ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

アメリカの絵本:『うさぎさん てつだって ほしいの』『ちびくろ・さんぼ』

 

うさぎさんてつだってほしいの (1974/11/5)
シャーロット・ゾロトウ (著), モーリス・センダック (イラスト)

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モーリス・センダックといえば、すぐに『かいじゅうたちのいるところ』があがるかもしれません。

1962年発行の『うさぎさん~』では、センダックは絵を担当していますが、文にピッタリのすばらしいできばえです。可愛いうさぎなんか描きません。

センダックのうさぎは、存在感のある、カリスマ性といっていいような不思議な魅力を備えた、かっこいい男の人って感じ。ちょっとドキドキしちゃうような。

壁ドンされたいかな(#^.^#)

 

 モーリス・センダックの話題の本

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かっこいいおにいちゃんウサギ

女の子はお母さんの誕生日プレゼントに何をあげたらいいか、うさぎに相談します。

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うさぎは手伝ってあげます。

まずお母さんはが好き、そこで出てくるのが

・べにすずめ

・しょうぼうじどうしゃ

こうしたボケがこのあとの「お約束」となって、その突拍子もないアイデアを楽しみます。

結局りんごの木からりんごをもぎとります。

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次はきいろ

・タクシー

・おひさま

カナリア

・バター

 

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お母さんの好きなバナナにします。

その次にみどりいろ。

・エメラルド

・おうむ

・グリンピースとほうれんそう

・いもむし

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やはり果物でせいようなしに決めます。

でもほかにももっとほしい、と女の子は言います。

最後はあお

・みずうみ

・おほしさま

サファイア

・あおいとり

 

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ぶどうに落ち着き、かごに果物を全部入れて、プレゼントのできあがり。

手伝ったうさぎは去っていきます。

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印象派風の絵がいい。

ドキッとするうさぎの姿態もいい。

いつか英語版でゆっくり読んでみたい本。

うさぎの声も想像しながら。

 

モーリス・センダック(Maurice Sendak, 1928 - 2012)

絵についてはランドルフコールデコット(Randolph Caldecott, 1846- 1886)に憧れていたという。また自分にとっての「神」は三人いると言っている。メルヴィル、エミリー・ディキンソン、モーツァルトだ。ウィキペディアより)

"My gods are Herman Melville, Emily Dickinson, Mozart. I believe in them with all my heart."

 

 

わたしのちびくろ・さんぼ 

こんなに波瀾万丈の運命をたどった本はないと思う。ちょっと色がきついけど、好きだったお話。

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もとは軍医であった夫に伴って、インドに滞在していたスコットランド人、ヘレン・バンナーマン(またはバナマン)が、自分の子供たちのために書いた手作りの絵本だった。舞台はもちろんインドであって、アフリカでもアメリカでもない。 子供の手に収まるサイズの小型絵本だった。著作権がなかったため、話は都合のいいように書き換えられて いく。このことが人種差別だとして問題視されるようになり、一時書店から消えた。日本でも1953年(昭和28年)岩波版からはじまり、70種類以上にのぼる様々な版が出版された。

私はやはり、なんといわれてもこの岩波版に愛着がある。

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さんぼの服をめぐって、おばかなトラたちが争う。しっぽをくわえて、ヤシの木のまわりをグルグル。その間にさんぼは自分の服を取り戻す。相変わらずグルグルと猛スピードで回り続けるトラ。

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 とうとう、みんなどろどろに溶けて、バター(インドでは”ぎー”という)になってしまう。お父さんが壺に入れて持ち帰り、お母さんがホットケーキを焼いてくれる。

さんぼはなんと169枚も食べたのであった。

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アメリカ版の表紙(1918年)

 

 原作そのものの版が発売になる

1999年になってやっとちびくろさんぼのおはなし』が出た。

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ちびくろさんぼのおはなし ハードカバー – 1999/6
ヘレン・バンナーマン (著), Helen Bannerman (原著), なだもと まさひさ (翻訳)

まだ読んでいないので、いずれ図書館で読んでみたいとは思う。だけどあの本の、あのバターのおいしそうだったこと!そのせいでトラを見るとバターに見えたものだ。