ノートルダム大聖堂の火災と「復元」の問題
ノートルダムの隣で生まれたけど、なんか質問ある?
と長男。産んだのは私ですけど、なんか質問ある?(笑)あまり答えられないと思うけど。
いやいや笑っている場合ではない。火災はショックだった。あれから毎日ニュースを追っている。
まずは短く病院のことから。「ノートルダム大聖堂の隣」と言っているのは、下の赤印、オテル・デュー=パリ市立病院。
右下の緑がノートルダム大聖堂。
ここはセーヌ川の中州に浮かぶシテ島で、パリ市内でも最古の地域のひとつ。シテ島には病院に向かい合う形でパリ警視庁、そして司法局とコンシェルジュリー(=監獄)などがあり、観光スポットである。
病院はもとは救済院として7世紀に建てられたが、現在の建物は19世紀半ばころのもの。1980年代にもらったオテル・デューのパンフレットがこちら。
表紙以外の、パンフレットの中の絵や写真が古くておもしろい。昔の人になった気分だ。
関連:
眠れない夜中に火災を知って・・・
3時くらいに目が覚めてもう一度眠るのは無理そうに思えたので、twitterをのぞいたら、オランダ人ジャーナリストの方が第一報を知らせてきた。
Parijs, maandag 15 april 2019...#NotreDame pic.twitter.com/ZIuAL2dBi4
— Hans Vos (@voshans) April 15, 2019
え、まさかそんなことって!と思っていると、1時間後もう塔も落ちて大惨事になっていた。
Parijs, maandag 15 april 2019...#NotreDame #NRC pic.twitter.com/m98BtAgaTX
— Hans Vos (@voshans) April 15, 2019
その後パリ在住の日本人のつぶやきを読んだ。「煙草の不始末に違いないね」と書き込みをする人あり。夫(つい1週間前にパリから帰ったばかり)に言うと「そんな世界遺産の建造物でタバコはないんじゃないか。それにパリの人、くわえタバコや吸い殻のポイ捨てもずいぶん減ったよ」 と。
しかし
TVや新聞のメディアは、吸い殻が7個見つかったことや、エレベーター設置のため電線が木材に触れる形で配線されていたことなどを伝え始めている。まだ調査は続いているが。
火災の30分前に1回目のアラームが鳴り、その時に気づかなかったのが悔やまれる。これも出火の位置が誤って表示された(という主張)で、2回目ではすでに手遅れだったという。人為ミスか。
(写真:3年前に私が撮ったもの。3月なのでまだ木立に葉がなく大聖堂がよく見える)
(同じく3年前、朝早くから観光客が並んでいる)
パリ消防旅団
消防隊員の活躍には惜しみない拍手が送られている。屋根の木材でできた部分の消失は免れないと覚悟し、聖堂自体が崩壊しないように石壁に放水して冷やしつつ、内部の火災現場から宝物などを運び出す作業の援護をしていた。被害は最小限に抑えられたそうだ。
Le père Fournier, aumônier des @PompiersParis, est allé avec des pompiers dans la cathédrale #NotreDame pour sauver la couronne d’épines et le Saint-Sacrement... pic.twitter.com/4IoLVdoJZW
— Etienne Loraillère ن (@Eloraillere) April 15, 2019
こちらのフルニエ神父、消防隊員とともに搬出活動をしたあと、インタビューで一連の経過を説明してくれた。
正しくはパリ消防旅団(Brigade des sapeurs-pompiers de Paris(BSPP))というべきで、フランス陸軍に所属する消防工兵部隊である。有事の際は国防省の指揮下に入るが、平時は内務省とパリ警視総監の指揮を受け、フランス国家憲兵隊と同じ地位にある。(ウィキペディアによる)
ほっとするニュースもあった。7000本ものパイプを持つあのオルガンはどうなったか、心配されていたが、
文化財専門家やオルガン製造技師らが23日、2時間かけてオルガンの内部を調べたところ、「オルガンは隅々まで粉じんまみれになっていた」が「解体することなく清掃できそうだ」という。・・・
ミツバチも無事。 そんなことも嬉しい。
火災前 夜のノートルダム
(写真:今年3月、夫が撮影。塔の周りに足場が見える)
どう復元するか。
尖塔のデザインをコンペで公募、という案と対立するように、歴史ある建造物に変更を加えるのはいかがなものか、という意見がある。そっくり元の形の復元をめざせば、マクロンさんのいう「5年」など到底むりだろう。木材は1300本必要らしく、木材は乾かすのに年月を要するから。チタンなどを使って早い再建をめざすのはどうか、などの専門家の意見もある。
世界の事例も盛んに紹介されている。クーリエ・ジャポンhttps://courrier.jp/news/archives/159177/から引用して紹介する。
金閣寺の場合
国民にとってのショックと損失はノートルダム火災と同様だったろうという。幸いに明治時代に作られた詳細な設計図が残されており、それに沿って再現された。ポイントは「忠実に再建」というところ。1952年から3年で完成した。
名古屋城の場合
引用
名古屋城は第二次世界大戦中、アメリカ軍の空襲によって焼失した。
岡山城、広島城、大垣城のような当時の現存天守のほか、戦前からすでに寄付で再建されていた大阪城なども同様の被害を受けている。
1959年、名古屋城に5階立て天守閣が再建される。その際、法律や安全性を考慮して近代的な工法や資材が用いられ、エレベーターも敷設。だがこれは「本当の再生」でなかったとの判断から、2007年には自治体が木造での再建を改めて発表している。
2018年には将軍の宿泊用御殿だった17世紀の「上洛殿」や「湯殿書院」が復元公開され、また天守閣の木造復元をめぐっても議論が起こっているなど、いまも過去と現在の狭間で揺れ動く名古屋城をレクスプレスは紹介している。
ここでわっとさんの名古屋城見学の記事、言及させてください。
・・・
この際だから意見表明をしておこう。現名古屋市長らが主張するエレベータなし木造天守閣再建計画に反対します。
オリジナルに近い形で再建しようとすると、階段は相当に急なものになり、昇降できない人の割合は想像以上に大きくなるはずだ。この三層櫓の階段も、私は上れたが同行者は「やめとく」とのことで1階で待ってもらった。(続く)
わっとさん、ありがとうございます。
私も同意見。やはり時代に合った修復・再現、あるいは改築が必要だと思う。
素材や工法だけでなく、世界中で観光客の数、訪問数も昔と比べたらすごく増えている。安全を考えてスペースを広げたり障がい者や高齢者、子連れに優しい設計にしてもらいたい。チャンスがあるときにできる範囲でやればいいのに、といつも思っている。
(写真:今年3月、息子の撮影。ノートルダム入り口の彫像、自分の首をもつ聖ドニ像がお気に入り)
今日はここまでです。
少しお休みしますが、また浮上してきます^^
皆さま、どうぞ楽しい連休をお過ごしくださいね。
🌸ギャラリー
https://pbs.twimg.com/media/D4OhUYTUIAAKa0x?format=jpg&name=900x900
https://twitter.com/RPanh/status/1117914885243858944
🌸メモ
Notre-Dame: les 16 statues qui ont échappé aux flammes, présentées au public https://t.co/slvzs8BaSa #AFP pic.twitter.com/xLCgsl0PkU
— Agence France-Presse (@afpfr) April 30, 2019
Le projet de loi Notre-Dame adopté en nouvelle lecture par l’Assemblée https://t.co/mM6Bg3h7N7
— Le Monde (@lemondefr) July 3, 2019