ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

顔真卿(がんしんけい)から 細野晴臣コンサートポスターを思い出した。(東京国立博物館)展覧会-3- 

書の展覧会に行ったら戦場だった、というお話から。

上野の国立博物館へ、書を見に行った。特別展「顔真卿王羲之を超えた名筆」東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」

 

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上野は近いのでまず予めチャリで下見に行き、係員のお兄さんに様子を聞く。休日は3時間待ちもあるとのこと。平日の朝9時前ならどうだろうと尋ねると、最初のグループに入れると思うと言ってくれた。実際50人目くらいだったかな。でも開場まで外でじっと並んでいるのは寒くてつらかった。

見たところ、3~4割は中国人で休みを利用して大陸から来た人たちだった。小さな子連れ、小・中学生くらいの子たちもいて、親たちが説明したり感想を言い合っているのをよく聞いていた。若い人たち(たぶん留学生)も多かった。日本人の若い人はあまり見かけなかったが、書道愛好家や漫画『とめはねっ! 鈴里高校書道部』(顔真卿が登場する)ファンの若者たちは、去年盛んにツイートしていたから、週末にでも来るのだろう。期間はたったの6週間と短い。

みなさんのお目当ては顔真卿がんしんけい 709年(景龍3年) - 785年(貞元元年)]の「祭姪文稿」(さいてつぶんこう、758年)。台北国立故宮博物院からやってきたお宝、それも最高峰の文物だ。なんせ約1300年前の紙だから、劣化を恐れ、台湾でも最後の展示は10年以上前という。よくぞ貸してくれたものだ。

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Wikipedia 中国語版

その前に、誰それ、顔真卿?と思うでしょ。教科書にも出てくる書道家、王 羲之(おう ぎし303年 - 361年)なら有名だけど。顔真卿は、私たちが毎日お世話になっている、明朝体*下にちょっとだけ解説のもとの書体を作った人である。・・・とまあ、そのくらいの知識しか私にはなかった。書道は中学まで9年くらいやったが、実は全然うまくもない。

「顔法」で覚えているのは蚕頭燕尾(さんとうえんび)ということば。起筆が蚕の頭で、払うときは燕のしっぽの形になる、というのが子どもの私にとってはおもしろいと思っていた。

国立博物館HPにはこうある。(*抜粋して引用しました)

王羲之の書法は一世を風靡しましたが、安史の乱を境として次第に形骸化します。やがて伝統に束縛されず、自らの情感を率直に発露する機運が高まります。顔真卿はこのような意識の変化を、書の表現に見事に反映させました。・・・

安史の乱を境として興った“情感を発露する書風”は、宋時代の士大夫(したいふ)たちによって受け継がれ、さらに発展しました。書は人間性によって価値づけられるという考えから、顔真卿の書が高く評価され、古人を模倣しない、個性的な書が尊ばれました。・・・(略)

東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」

 

 祭姪文稿(さいてつぶんこう)とは。

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顔真卿 - Wikipedia

安史の乱(755年)で玄宗皇帝は亡命。長安安禄山たちに占領された。8年続いた内乱も763年に収束するが,顔真卿従兄の顔杲卿とその子の顔季明を失ってしまう。

哀悼のために書いた草稿が「祭姪文稿」である。書き始めは感情を抑えているが、しだいに怒りと悲嘆をぶちまけて、字は乱れ、上から消して推敲するなどして一気に書き上げている。現代語訳と照らし合わせて読んでみると、悲痛さが伝わり、こちらも胸詰まる思いがする。

6行目あたり:甥っ子の顔季明は、才能に恵まれ、幼いころから立派な人徳を表し、期待されていたのに…。

最後から5行目あたり:最近お前(季明)の兄が再び常山に行き、お前の首を納めた棺を持ち帰った。…憐みの思いで胸が張り裂け、腸が断ち切れ、悲憤にかられる。いつの日かお前が安住できる墓を作ってやりたい。…(続く)

「 祭姪文稿」が幾多の戦火をくぐりぬけ、奇跡的に今、21世紀の東京に来ていることが感慨深い。赤い印鑑がぎっしりと押してあるのにも驚いた。歴代の皇帝や所有者が変わるたびに、蔵書印を次々に押したからである。そして1948年ころ、国民党が大陸から台湾へ持ち込んだということだ。ほかの夥しい数の所蔵品とともに。

 

唯一の撮影コーナーでは、高さ12m✖幅7mという銘文の度肝をぬく大きさに驚愕。

「紀泰山銘」(726年)

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山東省泰山の崖の写真、↓こちらの方が載せてくださっている。

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コロコロ on Twitter: "#顔真卿 #紀泰山銘 この岩に玄宗皇帝の書。隷書体はこれのこと?文字は金に。この地が大観峰。文字はどうやって彫るの?下書きなく直接という話が!これだけの長さを写し取る紙の強度は?厚さは?繊維の状態は?途中繋いでる?上から叩いて墨を染み込ます。紙が厚いと大変。中国の摺師?の技もすごい!… https://t.co/sZZzVsriYO"

 

とにかく見どころの多い、そして書道に馴染みのない人でも一から学べる大展覧会だった。3時間くらいで切り上げたが、もっとゆっくり時間をかけて見たいコーナーもあった。ビデオも全部見たかった。だが、いかんせん、「立ち止まらないようにお願いします」とせかされるのだ。昼ころには人がぎっしりと数珠つながりになっていた。立ち止まることは許されない状態…。ふ~っ、書を見るのも大変なんだな。

( 特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」はここまで)

 

顔真卿の書体は明朝体のルーツ

私たちが馴染んでいる明朝体。横画が細くて縦画が太い。

横画をもっと細く細くしていくと…。

 これ、おもしろい。横画なくてもわかる。

で、いきなり細野晴臣さんに飛びます。これです。受賞ポスター。

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細野晴臣コンサートポスター | THE END

細野晴臣コンサート/ポスター

東京ADC賞2015 入選 東京TDC賞 2016入選 Graphic Design in Japan 2016入選
Atr Direction:赤迫仁 Design:山東隆之

STEREO RECORDS デザイン受賞一覧 | STEREO RECORDS COLUMN SITE

明朝体賛歌で終わります。 またね~!

 

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