ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

国際語になった日本語シリーズ:「忖度」と「ひきこもり」

年の瀬ですね。大掃除や買い物、お節づくりなど進んでますか?

はてなの皆さんの多くが、あちらこちらでご挨拶を交わしていますが、私はまだのんびりと今から何か書こうとしている(笑)。←あなた、掃除はすんだの?いえ、まだ半分。あしたやるからいいです。

今日は国際語になった日本語のシリーズを更新しようかなと思っています。

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2年前『外国で出会うニッポン』(*1下に過去記事)『 輸入した(い)ニッポン語』(*2)の中で今や国際語になって広く使われている日本語の単語をいくつか紹介した。積読」TSUNDOKU、「旨味」UMAMIなどは意外だったし、「過労死」は聞くのも辛いのにゲームまでできていて卒倒しそうだった。「カミカゼ」をテロリストの自爆以外に、数独の難しさの度合い(上級)に使っているのを見た時は唸った。孤独死は前回紹介済み。今日は「忖度」と「ひきこもり」を見てみよう。

 

忖度

去年2017年の流行語大賞である。ちょっと前は読み方も知らなかったのに、去年中には国民全員が「忖」という当用漢字にない漢字さえも間違えずに書けるまで進歩した。いや冗談を言っている場合か。美徳の言葉だったのに。美しい日本語だったのに。それなのに…(泣)。

今一度思い出そう。忖度は、相手がどう思っているか、どうしてもらいたいのかをおもんばかること。基本はおもいやりや優しさである。相手は年上の人、立場が上の人だ。日本語は省略や曖昧な表現が多いが、忖度は言語化されない状況を巧みに読み取って、相手の求めることを理解するという大変デリケートで聡明でないとできない技である。そう、本来は。「斟酌」(しんしゃく)という言葉もある。こっちは幸いまだ汚されていない。

本来の語義が失われた「忖度」、権力者におもねるといった意味合いの混じる「忖度」は、2018年に入ると海外紙にお目見えした。最初に見たのは英語紙で、そのあと仏ルモンド紙Au Japon, le premier ministre fragiliséに、3月の森友問題初期に登場。 « sontaku »のあと、説明的に言い換えを付けていた。とはいえこの言葉が国際語になることはないだろうし、ならなくてよい。そういえばドイツ語には忖度に相当する言葉がある、と朝日新聞で読んだのを思い出した。ちょうど1年くらい前で、同時期にTwitterでも日本語以外ではどう表現するかという議論で盛り上がっていた。

朝日新聞にはドイツの政治学者の談話が載っていた。

忖度に似た言葉に”Vorauseilender Gehorsam”(直訳:先回りした服従)というものがある。これはナチスの時代の思考形式、そしてなぜユダヤ人虐殺のようなことが起きてしまったのかを説明するときに用いられる。

皆まじめな良き市民だった。家では良き夫で息子で隣人であった。よく働くばかりか、すすんで先回りして従順であり、異議を唱えることはなかった。そうした態度が悲劇を生む土壌を作った。ヒトラーの部下なら、総統の命令を待たなくても意をくんで行動する。先んじることはライバルに勝つためにも重要だ。

「先回りした服従」はウィキペディアもある。→ Vorauseilender Gehorsam – Wikipedia

 

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ひきこもり

数年前からフランス語、英語の報道で文字では見ていたが、人が話しているのを聞いたのは2016年の仏ニースのテロ事件のときだ。犯人の近所に住む青年がインタビューに答えてこう言ったのだ。「あいつはひきこもりだったよ」。フランス人なので”h”は無音化し、(h)ikikomori,イキコモリと発音していた。部屋に閉じこもって出てこない、というのではなく「人を避け、殻にこもる」くらいの意味で使っていた。このとき初めて「ひきこもり」が普通名詞化しているのがわかった。

フランスでもアメリカでもこの現象が思春期の子どもたちに見られるとし、ますます注目を集めるようになった。ネット上にはいろいろなサイトもあるし、フランス語では下のような本↓(2冊とも”HIKIKOMORI”の文字が見える)も出版されている。

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先月11月にもフランス2(NHKBS)でひきこもりの問題を扱っていた。

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Témoignage : sortir me rend malade

(↑こちらで見られます)

15歳のときにひきこもりになり、母親と二人でひっそりと暮らす男性。サングラスとキャップ着用でインタビューに応じてくれた。母は最初のうち息子を怠け者だと思っていたが、本当は苦しんでいたのだと気づく。男性は今では隣人と二人きりなら話せるし、自分の体験を本にしてもらっている。

この男性は自分の気持ちをよく表現できるのでいいなと思った。ただ「ひきこもり」はフランスではまだタブーだという。

ビデオの終わりのほうに、日本人でひきこもり生活を体験した岩井 秀人氏が登場。(いわい ひでと、1974年6月25日 - 。劇作家、演出家、俳優)。自身の体験を語ってくれる。私はこの方を知らなかった。

16歳から20歳までひきこもり状態だったが、そのかん映画をたくさん見たり、ゲームをしたことで目覚めがあり、そのことが後の人生を構築するきっかけとなったと語る。

また、現在の日本では「そういう時期もあるよね」と以前ほどタブー視はされていないと話す。

言葉を二つ紹介しました。今日はここまで。

次回はいい意味の日本語を紹介しますね。では~!

 

🌸国際語になった日本語シリーズ 過去記事

*1

cenecio.hatenablog.com

*2

cenecio.hatenablog.com

 

国際語になった日本語シリーズ 続き

cenecio.hatenablog.com