『ゆきがやんだら』
酒井さんはどれもすばらしいのですが、今回はこちら。
(学研)
とても有名なのでなにも解説はいりませんね。
もしまだお読みでなく、お子さんと一緒に、というかたのために内容には触れないでおきましょう。
ただひとつ、外出の服装、びっくりしますよ。
あ、そこは考えてみなかったな。
酒井さんはブルーナのファンなんですって。うんうん、わかるなあ。
ところでベルギー滞在中、酒井さんの本はよく見かけました。
凄い人気ですよ。
左: フランス語 右: 英語
英語版の表紙が反転しているのはなぜだろう? オランダ語版はもっと下にあります。
ビロードのうさぎ
ビロードのうさぎ
マージェリィ・W・ビアンコ/原作
酒井 駒子/絵・抄訳
よい原作に恵まれ、代表作の一つに数えられる傑作を世に送り出してくれました。
また著者のマージェリィ・W・ビアンコもラッキーでしたね。世界中であなたのウサギが生き返りました。
Margery Williams Bianco (1881 London– 1944 New York )
1922年のハイネマン版の表紙。挿絵: William Nicholson
オランダの賞
これはオランダ語の酒井作品を紹介するコーナーで、0歳から4歳、4歳からから6歳と年齢別に4冊を取り上げています。
酒井さんは多くの賞をもらっていますが、オランダ語に限っていうと、
2006年に『ぼく おかあさんのこと…』、
2009年に『ゆきがやんだら』で銀の石筆賞( Zilveren Griffel )を受賞しています。
この賞は優れた児童向け作品に与えられるもので、1954~1970年までは一年に一冊だけ、オランダ国内から選ばれました。
1970年以降はオランダ語に翻訳された作品にも範囲をひろげ、多様性に富む、インターナショナルな賞に成長しました。それを二回ももらったなんて、どれほどの評価を受けているかわかりますね。
カラス好きでしょうか?
「カラスの飼育」 Cría cuervos(1975年)という映画の絵を描いています。
主演のアナ・トレント(Ana Torrent)は一度見たら忘れられない子です。
1966年生まれで、デビュー作はビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」1973年。
なんと私は1975年にパリのモンパルナスの映画館で、ロードショー上映を見ました。以来幾度となく見ています。酒井さんのアナ、とくの目元のあたりが凄いです。
こちらはポストカードだそうです。字を書いているけど、何(なに)語でしょうか。
『きつねのかみさま』
きつねのかみさま (絵本・いつでもいっしょ) 大型本
あまん きみこ (著), 酒井 駒子 (イラスト) 出版社: ポプラ社 (2003/12)
第9回(2003年 ) 日本絵本賞受賞
女の子の名前はりえちゃんです。
絵を描く人が 酒井 駒子 だと聞いただけでワクワクなのに、お話があまんきみこだなんて!二人でどんな世界を作り上げるんだろうなあと思って本を開きます。
その前に「きつね」
みなさんにとって、きつねはどんなイメージ?
私は動物も昆虫も鳥も何でも好きだけど、きつねは特に好き。顔の造作や、内気そうな目がいい。毛の色もきれい。あ、そうだ、白い毛のきつねもいたんだっけ。
ともかく好き。
でも一般にはネガティブなイメージ、ずる賢くて「悪玉」と性格づけがされていますね。とりわけヨーロッパでは超ワルモノ扱いです。民話や昔話の中でね。
でもベビーメタル(BABYMETAL)のおかげで、少しは挽回したかな。
ベビーメタルはヨーロッパでもアメリカでも圧倒的人気を誇るんです。2015年のツアーは、ベルギーには来なかったけれど、ラジオのニュースではその熱狂ぶりを伝えていた。
http://ticket.st/livel/4416vi2tr
さて、やっとおはなしに入ります。
りえちゃんが言います。
おやつを たべおわったとき、あたし、なわとびのひもを わすれたことをおもいだした。
このように、絵本としてはかなり珍しいといえる、女の子の独白で物語が語られるのです。あまんさん、やってくれますねえ。
なわとびの縄を公園に忘れたことに気づいて、取りにいく。弟のけんちゃんもついてくる。木の低い枝にひょいとかけたはずなのに、おかしいな、どこにもない。すると声が聞こえてくる。にぎやかな笑い声や歌声が。
おおなみ こなみ ぐるっと まわって きつねの め。
するときつねたちがなわとびをしているのが見えた。
こっそり見ている。
声を出してしまい、きつねたちに見つかったので「こんにちは」とあいさつする。
するときつねたちは、いっしょに遊ぼう、と誘ってくれた。
楽しく遊んでいたとき、ふと持ち手をみたら「りえ」と名前が書いてあるではないか。なあんだ、あたしのだった、と安心するりえちゃん。
ところが帰る時間になって、ちいさい子ぎつねがこう言うのだ。
「それ、あたしのよ。さっき みんなで なわとびしたいって、きつねのかみさまに おいのりしながら あるいていたら、こうえんの きのえだにかけてあったの。あたしのなまえまで かいてあるの。ほらね。」
「え、あんた、りえちゃんなの?」
あたし、びっくりした。
女の子は自分の縄を 持ち帰ることをあきらめ、さよならを言って家路につく。
そのとき弟のけんちゃんが高い声でいった。
「そうかあ。おねえちゃんは、きつねのかみさまだあ。くくくっ」
というお話。あまんさんらしい終わり方でした。
私は大人なので、お話より絵の方を隅々まで味わいます。
ふたりが同じ名前、その前にきつねにも名前があるなんてすてきです。考えてもみませんでした。そしてきつねがこんなにも笑うんだ、ということもね。
作家 阿萬紀美子(あまんきみこ)1931年8月13日 生まれ。
作品は大変に多く、小学校の教科書にも載っています。「ちいちゃんのかげおくり」「おにたのぼうし」「白いぼうし(『車のいろは空のいろ』シリーズの一篇)」などが有名です。
私の母は年齢が同じこともあって、大ファンです。きっかけは15年位前だったか、ラジオ番組であまんさんの作品世界の紹介を聞いたこと。そのあと「あまんきみこの本、あるだけ買ってきて」などと電話をかけてきたことがあります。
追記:すごいブロガーさんがいます。酒井駒子研究。
http://blaine.org/sevenimpossiblethings/?p=2402