.com/xnJB7gB7p1
— Allison Barlow Hess (@allisonbhess) December 21, 2018
追記:12月26日 くつしたプレゼントの会
全文引用
クリスマスイブの24日夜、路上生活を余儀なくされている人たちに靴下を贈る活動が横浜市中区の寿地区を拠点に行われた。貧困からホームレス状態に陥り、寒さや飢えなどから亡くなる人も毎年相次ぐ。繁華街が最も輝き彩られる聖夜、野宿者を取り巻く現実を知り社会が抱える問題に向き合おうと、女性美術家が立ち上がった。
「くつしたプレゼントの会」を企画したのは、横浜でアート活動を続ける竹本真紀さん(42)。寿地区での支援活動に長年参加しており、凍(い)てつく路上で野宿している人から「厚手の靴下が欲しい」との声を受け、2015年にプロジェクトをスタートさせた。
「支援という形ではなく、親しい友人に贈るようにプレゼントしよう」。会員制交流サイト(SNS)でそう告知したところ、3回目となった今年は30人余りから真っさらの靴下約80足やお菓子、カイロなどが寄せられた。
竹本さんの呼び掛けで集まった市民ら約10人は24日午後8時20分ごろ、大きな袋を抱えて寿地区を出発。関内駅や横浜スタジアムの周辺、みなとみらい(MM)線馬車道駅のコンコースなどを巡った。
参加した女性の一人は、クリスマスケーキやフライドチキンを求めるカップルたちが列を成すイセザキ・モール近くの地下通路に、段ボールの「家」がずらっと並ぶ光景に息をのんだ。
男女30人ほどが暮らしていた。路上生活者は寒さだけでなく、華やかな街の雑踏や人々からの好奇の視線からも逃れようとしている現実を知った。
プレゼントには竹本さんが制作した赤ずきん姿のキャラクター「コトブキンちゃん」が登場する漫画や、寿地区で年末年始に行われる炊き出しなどの支援活動「寿越冬闘争」を紹介するチラシも入れた。70人ほどに配り、寝ている人には枕元にそっと置いた。
横浜スタジアムは、2020年の東京五輪で野球・ソフトボールの競技会場となる。観客席の増設工事が続いており「いつ強制排除されるのか不安」との声も上がっているという。
竹本さんは「ホームレスの人たちは行き場がなく、年々高齢化が進んでいるのが実情。このプロジェクトを通して身近な路上で暮らす人たちに思いを寄せる人たちが大勢いることが伝わってほしい」と訴えている。
追記:2019年4月
追記:2019年9月
【アート作品】これはものすごい反発を受けそうな感じ w。もしもベンチが有料化されたら…pic.twitter.com/pejjZyzyhB
— Sangmin @ChoimiraiSchool (@gijigae) September 7, 2019