神様からメールで余命を知らされたら?(+Reddevils続報)

神様から余命宣告

 

DIEU EXISTE

IL HABITE A BRUXELLES  

(神は存在する

ブリュッセルに住んでいる)

という少女のナレーションで始まる映画『神様メール』を観てきた。ベルギー・フランス語映画というくくり。(もちろんベルギー・オランダ語映画もあるので。これはフランスとルクセンブルグの共作でもある)

ファンタジーであり、ギャグ満載のコメディーでありブリュッセルという町の観光案内のようでもあり、人生に疲れて元気がない人への応援歌でもあるが、詩情もたっぷりなので、大人のおとぎ話と言っておこうかな。

大人の、としたのは年齢制限あり、つまりPG12なためである。やはり男女の愛が中心に据えられている。

f:id:cenecio:20160701170919p:plain

主人公はこの娘、10歳のエアちゃん。つまり神(Dieu)の娘、ママ(女神)もいるし、兄は、ほら誰でも知っているイエス・キリスト(ここではJ.C.=Jesus Christと呼ばれる)。

この神がろくでもないオヤジで、いつも汚い部屋着姿、くわえタバコ、酒浸りで、趣味はというと、TVでスポーツを見ること、下界の人間をいじめて遊ぶこと。パソコンで人間の運命を面白半分に操り、くだらない掟を山ほど決めたり、ご丁寧にも部屋にジオラマまで作って、列車を脱線させたりだの、天災を起こしたりだのして嬉々としている、サイテーの男。

 

f:id:cenecio:20160629184337p:plain

家庭内の暴虐ぶりにもあきれる。高圧的で威張り散らすから、妻はほとんど口がきけなくなっているし、娘をズボンのベルトで打ったりと、ハラスメントやり放題。

妻の趣味は刺繍と野球カード遊び。この「刺繍」があとで大きな意味を持ってくる。

 

こんな生活嫌だ。父に(神に)復習してやろう。神はパソコンがなければ無力も同然。

f:id:cenecio:20160629184814p:plain

 

あるときエアは、酔って寝ている神から鍵を盗み出し、神の部屋に入り、人間に余命宣告のメールを一斉送信する。

言い忘れたが、兄キリストは、やはりオヤジに反発してすでに家を出ていた。(聖書にあるようにね)。でも実は小さなキリスト像となって、エアの部屋にいる。棚の上の、仏像フィギュアの隣に。エアとだけ話ができ、いろいろな知恵を授けてくれる。

f:id:cenecio:20160629184249p:plain

余命を知らせる、おびただしい数のメールがブリュッセル上空を飛んでいる。

イゴール、余命は11カ月と16日」というふうに。人々は死ぬ時期を知ったわけだから、どう生きようかと真剣に考えるようになる。戦地でも戦闘がいったん止む。

もしかしていいことなのかな。

 

人類創世は?

そう、もちろんあの神がやったこと。

神ははじめにブリュッセルの町を作った。そこにドンと裁判所http://cenecio.hatenablog.com/entry/2016/05/02/111449)を置いた

それからキリンやニワトリと作って町に放ったけれど、結局、自分に似せて男を一人作った。裸のまま道のまんなかに置いてみた。男はある建物に入り、イブに出会う。

(この建物は王立図書館http://cenecio.hatenablog.com/entry/2016/03/02/162553)で、イブがいたのは最上階の食堂部分

この辺、ブリュッセルの映画館では大笑いだろう。あちこちにブリュッセルっ子にしかわからない目くばせがいっぱい。

 

下界におりたエア

神と住んでいたアパートにはドアがない。人間界へいくには、家のドラム式洗濯機のダイヤルをしかるべき数値に合わせ、それから中に入って進んでいく。するとブリュッセルのまちなかのコインランドリーとつながる仕組みだ。これを教えてくれたのも兄のJ.C.。兄もこうやって家出をしたのだ。

エアは家を出る前、神の部屋の引き出しから6枚の人間カードを抜きだしていた。つまりこの6人を使徒にするつもりなのだ。使徒はすでに12人いるから、これに6人足すと18人になり、野球のチーム(母の趣味!)がふたつ作れると考えたわけ。

f:id:cenecio:20160701184120p:plain

イエス・キリストと12人の使徒 いわば Beforeバージョン)

また新たにこの6人の使徒の物語を書き、「新・新約聖書」(あるいは「真新しい新約聖書」)とする企画をたてる。

ところがエアは字も読めず、書けないため、人間界で出会った最初の男ヴィクトールを書記に任命する。彼はホームレスで、ケータイを持っていないから余命宣告メールも受け取っていないし、元々そんなことに頓着しない男であった。

エアにつきあってくれ、6人の使徒候補を訪ねて歩く。

1番目の使徒:オーレリー。美人だが、左腕がない孤独な人。エアは相手の体に耳を当てると、その人の音楽がわかる。オーレリーはヘンデルだという。

2番目の使徒:ジャン・クロード。ショッピングセンターで働く独身男。冒険家を夢見ていた子供時代を思い出し、北極を目指して旅立つ。音楽はラモー「鳥のさえずり」

3番目の使徒:マルク。性的妄想になやんでいる。幼い時の思い出に囚われて…。

4番目の使徒:フランソワ。子供のときから死や葬式が好き。スナイパー志望で、人間の命を向こう側へ渡す「渡し守」になりたいと思っている。

5番目の使徒:マルティーヌ。冷え切った夫婦生活を送る有閑マダム。のちにサーカスのゴリラを愛人にする。(フランスの女優カトリーヌ・ドヌーブが演じている)

6番目の使徒:ウィリー。病気がちの少年の望みは「女の子になりたい」。余命54日なので両親は赤いワンピースを買ってやる。

 


LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT - TRAILER

 

 …とまあ、これだけ書いても全くストーリーの展開には触れていない。予告編や映画のチラシでわかる範囲だ。ここからどんどん登場人物が絡み合ってテンポよく進んでいく。

まず、すぐに神が追いかけてくる。人間界でも暴言を吐いたり暴れたりするからぼこぼこにやられる。この辺のドタバタやギャグは、モンティ・パイソンなどを思わせる。神が最後どうなるかもお楽しみ!

 

 ママ(女神)も最後に大活躍する。ネタばれにしないためにもここは堪える。

f:id:cenecio:20160629184314p:plain

かぎ針編みの花のモチーフをたくさんつけた、そのピンクのショール、可愛い!レトロ感がいいな。

 

荒唐無稽、シュール、ナンセンス・・・これらはベルギーコメディのお約束なのだ。ベルギー独特のもあれば、普遍的なのもある。

書記のヴィクトールがしょっちゅう綴りを聞いているのがおかしい。「スケートpatinoireって-tはふたつ?」ああ、私も同じだ!

J.C.はJesus Christより、ベルギーではJean-Claude Van Dammeのほうが先にくるのも笑える。ハリウッドで大活躍した、1960年生まれのベルギー人俳優で、ブリュッセル銅像が建てられ、本人も除幕式に来た。

他にもブルース・リー「ドラゴンへの道」や子供同士ならポケモンのキャラなど、細部も楽しめる。

 

忘れてならないのは音楽。人にはその人の音楽がある。エアが相手に教えてあげると、その曲が流れるのだが、どれもいいし、使い方も効果的だった。

あえてひとつだけあげると


Charles Trenet - La Mer

 シャルル・トレネの「海」。Bing Crosbyもフランス語で歌ったし、英語版はファインディング・ニモ(Finding Nemo)の主題歌に。トヨタのCMにも使われたからみなさんも一度は聞いたことがあるのでは?

ベルギーの海辺(舞台:ブランケンベルクBlankenberghe。私のブログのヘッダになっています)で流れる。

 

英語ポスター

f:id:cenecio:20160629184515p:plain

 

出演者・スタッフのみなさん。監督はエアちゃんの後ろの人 Jaco Van Dormael。

神を捜してみてね。

f:id:cenecio:20160629185534p:plain

 
思い出
個人的には、3月に住んでいた聖カトリーヌ教会地区がロケ現場としてあちこちに見られ、懐かしいやら悲しいやら。というのも、あの連続テロで、思い出が分断されているからだ。あの日を境にあっちとこっちが、自分の中でうまくつながらない。

映画の「神」に関連して出てくる教会(聖ジャン・バプティスト・オ・ベギナージュ教会 )や地下鉄駅(Comte de Flandre、 蘭語: Graaf van Vlaanderen)、運河など、今はちょっと涙が出る。

 

 

映画を見る予定の全然ない人は、下の絵も見て行ってください。

イエス・キリストと12人の使徒に、新たな6人が加わったら、こうなります。

 

f:id:cenecio:20160702093541p:plain大所帯ですね。キリストと18人の使徒。笑えます。

 

 

報告 EURO2016

Reddevils 夢破れて。

f:id:cenecio:20160702094550p:plain

Pijnlijk, EK-droom van de Belgen eindigt al in de kwartfinales

ウェールズを称えたい。

ポルトガル戦の幸運を祈る。

f:id:cenecio:20160702102134p:plain

Belgische EK-droom voorbij na ontluisterend verlies tegen Wales: 3-1 | EK Voetbal | De Morgen

 追記:7月4日

f:id:cenecio:20160704070928p:plain