オランダ語ではシント・パウリュス教会 Sint-Pauluskerkという。
まず古い写真を。
カテドラル(聖母マリア大聖堂のこと)のほうは知名度ナンバーワンだし、いつも観光客でいっぱいだが、こちらにはあるものを目的にやってくる来訪者が多い。それはあとでわかる。
現在の姿がこちら。
この広場はVeemarkt(家畜市場)という。
バスケットボールのコート以外、別に何も変わっていない。だけどどうしてバスケットボール?ほかの教会の広場にも、なぜかバスケットのゴールが設置されているので、いつも不思議に思っている。
この教会はぐるりと回ってみるとわかるが、敷地が大変に広い。というのも最初はドミニコ会の修道院だったそうで、13世紀にまでさかのぼる。それを16世紀に後期ゴシック様式の教会として建て替えたのだそうだ。
https://inventaris.onroerenderfgoed.be/aanduidingsobjecten/5137
建築家は当ブログにはもう何度も出てくる、カテゴリーを作りたいくらいの有名人Domien de Waghemakere。Rombout de Drijvereという人と共同で造った。
塔はバロック様式で完成は1680年だという。中もゴージャス!
息をのむ美しさだ。三色の大理石や白い彫像や華やかなバロックの装飾や調度で飾られ、ルーベンスやファン・ダイク、ヨルダーンスら、有名画家たちの作品があちらこちらに掛けられ、贅沢の極みである。
1796年に修道院が封鎖されてからは、教会はアントウェルペン市に売却された。
今は英語で言うparochial church、つまり教区教会として重要な位置づけだ。
この修道院は、アントウェルペン初の高等学校が10年間入っていたところでもある。
ナポレオンの作ったEcole Seconsaireという中等教育学校は、1807から1817年までここに存在した。不幸な火災が二回 1679年と1968年にあったが、元通り修復された。
前回(2007年)ここを訪ねたときは、修復工事の写真も展示してあり、教会信者のボランティアが寄付を呼び掛けていた。私は前回も今回もささやかながら寄付をさせてもらった。
ところが、である。
1月24日付Gazet van Antwerpen紙の記事によると、なんとミサの間に泥棒が入り、寄付金が盗まれたという。しかも台所のワインまで飲んでいったと書いてある。不届きもの!
お目当てはここ!ゴルゴタの丘
午後2時になると係りの人が、さあどうぞ、と鉄の柵開けてくれる。そこにはキリストの受難の光景が広がっている。
英語で The Hill of Calvary または Golgothaと言われる丘。といってももちろん本物の丘ではない。教会堂の横にある庭のことなのである。たいして広いわけではない。だがものすごいインパクトだ。
キリストや使徒などの像が全部で60体あるという。十字架をかついで苦しそうに歩くキリストがまず目に入る。正直、ちょっとキリストには見えないんだけれども。そのあとゴルゴダの丘で磔にされるまでの道行きを再現する。
家族連れも来ている。父親が子供たちに解説をしているのだ。宗教教育の大切な機会なんだね。
写真を撮っている女性を見れば、像の大きさがわかるだろう。
等身大だから迫力があり、まさに劇の一幕に入り込んだ気分になる。そしてキリストの受難に思いをはせる。
キリストの手足と心臓が布についている。
体の血をぬぐった布。
キリストを降ろすのに使った梯子。
というわけで迫力の受難劇を見るために、ヨーロッパ各地から見学者が訪れる。
最後にもう一度「丘」を見る。
ちょっとした「体験」ですね。子どもだったらどんなにか怖いだろう。
最後に ほこらの中のマリア様
このあと3月にも来て晴天を背にした教会です。