わがやは Hans Fischer!
シャルル・ペロー原作の童話「長ぐつをはいたねこ」には、いろいろな挿絵画家が絵を入れていますが、我が家はこれ。ハンス・フィッシャーのファンです。
右は絵本の扉のページをコピーしたものです。
軽妙なユーモアたっぷりの猫の動きがたまりません。
長靴をはいて歩く厳しい修行のようす。
まだ右にまるまる一ぺージあり、たいへんな力の入れようです。
猫好きでよく猫の動きを観察している人です。
大男の魔法使いに会いに行く前、身だしなみを整えているところ。
足をなめるのがツボ。(私には)
フィッシャーは1909年スイスのベルヌ生まれ。
ジュネーブの美術学校で、パウル・クレーから教えを受けました。最初の絵本「ブレーメンのおんがくたい」は娘ウルスラへのクリスマスプレゼントでした。ほかにも「たんじょうび」「こねこのピッチ」などたくさんの作品があります。
デザイナー、版画家として活躍しましたが、惜しいことに1958年に49歳で亡くなりました。
こねこのピッチ
こちらもおすすめ絵本です。
メルヘンビルダーってなに?
今日はこの辺をちょこっとお話したい。というのもこんな本 『フィッシャーが描いたグリムの昔話 メルヘンビルダー』を出せる日本ってすごいな、と素直に感心してしまうのです。(うちの本ではなく、夏休みの図書館で見つけた印象深い絵本の一冊です)
フィッシャーが描いたグリムの昔話 メルヘンビルダー
絵: ハンス・フィッシャー
文: グリム
訳: 佐々 梨代子 野村 泫
出版社: こぐま社 発行日: 2013年07月01日
一枚絵
メルヘンビルダーとは、メルヘン=おとぎ話、ビルダー=絵という意味。ひとつのお話の始まりから終わりまでが一枚の絵にギュッと固めて描かれるものです。ヨーロッパには15世紀くらいからあって、キリスト教の教えや昔話、伝説や世界の不思議な話などが、新聞くらいの大きさの紙に刷られ、字が読めない民衆にも絵で楽しめることから広く親しまれていました。
印刷技術の進歩とともに発展をとげ、19世紀のドイツで頂点を迎えます。木版画の「ミュンヘン一枚絵」(Muenchener Bilderbogen)と呼ばれるものが有名で、芸術性も高く、後世にも大きな影響を与えました。
たとえば「長ぐつをはいたねこ」です。Category:Münchener Bilderbogen – Wikimedia Commons
こちらは 「田舎のネズミと町のネズミ」。
(作者、年号など解説はつけていませんので、詳しくはウィキペディア参照)
こうした一枚絵を、現代人のハンス・フィッシャーがグリム童話を題材にやってくれたわけです。原書です。
Märchenbilder 7 Märchen d. Brüder Grimm, gezeichnet
絵: Hans Fischer
出版社: Zürich Stuttgart Artemis Verl.
雑誌に連載していたものをまとめて1961年にスイスで出版されました。そして日本の翻訳版には、原書にない絵も収録され、詳しい解説も巻末につけ、大人も子供も楽しめる形で出版されるという、なんとも贅沢な本になっています。
表紙の絵は 「ヘンゼルとグレーテル」ですね。よく見てみましょう。
真ん中のお菓子の家とお婆さんがすぐに目につきます。その周囲にお話が描きこまれていますね。既に話を知っているので、フィッシャーがどんな描き方をするか、大人としては興味しんしんです。
「うさぎとはりねずみ」はこんなふう。(左がちょっと切れてしまってすみません)
ユーモラスですね。ウサギは走りつかれて死んでしまうのですが。もちろんテキストも2~3ページほどついています。これがまたすごくいいテンポの語りで、子供たちはきっと喜ぶでしょう。
「長ぐつをはいた雄ねこ」は真ん中にどんと猫を置くあたり、意表をつきます。
他にも次の作品が収められています。
「おぜんよ、したく」と 金出しろば と「こん棒、出ろ」
おおかみと七ひきの子やぎ
しあわせハンス
ならずもの
七羽のからす
展覧会
調べ物をしていたら見つかりました。実に贅沢なことです。
2011年7月2日(土)~7月31日(日)
神戸ファッション美術館エントランスギャラリーにて
「一枚絵」によるグリム童話の世界―19世紀ヨーロッパの手彩色版画展―。
行けた人はラッキーでしたね。
🌸雑誌 切り抜き: