ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

『シティーハンター』フランスで映画化決定・冴羽獠をやるのは? 2019年2月封切り

フランス人の興奮ぶりに昔を思い出し…

「悲報!」

「ノン・メルシー!」

「この話、なかったことにしてもらえないだろうか」

など様々な反応が寄せられました。今年7月、フランスでフランス人俳優による「シティーハンター」実写化(2019年公開予定)が決まったときのことです。

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↑ 映画化の話を切り出すと、いきなりバットマンから平手打ちを食らってしまったり・・・。

ツイッターに溢れた熱き反響に笑いっぱなし。それは今でもまだ続いています。もちろん、祝福や歓喜のツイートもたくさんありましたよ。

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↑こちらは日本アニメ・漫画などサブカルチャーの「生き字引的存在」Olivier Fallaix氏、実写化を伝える。7月13日

 

カルト的アニメ ”Nicky Larson”

シティーハンターCITY HUNTER)』みなさん、ご存じでしょうか。週刊少年ジャンプ集英社)で1985年に連載が始まった北条司(註1)の漫画で、ハードボイルドも加味されたアクションコメディです。

冴羽獠(さえばりょう)は女好きの凄腕スイーパーで、探偵やボディガードなどを引き受ける。相棒は槇村香(まきむらかおり)、亡くなった親友の妹という設定。

この話をテレビアニメ化(1987年~)したもの(仏タイトルは”Nicky Larson”ニッキー・ラルソン)が90年代のフランスでカルト的人気を誇っていたのです。当時の人気ぶりをうまく伝えられないのがもどかしい…。

日本からは想像もできないことの例として以前、永井豪の『UFOロボ グレンダイザー』(フランス名:GOLDORAK ゴルドラック)というロボットアニメがフランスで視聴率100%だった現象を取り上げました。

フランスで視聴率100%だった日本アニメ・永井豪 追記:仏アヌシー国際アニメーション映画祭で『マジンガーZ』上映&嶋星光壱 - 

私は『マジンガーZ』なら名前を知っていましたが、 『グレンダイザー』なんて聞いたこともなかったです。日本(東映)に買い付けに行ったフランス人が、『マジンガーZ』ではなく『グレンダイザー』のほうを選んだ理由は、こちらの方がダイナミックでフランス人に受けるだろうと直感したからだと言われています。そして1978~1979年に放映されてみごと大当たり。その後ヨーロッパ中に拡散しました。

シティーハンター』はドラゴンボールの人気とはまた違って、大人も子供も、男女ともにファンが多かった。え、子どもが見るの?とびっくりするでしょう。

アダルト向けの内容(殺しや裏社会、男女の愛など)のアニメ作品を、子ども番組枠(註2で放映するためにフランス側は「編集」を施しました。私もフランスで、そのあちこちカットしたバージョンを見ていましたが、たしかにこれなら親子で見ても問題ないかなと思ったことがあります。

ともあれ冴羽獠は子どもたちにとって憧れの的でした。小学生の女子などはおませさんだから、ニッキー・ラルソンのカッコよさに痺れ、おちゃらけたユーモアに大喝采、そして「彼が本当に好きなのは香だけなのよ」などと知った顔して言っていました。またはじめのうちはニッキー・ラルソンがフランス人だと信じていたのも笑えます。たしかにあんなスタイルの男性は日本にはいないけれど。

日本に行ったらまず新宿駅新宿区役所通りに行きたいな、と言っていた小さな子どもたちは、その後日本訪問は叶ったかな?

 

註1北条司さんは2010年のJapan Expoに招待された。Le père de Nicky Larson face à ses fans

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註2:子ども番組というのは「ドロテ・クラブ」のこと。下の2記事にその盛衰が書かれていますので、お時間ある方はどうぞ。

cenecio.hatenablog.com

cenecio.hatenablog.com

手元にあるドロテ・クラブの雑誌ドロテマガジンを開いて、ちょっと番組表を見てみましょう。

1994年4月19日(火)~25日(月)。TF1局の黄色部分がドロテ・クラブの番組。4月19日火曜日朝9時のところ(9:00~11:30と長いのは学校が休暇中だから)に小さな字で CLUB DOROTHEE VACANCES NICKY LARSON(ニッキー・ラルソン)とあります。ついでに絵だけ見てみると『不思議の海のナディア』『セーラームーン』『小公女セーラ』などが見えます。20タイトルかそれ以上やっていたと思います。

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冴羽獠が「ニッキー・ラルソン」なら他の登場人物もフランス名なのです。香はローラ(Laura)、海坊主はマンモス(Mammouth)という具合。子どもたちが名前を憶えやすいように。主題歌も日本のは使わず、フランス語で新たに作り、人気の歌手に歌わせます。(この儲けは凄いですよ)。そして子どもたちが一緒に歌いやすいように工夫してあります。歌はこちらNicky Larson : le générique (Club Dorothée) - YouTube

大人になった フランス人はこれを懐メロとして合唱して盛り上がります。しかしわれわれ日本人にとってやはりシティーハンターといえば、TM NETWORKの”Get Wildですよね。さまざまなバージョンがあるのでここに貼り付けるのはやめますが、youtube などで捜してみてください。

 

主役の冴羽獠をやるのは…

フィリップ・ラショー(Philippe Lacheau,1980年生まれ。以下フィリップ)という人で監督・脚本もやるということです。それをフィリップは自身のインスタグラムやツイッターなどで発表しました。弟のピエールも一緒に仕事をしています。(註3) 

↓下左:ピエールのTwitter

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上右⤴:自身のtwitter。フィリップは1980年生まれだから、まさしく「ドロテ・クラブ」と共に成長した世代です。このコレクションを見れば彼のシティーハンター愛がどれほどかわかろうというものです。インスタグラムでは「子どものころの夢が叶ったよ」と書き、喜びを爆発させていました。

 

フィリップってどんな人? 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/2/26/Babysitting_poster.jpgBabysitting (film) - Wikipedia

こんな人。これは2014年の初主演映画『ベビーシッティング』のポスター。

はじめはTVタレントやコメディアンとしてキャリアをスタートさせたそうですが、私はフランスのことは疎くなってタレント関係は知らないのです。

こちら物語る亀さまがフィリップ主演の『世界の果てまでヒャッハー』(2015年)という、フランスで8週連続でベスト10入りを果たした大ヒット映画のレビューを書いていらっしゃいます。↓

blog.monogatarukame.net

つまりこれは『ベビーシッティング2 』なんですね。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/M/MV5BNDQ3YTRiODMtYTE2MS00ZDg1LWIyNDYtNjM0MzM4Y2FhZjA2XkEyXkFqcGdeQXVyNDkzODA5MDY@._V1_SY1000_SX750_AL_.jpg

映画『世界の果てまでヒャッハー!』 - シネマトゥデイ

 フィリップと ダウンタウンガキの使いやあらへんで!  

フィリップと愉快な仲間たち、とでもいうのでしょうか。お笑いのコントなどを一緒にやるメンバーがこちら。映画でも共演しています。(La Bande à Fifi )

日本テレビのバラエティー番組に「ダウンタウンガキの使いやあらへんで!」というのがあります。私は見たことがないんですが、このなかの“サイレント図書館”という企画が人気で、フランスにも「輸出」され、Chut, Chut, Chut(silent library)という企画になりました。

La Bande à FIFI Chut chut chut ! Le silence du criquet W9 - YouTube

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余談ですが、 ダウンタウンの「サイレント図書館」にK-1のチャンピオン、アーネスト・ホーストがゲスト出演したら、その回がyoutubeで500万回を再生するほどの大きな反響を呼んだそうです。それ以来いろいろな国で真似をする番組が出てきえ、サイレント・ライブラリームーブメントと名付けられているとのこと。

さてフィリップにもどりますが、彼は金髪です。リョウちゃんになるには髪を染めるでしょうか。みなさん、どう思いますか。まあ、お楽しみということにしておきます。

 

註3:追記2018年2月 記事が出ていたので簡単にまとめています。

フィリップはフランスの新コメディ王

Philippe Lacheau (Alibi.com, Babysitting) : Pourquoi a-t-il autant de succès ?

La Bande à Fifi : la success story sur W9

新コメディ王、その名はフィリップ。ここ数年来、彼の手に触れるもの全てが黄金に変わるのだ。とにかく眩いばかりの成功を収めている。『ALIBI.com』に続き、『ベビーシッティング1,2』で900万人を動員した。TVのバラエティから仲間4人で映画の世界に進出したが、夢は最初から「映画を作りたい」だったのである。

フィリップは監督・脚本・主演と何でもこなす。だが昨年10月のコメディ”Épouse-moi mon pote”では、初めて仲間であるTarek Boudali が脚本を書き、メガホンを取った。

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ルイ・ド・フュネス(Louis de Funès)、フランシス・ポール・ヴェベール(Francis Paul Veber )など名コメディから多くの影響を受け、『ベビーシッティング』はテレンス・ヒル(Terence Hill)やピエール・リシャールへのオマージュでもある。そうしたところが玄人にも受ける点だ。とにかく笑わせる。若い世代の心はがっちり掴んでいるため、新作には必ず足を運ぶのだ。

『ベビーシッティング』はイギリスでリメイクの話もある。そして『シティーハンター』への挑戦である。すなわちフィリップとその仲間たち、彼らの世代の「揺り籠」でもあった作品、その実写化は子どものころからの夢であったのだ。(以上、記事をざっとまとめました)

 

ネット上では相変わらず大騒ぎ。

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エンジェル・ハート』で冴羽獠役だった上川隆也のほうがいい、と↑こちらのフランス人は呟いています。たしかに上川さん、はまっていました。ご自分でも筋金入りのアニメオタクだと言っていましたしね。

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またおもしろいのは、↑このように、ファンが自分の持ち物を見せたがることです。おかげで私たちも楽しめます。

われらがはてなでも先日、横チンさまがこのような投稿をしておりました。冴羽獠の使用する銃です。お断りして掲載しています。

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 「銃身の刻印部分には、アクリル絵の具のホワイトを流し込ん」だそうです(!)。横チンさま、ありがとうございました。

まだまだ書きたいことがいっぱい。でも今日はいったん終わります。

 

🌸続き↓ 2018年9月17日 

cenecio.hatenablog.com