ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

新しい日常の主役は自転車!&夏至とキベリタテハ

コロナの時代、世の中の動きが早いね、どんどん変わるね、という話をちょっと前から書いている。書いておかないと忘れてしまうので今日もメモ書きにしよう。

自転車の時代

3月のニュースで電動自転車が品薄というのがあった。例年、4月の新年度前に自転車はものすごく売れるらしい。電動だと前後座席に子どもを乗せても重い荷物を積んでもスイスイいけるので、若いママたちの必須アイテムであるが、中国がコロナでロックダウンし、電動自転車の部品等の生産をストップしたため、入手が困難になったのだ。

ヨーロッパでも自転車がものすごく売れている。メトロやバスを避けて自転車で移動しようという人が増えたためだ。5月にはパリでは

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https://www.rtl.fr/
 6月20日の記事によるとフランス全体で45%の人が自転車で移動しているとのこと。狭い道路でもともと2車線しかなくても自転車のために1車線を譲っている。

ミラノ市は歩行者と自転車のためにのべ35㎞の道路の拡張を発表。さらに自転車購入者には市が60%の補助金を出すという。自転車を買えば補助金も! ミラノ市が進める、交通機関の混雑対策がすごい。

またジュネーブブリュッセル、ロンドンなどでも自転車専用レーンへ積極的に投資するようで、自転車の時代がやってきた。公共機関の混雑を避け、環境にも配慮した暮らし方を考えればおのずとそうなる。骨の髄まで自転車族のオランダ人に近づいてきた。隣国ベルギーでもドイツでも自転車に乗る人は多いと思うが、オランダ人にはかなわない。小学校で自転車の講習&試験があるし、パンクの直し方も教わる。自転車が簡素なつくりなのに驚いたものだ。国土が平らなので自転車にブレーキはついておらず、ペダルを反対に回して止める仕組みだったから。学生時代パリに住んでいた時、留学に来た女性ははるばるオランダから、そのブレーキ無しの自転車でやってきた。後ろの荷台に山ほど荷物を積んで行商人さながらだったのを思い出す。

自転車と言えば「シマノ」が世界中で有名なのも向こうの人に教えられたことだ。そして日本製の電動自転車も時々見かけたが、その理由は「オランダは風が強いから荷物が多い時、足こぎだと進まないの。日本の電動は優秀よ」と意外な理由を教えてくれたものである。

 

そんな手があったの!

世の中の動きが早いのは、やはりSNSのせいだと思う。家から一歩も出なくても指一本で意見を表明したり、寄付をしたり、署名をしたり、連帯したりができるご時世だ。検察庁法案廃棄に関しtwitterデモも成功したしね。

週末、トランプ大統領の選挙集会があるというのでちょっと心配もしてあげていた。私の心配はもちろんコロナのことだ。ぎゅうぎゅう詰めの集会でしょ、後が怖いんじゃない?と思ったら予想外の展開に…。

どうやら TikTok のユーザーとK-POPファンたちが捨て番号を使って呼びかけたらしい。集会のチケットを予約するようにと。そしてもちろん行かないのだ。その数が100万近かったから陣営や大統領は大喜びしたに違いない。(ま、常識的に考えても100万ってちょっと変だと思うけど。)

TVニュースによると実際は6千人ちょっとだったそうな。映像では大統領の後ろには人が大勢並んでいるが、上の写真を見てもわかるとおり、実際の会場は人はまばら。半分も埋まっていなかったかな。トランプ陣営はさぞかし落胆しただろうね。若い人たちにやられちゃったから。ただしこの手法を悪用されると怖いかも…。

私が注目したのはマスクである。トランプ大統領、スタッフ、サポーターの人たちはほぼ誰もマスクをしていない。会場入り口で配られてもしない。子ども連れのお父さんはすぐにポケットに突っ込んでいた。何が何でもしないという意志を感じる。身体的距離を守らないのは言うに及ばず。

一方で、会場付近で抗議活動をしていたグループ、そしてBlackLivesMatter運動の皆さんはマスクを着用していた。今やマスクまでもが政治的意味を持つのか。

 

ヨハネの日とキベリタテハ

夏至だった。そのあと23日(または24日)はキリスト教の祝日ヨハネの日である。蝶が好きな私はこの時期になるとベリタテハを思い出す。

ベリタテハをネットで調べた時とてもきれいな写真をブログに載せている方がいらして、はてなのブロガーさんだった。どんな蝶かご覧くださいね。まず見ていただかないと次の文章がわからないと思うので。こちら夏の終わり 1 -エルタテハ・キベリタテハ - - OTTOの蝶々ブログ

何故キベリタテハを思い出すかといえば、『フランドルの四季暦』(マリ・ゲヴェルス著。河出書房)の「六月と夏至」の文がすばらしいからと、夏至の夜、結局その夜明けに生まれたうちの息子にこの章を朗読してあげたことがあるから。

その中から蝶のところだけ引用(本では9行分)

さて、ここで少し蝶の話をしておきましょう。儚く消えた雪の蝶がクリスマスの象徴だとしたら、夏にこの辺りを舞う蝶のうち、特に珍しい一匹が、年に一度だけ春と夏が相まみえる聖ヨハネの夜を象徴していると、私には思えてならないのです。キベリタテハ。またの名をアンティオペといいます。翅は濃い紫色で、その外縁に白の縁どりがあります。月のない聖ヨハネの夜もまた、柔らかいビロードのような光に縁どられます。仄かな光が夜のあいだずっと地平線をさまようのですが、そんな光が見られるのは沈んだ太陽が、地平線の下を斜めに進む数時間のあいだ、地上の闇をかすめる位置にあるからです。聖ヨハネの夜は、きらめく星を花に見立て、そこにちょこんと止まると、そのまま天頂に達したと思う間もなく、早くも疲労に襲われ、翅をはためかせ、いずこともなく消えていきます。アマゾネスの女王アンティオペは太陽の化身ヘラクレスにまたも敗れたのでした。…

今の時期、ヨーロッパでは本当に日が長く、夜11時くらいでもまだ明るい。そのことをおさえて、またキベリタテハを頭に思い浮かべながら読むとよくわかると思う。

それにしても夏至季節の頂点で、これから冬至まで下り坂というのも不思議なものである。焼き尽くすような容赦ない夏が待っているのにね。

 

長屋の敷地が何になったか。

今日はもう一点だけ書いておきたい。

昔うちの子たちが小さかったころ、自宅とは別に谷中地区に長屋を借りていたことがあった。1990年初めの2年間くらい。徒歩で行ける距離で、お祭りや行事のときなど、四季折々行っていた。

みなさんも落語や映画でご存じと思うが、長屋は2階建てでお隣さんとくっついて並んでいる。東京藝大の学生さんや何かのお師匠さんたち、おもしろい人ばかりが入れ替わり立ち替わり住んでいた。

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この写真は4年前に撮ったもので、ちょうど光が当たっているところが私たちが借りていた部分。まだ人が住んでいるんだなと思って安心した。でもその2年後には取り壊され、長いこと塀で囲まれていた。

先日自粛が明けて通ってみたら更地になっていて、ここは墓地になるのだという。

が~ん‼(←これ、もう誰も言わないんだってね)

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愕然とし、しょんぼり帰ってきたわけである。

風情のあるものがあっという間になくなっちゃって寂しいね。

ではまた~。

 

追記:笑いが必要な人へ。