『キツネ』裏切りを許すか。友情は勝つのか。(続)

前回記事衝撃と奇跡の絵本『キツネ』再び。「私が目になるからあなたは脚に」 の続き。皆さまからいただいた熱いコメントの数々にお答えする形で再度扱ってみます。

 

裏切った者を許すか。

前回は私がハッピーエンドを提示した。「私がイヌだったら目が覚めてカササギがいないのがわかったとき、探しにいくのではないかと思う」。両者は再会し、ともに巣に戻るという終わり方。まあ、これなら子どもたちも納得するし、むしろ子どものほうが先に考え付く可能性は大きい。もっといいエンディングだってあるかもしれない。

たまうきさまni-runi-runi-ruのコメント:「犬は鼻も効くし、お利口なので、カササギが一部始終を話し出す前に 話さなくても事情は分かってる、一緒に帰ろう。というのでは」。犬好きで心優しいたまうきさまらしい。イヌはカササギのすべてを受け入れるのだ。

マミーさん(id:mamichansan)はこう言う。「イヌには裏切りとか、キツネの嫉妬とか、理解できないんじゃないかな」「二人だけの、閉じられた、完璧な、かけがえのない世界を、悪気なく危機にさらすのも、きっとイヌに違いない。って気がするのです。 純真でやさしく正しい性格って、時々たちが悪いのかも。」

それだから

「 朝、目覚めてキツネとカササギがいないことに気づいたイヌの頭には、「心配」しかないと思う。 何か事故があったのか?何かトラブルに巻き込まれたのか? いても立ってもいられずに駆け出すイヌ」(ここまでマミーさん)

テキストを最初からよく読むと、イヌの性格造形は「善良」、さらに「献身」「寛大」。だからよそ者のキツネをあっさりと自分たちのねぐらに入れてやる。カササギがキツネのことを不気味で怖いと訴えても耳を貸さない。結果的に、ほぼ分身ともいえる大切なカササギを危険に陥れるのだ。イヌは純真で一途だが単純すぎる、おめでたいほどだ。鈍感だともいえる。心の弱さや負の感情や機微に疎い。それはいくら説明したり警告したりしてもわかるものではない。イヌはそのように描かれる。

しかしまたイヌは「許す」存在だと思う。カササギがわけを話し、事情をとりあえず理解したイヌは、また一緒にやりなおそうね、と言う。そしてその後一層強いきずなで結ばれて暮らすのだと思う。

アンさんannenevilleの意見には目を開かれた。「この狐、別にカササギを殺して食べる訳でもなく、ただ誘惑して捨てる。 狐に、一見なんのメリットも無さそうな行為…」

カササギを殺して食べる!ちっとも考えてみなかった。なんたる手落ちだ。前回エントリにわざわざ「木々の間から火の舌(a tongue)のように赤い体がチラチラ見え隠れしている」という一文を入れておきながら!舌なめずりしているような強烈なメタファーだというのに!

しかしアンさんのおかげでわかった。殺して食べるより荒野に放置することでイヌとの関係を断ち切る。こっちのほうがずっと残酷だった。カササギは"It would be so easy just to die here in the desert"と考えるくらいだから。

これまた一度も考え付かなかったご意見は:

mamezouya id:mamezouyaさま「イヌが、カササギが、狐を許すのかどうか(許すことによる大きなカタルシス)、更には狐がそのことをどう受け止めるか…」。

イヌがキツネを許すかどうか、イヌがキツネについて何か思うところがあるかについては、私は一度も考えてみなかった。

ギアさま(id:sinsintuusin)キツネが「自分の孤独を理解して欲しいと訴えている様にも読み取れます。」「カササギも今回の事で狐を理解し、また不自由な身体で何とか犬に会いたくて必死に家路に向かうカササギを、実は他の動物に襲われない様そっと陰から見守っていた狐も結局、再び背に乗せ犬と出会いそれ以降三匹が幸せに暮らす。と言うのはどうでしょう?」

キツネを許すか。キツネの孤独を思いやれるか。三匹で幸せに暮らすエンディングはあるか。私はキツネに救いはないとずっと思っていた。テキストにはこのようにある。キツネが洞穴にやってきた頃。

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「夜になるとキツネの匂いが洞穴いっぱいに広がります。怒りと妬みと孤独(rage, envy, loneliness)の匂いが。」

キツネの性格造形はくっきり描かれている。幾分ステレオタイプな古来からある、狡猾で冷淡なキツネ像だ。(私はキツネが大好きなのでここは気に入らないのだが。とりあえずお話なので我慢する)

ギアさまは、キツネに救いはないと思った私とは正反対に、みんなハッピーな結末を考えてくださった。このことは非常に大事。というのも海外の学校やワークショップでは、「キツネのフォローはどうするか」について必ず考え、話し合うと思うからだ。すべての登場人物について分析し、その立場に立って考える。寸劇をやる。そうした作業を通じて理解を深めるのである。

 

友情ふたたび

カササギもイヌもキツネに負けなかった。自分たちが育んできた友情がどれだけかけがえのないものか、改めて気づき、これからも互いを大切にして仲良く暮らそうと誓い合ったことだろう。

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飛べないカササギがぴょんぴょん跳ねながら巣に戻ろうとする最後のページ。

ここに希望を読み取らずにはいられない。

 

ダンス劇『キツネ』

前にも紹介したように、絵本『キツネ』はオーストラリアの作家&画家によって書かれた。この夏、オーストラリアではこれをパペットとダンスの劇に仕立てたものが上演された。子どもから大人までみんなで楽しめる劇。ちょっと写真を借りてきたので貼り付けてみよう。

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Photo: Simon Pynt

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www.weekendnotes.com

みなさん、いかがですか?トレーラーは記事内にあるので興味のある方はどうぞ。他にも写真がありますよ。

 

では『キツネ』これで終わります。コメントに感謝いたします。

また~!