子どもの名前
先日のマミーさんの記事マミーさん、キラキラネーム作りに加担させられそうになって消耗してるの巻。 - こたつ猫の森を読んで少し書きたいことが出てきました。マミーさん、ありがとうございます。
私も「名前」関係、けっこうオタクです。ご夫婦のお子さん、どんな名前に決まるのか興味しんしん!(あとでこっそり教えてね。…って、無理かな)
ひなた、人気の名前ですね。十数種類の漢字で表されたひなたちゃんが日本各地にいるようです。以前調べて唖然としました。私などは「ひなた」と聞いて日向ヒナタ、つまりナルト(漫画の話)の奥さんになった娘をすぐに思い浮かべてしまいますが。
そして話が飛躍したついでに、去年ビックリしたイベントを思い出したので紹介します。
京都にある文化施設、ヴィラ九条山。これはフランスが国外に保有する3つのアーティスト・イン・レジデンス(芸術家を招聘して創作活動や交流をすすめる目的の施設)のひとつです。1992年に建築家の加藤邦男氏が設計して、東山の丘の上に建設されました。フランスの公式文化施設としては最大級ということです。
2016年の企画の名前が驚き!
「L’Hokagé orangé de Konoha/木ノ葉のオレンジ火影」
というのです。読みは「このはのオレンジほかげ」。漫画あるいはアニメのナルトをご存じないかたは、ここを読んでもちっともおもしろくないでしょうが、ナルトがフランスやヨーロッパで社会現象だったここ10年の総まとめ的な企画です。(私は展覧会に行っていなくてすみません)。
きっかけは娘さんだと、エマニュエル・カレール(ジャーナリスト、小説家、映画監督で、この企画の発案者・オーガナイザー)氏はいいます。
(ヴィラ九条山のサイトより引用)
エマニュエル・カレールの8才の娘ジャンヌは 3年前からこのマンガの大ファン。
そこで、父親の方も成長物語でもあるこの大河ロマンの魅力に取りつかれました。娘はナルトの国である日本に憧れ、父親は別の理由から日本に憧れていますが、娘の言い分こそがベストで、最も現実的で、最も生き生きしていると彼は考えています。こうしたことから、日本に滞在し、ナルトの足跡を辿るという考えが生まれたのです。
具体的には、このプロジェクトはナルトの原作者・岸本斉史が着想を得た現実の場所を見に行ったり、原作者とそのスタッフを訪ねたりするものとなります。つまり、マンガ作品が具体的にどのように制作されるのかを知り、ナルトが大好きな日本の子供、青少年や大人と語り合い、彼らの好きになり方が同じものかどうかを知ろうとする試み…(略)
話が飛びましたが、戻します。私もすでに2回以上、名前についての記事を書いています。
・これまで男子の名前だったものを女子につける流行。
盗聴するぬいぐるみの時代・女子に男子名をつけるブーム他-news-1- - ベルギーの密かな愉しみ
・ポケモン関係の名前をつける流行、など。
ポケモンキャラの名前を子どもにつける親たち ・記念切手 - ベルギーの密かな愉しみ
子どもの名前は流行があって、世の中を知るにはなかなかおもしろい素材なのですが、最近のキラキラネーム(=DQNネーム)には呆れかえるばかりです。親はよく考えて責任を持ってつけないと、将来どんなに子供が困ることか。簡単に改名できないわけですし。
『ロード・オブ・ザ・リング』の登場人物の名前をつけようとしたのを、祖父母にとめられたという話を聞いた時は大笑いしたものですが、実際につけられていたらどうだったでしょうか。
「アラゴルンちゃん、こんにちは。学校はどうだった?」
「レゴラスちゃん、もう宿題終わったの?」なんて聞くわけ?
それともかっこいい名前だと、本人は喜んでいるのでしょうか。そうだとしたら私はとんでもない勘違いをしているのかもしれません。
最近読んだ記事でおもしろかったのは、アイスランドでは伝統を守るため、国が定めた名前しか付けてはいけないというもの。
ジェニファー(Jennifer )可愛い名前だわ、うちの子につけようかしら。ハリエット(Harriet)っていい響きだな。これにしよう。
だめなんです。国が定めたリストにある3565 の名前から選ばなければなりません。(ちなみに女子用:1853 、男子用:1712。けっこう多くはありますね)
しかしそういった名前の多くは古めかしくて若い人には抵抗があるそうだし、移民も増えているため今後変わっていくかもしれない、とのことです。
またフランスでは男女両方につけられる名前のTOP15が挙がっていて、典型的なフランス名が少ないので驚きました。
prénoms mixtes pour garçon et fille - L'Express Styles
①Camille(カミーユ、私ならすぐに女子を想像する名前)
②Sacha(サシャ、Alexandreの短縮形)、③Noa、④Lou(ルー、Louiseの短縮形)、⑤Eden(エデンは有名なベルギー人サッカー選手、エデン・アザールで定着した感があるが、これを女子につけるのはかなり驚き!)
⑥Charlie(シャルリ、 Charlesの短縮形) ⑦Alix(Aliceの古い形、中世バージョンとのこと)
⑧Loan
⑨Thaïs(タイスといえば「娼婦タイス」という人もいるでしょう。アナトール・フランス作『舞姫タイス』やオペラなど。その名前を男子につけるなど想像できない…)
⑩Maé(Maëlの短縮形)⑪Andréa、
⑫Elie、⑬Loïs、⑭Stéphane、⑮Morgan
また日本に住んでいる外国人家庭でも、子弟に名前をつけるとき、気をつけているといいます。子弟は日本で暮らし、日本の学校に通うから。例えばR。日本語にはRとLの区別はない。V/B, F/Hと同様に。なのでラファエルRaphael( Raphaël)とかヴァレリーValerieのような名前は避けるとか。
発音ができるできないとは別に私がよく困っているのは、カタカナで「ロラン」とあったらそれがLaurent なのかRolandなのかわからないことです。ま、これは仕方のないことですが。
(フィンランドのお食事エプロン。センス抜群!)
子どもを社会全体で育てる
こちらiirei さまの記事:「2016-12-19 ネウボラ:フィンランド発・子育ての試み~日本よ見習え!」で紹介してくださっています。誰でも初めてお母さん、お父さんになるわけで不安や悩みは多いですね。私も振り返ってみてよくわかります。
フィンランドのネウボラ〈ネウボ(アドバイス)+ラ(場所)〉は「悩み相談の場」という意味の、家族サポートセンター。妊娠がわかったらすぐに行って登録。妊娠から出産、育児、就学までを一括して支えるシステムです。所得制限などもなく無料であり、同じ担当者、同じ保健師(助産婦)が継続して立ち会い、相談に乗ってくれます。まるで地域のかかりつけ医・かかりつけ薬剤師のようですね。
特徴的なのは「育児パッケージ」というプレゼントで、子育てに必要なもの、最初に揃えるべきもの一式が入っています。Maternity package - kela.fi
この箱に入ってきます。箱は簡易ベビーベッドにもなります。
中から一つずつ取り出して並べてみたようす。
デザインがよくて可愛いですよね。この「育児パッケージ」か 現金支給(約2万円)を選べるのですが、多くの人はパッケージを選ぶそうです。赤ちゃんの衣類は質にこだわりたいため大人のものと比べると大変に高くつきます。私もパリで出産して衣服を揃えましたが、冬の外出用のつなぎひとつで7~8千円はします。このパッケージは本当に助かりますね。
フィンランドは1920年代、乳児の死亡率が高かった。というのも1917年にロシアから独立、1918年に内戦、と社会的に大きな変動の時期にあって、国も貧しかったのです。そこから「子どもの健全な成長を基礎から支えたい」という団体が組織され、草の根の市民活動も活発で現在のように成長してきました。
またネウボラで蓄えられたデータは幼稚園に入っても学校に上がっても、保護者の了解を得たうえで引き継がれていきます。子どもの成長に合わせて、切れ目なく支援が続く仕組みが大きな特徴です。
見守りとしての特徴
日本版ネウボラとしては、秋田県男鹿市の取り組みがよく紹介されています。「おがっこネウボラ」という名前で、フィンランドの仕組みを参考にして独自のサービスを展開しているとのこと。母子保健コーディネーターを中心に、保健師、助産師、臨床心理士などで支援チームをつくるそうです。妊娠・出産・子育てから就学時まで、子育て世帯が直面するさまざまな問題の相談にのり、サポートしていくそうです。
妊娠・出産・子育て支援ポータルサイト おがっこネウボラweb
首都圏でも世田谷や浦安などで同様の取り組みがあります。
これは文京区です。
フィンランドとは国の規模も違うため、同じようにはいかないと思いますが、お手本にしたいところは多々ありますね。すでに似たシステムを導入している地域では、保健師や助産師の数が足りなかったり、サービスも有料のものが多かったり、と課題はあるにしても改善しながら進んでいってほしいです。(フィンランドでは一人の保健師が担当する子供や妊婦の上限を設けているようです)
模範としたいところーそれは「見守り」です。地域で妊婦を見守る、赤ちゃんを見守る、家族を見守り、何か問題があったら芽を早く摘むよう気を配る、私はそうした側面に注目します。これは『さとにきたらええねん』という映画から学んだことです。
少子化のなか、せっかく子どもが生まれても虐待で亡くなったり、学校内のイジメが原因で自殺してしまったり。毎日悲惨なニュースばかりに気が滅入りますね。いったい日本はどうなってるの?なんとかしなくちゃいけないんじゃない、と思って焦りばかりが募ります。結局、健やかな子ども時代が送れないのは大人の責任です。日本社会が病んでいて、子どもを大切に育て上げることができない。それどころか、人間を大事にしない体質は戦前・戦時中からちっとも変わらないと思っています。怒っていても始まらないので、子どもをまっとうに育てる、社会で地域で育てていく、という意識をみなで強く持たなければいけないと思います。
フィンランドで出生率を伸ばし、児童虐待死を激減させた「ネウボラ」 つながる育児支援に日本も注目
高橋睦子教授(吉備国際大学保健医療福祉学部)はこのように述べる。
特に0歳から3歳までの乳幼児期には、ご両親との関わりがとても大事で、お父さん、お母さんが同程度子育てに関わっていくのが大切です。
コストはかかるかもしれませんが、健やかで安定的な幼児期を過ごした乳幼児ほど、心臓疾患や精神疾患のリスクが低い、しっかり働いて税金を納められる大人になる可能性が高い。
児童虐待によって生じる社会的な経費や損失は、日本国内で少なくとも年間1兆6000億円にのぼるという試算があるという(2012年度)。
隠れたマイナスコストを考えたら、ネウボラのように乳幼児期から子育てを支えるのが大事です。
日本の場合は、児童虐待があっても、相談に来るのはお母さん、警察に捕まるのはお父さんが多い。お母さんが孤立していて、きちんと安心できるサポートが受けられていないということです。
🌸追記:2018年3月
昨年の時点で、フィンランド発祥の子育て支援拠点&制度が525市町村で始まってるんだって。
— 駐日フィンランド大使館 (@FinEmbTokyo) 2018年3月29日
「日本版ネウボラ」広がる:日本経済新聞 https://t.co/WolOSD4bOb