蝶というとすぐ思い浮かぶ人が私にはふたりいる。
ふたりとも故人である。そのひとりがこの人、
ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・ナボコフ(1899年- 1977年)
そう、あの『ロリータ』(ロリコンという言葉はここから来た)で有名な小説家、詩人のナボコフである。私はたった2冊(ロリータのほか『ナボコフ自伝』)しか読んでいないので、文学については語れないが。
先日、イギリスのガーディアン紙に載った記事を見てハッとした。わあ、これは画期的なことだな!イエール大学出版局から出た本の紹介だ。タイトルは
Fine Lines Vladimir Nabokov’s Scientific Art
何が凄いって、ナボコフの優れた文学は世界中に知られているが、科学者としての側面は長い間ないがしろにされてきた。今回ようやくナボコフの、鱗翅目学者、つまり蝶の研究者としての寄与が正当に評価されたのである。
ナボコフは帝政ロシアで生まれ、ロシア革命により、亡命してヨーロッパとアメリカで暮らした。1940年に渡米し、1945年にアメリカに帰化した。コーネル大学でロシア文学の教授職を得る前は、ハーバード大学の博物館で蝶の研究をしていた。論文も数本書いている。
これまでに1000を超える、精密で解剖学的なデッサンを残している。とりわけ造詣が深いのは、小さな青いシジミ蝶「ブルー」で、この蝶がいかに進化を遂げたかを解き明かしている。
ともあれやっと科学者たちに、ナボコフのリサーチが寄与するもの、また仮説が正しかったことも認められたのだ。この本のなかで、科学者たちがナボコフに敬意を表し、多くのエッセイを寄せているそうだ。また、ナボコフ自身が描いた154点の蝶のデッサンも含まれるとのこと。
一枚だけ紹介するが、なんとも細かい美しいデッサンである。150枚もあるなんて!!
いずれ図書館に入るかな。
http://rbth.com/articles/2011/06/02/butterfly_effect_nabokovs_gifts_of_love_for_sale_12987.html
写真:ヴェラ夫人と蝶の採集をするナボコフ。
さてちょっと話変わり、毎朝のぞかせていただいている園芸家さんたちの一人、山田ガーデンさんのブログ。
この中にこんなお写真が!!
私はとっても嬉しい。園芸家というのは、虫が好きじゃない人たちだと思っていたから。ずいぶん太っていますね~。でも山田ガーデンさんのお宅の木は大きそうだから心配ないね。
芋虫の 何憚(はばか)らず 太りたる
右城暮石(うしろぼせき)
これは アゲハチョウ科 アゲハチョウ属 クロアゲハ。下の写真のような、シックで優雅な蝶になる。幼虫の口の回りが茶色っぽいでしょ。それと体の大きさ、模様でわかる。
私のブログにあるナミアゲハとは、小さいゲジゲジの時からいろいろと違っている。
(写真:ウィキペディア)
いいなあ、うちにも来てほしい。昔マンションに住んでいたときはよく来てくれたのに。
蝶の道プロジェクト
東京では何年か前から、蝶の好む草花を幼稚園や学校で育てる取り組みをしている。まず品川区が事業化した。食草を増やし、蝶が飛び交う都会の風景、蝶が生きやすい環境をめざすのである。また園芸家の人たちにも、花が散っても花壇の一部をそのままにしておいてくれないか、と呼びかけたりした。
12種類の蝶と好みの草を紹介するパンフレットも作った。モンシロチョウはナスタチウム、ツマグロヒョウモンはパンジー、ヤマトシジミはカタバミ・・・というふうに。
蝶の道プロジェクトのひとつの形は、緑豊かな皇居から、東京湾岸までの長い道だそうだ。路地にプランターを置いたり、道路わきの植え込みを利用したりして、蝶が羽を休める場所を作る。
子供たちにとっても生き物について身近で触れ合いながら学べるし、すばらしい環境教育である。
おすそ分け
近所の人から聞いたいい話。
ある日、知らない人が訪ねてきて、お願いしたいことがございます、という。何かと思ったら、山椒の葉を、できれば小さな枝ごといただけないだろうか。うちはアゲハ蝶を育てているのだが、山椒の葉を全部食べつくしてしまい、ほかにエサとして与えるものもなく、困っている。どうぞどうぞ、うちの木は大きく葉もたくさん茂っているから、いくらでもあげますよ、そう言ったという。
アゲハがきっかけで二人は親しい仲になりました。 終わり。