(前回フランスの日本化がおもしろい!日本酒ブームの欧州&㊗『鬼火』銀賞受賞! -1- -の続き)
北海道の人ならご存知でしょうか。chancepapaさまはこの日本酒ブーム、TVでご覧になったことがあるとコメントにあったので、もしや、こちらシェティル・ジキウン氏(kjetil jikiun、写真)の作る「裸島」の話?
スカンジナビア航空の旅客機パイロットのジキウンさんは、何度か日本に飛んでいるうち、あるとき日本酒と決定的な出会いをする。飲んだ瞬間たましいを持っていかれた、一目惚れだったと言います。その後来日の度に飲み歩き、ついに大阪の大門酒造で醸造を学び、2010年からノルウェーで酒造りを開始…という、驚きの経緯です。
Norsk bryggeri med sake-suksess i Japan
ジキウン氏がもともとクラフトビールの醸造所も経営していたことも、日本酒への挑戦のハードルを下げたと思います。北海道の米「吟風」を使うのは、ノルウェーと緯度が近いから。山廃仕込みという、伝統的だが手間のかかるやり方を採用したのは、ノルウェーの自然の菌を活かせるからだといいます。問題となる水ですが、グリムスタ(地図参照)の澄んだ雪解け水を使っているそうです。ミネラルのバランスがとてもよいのだそう。酸味が強くてパワフル、すっきりした後味が残る…こうした特徴はヨーロッパの人の口に合い、それも考慮に入れて酒造りをしています。
現在純米酒、にごり酒など6種類を生産し、デンマークやカナダ、イギリス、アメリア、スペイン、イタリア、そして日本でも販売されています。
(赤印グリムスタGrimstad。私はオスロやベルゲンには行きましたが、この辺はまだ)
Nøgne ø 裸島
このノルウェーの醸造所Nøgne ø(ヌグネ・エウと読み、その日本語訳が裸島。ノルウェー作家ヘンリック・イプセンの詩に由来)は、昨年2016年の3月、”NHK WORLD”のなかでも、またさらに遡り2013年のNHK北海道放送の特集番組でも紹介されて大きな反響があったそうです。
ノルウェーも他の欧州諸国と同じく、和食ブームが押し寄せており、特に新鮮な魚介類がたくさんとれるノルウェーではすしバーが大繁盛です。すしをつまみながら日本酒をおちょこで飲むのが流行なのです。(↓おちょこで乾杯するノルウェー人たちの画像があります↓)
醸造所Nøgne øで日本酒担当は↑白い作業着のカナダ人、ベネット(Brock Bennett )氏。この人のエピソードも大変に興味深い。なんと化学者なのです。
製薬会社の研究者をしていたが、10年くらい前カナダの日本料理店で味わった日本酒に衝撃を受け、店で買うだけでは飽き足らず、ネットで作りかたを調べながら自宅で醸造していたという情熱の人。
そして2009年に大阪で開かれた日本酒のワークショップに参加したとき、ノルウェーのジキウン氏と運命的な出会いを果たし、二人は意気投合します。ベネットさんはバンクーバーに戻ると、醸造所”Artisan Sake Maker”というところでいったん働き始めますが、そのあとノルウェーへ誘われるのです。
「米、水、麹、酵母の奇跡に魅せられて」
今年の春読んだクーリエジャポンの記事がおもしろかったです。ベネットさんは
「Q:日本酒造りのどんな部分に魅力を感じるのか」という質問にこたえます。
カナダ人がノルウェーで醸すパワフル日本酒、その名も「裸島」|北欧の雪解け水が生んだ珠玉の一杯を! | クーリエ・ジャポン
米、水、麹、酵母から成る日本酒造りの過程すべてが大好きです。
この4つのシンプルな材料が、化学、直感、そして経験の絶妙な融合を通じて酒に姿を変えるところが素晴らしいと思いますし、神秘的ですらあります。
それに、酒造りは奥が深い。仕込みを経験すればするほど、よりよい酒を生むためのヒントが見えてきます。日本酒って、造るたびに進化していくんです。ですから、私の酒造りに対するモチベーションが衰えることはありません。
私の好きな日本酒は、山廃の純米酒と純米吟醸酒。香りのなかにかすかな強さがあり、調和のとれた酸味とうまみ、さらに米と水の特徴がわかるようなものが、私の理想の日本酒です。
化学者と詩人と求道者の側面を併せ持つベネットさん。
ノルウェーの日本酒、これからもますます楽しみですね!
フランスの議員たちが「日本酒友の会」を結成
日本の議員が「ワイン愛好会」や「ベルギービールファンクラブ」(←あるかどうかも知りませんが)を作って集うのとはわけが違います。
2013年5月、フランス社会党のGilbert Le Bris氏は、社会党の議員たちだけでなくUMPの議員も巻き込み、「日本酒友の会」( l’association parlementaire des amis du saké japonais)の結成を呼びかけました。フランス人は、日本旅行でおいしい日本酒を味わったことや和食ブームも背景にあると思いますが、原発事故のあと、日本酒の蔵元が被災したことに心を痛め、日本の友人たちの力になりたい、日本酒のイメージを高めたい、という強い思いからだということです。
ドパルデュー氏も大のファン
このほか ”Becs Fins de Sakés”というフランスの日本酒愛好家の会もあります。この初代会長を務めたのはあの有名な俳優、ジェラール・ドパルデュー(Gérard Depardieu)氏で、自分も日本酒ファンなので日本酒の普及にひと肌脱ぎたい、とパリにある豪邸を試飲会の会場として提供してくれたそうです。
写真:サケマニア(sake mania)が集うドパルデュー邸。2012年9月Le saké, nouvel alcool chouchou des Français - L'Express Sakémania
日本酒の話はまだまだあるのです。長すぎるので今日はここでいったん切ります。
ところで先日の報道韓国のマッコリ輸出が5年で75%減 日本酒と対照的
安定した海外市場の構築に失敗して減少するマッコリ(韓国伝統の濁り酒)と、高級なイメージを確立して売り上げを伸ばす日本酒との対比が興味深い。
フランスに浸透するニッポンあれこれ
①お料理の本は数えきれないほど出ているのですが、クリスマスプレゼントの一案に、と楽しいアイディアが目をひきました。ポチしてみてください。12秒で中を見せてくれます。出版社「おまけブックス」omakebooksの本。
#geeksfood #geeks #Food @omakebooks pic.twitter.com/5y5r3T1oWY
— manganews (@manga_news) 2017年12月8日
②”BENTO” はすっかりお馴染み
今やキャラ弁&デコ弁を作るフランス人も多い。この火付け役はトマ・ベルトランという京都在住のフランス人で、弁当をこよなく愛し、弁当箱の魅力を世界へ発信するべく、弁当箱専門店”Bento&co”を2012年にオープンしました。
当時日本でもフランスでも多くのメディアに取り上げられたので、皆さんもご存知かもしれません。現在は世界90カ国に輸出しているそうです。
フランス人は通販でここから好みのものを買って自分なりのお弁当を作ります。
とりあえず今日覗いてみたらサイトのトップはこんな風。可愛い~!
La Boutique du Bento – Bento&co
追記:2018年6月
Portrait d'un Français qui réussit au Japon, avec son entreprise de boîtes à bentô. Des modèles qui sont introuvables ailleurs, et un concours du plus beau bentô qui attire des gens du monde entier... https://t.co/2uxQRNWg8T
— nippon.comFR (@nippon_fr) June 16, 2018
③パリ・リヨン駅構内に 駅弁売り場が。
JR東日本・NRE、パリの駅弁売店「EKIBEN」好評につき出店期間を26日間延長 | マイナビニュース
テロもあって、2015年も終わりから2016年の春は暗く不穏な雰囲気でした。私もブリュッセル空港が破壊されたために使えず、帰国難民になり、パリまで流れてきていました。そのころパリでは駅弁を売っていたんですね。当時は全然知りませんでした。たぶん皆さんは日本のメディアを通してご存じだったんでしょう。
JR東日本とNREが、パリ・リヨン駅に期間限定の駅弁ショップ「EKIBEN」を出店しました。年末12月の予定が、テロのせいで3カ月遅れたのですが、これが好評を博したため、さらに一か月延長したということです。シャロレー牛を使用した和風弁当「パリ・リヨン弁当」や「幕の内折詰弁当」など5種類の駅弁が販売されました。写真で見るかぎり、とってもおいしそうでした。フランス人は日本への旅行を通して「弁当」にはかなり馴染んでいます。その素地があるから受け入れられるんじゃないかと思います。
また次回に続きます。しばしお待ちを!
コメントありがとうございます。
アイディア次第でいろんな挑戦ができますね。いちご一笑 (id:sinsintuusin)さまが、
長崎の離島の会社で焼き芋を真空パックし、電子レンジで加熱して食べる、という商品を販売している会社があって、海外に販路を広げたい・・・
と書いてらっしゃいました。いいアイディアだと思いますよ。ぜひ!
日本酒にしろお茶にしろ、日本人が離れて消費が落ち込み、苦しんでいる生産者も多いいっぽうで、舌の肥えた外国人がその良さに気づいて広めてくれる。なんとありがたいことでしょう。
日本家屋や伝統工芸品などにもよくある現象ですね。日本人は、もっと自分の価値観でしっかりものを見る力をつける必要があると思いますが、日本の教育は自分の頭で考えることを教えませんから、日本の文化は外国人が支える、なんてことになっていくのかもしれません。
まったくおっしゃる通りなんで、私たちは自国の文化をよく知り、もっと積極的に売り込まなければなりませんね。今や南部鉄器(*註)はフランスの家庭に普通にあったりして驚きます。日本茶もよく飲まれています。「ないのは京都の水だけだね~!」と笑い、どらえもんの「どこでもドア」を欲しがっていました。
まさに花の香を昨晩、頂いたところでした。フランスの赤ワインビネガーと刻みエシャロットで食べる牡蠣は日本酒こそが合うのではないか、と密かに思っております。
前回記事で フランス人が選ぶ審査員特別賞だった、熊本の「花の香」を召し上がっていらっしゃるマンゴーさま。ああ、羨ましい!
フランス人の有名シェフが言っていましたが、魚介類のほか、卵料理(ワインは全然合わないと言い切っていたのが印象的)、キノコ料理、フォアグラなど、そしてスイーツにも日本酒はバツグンの相性だとのことです。
みなさん、いつもコメントをありがとうございます💛
追記:南部鉄器(*註)
追記:獺祭の社長の訴え
地元山口県の地酒ということもあり、安倍総理が来日したオバマ前大統領にプレゼントしたことでも話題を呼んだ「獺祭」。海外でも人気で、三ツ星レストランのフランス人シェフ、ジョエル・ロブション氏も認めるほど。パリ中心部に「獺祭」の名を冠した店を出店する予定もあるのだという。
「獺祭」はその人気の高さゆえ、転売されるなどしてプレミアがつき、…
追記:2018年4月 めちゃくちゃカッコいい旭酒造会長 桜井博志氏のインタビュー!