国際語になった日本語シリーズ 4回目。
「生きがい」ikigai
日本語の単語なのに海外では思いがけない使われ方をしたり、独自の発展を遂げたりする言葉がある。今日はその中でもブームとなっている「生きがい」を取り上げてみたい。
「クリスマスに生きがいについての本を贈りましょう!」
あなたが外国の街を歩いていて、本屋のウィンドーでそんなキャッチコピーを見つけたら思わず立ち止まるだろう。私もそうだった。
おや、日本語?なんだって?
『生きがいについての本 幸福のジャパニーズメソッド』。
生きがいって自分が生きる意味とか喜びみたいなもの?それとも違うの?
『生きがいプログラム』ー あなたの生きがいを見つけるための12週レッスン!
ダイエット12週間ならわかるけど、生きがいを見つけるガイドブック?
どうも私たち日本人が使う「生きがい」という意味以上の世界が展開しているようなのだ。それは生きがい哲学、生きがい学とも呼べる領域にまで深化していた。
そこでまず登場するのがこのベン図。生きがい関連の本には必ず巻頭についている図だ。過去ブログ『輸入した(い)ニッポン語~』でも紹介した。
生きがいとは「好きなこと」「得意なこと」「人から求められていること」「お金になること」の4つが交わったところにあるという。
生きがいと幸福、どこが違うだろう。似ていて、重なる部分も多いと思うが、一番の違いは、生きがいは未来に向いているところ。今持っていなくてもいい。求めていけばいい。こうありたいという理想の生き方、自分が生きる意味を探し求めていくことが大切なのだと思う。
もちろん、自分の生きがいはこれだ、と即答できる人はよい。私はこの図を見ながらじっくり考えてみようと思う。生きがいや幸福観などは年齢によっても変わってくるだろう。
生きがい哲学のブーム
最初に「生きがい」という言葉に注目したのは、アメリカの研究者・作家であるダン・ベットナー氏だ。沖縄の人が健康で長寿な秘訣に「生きがい」があることに注目。これにより”ikigai”という言葉が2000年代以降広まった。
写真はブームの火付け役:スペイン人エクトル・ガルシア氏(2004年より東京在住。自称オタク、日本通)、フランセスク・ミラージェス氏(心理学およびスピリチュアルを専門とするジャーナリスト)Hot BuZz (mag) Presentación del libro “Ikigai: Los Secretos de Japón para una Vida Larga y Feliz”
二人は沖縄の「長寿の里」と呼ばれる大宜見村でフィールドワークをおこなった。村のご長寿100人に幸せの秘訣を聞き取り調査した。また村の暮らし、村人の交流の様子、働き方、食事なども分析し、本にまとめた。生きがいのある生活が健康な暮らしと長寿に結びついている。スペイン語で発行されると反響を呼び、フランス語やドイツ語、オランダ語などに次々と翻訳された。
Ikigai: The Japanese secret to a long and happy life
- 作者: Héctor García,Francesc Miralles
- 出版社/メーカー: Hutchinson
- 発売日: 2017/09/07
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログを見る
上は英語版、やや遅れて2017年発行。英語版により一気にブーム化し、関連本も出されるようになった。生きがいの本を読み、感銘を受けて沖縄県大宜見村へ観光に訪れる欧米人も少なからずいるという。
沖縄はブルーゾーン( blue zone)である。
ブルーゾーンというのは長寿者の多い地域で、当初研究者が地図に青いマーカーで塗ったことからそう呼ばれている。ウィキペディアによれば
・イタリア・サルディーニャ
・日本・沖縄
・アメリカ合衆国・カリフォルニア州・ロマリンダ
・コスタリカ・ニコヤ半島
・ギリシャ・イカリア島
の5カ所が挙がっている。2004年からダン・ベットナーが、ナショナルジオグラフィックと組んで調査を行い、成果をまとめた。その『ナショナルジオグラフィック』2005年11月号からちょっと沖縄の写真をお借りしてきた。
https://www.bluezones.com/wp-content/uploads/2015/01/Nat_Geo_LongevityF.pdf
↑こちらで読めます。
↓また日経ビジネスオンラインの記事が良いので貼っておきます。
長生きの秘訣は 健康な食と孤独でないことだそう。
長寿地域「ブルーゾーン」に学ぶ健康の秘訣:日経ビジネスオンライン
生きがいについてはここまで。
昨日の「忖度」に関して楽しいコメントをいただいたので紹介する。(お名前は出しません)
その前に、昨日の記事でフランスのル・モンド紙に「忖度」”sontaku”という言葉が初めてお目見えしたと書いた。実はあの記者さん、最初は”sontoku”と打ち間違えたのだ。だから記事を読んだ日本人は「ああ、残念!」と心の中で呟いた。私は印刷したのでそのまま残っている。でもあとで誰かが教えたのだろう、ちゃんと”sontaku”に直っていた。
だけど”sontoku”損得でもおかしくないな。「官僚は損得で動く」。正しいじゃないか。…とあとで思った。
「全自動忖度機」
昨日の朝日新聞でも触れていた。
爆笑デーブ・スペクター@dave_spectorツイート。
官僚用の風邪薬→ソンタック咳止め
— デーブ・スペクター (@dave_spector) April 3, 2017
去年の3月だが、今読んでも吹き出す。それどころか下に連なるツイも全部おかしい!
みなさん、お腹は大丈夫ですか。私はよじれました。
ではお後がよろしいようで、今日は終わります。
みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。
また来年お会いしましょう。