ディストピアな世界 バンクシーのテーマパークとホテル
ポピュリズムの波をオランダでせき止める
ことばっておもしろい。
ポピュリスト、ポピュリズム、こうしたことばはすっかり定着した。アメリカ大統領選挙以前からヨーロッパでは極右政党、特にフランスのルペン氏やオランダのウィルダース氏が勢いを増すにつれて、その文字を見る頻度はあがっていった。トランプ氏が大統領に選ばれた悪夢の後、ヨーロッパでももしかしたら、と不安に思ったものだ。
「もうじきオランダ総選挙…ちょっと不安。オランダ人があの男、移民排斥&EU離脱を叫ぶ自由党(PVV)党首を選ぶようじゃ、ヨーロッパは終わりだな」
De grote Jeugdjournaal Verkiezingsuitzending! | NOS Jeugdjournaal後列右端がその人
そんなことをつらつら考えていた。
というのも、このウィルダース氏は「2016年の政治家」に選出されたのである。これはTV局の”EenVandaag”が毎年4万人を対象に行うアンケートで決まる。約四分の一の人がこの極右政治家に入れた。しかも前の年2015年も選出された。ついでにいうと2010年と2013年もそうだった。
ウィルダース氏は過激な言動はあるが、行動力があり、国民(おもに低中所得者)が抱いている不満を解消し、オランダを変えてくれるのでは、と期待したらしい。ウィルダース氏の反イスラムの主張には賛同しないが、高齢者医療を変えると言っているのは評価するという人も多い。(ちなみに2位は約10%の票で緑の党の人だった)。
結局選挙は、ルッテ首相率いる自由民主党(VVD)が勝ち、「誤ったポピュリズムと戦う」「欧州がポピュリズムの波に飲みこまれる前にオランダでせき止める」という約束を守った。ルッテ首相のVVDは33 議席。しかしウィルダース氏(PVV)は20 議席で、第2位につけた。
EU離脱という選択が消えたことはほっとする。株式関係の人たちは胸をなでおろしたようだった。
忖度する
そんたくする。これも毎日何度も何十回も聞くし、みなさん漢字も間違えずに書けるのではないかな。おもしろくもなんともない森友劇場が毎日TV/新聞などで繰り広げられているが、本当にうんざり。10字以内でまとめると「夫人の職権濫用事件」である。
斟酌する、体面を慮る、とは違うのだろうか。
ディストピア(dystopia)
ユートピア(理想郷)の反対の社会という意味で、私はずっとオーウェルの小説『1984年』や『動物農場』の世界をいうのだと思っていた。
しかしトランプ氏が大統領になってから、あるいはその前からこのことばは盛んに広く使われだして、自分の知らない小説や映画について人々があちこちで語っているのを見聞きし、そんなにたくさんあるのかと驚いたものだ。30作品以上はあるのでここでは触れないのだが、欧米のメディアを通して知り「これ、なあに?」と思っていたら、SPYBOYさまのブログで紹介してあった。そんな偶然もあるんですね。
そのビックリ映画”Ideocracy”はこちら。解説も写真もとってもおもしろいです。
SPYBOYさまいわく「一部のマニアには有名なおバカ・コメディ『26世紀青年』(原題:Ideocracy=バカ民主主義)という米映画」だそう。
ディストピアな世界をのぞいてみよう。
え、もうその中で暮らしているようなものだって?
いえ、ちょっと違うんだな。覆面芸術家バンクシー(Banksy)がプロデュースしたディストピアのこと。
バンクシーはみなさんご存知と思うが、1974年にブリストル生まれのイギリス人ということで、名前はロビン(Robert、Robin)というらしい。
まちなかの壁にステンシルを使って、政治的・社会風刺的なグラフィティ(絵や文字のこと、一見落書きに見えることも)をゲリラ的に描いている。
バンクシーのHP http://www.banksy.co.uk/
まずひとつめは
テーマパーク“Dismaland”(ディズマランド)
2015年夏だけ、イギリスの海岸沿いの敷地にたてられた“Dismaland”は、当時話題になったのでご存じのかたも多いと思うが、初めての方のために簡単な解説を。“Dismaland”という名前は、かの有名なネズミが主役の楽しいテーマパークをもじっている。あちらが「夢の国」ならこちらはバンクシーがプロデュースした「陰気な国」「憂鬱な国」。
下の予告編では、両親と子ども二人が“Dismaland”で過ごす1日が紹介されている。
写真: http://www.thisiscolossal.com/2015/08/dismaland/
「ディズニー社の法定代理人の入場お断り」である。
敷地は約1万㎡。上の写真、歪んだ人魚姫アリエルと背景の荒廃したシンデレラ城。
シンデレラのかぼちゃの馬車だが、ダイアナ妃の事故をモチーフにしているらしい。
…とまあ、衝撃的な作品ばかり。上のサイトで他の写真もご覧ください。
もうひとつはホテルで、こっちは営業している。
世界で最も眺めの悪いホテル
(予約:http://banksy.co.uk/bookings.html)
窓から見えるのは壁ばかり。
そう、ここはイスラエル側とパレスチナ自治区を隔てる壁である。この壁に向き合うようにホテルは建てられている。
バンクシーは以前、"Flower Thrower"という絵をここの壁に描いた。手りゅう弾ではなく花束を投げる若者だ。
今はこのようなポスターになっている。
他にも5点の絵を壁に残しているバンクシー。
このベツレヘムにホテルを建て、人々の関心をもう一度この地に向けさせる意図のほか、ホテル内でパレスチナ人のアーティストたちの作品展を開く計画もあるのだという。
いえ、これは人形。名前もニューヨークの高級ホテル The Waldorf-Astoria(ウォルドルフ・アストリア)をもじっている。The Walled Off Hotel(ウォールド・オフ・ホテル=壁で分けられたホテル)。
部屋は全部で10室、バンクシーの作品はあちらこちらに飾られている。
ベルギーの記者が撮った写真でホテルを拝見。
www.demorgen.be(ベルギー・オランダ語紙より)