華麗なる中世ギルドの大行列(プラド美術館展)中世の職業カタログ
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プラド美術館は世界屈指の美術館。
そこからディエゴ・ベラスケス(1599-1660年)の作品を含む60点あまりを持ってきている。
見どころは多々あれど、見るべきはかの華麗なる中世ギルド員の大行列ではないだろうか。https://www.volkskrant.nl/kijkverder/2014/AarsmanCollectie/#180228
ありがたいことに、オランダの日刊紙フォルクスクラントはビデオもあげて解説してくれている。それをざっとまとめてみよう。
ベルギー・ブリュッセルには、世界一美しい広場と言われるグランプラスがあって、そこには豪華絢爛たるギルドハウスがたち並んでいる。この絵はギルド組合員たちの壮麗な行列を描いている。時は1615年、画家は Denis van Alsloot または Denijs van Alsloot (1570–1626年ころ)。
「まるで職業カタログだ」と記者は書いている。様々な職業の人々が絢爛たる列をなしてグランプラスを練り歩くのだ。それを市民が鈴なりになって建物の窓や広場を取り巻くようにして見物している。
行列の先頭にはさほど重要でなく貧しいギルド。徐々に裕福で権勢のあるギルドへと連なる。
絵に見入る日本人男性の立ち位置で見れば、行列が目の前を通り過ぎていくような感じがするらしい。それにしても、中世ではこうしたイベントはよく行われたが、これほどの規模のものはめったにないという。
ギルド組合員は皆まるで制服のように、黒い服装で白いレースの襟をつけている。そのなかで銀のチェーン(首当て?*写真)をかけているのがギルド組合長。赤い色の服は旗手(keersedragers)。ギルドのシンボルや紋章のついた棒を携えている。
*写真:矢印のさし示す人が首にかけているチェーン。実物の写真もビデオの中で見られる。
ギルド長の上に文字が見える。これは職種をフランス語で書いたものである。絨毯職人、樽職人、ビール醸造人、服仕立て屋、肉屋(下の写真↓)…。
職種の下に書かれた数字はギルド組合の人数である。たとえば仕立て屋は380人だ。
行進は一列になって進むのだが、画家は全員を一枚の絵におさめるために、花綱のように列をうねらせた。
肉屋が手前の目立つ位置、つまり特等の位置取りをしているのは、宣伝効果をねらって金を積み、手前中央に描いてくれと頼んだからである。
全体。いずれにしてもこの小ささでは何も見えない。美術館でじっくり見よう。
🌸 画家denys van alsloot のタンブラーから。
大行列(オメガング)の絵は8点作られ、うち6点が現存ということである。様々なバージョンがあるようだ。denys van alsloot | Tumblr
Denys van Alsloot, The Procession of the Guilds during the Ommeganck in Brussels, 1615.
🌸Denis van Alsloot - Wikipedia
中央部拡大
De boom van Jesse. (Detail: De ommgegang Brussel, 31 mei 1615)
Denijs van Alsloot - Wikipedia
ギルド組合の行列の絵、近くで見られてよかった。よくぞこんな大きな絵を持ってきてくれたものだ。
当時ブリュッセルを統治していたイサベル大公妃は、幼少の頃より弓矢のたしなみがあって達人だったこと。サブロン教会の塔のてっぺんを弓で射抜いて賞賛されたこと。弓の射手組合ギルドによって「大弓の女王」と呼ばれたことなど、展覧会カタログの立ち読みで知った。