ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

男性トイレにもオムツ替え台がある時代 ジェンダーやセクシズムについて考える-1-

前回記事「嫁」についてつらつらと考えた正月休み。 - ベルギーの密かな愉しみには15名の方からコメントをいただきました。本当にありがとうございました。これからもジェンダーやセクシズム(女性差別)などについて考えてみたいと思っています。(不定期かもしれません)

 

どうやったら変わる?日本社会

みなさんのコメントから「田舎はそんなものだ」という認識が多いことがわかり、改めて驚いた。それでも平成も終わろうとする今、私たちはSNSを使えば必要な情報も素早く手に入るし、意見交換やアドバイスなども簡単にできる。みすみす不幸を耐え忍ぶことはないのだ。周りに助けを求めればいいんだもの。

(*お断り。抜粋して引用させていただきました)

id:URURUNDO  さま

「嫁は道具だ、子供を産め等と未だに思っている夫や夫の家族なら、そんなの蹴飛ばして離婚するか、もしくは自分で改革するか、勇気と気甲斐性を持って欲しい。」

 id:SPYBOY さま

「女性の方も『低能な男はお断り』という気概(笑)がなければ 中々世の中は変わらないのではないか…略…そんな気風がまだまだ色濃く残っているとしたら、日本なんか、人類全体のためにさっさと滅びてしまった方がよいですね。ま、家事をやらないバカ男たちのせいで、現実にそうなりかけてる…」(太字は私)

 大きくうなづいた。女性も昔と比べ高い教育を受けている。世界のスタンダードから、日本がどれほど遅れているかだって知っている。女性たちにはもう少し賢く強く生きてほしいと思うが、やはり肝心なのはこれ、SPYBOYさまがおっしゃるように、男性側の意識も変わらないとダメなのだ。もしこの「家事をやらないバカ男たち」が、家事や育児に積極的に参加するようになったら、日本社会はもの凄い勢いで変わると思う。実際、1970年代から旅行や留学、長期滞在などで見てきたヨーロッパは凄まじいほどの変化を遂げた。

日本だって変わってきている、というかもしれない。しかし朝日新聞に定期連載のコーナーを持つ、スウェーデン人女性のオーサさんは言う。

「日本は自分の国と比べて50年、いや70年くらい遅れている」。

これは男女共同参画などうたっても、旧態依然として女性差別(蔑視)が残り、女性の社会進出が進まず、育児や家事、介護などに男性の協力がほとんど得られないこと、給与格差や職場での地位が低い、または制限があることなどについて言っている。

 

イタリアのはなし
昔学生だった頃、イタリア南部のお宅にひと夏お邪魔していたことがある。ステイ先のご夫妻は、イタリア人の夫が大使館文化部勤務、夫人はベルギー人でフランス語教師だった。ご夫妻とともに何度か親戚宅に招かれ、そのたびに大人数で囲む食卓にはおいしい料理が並んだ。

しかし気になって仕方がなかったこと、それは家庭の主婦が終始立っていて会話にも参加しないことだった。女中ではないにもかかわらず、だ。もくもくと給仕をし、皿をさげていた。私は不思議に思い、小さな声で「ねえ、どうしてあの人座らないの?」と聞いてみると「しっ、この地方はそういう習慣なんだからいいのよ。そっち見ないでね」とやんわり言われてしまった。

そして一気に2012年に飛んでイタリア・ピサの空港。男性トイレにも赤ちゃんのオムツ替えのスペースがある。

これはオランダ人の女性が写真におさめツイートしたものだ。

 

育児パパに優しい社会

そうそう、オムツ台といえば思い出すことがある。2007年にベルギーの移民学校で1年オランダ語を習っていたことは以前書いた。外国語学習は言語を通してその国の社会を学ぶことだが、カルチャーショックは少なからず受けた。

例えば初級後期レベルのテキスト(”Taal Totaal”, 2001年発行)の8課は「父親の育児参加」がテーマだった。オランダ政府が「男性のみなさん、もっと育児参加を!」というキャンペーンをうった。それに対し市民が意見や要望を電話などで述べるという設定である。(*実際にあったキャンペーンです)

ある父親:

「息子の世話はいつも進んで協力してます。だけどね、ぼくに言わせると、社会は育児する父親に優しくないですよ。だって、男性用トイレにオムツ台ないでしょ。会社の託児室だって母親向けに作られているし。赤ちゃん用グッズのCMなんか、お母さんしか出てこないじゃないですか。育児書も母親向けに書かれているのが大半で、たま~にとってつけたように父親のことに触れるだけだし…。ぼくは疎外感を感じているんです。」

この基本にあるのは、父親も母親と同じ権利を!という考えだ。

https://images4.persgroep.net/rcs/unV4se4Z4feoZFrB28DV_ySKq_I/diocontent/134311433/_fitwidth/694/?appId=21791a8992982cd8da851550a453bd7f&quality=0.9

(Cookies op bd.nl | bd.nl写真:オランダ/ ティルブルフ )

 

2019年元旦から ニューヨークでもオムツ替え台を設置。

男性トイレにオムツ替え台の設置が義務化 ニューヨーク州で2019年から、公共トイレを対象に | ハフポスト

公共の男性用トイレにオムツ替え台が義務付けられた。つまり映画館やレストランや店などに、少なくとも台をひとつ設置する。そこは男女とも利用できる。

ニューヨーク州のクオモ知事は、2018年4月にこのように言っている。

すべてのニューヨーカーにとって必要とされるケアを提供できるようにする」

「 すべての」が意味するところは、さきほど上に書いた「父親も母親と同じ権利を!」からさらに発展して、男性同士のカップルへの配慮も含んでいる。子育てする男性カップルの当然の権利である。彼らはこれまでオムツを取り換えるとき、台がないため膝の上で悪戦苦闘していたのだ。

 

賑やかなアメリカ議会 新会期の始まり

子どもや赤ちゃんでにぎわう議場、史上最も多様な米議会開幕 写真11枚 国際ニュース:AFPBB News

微笑ましい写真がいっぱい!

1月3日に開会したアメリカ議会。民主党共和党の議員たちが集まり、就任宣誓をした。434人の議員のうちの多くが子どもや孫を連れてきたので、まるで保育園のようだ。日本では考えられない光景である。

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米首都ワシントンの連邦議会議事堂の下院議場で、議事進行用の小づちで遊ぶ男の子(2019年1月3日撮影)。(c)Brendan Smialowski / AFP

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今日はここまで。また続けますね。

コメント欄は一旦閉じさせていただきます。

ではまた~! 

 

🌸 おまけ:デンマークコペンハーゲンの街角。

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🌸楽しい雪だるま

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「嫁」についてつらつらと考えた正月休み。

嫁はつらいよ。

正月休みに読んだ記事で考えさせられたものの一つ、それは「嫁」というテーマ。きっかけはこの東洋経済さんの記事「田舎の長男」との結婚に絶望した彼女の告白 | 離婚のリアル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準で、 twitterだけでも30万回以上リツイートされ、反応や意見交換も大変に活発で私も多くを学んだ。

ちょっと簡単に記事内容をまとめてみよう。(全文はぜひ↑記事のほうで)

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(写真:ピンタレスト画像)

バツイチの百合子さん。ひょんなことから兼業農家の長男と知り合い、都会の男性にない「押しの強さ」に惹かれ、とんとん拍子に婚約まで進んだ。実家を訪ねるといきなり、二世帯住宅に建て替えるだの、「早く男の子を生んでもらって、私たちの面倒を見てもらわないと」だのと言われる。村の長老には「結婚式は村のしきたりに沿った式にしてもらう」とも。

百合子さんはまず村の近くにアパートを借りて仕事を探すことに。しかし村人は外部から来た人を受け入れないため地元の企業には断られてしまう。

土日は地元の消防訓練があって、それは「村の男のしきたり」だという。公民館で朝5時から消防の訓練をしたら、夕方まで飲み食いし、村の女たちはそこに飲み物や食事を差し入れるのだ。もちろん他の行事でも強制参加。冠婚葬祭では仕事を休んで男たちをもてなさねばならない。

息の詰まるような日々、あるとき一人で高速バスに乗って大阪へ買い物に出かけたら大目玉を食らってしまった。もう限界だと感じ、相手にそう告げると、留守電に毎日何十件も「ふざけんじゃねーよ! ぶっころすぞ!」と電話が入るようになった。恐怖を感じた百合子さんは、弁護士に相談し、東京へ逃げ出して婚約破棄した。

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みなさんはどんな感想をお持ちだろうか。

私はこれまでにも、そうした田舎の長男の悲哀とそれを巡る問題を聞いたり読んだりしてきている。しかしそれはずいぶん前のこと、まだ若かった頃の話だ。まさか2019年の年の初めにこのような記事を読むとは夢にも思わなかった。え、まだこんな風なの?!と正直驚いた。

農家の長男はつらい。次男三男は早くに結婚して子どもが3人くらいいたりするのに、自分だけは独身のままで40~50代になり、親と同居。もちろん必死の思いで婚活もした。しかし結婚しても嫁に逃げられたり、嫁が鬱になるなど体を壊してしまう。

だが家父長制が残る土地で、長男に嫁いだ嫁はもっとつらい。理不尽ないびりや村人の監視に晒される日常。会食などでも皆と一緒に卓を囲むことはなく、たいていは台所に立ちっぱなしで女中さながら。夜遅くに一人で食事をするたび惨めな気持ちになる。(次男三男の嫁は何もしなくてよいのも不思議)

伝統的なムラ社会の因習が連綿と受け継がれ、新しい価値観を受け入れる余地はない。それどころか、自分たちもさんざん苦労したんだから、とうっぷん晴らしのようなパワハラ、いわゆる「抑圧の移譲」(丸山真男)が家庭内で行使される。

それでも嫁の言うことに耳を傾けてくれる長男であれば希望も持てるが、小さい頃から大切に育てられるせいか、自己中心的で大きな子どもといった感じの人もいる。嫁をかばって親や村人に意見する気はなく、むしろしきたりに従うべき、それが当たり前だと思っている。

もちろんこうした話は「長男」「田舎」に限ったことではない。男尊女卑、女性蔑視の風潮は21世紀になっても日本社会のあちらこちらに残る。昨年の大臣・議員・官僚の発言やセクハラ問題をいちいち持ち出すまでもないだろう。

話をあまり広げたくないのでまた嫁テーマにもどるが、こんなツイートもあった。

>結婚相手は長男ではないが、自分の家は母子家庭。義理の父母は親戚から「そんな家の娘を嫁にしてやるとは偉い」と褒められると、「育ちが悪いから躾け直してやらねば」と返していたという。

MeToo運動が世界を大きく揺るがした2018年。日本人の意識も少しずつ変わってきているし、今後はますます改善されていくだろうと私はけっこう楽観的に見ている。

(*あくまで、私が聞いた話をもとにしているだけで、「すべての~」という話でないことは重ね重ねお断りしておきます。農大出身で農村に入って地域を盛り上げている女性たちの話を聞くと、明るい未来を感じます)

 

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記事への反応がおもしろい。 嫁って何だろう。

記事を読んだ読者の反応がさまざまだった…といっても分類すると3通り、いや4通りかな。(4つ目は総括的。男性の感想に多い)

①この話は信じられない。そんな世界が本当にあるのか。作り話、または盛り過ぎた話だろう。

②実家の田舎にいたころはそんな風だった。でもそれは昔のことだと思っていたが、今もあるんだと驚いた。

③現在自分はその只中にいて実感している。あるいは離婚してもうそこには住んでいないが、田舎ではまさにそんな生活だった。長男のところに嫁ぐならその前によく考えて。(少なくとも都会で育った人は)

④過疎化、衰退する集落にはやはり理由があるのだ。閉鎖的で排他的な地域は生き延びられないだろう。特に嫁の扱い、個人の人権などなく、家や村、コミュニティの所有物であるかのような扱いが変わらないならば。

また印象的なツイートとして、「嫁」をウェブの辞書でひいてみたら驚いた、というものもあった。

嫁(よめ)とは - コトバンク

息子の妻。家父長制下にあった日本では,いわゆるシャモジワタシを受けて主婦となるまでの期間の妻をさす呼称であった。当時の嫁が,一家の主婦となるまでには,長い試練の生活を強いられるのが普通で,新潟県佐渡の「添うて7年子のある仲だ,嫁にしゃくしを渡しゃんせ」という民謡などにも,その間の事情はうかがわれる。しかし,家父長制の崩壊した新憲法下の今日では,嫁と主婦との間に,かつてのようなへだたりはなくなってきている。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説より引用(*太字は私)

嫁とは何か。私も改めて習った。

シャモジを渡すこと。なるほど、シャモジは主婦権の象徴であるから、これを渡された嫁は、その後台所の一切を任されるということか。料理の味付けから食品の管理に至るまで。

これをもう少し調べてみると柳田国男に行き当った。木綿以前の事 - 岩波書店

https://www.iwanami.co.jp//images/book/246097.jpg

(抜粋して引用)

16・・・普通は鍋敷があってここで惣菜を煮た。盛るのは当然に主婦の権限で、家を譲った母さえも手は出さぬ。娘が多ければ少し引下ってそのまわりに坐り、嫁は勿論その中に交っている。或る家では姑のちょっと席を立っているうちに、嫁が杓子を握ったという咎により離縁をされたという一つ話もある。

・・・とにかくに嫁に世帯を引継ぐことを、今でも東日本では「杓子をわたす」、または「へらを渡す」とも謂っている。

・・・この杓子渡しという語は、形容であろうと最初は思っていたところが、事実その通りの事をしているという話を、近頃になって岩手県の友人から聴いた。いよいよ母親が年を取って、家の管理を嫁に引継ごうという日には、新しい鍋の蓋(ふた)の上に新しい杓子を一本載せ、それを両手に持って嫁に手渡しするのが方式だったという。

信州の北アルプス地方でも、まだこの事を記憶している老人があった。

(*太字は私)

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今読むと実に新鮮である。

「新しい鍋の蓋(ふた)の上に新しい杓子を一本載せ、それを両手に持って嫁に手渡しする」

という主婦権を譲る儀式。昔は皆で役割を分担して協力しなければ田舎の生活は成り立たなかっただろう。嫁から一家の主婦へ格上げ(?)されることは誇らしいことだったと思う。

 

最後に昔話を二つ紹介しておこう。

・『金のしゃもじ』

『金のしゃもじ』 - 小澤俊夫 昔話へのご招待 (Toshio Ozawa -invitation to the folktale-) | FM FUKUOKA

・『宝しゃもじ』まんが日本昔ばなし〜データベース〜 - 宝しゃもじ

嫁の話はここまで。

 

🌸1分で楽しめるヘアメイクの変遷。

とってもおもしろいのでお薦めします。

1910年から2010年まで、日本女性の髪型とメイクの移り変わりを1分ちょっとでまとめています。各国版があるんですが、日本とドイツのを貼っておきます。

www.youtube.com

 

www.youtube.com

 

都内を疾走する外国人マリオ &18年間マリオカートで当番を決める父と母 ほか

マリオカートのある風景

東京都内のあちこちで出会うマリオたち。乗っているのは私が見たところほとんどが外国人風だ。おっと、マリオと言っちゃいけないんだった。「マリカー」という名前なのだ。MariCARhttps://akihabara.maricar.com/をめぐっては、裁判もあって任天堂が勝訴した。こちらの記事→任天堂、「マリカー」めぐる訴訟で勝訴 「公道カート」会社に賠償支払い命令 - ITmedia NEWS

 東京は元旦から5日までピカピカの晴天で、都内を自転車で走るとき、何度もマリカーのハイテンションな人たちに遭遇した。こちらは

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スカイツリーに向かう言問橋(ことといばし)で撮った写真。逆光で残念だが。みなさん、冬の休暇と陽光を満喫している。

都内でよく見かけるといっても、すぐにカメラで撮影できる態勢ではないため写真を撮るチャンスはなかなかない。

でもこちら、京橋の東京スクエアガーデンのそばで、遠くに一団を見つけたので待機して撮ったことがある。

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このころは毎日のように京橋の国立フィルムセンターに映画を見に通っていた。必ず同じ時間に出会うのだ。コースはいくつかあって選ぶらしい。渋谷スクランブル交差点を通るのもあるけど、あそこは交通量が激しいからよそ見できないだろうな。

マリカーのみなさんは決まってこんな風に手を振ってくる。ご機嫌そうでしょ?信号待ちの時は互いに写真を撮りあったりして楽しそう。

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コスプレの衣装代も料金に含まれているそうだ。

シートベルトやヘルメットはいらないの?と気になるところだが、公道カートは「原動機付き自転車」に区分されているから不要なんだって。詳細は上に貼ったサイトでどうぞ。

こちらはベルギーサッカー代表メルテンスドリース・メルテンス - Wikipedia

https://www.lesoir.be/sites/default/files/dpistyles_v2/ena_16_9_extra_big/2018/07/31/node_170799/23061578/public/2018/07/31/B9716495306Z.1_20180731224213_000+GDMBPH5OB.1-0.png.jpg?itok=pKeBVGXf

Dries Mertens dans la peau d’un célèbre personnage de jeu vidéo (photo) - Le Soir

夏休みに東京へ来て、ずっとやってみたかったというカート体験を叶えた。それをFBに投稿したらベルギー仏語紙がさっそく取り上げた。ちなみにメルテンスの夏休みはバリ島と日本だったそうだ。

大阪にもこうした公道カートの利用はあると聞いたのだが、みなさんご存じ?

 

18年もマリオカートで勝負する両親の画像が微笑ましい

スカイツリーの近くでマリカー写真を撮って帰ってきたら、偶然こんな楽しい記事がTwitterに来ていた。マリオづいた一日で笑える。 

 

どちらが買い物に行く?今日の皿洗いは誰がやる?洗濯やゴミ出しは?…それをじゃんけんやゲームで決める夫婦やカップルもいるだろう。

こちらの夫婦は、食後のお茶の用意を誰がするかをマリオカートのゲームで決めている。毎日である。2001年から。18年間もの間。

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Crédits : Louis Hvejsel Bork

この写真を撮ったのは息子のルイさん、↑クレジットの名前の人。おもしろいのは写真右上のに自身の姿が写っていること。ヤン・ファン・アイクの「アルノルフィーニ夫妻像」(1434年)アルノルフィーニ夫妻像 - Wikipediaを思わせる。部屋の凸面鏡に映る人物の一人は、画家のファン・エイク自身だと考えられている。

ルイさん、まさかそれを狙った?考え過ぎか。

2014年にもゲームをする両親の写真を撮って発表しており、比べてみると興味深い。同じアングル、同じ窓、同じドア、同じ絨毯…。変わったものも少しある。でもほとんど変わっていない。一番変わらないものは両親の仲のよさかな。

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もともとこのマリオカートのゲームは、1999 年のクリスマスプレゼントとして、両親がルイさんに贈ってくれたものだという。ゲームに飽きてほったらかしておいたら、両親が二人で始めてはまったということだ。記事内にはもっと詳しいこと、つまりゲームについて触れているのだが、いかんせん私はゲームをいっさいやらないのでチンプンカンプン。

任天堂は、ルイさんに毎年写真を撮ってくれるようお願いしたらいいのに、と思っている。

ではまた~!

新年のご挨拶 &寒中水泳 &人間の鎖620km

遅ればせながら私も みなさんにならって

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

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↑ 近所の「亀の子たわし」さんが巨大な新年たわしを飾っていた。

 

ご挨拶のついでにちょっとなにか書いておきます。

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ねんねこや

無期限休養に入った谷中(やなか)「ねんねこやhttp://nennekoya.com/さん。

私が写真を撮るまでの数分のあいだに、二組の外国人観光客が足を止め、ニッコリしながら通り過ぎていった。

正月の3日間、谷中や上野、浅草や秋葉原など観光スポットは大変な人込みで、アメ横は外国語しか聞こえてこないほどだった。

東京は快晴が続き、最高の自転車日和だ。空気がきれいで抜けるような青い空と冬の柔らかな陽光が嬉しい。さらに正月は車も少ないので毎日都内を駆けめぐっている。

長く滞日したヨーロッパの人が、「何が恋しいって東京の冬の青空さ」と言うのもよくわかる。あちらの冬はどんよりしてたいてい天気が悪くて鬱屈した気分になり、自殺も増えるという。

 

寒中水泳ってどう⁈

この季節になると毎年話題になるのが寒中水泳。私は寒がりなんでまったく信じられない。日本でも好きな人はいると思うが、海外の愛好者は大変多く、冷たい水は血行を促進して体によいという健康上の理由でみなさん海や川に飛び込んでいく。

新年恒例のオランダの寒中水泳行事。参加者は 約1万人くらいとか。

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1 januari 2019 dinsdag Unox Nieuwjaarsduik Scheveningen 12.00 uur

以前、ドイツ人と結婚した人が「義母が冬、ベランダで寝るのよ」といって写真を見せてくれたことがある。目と鼻だけ出して他はダウンや毛皮に包まれ、ベランダにマットレスを敷いて横になり笑っていた。外気は健康にいいからと、雨や雪の日でなければ冬はときどきそうやって外で寝るのだという。

友「写真でも見せないと日本では誰も信じてもらえないと思って…」

私は信じるよと言った。以前雑誌か何かで読んだことがあるのだ。健康オタクだった金正日も長寿を願い、その方法を試していたと。

みなさんのお近くにもそういう人いるのかしら。

 

反セクシズム あっぱれなインド女性たちの「人間の鎖」620キロ。

www.youtube.com

一昨日のルモンド紙、インド女性の記事には驚いた。インド南部のケララ州で「女性の壁」と名付けられたデモがあったという。報道によると、人間の鎖の長さは620km、参加者は500万人ということだ。

620キロの長さにも仰天だが、このデモが今世界中で起こっている反セクシズムの流れをくんでいるのもおもしろいと思う。インドでは女性の月経は穢れと見なす。月経年齢(10~50歳)の女性は伝統的にヒンズー教の聖地サバリマラ寺院に入ることを禁じられていた。

ところが昨年、最高裁が女性の参拝を認める判決をしたものだから、それに異議を唱える保守派ヒンズー教徒(活動家)と、女性たちとの対立が起きていた。女性たちは何度も参拝に訪れようとしたが、そのたびに活動家によって妨害された。そんなことから元旦にこの大規模デモという流れになった。

ケララ州政府は共産党が強く、最高裁の判決を尊重して女性の権利を守ろうとしている。2日には、参拝を試みた女性二人に警官の警護をつけた。しかしそうしたことが保守派の反発を煽っているようだ。今後も多難そうだが成り行きを見守りたい。

何もかもスケールが大きく、エネルギーが半端でないインド。これからはますますインドの時代だと私は思っている。

 

話題はここまで。

Twitterで拾ってきたおもしろいもの、可愛いものを見て和みましょう。

 

①蝶が好きなみなさんに贈る。

ワニの涙を飲みにくる蝶。塩分やミネラルを補給するらしい。

②妖怪おでん。

 ③可愛い!

 

 追記:

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東京新聞1月6日

「生きがい」がブーム 全自動忖度機&ソンタック咳止め 

国際語になった日本語シリーズ 4回目。

「生きがい」ikigai

日本語の単語なのに海外では思いがけない使われ方をしたり、独自の発展を遂げたりする言葉がある。今日はその中でもブームとなっている「生きがい」を取り上げてみたい。

https://www.journaldujapon.com/wp-content/uploads/2018/06/2018_NL_LeLivreDeLIkigai_PLAT1_RVB-1-195x300.jpg

「クリスマスに生きがいについての本を贈りましょう!」

あなたが外国の街を歩いていて、本屋のウィンドーでそんなキャッチコピーを見つけたら思わず立ち止まるだろう。私もそうだった。

おや、日本語?なんだって?

『生きがいについての本 幸福のジャパニーズメソッド』。

生きがいって自分が生きる意味とか喜びみたいなもの?それとも違うの?

https://www.journaldujapon.com/wp-content/uploads/2018/06/monprogrammeikigai-204x300.jpg

『生きがいプログラム』ー あなたの生きがいを見つけるための12週レッスン!

ダイエット12週間ならわかるけど、生きがいを見つけるガイドブック?

どうも私たち日本人が使う「生きがい」という意味以上の世界が展開しているようなのだ。それは生きがい哲学、生きがい学とも呼べる領域にまで深化していた。

そこでまず登場するのがこのベン図。生きがい関連の本には必ず巻頭についている図だ。過去ブログ『輸入した(い)ニッポン語~』でも紹介した。

 

http://www.forastateofhappiness.com/wp-content/uploads/2018/03/Ikigai.jpg

生きがいとは「好きなこと」「得意なこと」「人から求められていること」「お金になること」の4つが交わったところにあるという。

生きがいと幸福、どこが違うだろう。似ていて、重なる部分も多いと思うが、一番の違いは、生きがいは未来に向いているところ。今持っていなくてもいい。求めていけばいい。こうありたいという理想の生き方、自分が生きる意味を探し求めていくことが大切なのだと思う。

もちろん、自分の生きがいはこれだ、と即答できる人はよい。私はこの図を見ながらじっくり考えてみようと思う。生きがいや幸福観などは年齢によっても変わってくるだろう。

 

生きがい哲学のブーム

最初に「生きがい」という言葉に注目したのは、アメリカの研究者・作家であるダン・ベットナー氏だ。沖縄の人が健康で長寿な秘訣に「生きがい」があることに注目。これにより”ikigai”という言葉が2000年代以降広まった。

http://hotbuzzmag.com/wp-content/uploads/2016/03/Ikigai-repor.png

写真はブームの火付け役:スペイン人エクトル・ガルシア氏(2004年より東京在住。自称オタク、日本通)、フランセスク・ミラージェス氏(心理学およびスピリチュアルを専門とするジャーナリスト)Hot BuZz (mag) Presentación del libro “Ikigai: Los Secretos de Japón para una Vida Larga y Feliz”

二人は沖縄の「長寿の里」と呼ばれる大宜見村でフィールドワークをおこなった。村のご長寿100人に幸せの秘訣を聞き取り調査した。また村の暮らし、村人の交流の様子、働き方、食事なども分析し、本にまとめた。生きがいのある生活が健康な暮らしと長寿に結びついている。スペイン語で発行されると反響を呼び、フランス語やドイツ語、オランダ語などに次々と翻訳された。

Ikigai: The Japanese secret to a long and happy life

Ikigai: The Japanese secret to a long and happy life

 

 上は英語版、やや遅れて2017年発行。英語版により一気にブーム化し、関連本も出されるようになった。生きがいの本を読み、感銘を受けて沖縄県大宜見村へ観光に訪れる欧米人も少なからずいるという。

沖縄はブルーゾーン( blue zone)である。

ブルーゾーンというのは長寿者の多い地域で、当初研究者が地図に青いマーカーで塗ったことからそう呼ばれている。ウィキペディアによれば

・イタリア・サルディーニャ
・日本・沖縄
アメリカ合衆国カリフォルニア州・ロマリンダ
コスタリカ・ニコヤ半島
ギリシャイカリア島

の5カ所が挙がっている。2004年からダン・ベットナーが、ナショナルジオグラフィックと組んで調査を行い、成果をまとめた。その『ナショナルジオグラフィック』2005年11月号からちょっと沖縄の写真をお借りしてきた。

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https://www.bluezones.com/wp-content/uploads/2015/01/Nat_Geo_LongevityF.pdf

↑こちらで読めます。

↓また日経ビジネスオンラインの記事が良いので貼っておきます。

長生きの秘訣は 健康な食と孤独でないことだそう。

長寿地域「ブルーゾーン」に学ぶ健康の秘訣:日経ビジネスオンライン

生きがいについてはここまで。

 

昨日の「忖度」に関して楽しいコメントをいただいたので紹介する。(お名前は出しません)

その前に、昨日の記事でフランスのル・モンド紙に「忖度」”sontaku”という言葉が初めてお目見えしたと書いた。実はあの記者さん、最初は”sontoku”と打ち間違えたのだ。だから記事を読んだ日本人は「ああ、残念!」と心の中で呟いた。私は印刷したのでそのまま残っている。でもあとで誰かが教えたのだろう、ちゃんと”sontaku”に直っていた。

だけど”sontoku”損得でもおかしくないな。「官僚は損得で動く」。正しいじゃないか。…とあとで思った。

 

全自動忖度機

昨日の朝日新聞でも触れていた。

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爆笑デーブ・スペクター@dave_spectorツイート。

 去年の3月だが、今読んでも吹き出す。それどころか下に連なるツイも全部おかしい!

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みなさん、お腹は大丈夫ですか。私はよじれました。

ではお後がよろしいようで、今日は終わります。

 

みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。

また来年お会いしましょう。

 

国際語になった日本語シリーズ:「忖度」と「ひきこもり」

年の瀬ですね。大掃除や買い物、お節づくりなど進んでますか?

はてなの皆さんの多くが、あちらこちらでご挨拶を交わしていますが、私はまだのんびりと今から何か書こうとしている(笑)。←あなた、掃除はすんだの?いえ、まだ半分。あしたやるからいいです。

今日は国際語になった日本語のシリーズを更新しようかなと思っています。

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2年前『外国で出会うニッポン』(*1下に過去記事)『 輸入した(い)ニッポン語』(*2)の中で今や国際語になって広く使われている日本語の単語をいくつか紹介した。積読」TSUNDOKU、「旨味」UMAMIなどは意外だったし、「過労死」は聞くのも辛いのにゲームまでできていて卒倒しそうだった。「カミカゼ」をテロリストの自爆以外に、数独の難しさの度合い(上級)に使っているのを見た時は唸った。孤独死は前回紹介済み。今日は「忖度」と「ひきこもり」を見てみよう。

 

忖度

去年2017年の流行語大賞である。ちょっと前は読み方も知らなかったのに、去年中には国民全員が「忖」という当用漢字にない漢字さえも間違えずに書けるまで進歩した。いや冗談を言っている場合か。美徳の言葉だったのに。美しい日本語だったのに。それなのに…(泣)。

今一度思い出そう。忖度は、相手がどう思っているか、どうしてもらいたいのかをおもんばかること。基本はおもいやりや優しさである。相手は年上の人、立場が上の人だ。日本語は省略や曖昧な表現が多いが、忖度は言語化されない状況を巧みに読み取って、相手の求めることを理解するという大変デリケートで聡明でないとできない技である。そう、本来は。「斟酌」(しんしゃく)という言葉もある。こっちは幸いまだ汚されていない。

本来の語義が失われた「忖度」、権力者におもねるといった意味合いの混じる「忖度」は、2018年に入ると海外紙にお目見えした。最初に見たのは英語紙で、そのあと仏ルモンド紙Au Japon, le premier ministre fragiliséに、3月の森友問題初期に登場。 « sontaku »のあと、説明的に言い換えを付けていた。とはいえこの言葉が国際語になることはないだろうし、ならなくてよい。そういえばドイツ語には忖度に相当する言葉がある、と朝日新聞で読んだのを思い出した。ちょうど1年くらい前で、同時期にTwitterでも日本語以外ではどう表現するかという議論で盛り上がっていた。

朝日新聞にはドイツの政治学者の談話が載っていた。

忖度に似た言葉に”Vorauseilender Gehorsam”(直訳:先回りした服従)というものがある。これはナチスの時代の思考形式、そしてなぜユダヤ人虐殺のようなことが起きてしまったのかを説明するときに用いられる。

皆まじめな良き市民だった。家では良き夫で息子で隣人であった。よく働くばかりか、すすんで先回りして従順であり、異議を唱えることはなかった。そうした態度が悲劇を生む土壌を作った。ヒトラーの部下なら、総統の命令を待たなくても意をくんで行動する。先んじることはライバルに勝つためにも重要だ。

「先回りした服従」はウィキペディアもある。→ Vorauseilender Gehorsam – Wikipedia

 

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ひきこもり

数年前からフランス語、英語の報道で文字では見ていたが、人が話しているのを聞いたのは2016年の仏ニースのテロ事件のときだ。犯人の近所に住む青年がインタビューに答えてこう言ったのだ。「あいつはひきこもりだったよ」。フランス人なので”h”は無音化し、(h)ikikomori,イキコモリと発音していた。部屋に閉じこもって出てこない、というのではなく「人を避け、殻にこもる」くらいの意味で使っていた。このとき初めて「ひきこもり」が普通名詞化しているのがわかった。

フランスでもアメリカでもこの現象が思春期の子どもたちに見られるとし、ますます注目を集めるようになった。ネット上にはいろいろなサイトもあるし、フランス語では下のような本↓(2冊とも”HIKIKOMORI”の文字が見える)も出版されている。

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先月11月にもフランス2(NHKBS)でひきこもりの問題を扱っていた。

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Témoignage : sortir me rend malade

(↑こちらで見られます)

15歳のときにひきこもりになり、母親と二人でひっそりと暮らす男性。サングラスとキャップ着用でインタビューに応じてくれた。母は最初のうち息子を怠け者だと思っていたが、本当は苦しんでいたのだと気づく。男性は今では隣人と二人きりなら話せるし、自分の体験を本にしてもらっている。

この男性は自分の気持ちをよく表現できるのでいいなと思った。ただ「ひきこもり」はフランスではまだタブーだという。

ビデオの終わりのほうに、日本人でひきこもり生活を体験した岩井 秀人氏が登場。(いわい ひでと、1974年6月25日 - 。劇作家、演出家、俳優)。自身の体験を語ってくれる。私はこの方を知らなかった。

16歳から20歳までひきこもり状態だったが、そのかん映画をたくさん見たり、ゲームをしたことで目覚めがあり、そのことが後の人生を構築するきっかけとなったと語る。

また、現在の日本では「そういう時期もあるよね」と以前ほどタブー視はされていないと話す。

言葉を二つ紹介しました。今日はここまで。

次回はいい意味の日本語を紹介しますね。では~!

 

🌸国際語になった日本語シリーズ 過去記事

*1

cenecio.hatenablog.com

*2

cenecio.hatenablog.com

 

国際語になった日本語シリーズ 続き

cenecio.hatenablog.com

イギリス孤独担当大臣・フランスの取り組み&路上死510人の名前を掲載仏紙 貧困と孤独-3-

「 貧困と孤独」のテーマ、今日は3回目。前回は→ 胸を打つ海外のホームレス支援 &排除アート 貧困と孤独-2- -  

Kodokushi(孤独死

 すっかり普通名詞化し、国際語になった「孤独死」ということば。実際の孤独死は、うちの近所でも人に看取られることもなく亡くなった方が何人もいらっしゃる。正確にいうとここ7年で5人である。だから他人事だと思ったことは一度もない。

イギリスが日本の孤独死孤立死)について高い関心を寄せていたのは、BBCなどのニュースを通して知っていた。日本には、電気・ガスなどが止められ、食べ物もお金もなくなり、アパートでひっそりと息を引き取る人がいる。そればかりか何日も何週間も人に気づかれずに。あんなお金持ちの国で!等々と驚きをもって報道されていた。

よく覚えている。5~6年前は"lonely deaths"とまだ英語で表現されていた。しかし2年位前から日本語の”Kodokushi”が使われだし、英語で使われるとアッと言う間に国際語の地位を占めることになる。既に定着した「過労死」「過労自殺」「ひきこもり」などのように。

 

孤独担当の大臣が誕生 世界初

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Tracey Crouch(写真:右がトレイシー・クラウチさん。孤独担当相に任命される。インタビューMeet Tracey Crouch, Britain's Minister for Loneliness | Timeのなかで孤独死という言葉を使っている:” In Japan, lonely deaths among the elderly have a name, Kodokushi.”)

当時、一年前だが、孤独担当相ができたとき、アンさんや関心の高いブロガーさんとこの話をしたことが思い出される。世界でも大注目だったと思う。

テリーザ・メイ首相のことばで 'the Sad Reality of Modern Life'「現代の生活における悲しい現実」すなわち" loneliness"「孤独」に真剣に対処すべきときが来たという。

AFPの報道によるとイギリス赤十字社の調査で

英国の人口6560万人のうち900万人以上が常に、もしくはしばしば、孤独を感じているという。孤独と疎外は「隠れた流行病」であり、引退から別離、死別など人生のさまざまな節目ですべての年齢層に影響を与えていると指摘している。http://www.afpbb.com/articles/-/3158930

孤独というと、精神面に目を向けられがちだが、多くの調査報告で明らかなように健康へのリスク、死亡リスクは高い。「タバコを1日15本吸うことに匹敵」「アルコール依存症であることに匹敵」…などの喩えがよく知られていると思うが、心臓病や高血圧、免疫機能障害や神経系障害といった病気との関連も注目されている。

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孤独礼讃派のわたし

孤独が「一人でいる時間」だとしたら私はそれは貴重なものだと思っている。せわしない現代の生活、人と仕事と義務との摩擦から逃れ、自由になる時間を持つことは絶対に必要だ。それが簡単には持てないだけに。

一人でいるときにしか起こりえない気づきや成熟というものがある。物事を多面的にじっくり考えてみたり、棚上げしていた問題に向き合ったり、自分自身を見つめなおしたりもできる。孤独な時間はすばらしい。贅沢なひとときとさえ言える。それは英語でいう"solitude"であって" loneliness"ではない。

子どもにだってsolitudeは必要だと思う。塾や習い事、学校や親が作った計画表に支配されない、豊かな孤独な時間は、子どもの内面生活を大きく育てる。

でも悲しいかな、現代の子どもたちは忙し過ぎるし、スマホや手軽な娯楽に惹きつけられ、自分の時間が持てないように見える。

 

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Kodokushi: Lonely Death Paperback – 25 Oct 2017

(写真: amazonより。 昨年出版された本)

 

孤独対策

孤独の定義https://www.campaigntoendloneliness.org/about-loneliness/はまず、あなたがどう感じているか、ここが問題になる。人と一緒に暮らしていても折り合いが悪く不満に感じていれば孤独だろう。離婚や別離、闘病や失職などでそれまでにあった人間関係から切り離されると、不安で孤独に感じる。そして誰にでもおこることであり、高齢者であれ若者であれ、あらゆる年代の人間に孤独は忍び寄る。孤独は心身に大きなストレスを与え、慢性化すると病気につながりかねない。

これを常態化させないためにイギリスは対策に本腰を入れている。孤独テーマの会議(*)に世界中の識者を集め議論を交わしたり、積極的なキャンペーン(**)、様々な魅力あるプログラムを打ち出してきた。プログラムの基本は人とつながること、体を動かしたり物を作ったり、仲間と協働したりすること。学び、趣味、スポーツ、ボランティアなどだ。そうやって楽しい時間を持ち、人と共有することで次第に改善されるという。

当たり前のこと?健康だったらね。内にこもっていると目が外に向かない。自分から踏み出せない人にはちょっとした助けが必要なのである。

(*)The 4th Annual Campaign to End Loneliness Conference - Evenium.net

(**)  https://www.campaigntoendloneliness.org/

イギリス凄いなと思っていたら、朝日新聞にはこんな記事が載っていた。

「孤独」が増えた背景には、公的サービスの大胆な削減があるのだという。保守党政権が予算を減らしたせいで

・貧困地域の就学前児童と家族支援のセンター500カ所以上が閉鎖

家庭内暴力被害者の避難施設の五分の一が閉鎖

こうした施設は孤独の軽減に寄与していたはずで、ガーディアン紙は孤独担当相の設置は「偽善」だと見ている。

いろいろな見方があるものだが、日本ではホームレス問題と同様、自己責任と言われるのではないだろうか。また若いと福祉の網からこぼれてしまう場合もある。それは下の記事を読んで愕然としたことである。

30代でも起こる「孤独死」壮絶すぎるその現場 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

抜粋して引用。

日本少額短期保険協会が発表した「第3回孤独死現状レポート」によると、2015年4月~18年2月までの孤独死者のうち、50代以下が約4割を占める。

孤独死の7割以上を占めるのが、こういったセルフネグレクト(自己放任)だ。生活や健康状態が悪化しているにもかかわらず、改善する意欲や周囲を頼る気力がなくなってしまう状態のことを指す。部屋をゴミ屋敷にしたり、必要な食事を取らなかったり、体調不良でも医療を拒んだりして、自身の健康状態を悪化させる。

「緩やかな自殺」との別称もあり、近年は大きな社会問題となっている。セルフネグレクトは誰にでも起こりうる。ビジネスパーソンも仕事に追われ、忙しさのあまりに、気づけば家がゴミ屋敷化したり、食生活がなおざりになっていたりするケースが多い。

猛暑で死亡の背景に孤独

フランスではずっと早くから孤独、高齢者の孤立の問題に取り組んできた。簡潔にまとまった記事があるので貼っておこう。

日本も見習うべきフランスの高齢者の孤立対策「モナリザ」とは? 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

私たちは、猛暑の夏亡くなる人は暑さのせいだと考える。しかしフランス人はこれを孤独・孤立が原因だと捉える。そのきっかけは2003年の欧州を襲った猛暑で、フランスでは1万5千人が亡くなった。恐ろしい数字だ。その8割が75歳以上だったという。急いで高齢者の孤立を支援する必要がある、ということで全国組織「高齢者の社会的孤立と闘う国民連帯」(頭文字を取ってMONALIZA)ができ、指針をまとめた「モナリザ憲章」を定め、現在700以上の組織が活動しているという。

黄色ベスト運動でもそうだが、フランスでは市民が運動を起こしたり、率先して組織を立ち上げたりが実に早い。政府に提言もし、政策にも影響を与える。

 

路上死510人の名前を掲載

前回書きそびれたことを一点加えておこう。今年4月にtwitterのタイムラインで回ってきたツイート。

フランスのラ・クロワ紙が、2017年に路上で亡くなった人510人全員の名前を、4ページにわたり新聞に掲載したというもの。

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https://twitter.com/CyrilPetit/status/981427450587635713/photo/1

みな名前も人生もあった隣人なのだ。その生きた証をせめて紙面にとどめようとしている。亡くなった人の平均年齢は50歳。男性467人女性43人だった。

みなさんの地域はどうだろうか。東京には労働者の街山谷(さんや*追記)という地域がある。日雇い労働者向けの簡易宿泊所が立ち並ぶところで、ちょっと前に行ってみたら外国人用のゲストハウスに変わっている建物もあり、バックパッカーで賑わっていた。

ここで毎夏お盆のころ、路上で亡くなったホームレスや仲間たちを追悼する式が開かれている。祭壇を作り、遺影を並べて、僧侶がお経をよむ。炊き出しをしている団体が約30年間に亡くなった人の名簿を貼る。楽器の演奏や屋台も出て普通の夏祭りと少しも変わらないそうだ。

今日は終わります。

 

🌸明日はクリスマスイブ。

オバマサンタさんが話題です。子どもの病院を訪ねたそうです。

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https://www.demorgen.be/fotografie/obama-speelt-kerstman-voor-zieke-kinderen-f4024d11/

 

*追記:マンゴーさんが山谷についての記事を書いていますので貼りますね。

hannarimango.hatenablog.com

 

🌸東京新聞朝刊12月23日

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 追記:2019年2月23日

最近ホームレスを見かけることが少ない理由ー見えにくい住居不安定者の実態ー(藤田孝典) - 個人 - Yahoo!ニュース

 引用

彼らはどこに行ってしまったのだろうか。

厚生労働省(2018)によれば、確認されたホームレス数は、4,977人(男性4,607人、女性177人、不明193人)であり、前年度と比べて557人(▲10.1%)減少している。

この数については計測の仕方など不十分ではないか、と疑問が上がっているものの、年々減少傾向にある。

路上で見かける人々は公式な統計でも実感としても減っているらしい。

・・・

ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法によれば、ホームレスとは「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」を指している。・・・

要するに、屋内にいる者はホームレスではないと法的に位置付けられている。・・・

昨年発表された東京都(2018)調査によれば、東京都内だけで約4000人のネットカフェ難民がいることが報告されている。東京都内だけでこの数字である。・・・

 

 追記:4月

toyokeizai.net

f:id:cenecio:20190224133829j:plain 2019年東京①

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2019年1月 東京② 隅田川沿い

 追記;青木さん 2010年の記事

胸を打つ海外のホームレス支援 &排除アート 貧困と孤独-2-追記

前の記事イグルーをホームレスに!そしてホームレスは靴と足のケアが大事。貧困と孤独-1- -の続き。カテゴリー「貧困と孤独」を新しく作りました。

寒くなると毎年気になるのは、近所のノラ猫たちと顔見知りのホームレスの人々のこと。でもそう思うのは私だけじゃないんだな。前回頂いたコメントからもわかりました。

この季節になるとホームレスの事は特に気になりますよね。他人事ではないです。

夜は延々と歩き続け、昼間に眠るホームレスの人も居ると何かで読んだ気がします。寒さのためでもあり、夜に寝ていると暴行される危険回避のためでもあり…。

この時期になると Podiatryを学んでる学生たちが靴や靴下の寄付を集めてホームレス支援のチャリティなどに持っていきます。

ヨーロッパでの路上生活者に対する支援の輪は凄いと思います。こんな事を知ると日本人って本当に優しいのだろうか?と自問自答します 

 (抜粋ですみません。お名前は出しませんでしたが、ありがとうございました)

冬になると声掛けをしたり温かい飲み物を届けたりするブログ主さんも何人もいらっしゃる。他の人と情報と経験を分かち合えるのはいい。というのも、路上生活者でシェルター行きを望まない人はかなりいるからだ。人の世話にはなりたくない、過去を知られたくない。それぞれの事情を汲むべきだが、雪や霙の夜は、あの人は温かくしているだろうかととても気になる。

上のコメントにある「暴行」に至ってはもうかれこれ20年前くらいからだろうか、多発した時期もあった。道頓堀に投げ込まれて亡くなった男性もいた、「世の中の役に立っていないから死んでも仕方がない」と供述した少年たちの野宿者殺人未遂など、非情な事件が社会を震撼させた。しかし現在でも襲撃は絶えないそうだ。実態調査によれば特に夏に多く発生し、加害者は若者と10代の子どもたちで、殴ったり蹴ったり花火を押し付けたり…と深刻だという。

別の意味でショックだったのは、今年初めTVニュースで見たのだが、大阪の街の夜回りにイギリス人青年が参加していたことだ。欧米の人たちはフットワークが軽いから「あ、自分も手伝います」という感じなのだと思う。まあそれにしても、私などが外国に住んでいるとき「時間あるからイベント手伝いますよ」というのとはちょっとわけが違う。

今でも最も強く心に残るのは、釜ヶ崎(あいりん地区)のこども夜まわりという活動のことだ。2年前に見たドキュメンタリ映画『さとにきたらええねん』釜ヶ崎 こどもの里 - ベルギーの密かな愉しみのなかで、「さと」の子どもたち(中学生)が、ホームレスの人々に声をかけ、温かい飲み物やおにぎり、時には無料の医療券を配っていた。あの光景が忘れられない。

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Grand froid : quand les citoyens se mobilisent

海外の試みもおもしろい。そしてとても温かい。行政に頼らず、個人や小さなグループ単位の活発な支援活動がある。少し紹介してみたい。

上の写真はイグルー(前回記事見てください。発泡スチロールの個人用シェルターのこと)に食べ物などを届ける活動。 家で温かい食事を作って持っていく。

下の写真は「誰の物でもありません。必要な人、どうぞお使いください」という札をつけ、温かい衣類などを街頭に置く活動。すてきなアイディアだけど、雨にうたれたらもったいないなと私は思ってしまう。(*追記

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Contre le froid et la neige, les Cergyssois accrochent des vêtements chauds dans la rue pour ceux dans le besoin

他にリヨン(フランス)では「一晩お泊めします」という活動も。自宅に空き部屋のある市民があらかじめ登録しておく仕組みらしい。これは日本では考えられないなと思う。またちょっと話が逸れるが、これの別バージョンで、移民してきたばかりの人、特に若者、身寄りのない未成年を家庭に受け入れる活動もある。言語習得がスピードアップし、社会に溶け込むための細かいお手伝いができるという。

 こちらはホームレス専用の自動販売機(イギリス・ノッティンガム

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ホームレス専用自販機、英慈善団体が設置 無料で必需品提供 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

日常生活で必要とするものが入っていて、ホームレスの人には取り出すための専用のキーが与えられている。たとえば水や栄養補助食品、靴下、生理用品、歯磨きセットなど。新鮮な果物やチョコレートやサンドイッチなどは、食料廃棄の削減を目指すスーパーやフードバンクなどが提供しているということだ。

一日の利用は三回まで。上限を設けたのは、自販機への依存を防ぐため。自販機はあくまでもホームレス支援策を補完するものだからである。

 

共感、体験、そして改善策を考える。

フランスは他の面でも先進国だと思う点がいくつかある。まず寒空の下で路上生活を体験してみる議員さんたちの試み。本当に一晩過ごしてみるのだ。きついだろうなあ。

(日本でも議員のみなさん、一泊の避難所生活はいかがですか?改善点が山のように出てきますよ)

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Des élus dorment dans la rue: au grand froid les grands coups de com'? - L'Express

またホームレスの数の調査でもパリ市民の本気度がわかる。以前、国土省副大臣が「ホームレスは50人くらい」などとボケたことを言い、マクロン大統領の党「共和国前進」に所属する議員が「彼らは自ら路上生活を選択しているのだ」などと問題発言をしたことがあった。パリに住んでいたらそんな数で収まらないことは私でもわかる。何か政治的意図があるのでは、と批判が集中した。そこからがフランス人は早い。

ハッシュタグ「連帯の夜」(#NuitdelaSolidarité )のもとに集い、ボランティア1700人と職員300人が350のグループに分かれ、夜のパリを3時間歩いて調査したのである。

下はパリ市長アンヌ・イダルゴさんのツイートで、各区のホームレス人口が記載されている。

のちに 緊急収容施設に入っている672人を合わせて、3624人と発表された。

地図にあるパリの広さは、東京でいうと世田谷区くらいの大きさだと言われている。郊外を含めずにこの人数。

東京23区と大阪ではそれぞれ1千数百人という調査がある。行政のほかに市民団体ARCHなど幾つかのグループがボランティアを募って行っている。(東京新聞にも「夜の調査員募集しています」の記事が載る)

夜見えにくい河川敷では昼間に調査、あとは夜間に市街地を回って数えるそうだ。しかし、日本のホームレスの生活スタイルは多様で複雑。ホームレスは働いている人が多い。このことは来日した外国人が一様に驚くことでもある。

都市部では昼間は廃品・空き缶回収などをしたり、ツテで小さな仕事をこなして、夜テントや段ボールの家に戻る人たちがいる。図書館や公共施設で過ごす人もいるし、いわゆる「ネットカフェ難民」も多いため、正確な数の把握は難しいそうだ。路上で定住する人が減ったからといってホームレス人口が減ったわけではないのである。

 

排除アート

都市部に住んでいればお気づきの方も多いと思うが、路上で生活させないために行政はいろいろな手をうってくる。たとえばよく見かけるベンチ。横になれないように一人分ずつの仕切り(ひじ掛け)がついている。あるいはお尻が全部乗らない半分の幅、しかも傾いていたりする。また座ったり寝転んだりができないように、地面にたくさんの鋲が打ち込まれた広場など。

「社会的困窮者の追い出し」を目的とするデザインは多種多様で、東京では至る所に見られる。一般に排除アート排除アート - Wikipediaと呼んでいる。(これに対し「アート」などと付けるのは止めてくれ、という声もあがっている)。英語では「敵対的建築」(Hostile architecture)というらしい。ところで素朴な疑問だが、北海道や沖縄にはこうしたものがあるんだろうか。

下の写真2点はウィキペディアから借りてきた海外の例。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0b/Boulons_anti-sdf_sur_un_perron_%28Marseille%2C_France%29.jpg/800px-Boulons_anti-sdf_sur_un_perron_%28Marseille%2C_France%29.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e3/Two_Park_Benches.JPG/800px-Two_Park_Benches.JPG

新宿にあるオブジェ。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5d/%E6%96%B0%E5%AE%BF%E6%8E%92%E9%99%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88_2007_%281808421202%29.jpg/800px-%E6%96%B0%E5%AE%BF%E6%8E%92%E9%99%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88_2007_%281808421202%29.jpg

東京五輪に向けて、駅や通路、公園、河川敷などに定住できないようにますます厳しくなるのかな。大阪万博もあるし。上野公園や代々木公園にテントを張っている人たちはどこに行くんだろう。以前段ボールハウスの入り口に造花を一輪さしているのを見て、心が和んだことがあった。

さてもう長くなったのでまた次回。まだまだ続きますよ。

 

*追記

12月22日今朝見つけたツイート。

 

https://bloximages.newyork1.vip.townnews.com/standard.net/content/tncms/assets/v3/editorial/5/d3/5d33f480-2824-57ac-89f2-195cba667473/5c1c1b7d443fc.image.jpg?resize=1200%2C800

追記:12月26日 くつしたプレゼントの会

www.kanaloco.jp

 全文引用

クリスマスイブの24日夜、路上生活を余儀なくされている人たちに靴下を贈る活動が横浜市中区の寿地区を拠点に行われた。貧困からホームレス状態に陥り、寒さや飢えなどから亡くなる人も毎年相次ぐ。繁華街が最も輝き彩られる聖夜、野宿者を取り巻く現実を知り社会が抱える問題に向き合おうと、女性美術家が立ち上がった。

 「くつしたプレゼントの会」を企画したのは、横浜でアート活動を続ける竹本真紀さん(42)。寿地区での支援活動に長年参加しており、凍(い)てつく路上で野宿している人から「厚手の靴下が欲しい」との声を受け、2015年にプロジェクトをスタートさせた。

 「支援という形ではなく、親しい友人に贈るようにプレゼントしよう」。会員制交流サイト(SNS)でそう告知したところ、3回目となった今年は30人余りから真っさらの靴下約80足やお菓子、カイロなどが寄せられた。

 竹本さんの呼び掛けで集まった市民ら約10人は24日午後8時20分ごろ、大きな袋を抱えて寿地区を出発。関内駅横浜スタジアムの周辺、みなとみらい(MM)線馬車道駅のコンコースなどを巡った。

参加した女性の一人は、クリスマスケーキやフライドチキンを求めるカップルたちが列を成すイセザキ・モール近くの地下通路に、段ボールの「家」がずらっと並ぶ光景に息をのんだ。

 男女30人ほどが暮らしていた。路上生活者は寒さだけでなく、華やかな街の雑踏や人々からの好奇の視線からも逃れようとしている現実を知った。

 プレゼントには竹本さんが制作した赤ずきん姿のキャラクター「コトブキンちゃん」が登場する漫画や、寿地区で年末年始に行われる炊き出しなどの支援活動「寿越冬闘争」を紹介するチラシも入れた。70人ほどに配り、寝ている人には枕元にそっと置いた。

 横浜スタジアムは、2020年の東京五輪で野球・ソフトボールの競技会場となる。観客席の増設工事が続いており「いつ強制排除されるのか不安」との声も上がっているという。

 竹本さんは「ホームレスの人たちは行き場がなく、年々高齢化が進んでいるのが実情。このプロジェクトを通して身近な路上で暮らす人たちに思いを寄せる人たちが大勢いることが伝わってほしい」と訴えている。

 

追記:2019年4月

toyokeizai.net

追記:2019年9月

 

イグルーをホームレスに!そしてホームレスは靴と足のケアが大事。貧困と孤独-1-

イグルーを贈ろう。

皆さんはイグルーと聞いてすぐわかるんだろうか。私がイグルーという言葉を知ったのはけっこう遅い。大人になってからだ。ああ、あれはそういう名前だったの。氷や雪の塊をドーム形に積み上げた、北極圏に生きる人たちの家の名は。(*1

ところがうちの子どもたちとなると、小さいときから知っていた。ピングーのおかげだ。朝の登校前にTVでやっていたスイスのクレイアニメピングー - Wikipediaで、大人が見てもおもしろくて私も毎朝楽しみにしていた。

下の写真は、ピングーたちが自分たち専用のイグルーを作っているところで、あとで中で遊ぶのだが、

https://vignette.wikia.nocookie.net/pingu/images/7/76/BuildingIgloosPromotionalPhoto.jpg/revision/latest/scale-to-width-down/640?cb=20170915191930

ピングー一家も狭いながらも一軒家イグルーに住んでいる。内装もとっても素敵!

https://i.pinimg.com/originals/c3/a2/51/c3a251c33c26d52c4b3a5e0472eec04f.jpg

さてここからはフランスの話だが、前の冬、寒波のフランスではホームレスの人々にイグルーhttps://www.iglou.fr/を提供しようという活動をしていた。ピングーたちのと違って氷製ではなく、発泡スチロールでできている。軽くて組み立ても簡単。

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https://positivr.fr/abri-isotherme-sdf-invention-iglou/

https://positivr.fr/wp-content/uploads/2018/02/abri-isotherme-sdf-invention-iglou-une-696x364.jpg

あなたが寄付をすると、必要としている人に届けてくれるのだ。そして冬が去ったら回収する。

寝るところがない?それならシェルターなどの施設に行けばいいだろうと思うかもしれない。だがホームレスの人たちにもいろいろな言い分があるのだ。顔を見せないようにしてインタビューに答えた人たちの話を聞いていると、もっともだなと思う。

まずシェルター内では喧嘩や盗難が絶えない。精神的な疾患が疑われる人、夜中に大声を上げたり暴れ出す人、病気なのか咳が止まない人など。ほかにはアルコール中毒麻薬中毒の人たちもおり、不穏な雰囲気である。さらに不法移民も混じり、言葉の通じない外国人も少なからずいるのだとか。

路上生活を始めたばかりの者にとっては非常にハードルの高い場所だという。食事ももらえて暖かいところではあるが、もう二度と行かない、外の方がましだと話していた。

イグルーを発案した人は凄いなあ。プライバシーを守れるし、個人主義のフランス人(ヨーロッパ人)にぴったりだと思う。↓こちらが開発者のジョフロワ・ド・レイナル氏。イグルーの内部は外気温プラス15度まで上がるんだって。バツグンの断熱効果だ。

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もちろん路上生活を抜け出して次の一歩へ進むことが大切なのだが、ともあれまず冬を生きのびてから。

 

誰でもあっという間に路上生活者に。年越し派遣村の衝撃

そのことを理解したのは10年前だ。それ以前はまったく考えてもみなかった。日比谷公園に「年越し派遣村」ができたときのこと。セーフティーネットもなく滑り台のように転げ落ち、路上生活者になってしまう可能性は誰にでもあるということ。また自己責任だなどと切り捨てられていく。そんな世情について多くを学び、また大きなショックも受けた。いったん路上に出たら仕事を探すのは容易でない。何よりも精神的にも体力的にもまいってしまう。あの頃は湯浅さんたちの活動に目が釘付けだった。(*2

あれから日本も少しは進展があった。ビッグイシューの活動、とりわけ空家を住まいにする取り組みや、路上生活脱出ガイド(東京、大阪、ほか各都市)路上脱出・生活SOSガイド | ビッグイシュー基金も必要な情報が細かく分かりやすく示され、すばらしいと思う。実際路上で生活をする人も減っていると聞く。しかし現在は貧困問題が深刻さ、複雑さを増し、失業などとも合わせ、広い視野で見ていかなくてはならない段階にきたと思う。

ホームレスの問題に戻るが、こちらの女性を見ていただきたい。

https://pbs.twimg.com/media/DC2R4h4XUAA_6uJ.jpg

フィンランドの元大統領ハロネンさん。私が以前(*下の記事)、ハリセンボンの近藤春菜さんにそっくりと書いたら、皆さん同意してくださったが(笑)、その元大統領がホームレス!…なんてわけなくて、これは救世軍のキャンペーン(2017年)なのだ。誰でも運が悪ければ、失業や病気などで電気・ガスも止められ、ホームレスになってしまうかもしれない、という広告に一役買ったハロネンさんである。

cenecio.hatenablog.com

フィンランドはホームレスの問題に長く取り組んできた先進国だ。ハウジングファーストハウジングファースト - Wikipediaという試み、つまりまず「安定した住まいを。住まいは権利」という理念のもとに支援してきた。ここでは長くなるので触れないが、日本でも関連本が出版されている。

*追記:フィンランド クリスマスチャリティディナー

yle.fi

 

ホームレスの人にとって、靴と足は最も大切な問題。

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Les pieds, talon d'Achille des sans-abris - L'Express

フランスのメディアから学ぶことは多いのだが、今日はあとひとつだけ支援の取り組みを紹介したい。 それは私が考えてもみなかった視点だ。

歩くことは生きのびること。ホームレスの生活はとにかく歩く。長く歩くので靴がすぐに傷む。そればかりでなく、足に合わない靴を履いていることが多いため足に問題を抱える人が多い。へたすると手術や切断も余儀なくされることも。

ここで立ち上がったのが専門医たちだ。フランス語でPodologue(足専門医)という。ホームレスの人が自分からすすんで「足が痛むんです」とやってくることはほとんどないので、医師は研修生たちを連れてみずから町に出ていく。この仕組みを考え出したのは赤十字だそうである。出張足診断とでもいうかしら。(フランス語:Maraude podologue)。フランスは凄い。とにかく脱帽!

今日はここまで。また次回続けます。

 

終わる前にちょっと素敵な話を。
日本と違って海外では、ホームレスの人が犬を連れているケースをよく見かける。ベルギーでは圧倒的に大型犬だったが、よくしつけられていて吠えることもなかった。

これはブラジルの話。あるときホームレスの男性が入院した。すると飼い主のことを気遣ってか、4匹の犬が病院の入り口に現れた。そのあと座り込み、ずっとおとなしく待っている。

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Image credits: Cris Mamprim

Homeless Man Goes To The Hospital, Staff Soon Realize That He’s Not Alone | Bored Panda

飼い主の男性が回復に向かうと、 看護師さんらスタッフは犬たちを中に入れてやった。そうして4匹でご主人を迎え、一緒に退院していったという。

チャンスパパ (id:chancepapa)さんはじめ、犬好きなはてなの皆さんにもうひとつ。

こちら、壺をひっくりかえしてなんともいえない表情のワンちゃん。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/50/Ptolemaic_roundel_from_a_mosaic_floor_decorated_with_a_dog_and_a_gilded_askos%2C_from_Alexandria%2C_Egypt%2C_c._200-150_BC.jpg/800px-Ptolemaic_roundel_from_a_mosaic_floor_decorated_with_a_dog_and_a_gilded_askos%2C_from_Alexandria%2C_Egypt%2C_c._200-150_BC.jpg

これがなんと紀元前200~150年、エジプトのモザイク画だというからビックリ。微塵も古さを感じさせない、生き生きした犬の表情!黄金の壺は葡萄酒を入れるものらしい。中にワインが入っていたのかしらね。あ、ヤバいって思ってる?

(出典はウィキペディアAncient Greek art - Wikipedia)

 

ではまた。

註 *1

 *2

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追記:12月17日

イェリク (id:jerich)さまのコメントで知りました。

イグルー 犬舎」というものがあるそうです。

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そうだったんですね。犬好きな人はみんな知っていたり?イェリクさま、教えてくださり、ありがとうございました。

黄色ベスト運動も終盤?マクロン任期第二幕も目が離せない。黄色ベスト-2-追記:是枝裕和監督

怒りの集積所、黄色ベスト運動は…。

前の記事:マリアンヌの壊れた顔も象徴 &北海道の女子高生がフランスで主役だった話 黄色ベスト-1- -続き。

毎日黄色ばかり見ていてさすがに飽きた(笑)。

ところで皆さんも安全ベスト(反射ベスト)をお持ちだろうか。私は町内会の夜回り当番の時「はい、これ着て!暗い夜道、目立つようにね」と手渡されるので、おとなしく着用している。

思い起こせば、ベルギーにいるときはよく見かけていた。例えば子どもたちの自転車での登下校。

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https://www.hln.be/

この写真はネットからちょっと借りてきただけだが、確かベルギーでは子どもが夜道を自転車で走るとき着用が義務だったな。あとでオランダ人に聞いてみたら「いや、オランダでは別に義務じゃないよ」と言っていた。あんなカッコ悪いもの着たくない、とも。それでも自家用車の中に何枚か携行しているそうだ。それは義務化されている。

ベルギーの子どもたちは早くから慣れているから抵抗がないんだろうか。カッコいいデザインやキャラクターをくっつけたら人気が出るのでは?ヘルメットにはものすごい種類の形やデザインがあるのだから。自転車王国だもの。

さて、黄色ベストさんたちは一応成功を収めたのではないだろうか。

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大統領の演説を聞く人々

大統領はあのデモは正当なデモ、正当な要求だったと認めた。無節操な暴力行為は非難したが、自分の責任も認め、次のようなことを約束している。最低賃金は1カ月あたり100ユーロ(およそ13000円)引き上げるほか、残業代を非課税にする。年末の特別手当などを出す。2000ユーロ以下の年金は非課税にするなど。(←全部じゃなかったかも)

(参考:フランス2 大統領演説のビデオEmmanuel Macron)

フランス2ではいろいろな立場の人にインタビューしていた。最初にこの運動を始めた黄色ベストのひとりが、自分はこれで一旦降りると言った。しかし報道によれば半数以上の人たちがまだデモを続けると言っており、12月15日もデモが呼びかけられている。燃料税引き上げに抗議して始まったデモは、これまでため込んだ不満が一気に爆発し、今や反政府デモ、マクロン政権の改革にNOを突き付ける運動に変わっている。

 ところで「2000ユーロ以下の年金は非課税にする」の話だが、ニュースの中でインタビューに応えていた男性もこれより少し低い額だった。2000ユーロは26万くらいだ。日本でこの額もらえる人はどのくらいいるだろうか。日本ではそこに課税されてうんと減る。いや、そもそも年金もらえるんだろうか。 

マクロン人気からマクロン任期第二幕

第二幕?大丈夫かな。支持率は20%を割ったらしい。私は 10月にコロン内相が辞任したとき、もう危ないんじゃないのと思った。コロンさんはマクロン政権に対し、謙虚さが足りないと批判していた人。大統領に何か言える最後の人だったかも。他にも閣僚は何人も辞めていった。

一番のショックは、国民の人気が高かったエコロジスト、ニコラ・ユロ環境相だ。この夏に「もう嘘をつきたくない」と言って辞めた。なんと大統領にも奥さんにも告げず、ラジオで辞意を表明、というのだからもうびっくりだ。→https://ovninavi.com/demission_hulot_ministreenvironnement_derugy/

フランスのことを心配してもしかたがないが、あと2~3点書いておこう。

日本でもデモや抗議集会には、弁護士さんやお医者さんがボランティアで来てくださる。ありがたいことだ。何かあったらすぐ相談できる。

黄色ベストのデモではこんな風だった。 

画像

pic.twitter.com/WnU06kHiw9

ボランティアの弁護士さんたちが黄色いベストを着て「憲兵隊とトラブルがあったらご相談ください」と言っている。

お医者さんは赤い十字のついた白ヘルメットをかぶっている。あの激しいデモの中ではきつい仕事だろう。 

https://medias.liberation.fr/photo/1178834-whatsapp-image-2018-12-08-at-180338.jpg?modified_at=1544291097&width=960

 Libération 

オランダ紙の撮った写真が気にいっている。

①楽しい黄色ベストファッション。

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 De Volkskrant

②連帯を表すために、窓から黄色いベストを提げるマルセイユの集合住宅。

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https://nos.nl/

 

オランダでは政治家もベスト着用でデモ行進

https://nos.nl/data/image/2018/12/09/518052/xxl.jpg

Nederlandse politici dragen gele hesjes warm hart toe | NOS

フランスと同じ12月8日にデモがあった。日本の新聞には「ベルギー・オランダに飛び火」と、まるで悪いことのように書かれているが、両方ともフランス国民に連帯の気持ちを表す行進だった。ブリュッセルでは一部暴れた人たちがいたようではある。しかし報道の偏りには注意が必要。日本では暴徒の映像ばかり流しているが、あの多くは壊し屋(Casseur)でこれまでも様々なデモに現れては破壊行動に走っていた。また便乗して窃盗・放火に加わるグループも黄色ベストではない。政府系BFMhttps://www.bfmtv.com/のTVカメラに向かって、偏向報道に抗議する黄色ベストたちもいたとメディアが伝えている。

オランダのデモ参加者はおよその数だが、首都アムステルダムで200人。ロッテルダムマーストリヒトでそれぞれ200人、ハーグで100人。写真でわかるように平和的なデモだ。逮捕者は三人でその理由は花火を打ち上げたからと、なんとものどかである。もちろんオランダ人だって社会に不満はある。格差や貧困、移民問題はヨーロッパ、世界中で共通の問題だ。しかしルッテ首相自らこう述べている。「私たちはみんな黄色いベストを着ているのだ」と。

政府、政治と国民の距離が大変近いのがオランダの特徴だ。皆で国の問題を考えようという風土と歴史がある。よく議論し、違う意見や価値観も尊重する。それは小学生のうちから学ぶのだ。また格差があるといっても、フランスや日本に比べたら貧富の差は非常に小さいと思う。政治に大きな不満はないだろう。国連の『世界幸福度ランキング2018』でも第6位。(①フィンランドノルウェーデンマークアイスランド⑤スイス。日本は50位にも入っていません)

むしろ世界中で一緒に考えなければならない環境問題や原発や動物保護などに関心が高いようだ。

 

オランダといえば猫ボート

50 jaar De Poezenboot

運河に浮かぶ、猫カフェならぬ猫専用の船が今年50周年ということで、大きく報道されていた。↓水面に船の窓からの灯りがうつって美しい。

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 だいたい50匹ほどが暮らしている。全部保護した猫だが、二つのグループ、定住猫と里親募集猫とに分かれる。

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ちょっと写真を2枚切り抜いてみた。左カスミちゃん、すごい貫禄だな。日本名がついているのはこのカスミだけ。10歳のペルシャ猫で、性格は見た目と違ってすごく優しいんだって。もう2回引き取られたけどそのたびにボートに戻ってくるので、以来ここで幸せに暮らしているのだそうだ。右ジスカちゃんは、うちの猫に似ているのでなんとなく載せた(笑)。猫で和んだところで今日は終わります。

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cenecio.hatenablog.com 

追記:12月13日

 追記:2019年1月 

"street medics"救護班

https://twitter.com/afpfr/status/1087111527889543171

 

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