つきのぼうや Drengen i månen
なんと 縦35cm × 横13cm の本!!
作・絵: イブ・スパング・オルセン Ib Spang Olsen
訳: やまのうち きよこ
出版社: 福音館書店
発行日: 1975年10月
こんな細長い本は目立ちますね。図書館でも「あれ、なんだろ」と思わず手に取っちゃう。で、開いてみれば縦長のわけがわかります。
月の使いの男の子が空から地上に降りてくる話なので、各ページ上から下へ目を滑らせて、男の子の動きを追いかけながら読みます。読み聞かせが生きる本です。子供はずっと絵をながめていられますから。
(これがはじめのページ。左側に文がついています。)
おつきさまがふと下に目をやると、池の中のもうひとりの月に気づきます。そこで、つきのぼうやを呼び、あの月を連れてきてくれ、と頼みます。
「はい、いってまいります」ぼうやは籠をさげて元気よく駆け下ります。
(絵は全部じゃありません、念のため)
綿雲の中を通って、びしょぬれになります。雲の下には飛行機が。
渡り鳥の群れに入ってしまいます。強い風も吹いて飛ばされもします。
糸のついたたこにも出会い、こうもりと、コガネムシと、小鳥と、とんぼと、たんぽぽの種と風船に出会います。
はしごの娘からりんごをもらいました。月のぼうやは娘の髪に月のかけらをふりかけてやります。髪がいつもつやつやしているように。煙突のすすで黒くなってしまいました。
「あ、つきのぼうやだ」
「はいってきてよ」と子供がふたり手招きをしますが、そんな暇はありません。
ぼうやは町の通りへ降りていきました。店の前を通り過ぎ、船着き場を越えて、
ぱしゃーん!
水の中へ飛び込みました。
水の底で何かがきらきら光っています。ぼうやは手鏡を拾い上げてなかをのぞきこみました。
「わあ、なんて可愛らしいおつきさまだ!やっとみつけたぞ。さあ、つれてかえろう!」
(左頁、読んでください)
顔の表情が豊かでユーモアがあって、文章のリズムが心地よく、「 」のせりふもおもしろい。いかにも常識的な大人のことばとか。あらすじではわからない細部の愉しみは、ぜひご自分でね。
著者
イブ・スパング オルセン Ib Spang Olsen
(1921 i København – 2012)
デンマークの絵本作家,挿絵画家。コペンハーゲン生まれ。
美術学校でグラフィックアートを学び、教職についていたが、挿絵と絵本に専念するようになる。代表作として「はしれちいさいきかんしゃ」(’56年)、「つきのぼうや」(’62年)などがある。民話・昔話に関心を持っており、現代的テーマでありながら、ファンタスティックな要素も持ち合わせている。リトグラフの手法を取り入れた画法も特徴的である。’72年に国際アンデルセン賞を受賞し、その後も数々の賞を受けている。(コトバンクより引用)
Halfdans ABC
イブ・スパング オルセン氏が描いた 子供にABCを教える絵本です。
例えば PはPostbud 郵便屋さんですが、韻を踏んだ文がついていて、読み上げながら絵を見て楽しむしかけです。
ほかにも
Vはvaskebjørn アライグマ。洗濯するアライグマたちが可愛いですね。
オルセン ギャラリー
デンマーク語はオランダ語に一番近い言葉と言われているので、私はだいたい内容がわかります。スウェーデン語はもう少し遠い言葉なので、自動翻訳をかけてフランス語にしてから読むことが多いです。
終わり
(Copenhagen 1994年の家族旅行)
デンマークといえば、小学生の子供たちをレゴランドに連れていった1994年の夏を思い出します。コペンハーゲンの駅前に「チボリ遊園地」があってレトロでいい味わいだったなあ。写真の運河近くのホテルに泊まって、このあたりの散歩を楽しみました。
レゴランドに行くには、コペンハーゲンから列車でほぼ丸一日かかりました。地図で見ても遠いでしょ。
そのとき買ったレゴのキーホルダー、今現在でも使っています。
『 月にノー(NON)と言ったキツネ』
タイトル:Le Renard qui disait non à la lune
発行日: 1974年10月
著者: Jacques Chessex 挿絵:Daniele Bour 出版社 : Grasset
新しいキツネ本といえるかな。キツネはよく物語の主人公になりますが、たいてい、ほかの動物たちに対して”悪役”ですよね。しかしこの本の主人公は、現実的で自立した、しかも詩人のキツネです。
写真でおわかりのとおり、とにかくテキストが多い。行間も空けずにぎっしりお話があります。あらすじをざっと紹介します。
キツネのルールーは森の奥深くに住んでいます。明け方になると、獲物を探しにやってきて…まあ、絵の通りですね、鴨や鶏を仕留めます。
ルールーは美しい自然のなかで、幸せに何不自由なく暮らしています。特に気に入っているのは 木立の間から仰ぎ見る 黄色く輝く月。
ええ、月がとっても好きなのです。月は日ごとに形を変えていき、そのたびに見惚れて倦むことがありません。
ある日、仲間たちから「森の空き地に集合」と呼び出しがかかります。行ってみると、熱に浮かされたように若者キツネがまくし立てています。なんのことかと思いきや、この森の地味な生活を捨てて、月へ移住しようというのです。新しい土地で狩りをして冒険をして もっと金持ちに もっと幸せになるんだ、と。
ルールーにも誘いがかかりますが、まったくご免です。自分はここの生活がいいんですから。ところが驚いたことに、両親や家族や、知り合いの全員が月移住に賛成です。そして準備は着々と進み、皆はロケットに乗り込んで出発していきました。
ルールーはいつものように、モミの木のあいだから月を仰ぎ見ます。いつになく蠅のぶんぶんいう音や カッコウのくーくー鳴く声がくっきりと聞こえてきます。いつになく日陰は蒼く涼やかに感じられます。小川には小さな泡がぷくぷくと浮いて輝いてきれいです。
孤独なルールーは 月を愛でる歌をうたいます。
月よ 麗しき月
プラム色の 夜のとばり
きみの陽気な黄色が 大好きさ
天空の チーズに あいさつするよ
月よ 月
ぼくは 茶色い垣根を かけ抜ける
クレソンが のどを潤し
苺のにおいが 漂うよ
蜂蜜パイの 月に あいさつするよ
さて月に行った仲間たちはどうしたでしょうか。そこには森も動物も何もなかった。本当にがっかりで悲しくて 涙がこぼれます。
そして森に戻ってくるのです。着地は「池」という約束でした。 ルールーは森の動物を集めて、池の周りで待ちます。こんなにいろいろな種類の動物がいたのか、と思うほどたくさんの動物たちが集まります。
穴熊、ケナガイタチ、カワウソ、テン、山猫、オオヤマネコ、コエゾイタチ、フェレット、ムナジロテン、
それから年老いたオオカミ(赤ずきんを探しているようです)
注:本当にこのように書いてあるのです。
動物が多すぎて全部書きませんが、うさぎやハリネズミまでいますね。とにかく全員集合でお迎えするわけです。
そうしてルールーにいつもの森の平穏な日々が戻ってきました。月を愛でる生活、里に下りて獲物を捕まえる生活です。ルールーは 森の生活を満喫しています。
終わり
挿絵画家
Daniele Bour ダニエル・ブールさん。
このかた、フランス人で知らない人はいない。いたらモグリです(笑)と言っていいのではないでしょうか。
Rencontre. On a retrouvé la maman de Petit Ours Brun
このようなくまちゃんが主人公の、絵本やアニメ、塗り絵やグッズが本当にたくさんあるんです。フランス人はみんな小さいころ持っていたはずです。
お話を描いた人
Jacques Chessex シェセさん。(1934-2009)
L’Ogre de Jacques Chessex | Pasion De La Lectura
スイスの詩人で、フランス語で著作を残しました。有名な詩の賞をもらった人でもあります。
月は遠くにありて愛でるもの
この話のテーマでしょうか。
WIKIより
現代の私たちがこの本を読んでもおもしろくないのは、1960~70年代の宇宙や月探検への憧れを共有しないからです。
スイスの詩人さんはこのブームを冷ややかに見つめ、今の暮らしの良さを、地に足のついた平穏な日々を送れるしあわせを、子どもたちに見つめなおしてもらおうと思ったのでしょう。
終わります。