私たちは激動の時代を生きている。その認識を日々あらたにしている。思い返せば年が明けたばかりの頃は実にのどかだったな。その後厄禍に見舞われるなど露ほども考えていなかった。
ちょっと暮れから一月の初めがどんなだったか思い出してみる。私はルンルン気分で羊肉のクスクスを作っていた。ビーツが豊作でそれを使ったピンクな料理にのめり込んでもいた。一時帰国した息子のために、車で遠くのケーキ屋さんまで公現祭のガレット・デ・ロワを買いにもいった。切り分けたパイからフェーヴを引き当てた息子は、子どものように喜んで、ずっと金色の紙でできた王冠をかぶっていたっけ。3月に結婚する予定であったから「これは幸先良いぞ」と私も嬉しく思い、しあわせな一年を頭の中で描いていた。しかし前にもお話したが、コロナ禍で結婚式は中止となり、息子夫婦は今も渡航がかなわず離れて暮らす。
10年後、20年後に振り返ってみて、やはり2020年は特殊な位置づけ、歴史に色濃く痕を残す一年となるだろうか。腐敗しきった日本の政治や格差・貧困などの諸問題に加え、冷戦再び?の大国の争い、そこにドシンとコロナが世界中を恐怖と混乱に陥れた。そろりそろりと新たな日常に足を踏み入れた矢先に、黒人男性ジョージ・フロイド( George Floyd)さんの不条理な死である。今アメリカだけじゃなく世界中で、この差別の問題に向き合おうとしている。
2020年が歴史に残る年になるとしたら、スペイン風邪に匹敵するような新型コロナより、それを契機にこれまでの価値観が大きく変わる、変革の年としてかもしれない。だってコロナ前は普通に使っていた「グローバル化、グローバル資本主義」なんて言葉、コロナ禍で移動を制限されている間に人々の頭から消え、古臭い死語のようになってしまった。「世界を股にかけて」「経済成長」なども消えるだろう。もはや工業製品をバンバン作って輸出して、あるいは農産物を遠い国から輸入してという構造は変わるだろう。近隣の国々の間で、信頼と連携を深めて「新たな日常」の経済活動を進めていくのがいいと思う。(他国の信頼を得るのは現政権では難しいだろうが。)
作りすぎや使い捨ての無駄をやめ、テレワークも活用し、労働時間や痛勤を減らして、教育や福祉や文化活動などにもっとお金を使って人間らしいゆとりある生活に移行していけたらいいな。大切にしたいのは「生活の質」である。
↑距離をとるようにどこにでも書いてある。
(↑どれにしようかなと迷いながら選ぶ楽しみは失われ、個包装になっている。焼き立てパンもしかり)
差別への怒り
米ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が警官に押さえつけられ、亡くなってから10日がたつ。報道を見たときはショックで体が凍り付いた。つまり殺人現場の八分余りがまるまる動画で流れたのである。世界中の多くの人が見ただろう。そんな理不尽なことってないよね。仲間の警官も動画を撮っている人も誰も止めなかったの?そんなにも簡単に一人の命が奪われていいわけがない。しかも丸腰で抵抗もしなかったというのに。やりきれない悲しさがずっと心に貼りついて離れない。
そして瞬く間に全米に広がった人々の激しい怒り、強い連帯意識、正義を求め体を張っての抗議、どこまでも続くデモ行進の列。私たち日本人に欠けているものが全部あった。しかしまたしても扇動したり破壊と略奪に走る者たちが現れ、トランプ発言の数々が物議を醸し(「略奪が始まるなら射撃が始まる」など)、火に油をたっぷりと注ぎ、アメリカ国民の分断をさらに煽るのだ。
抗議のムーブメントはすぐさまヨーロッパ大陸にも広がった。ロンドンやベルリンやパリなどで人が街路や広場に溢れた。コロナ禍のなかで。
オランダ・アムステルダムの様子はイアン・ブレマー氏が伝えてくれている。(ダム広場)
Turnout for George Floyd protests in Amsterdam.
— ian bremmer (@ianbremmer) 2020年6月2日
Extraordinary.pic.twitter.com/VShFtzfyFE
ハーグではよく組織され、1.5メートルのディスタンシングが取られて お手本のような集会だった。アムスのはさすがにまずいだろう。Facebookやtwitterなどにより、人々は自由意思で参加したのであるが、これほど大勢が集まるとは誰にも予想できなかったらしい。オランダの”Black Lives Matter”委員会の人も、警察も、市長も。市長さんも参加していた。
「自分の健康より連帯のほうを選びました」と参加者はTVインタビューで答えている。コロナ生活の規則は承知しているが、どうしても来たかったと。
アムステルダムのような混雑状態を恐れ、オランダの他の都市では集会のできる広場を封鎖したところもある。
ところで「この日ここに集まった人は2週間の自己隔離をしなければいけませんね」とTVアナウンサーが言ったので私は正直驚いた。「するかなオランダ人?いや、しないでしょ」とこっそり思っている。
逮捕された元警官の名前が驚きだった。
フロイド氏の首を膝で押さえつけた元警官は左 Derek Michael Chauvinという名前だ。Chauvinという苗字、これはフランス語であるが日本語でもショービニズムと使われている。詳しくはこちら→排外主義 - Wikipedia
手元の仏語辞書で確かめてみよう。
chauvin:盲目的愛国心を持った、狂信的排外主義の(プチロワイヤル3版)
フランス語を習い始めて初期のころに覚えた単語だ。なぜならフランス人同士の会話に「あいつはショーヴァンだからな。付き合わない方がいい」などとよく出てきたから。
Chauvinというファミリーネームは、アメリカにはカナダから入植した兄弟と共に入った。それほど珍しい名前ではないようだ。ルイジアナ州にはショーヴァンChauvin, Louisiana - Wikipediaという地名もある。
今日は一旦終わりにしようと思う。
こちらfavoriteclieさん に教えてもらった動画です。本当にすばらしい。ぜひ見てください。favoriteclieさん、いつもありがとうございます。
今SNSにアメリカでの黒人差別に関する多くの動画/写真が流れてる中で、自分が最も力強いと感じた、それぞれ世代の違う3人の黒人が話す2分弱の動画に日本語の字幕を付けました
— yösuke (@avril24th) 2020年6月1日
理不尽な社会に生きる彼らの発する言葉ひとつひとつの重みを、英語を日常で話さない日本人の方々にも是非知って欲しいです pic.twitter.com/aB9RdiTiPh
それとこの可愛い子たち!これを見ると救われる。
Never forget 💛 pic.twitter.com/RFcMfBmwME
— DJ Kam Bennett (@KameronBennett) 2020年5月30日
🌸戻った日常風景
公園でバトミントン
虫取り
父の日のお買い物に行きました。