浸透し深化する日本のサブカルチャー-3- 妖怪を愛するフランス人の漫画『鬼火』&水木しげる追悼

みなさん、こんにちは。

これまで扱ってきたヨーロッパにおける日本のアニメ・漫画関連から、今日はちょっと趣向をかえてみようと思います。

こちらです。

ナニコレ?と思うポスターですね。パリの街かどで見かけたらビックリするでしょう。

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Fushigi ! - Théâtre de Nesle - petite salle | BilletReduc.com

これはパリで上演中の、ネスレ劇場の芝居(Théâtre de Nesle, Paris)で、タイトルが”FUSHIGI!”です。ご覧のように宮崎駿作品からインスピレーションを得ており、オマージュでもあるんです。

歩く城や自分の名前を忘れた川、少女とモンスターなど…いろいろなものが登場します。日本人だったら皆うなずいてにっこりするんじゃないでしょうか。

フランスの演劇人は宮崎アニメのキャラクターたちを自分の中に取り込んでから、オリジナルな夢幻の世界で表出し、しかも毎回アドリブで演じているようです。刺激的ですね。パリにいたら行ってみたかったのに…。

 

妖怪探し

そう、トトロや千と千尋もののけ姫など、日本は精霊や妖怪の国でもあります。

日本人は子どものころから妖怪やオバケの話に慣れ親しんで育ちます。水木しげるの影響は計り知れないし、私の子ども時代は『妖怪人間ベム』も人気でした。現代だって『妖怪ウォッチ』などがあります。

もし同じようなフランス人がいたらやはり驚きますよね。

こちらのフランス人コンビが出版した本がおもしろいんです。(*急いでお断りします。「本」でも「漫画」でもなくヨーロッパの正統的なBD(ベーデーと読む)を踏襲しています)

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(写真下が本体で、上が掛かっていたカバー。前頁カラー刷り。帯の写真も下の方に載せています。)

 

『鬼火 フランス人ふたり組の日本妖怪紀行』 

カバーの折り返しにはこのように書かれています。

日本の精霊たち、狐やタヌキ、その他の妖怪たちは、田舎の道ばたや神社の影に隠れ、道に迷った旅人をいたずらしてやろうと待ちかまえている。

新潟の日本海の近くに住むことになったセシルとオリヴィエは、

そんな妖怪たちをフィルムに焼きつけるという、ちょっと変わった中古カメラを買う。

2人は妖怪たちの姿を写真に撮ろうと追いかけるうちに、この世とあの世を行き来するもうひとつの日本の姿を描いていく。

鬼火  フランス人ふたり組の日本妖怪紀行

鬼火 フランス人ふたり組の日本妖怪紀行

 

 セシルの方は2010年に新潟大学に留学したので、日本語は堪能。留学先に地味な地方都市を選んでいるところにまず好感を持つんですが、セシルいわく、水田やひなびた神社、森、路傍のお地蔵さん、昔の生活様式などが好きなんだそうです。

その留学生活の滞在中に親しく付き合った新潟の人たちや店などが実名で登場します。しかし本書で下敷きになっているのは2014年秋の来日のエピソードだそうで、フランスに戻ると本にまとめ、出版。するとこれが口コミで国内外に広まり、好評を博し、ついに日本へ。新潟大学でフランス語を教えている女性が翻訳した。そういういきさつです。

セシルのパートナー、オリヴィエも絵を描き、二人でAtelier Sentô(アトリエ銭湯

ATELIER SENTOという制作ユニットを結成しています。

またこの本を出したフランスの出版社の名前もおかしくて思わず吹きました。 "Éditions Issekinicho"(一石二鳥出版)Éditions Issekinicho - Beaux livres sur le Japon 

楽しそうでいいですね。

 

これが表紙にかかっていた帯です。帯の表

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帯の裏側

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さて初めに絵を見た時「おや、巴水じゃん」と思いました。朝日新聞が毎月届けてくれる額絵シリーズ「川瀬巴水~こころの風景~」をいつも見ているので、すぐに連想してしまいました。柔らかい郷愁を誘うようなタッチの絵です。

ほらね、と本を開いてお見せしたいところですが、著作権(本日よんばばさまの記事!)に引っかかるようなので控えます。ただ話を進める都合上、このページだけ写真を撮らせてもらいます。

この「妖怪カメラ」!

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 お話は新潟県猿和田(さるわだ)という小さな集落から始まります。古道具屋の店主が中古のポラロイドカメラを勧めるのですが、「坊さんが磨いたレンズが付いてるんだ。バケモンが撮れる」そう言って、フィルム付き1万円で売ろうとします。セシルはおもしろいと思ってそれを買いとります。フィルムといっても撮れるのは8枚きりです。

その後、内野の鳥居参道でキツネを撮ったり、魔法の森で妖怪を探したり、遠くに不思議な灯篭祭りを見たりしながら、住民たちと触れ合って旅は進んでいきます。

こんな辛辣なくだりも。土地の男性が言います。

原発ってのは青白い光を出すそうだね。鬼火とかね、こういう狐火はお化けが出る前ぶれだよ…不吉な明かりでね。すれ違った人の魂を吸い込むんだ…昔からいる怪物にかえて、新しい怪物を作り出したんだな、われわれは。

その後、不気味な弥彦神社や、豪商の館で有名な旧齋藤家別邸なども訪ね、土地の人からいろいろな話を聞かせてもらいました。旅の終わりには新潟県を離れ、恐山まで足を伸ばすのです。

特に筋があるわけではありませんが、私たち日本人が慣れで見過ごしてしまいがちなものが丁寧に描かれてハッとします。また子どものころ怖かった思い出が蘇ってきます。ああ、闇が怖かった。きっと妖怪もお化けもあちこちにいたんだろうけど、見ないようにしていたなあ。河童は会ってみたかったけれど、雪女はごめんだな…。

 

さて、二人は妖怪の写真を撮れたのでしょうか。興味のあるかたはご自身でどうぞ確かめてください。

ちなみに8枚撮りのうち7枚は確かにセシルが撮ったものですが、8枚目は「その場所には見覚えがない」とセシルが言う、場所・日付とも不明の写真でした。そこでお話は終わっています。

ですが、その8枚目、私には一目でどこだかわかりました。横チンさま、たまうきさまもわかります。私たちがしょっちゅうフラフラしているところです(笑)。

 

セシルとオリヴィエ

https://www.babelio.com/users/AVT_Atelier-Sento_3255.jpg

Atelier Sento - Babelio

 

水木しげるのこと 明日は命日

先ほどのカメラで水木しげるの妖怪写真館を連想する人もいらっしゃるのでしょうね。

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ちなみにAMAZONでは:水木しげるの妖怪写真館 NPCネオジオポケットSNK

出品者からお求めいただけます。中古品の出品:¥ 12,220より

妖怪ウォッチ」の元祖ともいうべき優れものゲームだそうです。私はアトリエ銭湯さんに教えてもらって初めて知ったのですが、皆さんはご存知でしたか。

 

水木しげるはフランスでも人気で20冊以上は翻訳されています。Shigeru Mizuki : tous les livres | fnac

ちょうど私たちがベルギーに住んでいた2007年に、フランスで栄誉ある賞を受賞したのです。のんのんばあとオレ(Non Non Bâ)が第34回アングレーム国際マンガフェスティバル で最優秀コミック賞に輝きました。日本人がこの賞をもらうのは初めてのことでした。

それでベルギーやフランスの書店には水木しげるコーナーが設けられ、人々が興味深そうに立ち読みしていたのを覚えています。

2年前に亡くなった時は、フランスの新聞各紙が訃報を載せていました。下はリベラシオン紙です。明日11月30日は命日です。

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              〔妖怪関係はここまで〕

 

個人メモ:渾身の『妖怪辞典』

www.pika.fr

 まりまどさんTwitter

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  新・たま屋 @shigerumania さん Twitter

 

 

🌸今日の写真

中国の図書館!

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https://www.boredpanda.com/tianjin-binhai-library-china-mvrdv/

天津市海図書館

文字通り息をのむ(Take Your Breath Away)し、クラクラめまいがするような近未来型図書館です。天津市浜海新区に建てられた5階建て、34000㎡の建物で、蔵書数120万冊。中国の勢いを感じますね。

設計はMVRDVMVRDV - HOMEオランダの建築家3人のグループで、新作が出るたびに話題になります。上記サイト内に写真多数。

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終わります。

 

🌸浸透する~シリーズ①②

cenecio.hatenablog.com

cenecio.hatenablog.com

 

追記:2018年2月8日

朝日新聞にも大きく紹介されている。

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www.asahi.com

 

追記:2018年2月13日

セシルさん、アンスティチュ・フランセ東京にお出まし~!

http://www.institutfrancais.jp/tokyo/files/2018/02/ONIBI-JP-300x206.png

「幽霊と妖怪」バンド・デシネ『鬼火』の作家、セシル・ブランのトークショー

2月22日(木)18時30分~20時30分 アンスティチュ・フランセ東京 メディアテーク

料金: 無料 (要予約)

予約、お問合せ: 03-5206-2560

 

追記:2018年3月30日

日本で漫画賞を受賞し、帰国したらセシルさんを待っていたのはTVカメラ!!

 

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