ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

踊るパディントン とオオカミ讃歌  追記:田中琢治氏エッセイ

松岡享子さん こんにちは、

がんばれヘンリーくんをやくしてばかりいないで

いそいで くまのパディントンをやくしてください。

おもしろくておもしろくてやめられません。

はやくあと7さつとも やくしてください。

松岡享子さん はやくはやく やくしてください。

はやくあと7さつ みんなよみたいから はやくしてください。

さようなら

(差出人: 二年三組 田中たく治 )

福音館書店|あのねメール通信

みなさん くまのパディントン、ご存じですよね。

今日は、8歳の小さな読者さんが、翻訳者の松岡さんに宛てて書いた手紙から始めてみました。

ああ、書きたいことがいっぱい!何から書こう?まあまあ、落ち着け、私。なんでそんなに落ち着きがないかというところから説明したほうがよいでしょう。

先日、マミーさんがたくさん絵本を紹介してくれて久々に興奮し、めくるめく絵本の楽しい世界に連れてゆかれた、ということがまずありますね。(この話は後半で)

mamichansan.hatenablog.com またちょっと前にannenevilleさまが、国連記念日「世界メンタルヘルス・デー」について書いてらして、

堀ったはいいけど、蕪・大根どうしよう。。。(''ω'') メンタルヘルスデーと選挙始まる - anneneville’s diary

ああ、そういう日もあったよねと思い、ヨーロッパのメディアを覗いたらイギリスでもフランスでもベルギーでもみ~んな同じような写真を載せていて笑いました。こちらです。

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Royals op zondag: Is dat Meghan Markle die vermomd als beertje Paddington met Kate Middelton danst? | VRT NWS

世界メンタルヘルスデーのイベントに出席した、キャサリン妃や二人の王子のニュースなんですが、右の写真はロンドンのパディントン駅のプラットフォーム。ここでもイベントが行われ、王室のメンバーはこれをサプライズ訪問しました。日本ではありえないですね。(イギリスっていいなあ!)

くまのパディントンが登場しキャサリン妃に話しかけ(どうやらおもしろいジョークを言ったらしい)、駅のプラットフォームで二人でダンスを踊るのです。

左はツイッター主のジョークなんでしょうか、つまりヘンリー王子の横にいるパディントンは、実は婚約者のメーガン・マークル(Meghan Markle)の変装ではないかととぼけています。まだ結婚まえですからね。

人気のパディントン、映画二作目は来年公開です。

paddington-movie.jp

そんなこんなで『くまのパディントン』を思い出し、パディントンファンのあの少年の手紙を思い出したわけです。松岡さんに

「こんなに言いたいことがきちんと伝わる手紙ってない。まさにこれこそ達意の文章」

と言わせた手紙。あの少年どうしたか、みなさん知りたいでしょう。

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くまのパディントン』  (世界傑作童話シリーズ) 
マイケル・ボンド (著), ペギー・フォートナム (イラスト), 松岡 享子 (翻訳) 福音館書店 (1967/10/1)

 

田中琢治くんは1962年大阪生まれ。7歳のクリスマスに両親からもらった『くまのパディントン』に夢中になりました。なかなか次作が出ないのであの手紙を書くと、松岡さんも感激して二人の文通が始まりました。それは大人になっても続き、松岡さんは田中さんを訪ねます。それはカナダへの旅でした。

田中さんは京都大学農芸化学科を卒業(農学博士)、民間企業や京大での助手を経てカナダに移住します。そしてカナダの大学で教育・研究に携わっており、専門はペプチドに関連する酵素の研究だそうです。4児のパパでもあります。

田中さんはパディントンの8巻目がなかなか出ないのにしびれを切らし、自分で翻訳し、ワープロ打ちで製本し、私家版を作ってしまいました。それを訪ねてきた松岡さんに贈ったのです。

大人になってもずうっとパディントンのファンだった田中さん。ここまででもすばらしい話なのですが、松岡さんと出版社福音館は、8巻目から田中さんも翻訳者として迎え入れるのです。8巻目は上の写真右パディントン 街へ行く』です。

 

著者マイケル・ボンド

今年の6月に亡くなり、日本でも各紙が報じました。

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'Paddington Bear' Author Michael Bond Dead at 91 - Rolling Stone

1926年イギリスのニューベリーに生まれ、第二次大戦中は英空軍に入隊、その後陸軍に移って中東へ行きました。1947年、BBCでTVカメラマンとして働き始めます。余暇として書いていたラジオの脚本や短編が採用され、世界数か国で放送されました。

1958年に『くまのパディントン』を発表。1967年からカメラマンの仕事を辞めて作家業に専念しました。『くまのパディントン』は20ヶ国以上で読まれ、愛され続けています。

 

オオカミ賛歌

マミーさんが紹介してくれた本は少しずつ読むつもりですが、「ベルギー」と聞いたら一番に読む本はこれしかない(笑)。

『えほんからとびだしたオオカミ』(岩崎書店

それいけ、図書館へ。エイトマンみたいに足が見えないほどの速さで飛んでいったと思ったでしょう?いいえ、違います。ネットで読んでしまいました。

絵本の挿絵画家のマビール(Grégoire Mabire)氏自身が自分のサイトに載せていたんですね。すみませんね、感謝します。

紹介はマミーさんが書いてらっしゃるのでそちらを読んでくださいね。

夜中に人形やおもちゃが動いたりおはなししたりする話はよくあります。これは本のなかのオオカミが、床に落ちた本のページから出てきて、なんとか戻ろうとするがうまくいかないという話。太った猫に追われながらあの本、この本と潜り込んでみるが、追い出されてしまう。

このドタバタをユーモラスにスピード感たっぷりに描きます。そして饒舌で人間臭いオオカミのセリフに笑わされているうち、どんどんオオカミのことが好きになってしまうわけ。

最後は森で赤ずきんと出会うんですが、この辺は漫画のコマ割りっぽく、どんどん盛り上げていくあたり、うまいなあと思います。二人のやり取りにお腹を抱えて笑うでしょう。(全部お話できないのが残念)

 

赤ずきんといえば、ロアルド・ ダールの毒のある赤ずきんを思い出します。

『へそまがり昔ばなし』 (ロアルド・ダールコレクション 12) 
ロアルド ダール (著), クェンティン ブレイク (イラスト)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/3/39/Revolting_Rhymes.jpghttps://www.roalddahlfans.com/wp-content/uploads/2015/12/auc4.jpg

ダールの赤ずきんはオオカミに向かって、あんた、いい毛皮着ているじゃないの、と言い放ち、ピストルで撃ち殺したあとその毛皮でコートを作って着るんです。何ともぶっ飛んだストーリーですが、イギリスの子どもはダールのこの種の話が大好きなんだそうです。(話はうろ覚えなので厳密には違う所があるかもしれません)

 つい先週も、オオカミについての興味深い記事を読んだばかりでした。

www.bbc.com

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/624/cpsprodpb/11296/production/_98349207_gettyimages-157719815.jpg

愛情たっぷりの子育てをし、強いきずなで結ばれる非常に社会的な動物だそうです。

 

最後に私の好きな「オオカミ」という名のベルギービールを紹介します。

過去記事にも書いたのですが、ルプルス、別名「アルデンヌの狼」。

 

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レ・トワ・フォルケ( Les 3 Fourquets) 醸造所の比較的新しい銘柄で、美味しさのあまりすぐ2杯目も注文してしまいました。ランチなのにね。

機会がありましたらぜひお試しあれ!

まだまだ書きたいことがありますが、今日はいったん終わりです。

 

 🌸追記:新刊『パディントンのラストダンス』の訳者、田中琢治さんのエッセイ

福音館書店|あのねメール通信

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 続き

cenecio.hatenablog.com