トランプ トロンプ トロンプール
楽しそうな音が並んでいるが、最初のトランプはもちろん次期大統領のT不動産屋である。以前「トランプ」と書こうとして「トロンプ」と打ち間違えたことがあって、その時はっとした。そしてにんまりした。
なぜならフランス語で「トロンプ」は、trompe(tromperの活用形)は「騙す、欺く、裏切る」の意味。他動詞なので目的語が必要だが。名詞形はtrompeurで「嘘つき」「ペテン師」である。
トランプ トロンプ トロンプールと唱えてアカンベェをしたら、少しは怒りも収まったので、多くの方がすでに書いていらっしゃるが私もちょこっと感想を述べてみたい
弱者の敵
こちら、カメキチさまのブログ2017.1.13 1月11日 - kame710のブログから
引用させていただきます。
トランプが2015年の支援者集会で彼は硬直したような顔とブルブルふるわせる手のしぐさで障害のある記者を侮蔑するような態度をとったこと。それが「釣り針」のように心に刺さっていることを。
トランプのそれは、メリル・ストリープさんの仕事である「演技」ではなく、「現実」であったことを。
釣り針(It sank its hooks in my heart)という、ストリープさんの見事な比喩は私たちのハートも突き刺した。記憶に長く刻まれることだろう。” hook”は先が曲がった鉤、ほら、フック船長の手の先についているあれのこと。
ストリープさん、よくぞこれを取り上げてくれたと思った。カメキチさんや私の家族が敏感に反応するだけでなく、健常者もちょっと相手の身になってみれば、わずかの想像力を働かせるだけで、障がいのある人にとってどれだけの痛みかがわかるはずだ。
そもそも障がいのある人は、子供時分から不自由な体の部分をよくからかわれてきた。が、いじめっ子や悪意のある人間など、まあどこにでもいるさ、と思っている。
しかし大統領候補の一人にそんな目にあわされるとは考えていなかった。それを、このトロンプ、もとい、トランプ氏はTVショーさながらに単に「笑いを取る」ためにやったのだ。そして観客は歯をむき出して笑った。計画通りだ。
Lord Snowdon - a career photographing the stars | Art and design | The Guardian(↑↑ メリル・ストリープだけでなく、素晴らしい写真ばかり!あとで見てね)
こんな公の場で、権力を持っている人間がそんな恥ずべき行為をしたら、影響は大きいだろう。他の人たちに同じことをしていいというお墨付きを与えるようなものだから。ストリープさんはそのように述べた。
去年のカーン氏のスピーチも思い出した。カーン氏はイスラム系アメリカ人で、息子をイラク戦争で亡くした。8月の民主党大会でスピーチをした。そのとき、トランプ氏は果たしてアメリカ憲法を読んだことがあるのか。ないなら私のを貸してやろう、と言って実際に憲法の本を掲げてみせた。
この背景にはトランプ氏の過激な差別発言、憎悪を煽り、敵を設定し、対立を画策するような看過できない一連の発言があった。多すぎて覚えていられないが、たとえば
・テロリストの家族は殺す(take out their families)等々
トランプ氏とその後ろで彼を支持する人たちに向けて、カーン氏はアメリカ人の良心を呼び覚まそうとこのスピーチをしたのだと思う。
ところがこれに対し、トランプ氏はムキになって、カーン夫妻を侮辱するような返答をした。詳細は省くが、撤回も謝罪も一切なかった。周囲の人たちが火消しに躍起になっていたようだが。
あきれて言葉もない。絵に描いたような弱い者イジメの構図だ。しかもトランプ氏は富豪で、地位もあり、健康でしかも白人だから、強い者の中でも最も強い立場にある人間であるにもかかわらず。この一点だけでもう「オマエはクビだ」と私なら言いたいところだ。
メディア批判
カメキチさん、もうひとつ引用させてください。
彼を「主役」に仕立て上げているのは自分たちメディアだということはわかっているでしょうに。
彼を「悪役」にした『大統領選』という名の下品なドラマ仕立てを選挙前からいくつも流し(それがたくさんの視聴者を集め、ということはたくさん稼いで)、役者トランプは、それをうまく利用することで(すなわち彼らメディアのずっと上を行き)ホントに大統領になってしまった。…「こんなはずじゃなかった!」といまごろ後悔しても始まらない。
トランプ氏のこのたびの記者会見は、世界中で多くの人が関心を持って見ただろう。ロシアのサイバー攻撃のことや、雇用のこと、「利益相反」などについて何か言ったかもしれないが、私たちの記憶に残ったのはメディアへの攻撃である。復讐というべきか。
あの激しいCNN批判は、あらかじめ周到に用意してきたという印象を受けた。これを喜ぶ大衆がいるということをかなり意識しており、ここでもTVショーさながらに、自分の力を見せつけたかったにちがいない。
カメキチさんの書いているとおり、選挙期間中、TV・新聞などメディアの偏向報道は明らかだった。私もクリントン支持をそこまで打ち出していいの、全紙がクリントン支持っておかしくない?と思ったことはあった。トランプ氏の過激な発言ばかり取り上げるので、もう読むのも辛いなと思ったものだ。でも私もそうしたアメリカの報道を鵜呑みにしていた。トランプ氏が当選するわけないでしょ、と思っていたから。
今から思えば、なぜトランプ氏を支持する人がこんなに多いのか、その人たちはどんな生活をしてどう考えているのか、そんな生の声を丁寧に拾いあげるTV局や新聞がもっとたくさんあればよかったのだ。トランプ支持者は、民主主義の正当な権利「投票」という手段で発言をし、正しい手続きで自分たちの大統領を選んだのだ。
トランプ氏記者会見のあとで飛び交ったTwitterに関して、今日は両サイドから取り上げたい。
1.ラシュモア山
参考までに実際の ラシュモア山(ウィキペデア)
2. これは前に載せたものだが、同じ「ラシュモア山」つながりでもう一度。(2016年2月1日、ベルギー仏語新聞から)
3.人類の進化・・・
次はトランプ氏応援団から
オランダの自由党(極右)の党首ヘルト・ウィルダース(Geert Wilders1963年生まれ)氏のTwitter。
4.
TRUMP & WILDERS USA (@StayWithWilders) | Twitter
5.メディアを三枚おろしにしてやったぞ!
https://twitter.com/geertwilderspvv
6.
トランプ氏の取り巻きたちのは、メディアをおちょくるネタのほか、オバマ氏やクリントン氏を貶める下品な内容のものが目についた。到底良い子に見せられるものじゃないから取り上げない。はてなブログは品格を重んじているので。
このTwitter主の ウィルダースは、昔から反EU,反移民、反イスラムを掲げている。以前、コーランをヒトラーの「我が闘争」になぞらえて物議をかもした。
やはりトランプ氏と同じく、歯に衣着せぬ発言をする。「心の中で思っていることをよくぞ言ってくれた」と共感するオランダ人も少なくないようだ。このところ大きく支持率を伸ばしている。3月15日に総選挙があるのでかなり心配だ。詳しくは過去記事のこの項目で。
”4.2017年が不安…この二人の笑顔が怖い”
過去記事参照
オバマ大統領 最後の授業
最近は写真を見るだけでうるうる来てしまうのに、スピーチとなるともう大変。ティッシュケースがないとダメだった。だから写真も、オバマ大統領が涙をぬぐっているのなんかはとても載せられない。オランダ語新聞から2枚選んできた。
Obama neemt afscheid met daverende speech: "Yes we can, yes we did"
初めのほうで、皆さんが私をよりよい大統領、よりよい人間に育てあげてくれた(You made me a better President, …a better man.)というくだりがいい。トランプ氏の対極に位置する視点、アメリカ国民への敬意と感謝を表し、いかにもオバマ氏らしい謙虚な表現だと思った。
全体的にもっとも重きを置いたのは「民主主義の尊さ」だったと思う。これから始まるトランプ氏の政権、差別や不寛容が透けてみえる将来に危惧を感じているのだ。だからアメリカ国民に送る「最後の授業」(*)である。
民主主義を機能させるのはわれわれなのだ。それが脅かされないよう、注意を怠らず、守り育てていかなければならない。「心配性で嫉妬深い番人であれ」(to be those anxious, jealous guardians of our democracy)という表現がおもしろいと思った。
他にも書きたいことがあるのだが、すでに長くなってしまったので、一旦終わりにしたい。
http://www.lefigaro.fr/international/2017/01/11/-la-derniere-lecon-politique-de-barack-obama.php