ベルギーの密かな愉しみ

しばらくの間 お休みします。

不登校 "futoko"も国際語に&富士そば×肉骨茶(バクテー)&ビーツウォーカーの夜明け

雑記その4.

悲報!不登校 "futoko"も国際語に。

せわしない年の瀬、続けてブログ書こうと思ってもパソコンの前に座る時間がなかなか取れない(苦笑)。皆さまもお忙しいことと思います。お時間のある方だけ雑記の続きにおつきあいください。

 

前回の記事学校給食がせつない &本場のシュクメルリ &ジョージア大統領の名はサロメにいただいたコメントはどれもこれもすばらしいのだが、その中から一つ、bg4kidsさま

こんな給食では、昔のように給食が学校での楽しみの筆頭にはなりえないですね。食事は幸せを感じる時でもありコミュニケーションの場である。充実した給食は、不登校など学校の問題緩和にも貢献しそうなものだけど…

深く共感する。子どもたちの社会も問題が山積み。せめて給食が美味しくて楽しみにできるものだったらどんなにいいかと思う。「不登校など学校の問題緩和にも貢献しそうなもの…」おっしゃる通り、解決は無理でも緩和に役立ちそうなのにね。

そしてその「不登校」といえば、先ごろa phenomenon called "futoko"、とBBC記事にお目見えしていた。やはり日本人としてはショックだ。当ブログではこれまでも国際語になった不名誉な日本語として「自殺」「過労自殺」「ひきこもり」「孤独死」などを紹介してきたが…。

Why so many Japanese children refuse to go to school - BBC News

(↑BBC記事は写真も多い。フリースクールに犬がいるのはいいなと思った)

このレポートは、不登校になった小学生たち、NPO法人フリースクール創設者や専門家(名古屋大、内田 良氏)などに取材し、 不登校の原因は生徒自身にあるのではなく、日本の学校教育システムにあると分析している。

正規の学校ではなくフリースクールに通う子どもたちは、1992年の7,424 人から3倍近く増えて、2017年時点で20,346 人である。居場所があるのはよいことで、そうでないとひきこもりになり、社会とのつながりが断ち切られてしまうから。(どうぞ記事をお読みください)

 

シンガポールの肉骨茶(バクテー)が富士そばのメニューに。

日本人は食に関してだけは保守的ではない、と言われていると前回書いた。また日本人はおもしろがり屋だとも書いた。シュクメルリも好奇心とノリで食べにいったのだと思う。そして今度はそば屋が肉骨茶(バクテー)と来た!それもすごく売れているという。

個人的なおすすめは断然うどん! 富士そばでシンガポール風「肉骨茶」 肉道場入門!(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース

10月ころ、駅前の富士そばに「肉骨茶」の幟が現れたときは首をかしげたものである。「そばとバクテー、どんな関係があるの?かけそばの上に豚のスペアリブが乗っているとか?」(*骨はないです)

バクテーなるものを知ったのは去年のことで、フランス人がラーメンの映画を見にいって実においしそうだったよ、どこかでアレ食べられるのかな、と書いていたのである。(アレ=バクテーラーメン)

それはフランス紙で見たら

http://www.journaldujapon.com/wp-content/uploads/2018/10/LaSaveurDesRamen-Banniere-800x445.jpg

こんなポスターで、左は斎藤工だけど右はだれ?

のちに日本・シンガポール・フランス映画であり、邦題『家族のレシピ』は新しいラーメンを開発する話らしいことがわかった。すなわち肉骨茶(バクテー)とラーメンが合体したような。

フランスでは春に、日本では夏に封切りだった。その夏は同じ映画館で二階堂ふみGACKTの『翔んで埼玉』も見て、その後埼玉県民のピカちゃん(pikapikachan)と盛り上がったものだ。

映画としては『家族のレシピ』は人にはお勧めできないけど、シンガポールの食文化案内としてはおもしろく、私は漢方食材や店舗、レストランに目が釘付けだった。シンガポール在住の有名ブロガーという設定の松田聖子もよかったな。

そんな影響もあり、私も肉骨茶なるものを作ってみたことがある。中華ないしエスニック食材店にスパイスセットが売っている。

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左上は漢方スパイスセット

左下は豚バラ肉1.2キロニンニク。あとは塩だけ。じっくりと肉がほろほろになるまで煮込む。
スパイスセットは本当にありがたい。個人が漢方材料をそれぞれ買い求めるのはハードルが高い。コショウやシナモン、八角ウイキョウ、クコの実くらいは家庭にあったりもするが、次のものは難しいだろう。

・黒ナツメ

・甘草

・当帰(とうき)

・玉竹(きょくちく)

・党参(とうじん)

・熟地黄(じゅくじおう)

実は最後の熟地黄はちょっと苦手なので外している。セットの中のコショウは我が家的には多すぎるので減らしている。いろいろ手を加えてアレンジできるのもいい。

薬膳は冬には最適、特に女性のみなさんにはね!おすすめです。

 

ビーツ・ウォーズ/ビーツウォーカーの夜明け

ここからは鼻息荒くなっちゃう!

ついに あられさん (id:araresanchi)ビーツ帝国の一員にビーツ地獄の罠に落ちて、じゃなくて、ビーツ愛好家の仲間入りをしてくださった。

いつもハイセンスで DIY超得意で お料理上手なあられさん。絵も上手で、お子さんとのやり取りが抜群におもしろい。というかお子さんが個性的でタダモノじゃないのだ。ずっと見ていても飽きないあられさんち劇場。でも今日は料理に絞るね。

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旬のものをいただく「12月 師走」 - 暮らしをおもしろくするノート

この日も日本の伝統をお子さんたちに伝えるべく、冬至ごはんを紹介している。このお写真の美しいこと!ね、すごいでしょ?(詳しくは記事を読んでね)

そして私のビーツ記事に言及、ご自身でもビーツで作ったものを紹介してくださっている。ボルシチにスープ、カレー、そして凄いのがこちらのふりかけ。

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旬のものをいただく「12月 師走」 - 暮らしをおもしろくするノート

いやはや、あられさんにかかっては!

次回さっそく真似してみよう。うちのビーツの葉は虫食いでボロボロだからむしろ刻んでしまえばわからないし、栄養は満点なのだし。

とっても勉強になりました。ありがとう、あられさん! 

今日はここまで。

ところで今日からNHKのいろいろなチャンネルで松田龍平さん主演『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』がありますね。上海ロケがすごいんだとか。その一点だけでも見てみたいです。詳しい日にちや時間は最新の情報で確かめてください。

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https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/412648.html

手に持っているのはさけるチーズではなく、和名ギンコウボク(銀厚朴)、中国名は白蘭というそうです。いい香りがするんですって。初めて知りました。皆さんはご存知でしたか。

ではまた。

追記:参考

www.youtube.com

学校給食がせつない &本場のシュクメルリ &ジョージア大統領の名はサロメ

雑記その3.

学校給食が質素すぎる件

これを私が初めて聞いたのはおととしくらいだったと思う。やはり予算の関係らしい。学校の給食室で作るメニューに関しては。

いつだったかTVのニュース番組をつけたら、横浜市の小学校の給食がひどいと言っていて、どんな献立かなと見てみると、それは「献立」ではなく弁当形式で民間業者が搬入するタイプだった。たしかにおいしそうに見えない。実際に子どもたちは半分は残すと言っていた。

先日よんばばさんが、小学校の1年生と昔の遊びを楽しんだあと、一緒に給食を食べた話を書いていらした。「写真は撮らなかった」ので似た給食を例としてネットから探して貼ってくれた。食育って何?:文部科学省のリンクも添えられていた。私はその写真を娘に見せると唖然としていた。信じられない様子だ。うちの子どもたちの小学校は、栄養士さんが様々な国のメニューを積極的に取り入れ、大人の私から見ても「グルメな」給食で、献立表を見るのが楽しかったくらいだ。90年代前半、まだまだ豊かだった日本(嘆息)。

“切干大根”など急増…児童「肉食べたい」食材高騰で質素に 小学校の給食費を名古屋市が値上げへ(東海テレビ) - Yahoo!ニュース

こちら東海テレビ名古屋市の事情を明快に解説してくれている。子どもたちの好きなヒレカツは10年前は年に6回提供されていたが、昨年度は1回に。またエビフライに至っては、6回からなんとゼロになっている。代わりに増えたメニューは切り干し大根や高野豆腐。つまり食材の値上がりのため予算内で10年前と同じメニューを出すのは不可能だ。かといって栄養を確保しなければならず、苦肉の策で見た目には地味な食材に頼らざるをえない、苦心してやりくりしているという。

いったい給食費はいくらなんだろう。名古屋は全国ランキングで20位、3800円だった。一位は新潟県5026円(2019年10月の時点で)。名古屋市は来年度から給食費を600円値上げして4400円にすると発表した。

週刊FLASH」(2019年12月31日号)給食は逆格差社会「地方の上級食」「都会のどケチ食」 | Smart FLASH[によると、全国学校給食甲子園なるものがあって、今月7~8日に行われ、優勝したのは兵庫県丹波篠山市立西部学校給食センター」ということである。こちらがその献立。

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お気の毒なことに、あわせて名古屋市の給食例も載せている。(ちょっと考えさせられるでしょう?)

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詳しい内容は記事をお読みください。

私が暗澹たる気持ちになるのは、こうした格差や食品の廃棄など、呆れるばかりのムダが少しも改善されない点だ。こどもの貧困もだいぶ前から言われている。こども食堂があちこちに増えているのは聞いていたが、先日私の住む区内だけで27カ所もあることを初めて知って愕然とした。そんなばかな!とすぐには信じられなかった。行政の仕事なのに心優しいおばちゃんたちがボランティアでやっているわけだが、当面はこのままでいくしかない。

子どもたちにこそ税金を使うべきなのにね!怒りと焦りばかりが募る。子どもたちの教育や保育や健康や医療…将来を担う子どもたちにまずお金をかけてほしい。

貧しい家庭の子どもは朝も食べずに登校するケースが少なくないらしい。学校給食で栄養を補給してほしいが、あの質素な内容では悲しすぎる。夜はちゃんと食べられるんだろうか。子ども食堂へ行くかもしれない。なんとか温かい食事をお腹いっぱい食べさせてあげたいが。

東京・文京区では貧困世帯に向けた「こども宅食」という取り組みがある。協力してくれる企業や団体、または個人から米や麺類、お菓子、飲み物などを集め、2か月に一度届ける。資金はふるさと納税でまかなわれる。直接届け、子どもの顔を見ることが大事だという。そのときに異変などないか、困ったことはないか確かめられるからだ。

「こども宅食」に申し込んでいる家庭の半数以上は世帯年収300万円以下だという。2018年からは図書カードや本なども贈っているそうだ。

こうしてますます貧しくなっていく日本、その一方で、食品ロスぶりは恥ずべきレベルで、海外のメディアに取り上げられるたび、私は顔の赤らむ思いがする。現在は改善されたのだろうが、あの、売れ残った恵方巻きの大量廃棄!明らかにコンビニチェーンはおかしいだろう。しかも当時アルバイト店員には一人何本売れ、というノルマがあったらしいし。ノルマといえば郵便局の年賀はがきの件も思い出す。局ごと、社員一人当たりのノルマがあったとか。今はもうない?全くなんというブラックさだ!ケン・ローチ監督が撮るような映画を日本を舞台に作ったらネタがありすぎるほどで、逆に取捨選択に困るだろう。

給食の話にもどるが、先日ちょっとほほえましい記事を読んだ。名古屋市では来年度から給食費が上がり、したがって内容も少し豪華になる、と親は喜んだのだが、小学5年の娘さんは不満げな顔だという。なぜなら今の切り干し大根や小魚の献立が好きだから変えないでほしいと。(東京新聞朝刊12月20日

 

本場のシュクメルリ

過去記事ジョージア料理「シュクメルリ」松屋の世界紀行応援中が今でもツイッターはてなブックマークで読まれていてコメントをいただく。先日は、ロンドンにお住いのtomoeagleid:tomoeagleさまから、ジョージアへ行ってきましたよ、という連絡をいただいた。さっそくお邪魔するとなんと3回に分けて、秀逸な紀行レポートを書かれているではないか。写真もすごく良くて、トビリシの町の空気や匂いまでも感じられるし、人物のポートレート(正面)にも驚かされる。私も一人旅の10年間、お願いをして正面から写真を撮らせてもらったことはたびたびある。観光名所は忘れてしまっても、人と過ごした時間はどんなに短くても鮮明に思い出せるのが不思議だ。

www.tomoeagle.com

美しい写真が多々あるなかで、tomoeagleさまからお借りした写真はこちら。

本場のシュクメルリのおいしそうなこと!やはりニンニクがたくさん入っているらしい。トマトのサラダもおいしそう。どんな味付けなんだろう。ヨーロッパのトマトは甘くなくて大好き。パンの名前はなんというのだろう。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/t/tomoeagle/20191219/20191219210745.jpg

ジョージアは入国審査でパスポートに押印後、「ジョージアにようこそ」と言ってワインを一本くれるんだって!なんという良い国だ。皆さま、詳しくはtomoeagleさまの記事をお読みください。写真も載っています。

アムステルダム乗り換えか。うん、いつか行くかもしれない。グルジアは私たち夫婦にとってはワインの国。夫にとっては映画の国。私個人はスターリンについて調べていたとき文献を幾つか読んだのと、エドアルド ・シェワルナゼ(ソ連外務大臣ジョージア大統領)の半自伝のような、唯一邦訳のある著書『希望』(朝日新聞社)を読んだこと。1991年に発売されてすぐに購入した。スターリンもシェワルナゼもロシア人ではなくグルジア人というのがおもしろい。

 

ジョージア大統領はサロメという名前

あんな小さな国なのに豊かな遺産がたくさんある。人材もそのひとつかもしれない。これからが楽しみな国だ。そう思わせるのも駐日ジョージア大使は1988年生まれと大変に若く、高い教育を受け、非常に好感のもてる方だ。そういう大使を送ってくる大統領はどんな方かなと思っていた。天皇陛下の即位の儀にいらしていて女性だというのは知っていた。すると先週土曜の朝、夫が教えてくれた。「ジョージア大統領の紹介記事が今日の新聞に載ってる!サロメという名前なんだね」(朝日新聞朝刊12月21日)

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サロメ・ズラビシュヴィリ氏、フランスへ移民したジョージア人の家庭で生まれ育ち、なんとパリ政治学院の出身。ミッテランシラクマクロンさんと同じエリート養成機関である。したがって1970年代は仏外務省で外交官として、ローマ、国際連合ブリュッセルワシントンD.C.などに駐在した。その出世コースのあとフランスを去り、ジョージアで暮らす決意をする。

ジョージア国籍が取れたのは、2004年に仏・ジョージア間で協定が成立したからである。ジョージアではまず外相を務める。その在任中、交渉によって、ジョージア本土からのロシア軍撤退を勝ち取った。

大統領にはほぼ1年前に就任したという。これからの活躍にも目が離せない。で、ひるがえって我が国を見ると・・・(今日はやめておこう)

 

 

🌸おまけ 

ちんどんやさんが来てたんですよ。最近は全然見ないけど、みなさんはどう?

しかも三人ともお若くて驚きました。初めて見るからか子どもたちが大興奮。

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ではまた雑記が続きます。

 追記:12月31日

シュクメルリ再び&映画に行ったら隣の人がずっと泣いていた話&悲報

身辺雑記その2.

祝メルリ・クリスマス!(すみません、ふざけました)

前回記事ジョージア料理「シュクメルリ」松屋の世界紀行応援中 にたくさんのコメントありがとうございます。

で、お断りしておかなくちゃいけないのは私は「松屋」にまだ一度も行ったことがないこと。SPYBOY さまと同じく。もしかしてみなさんに誤解を与えているかも…と心配になって。giovannnaさま、tonihoさま、ni-runi-runi-ru さま、jerichさま、ごめんなさい。松屋のシュクメルリの味については食べていないので何とも言えない。1月中旬の全国展開に期待していただきたいが、期待外れだったら申し訳ない。あと、本物のシュクメルリはニンニクの量が半端じゃないので、松屋のはどうかわからないが、一応注意されたし。

世界紀行」と松屋がわざわざポスター上に明記してあるのが気になる。シリーズ化するんだろうか。小国ジョージア(=グルジア)を出してきたのは本当に驚きで、メジャーな料理でないところがおもしろい。食べに行った人たちは皆おもしろがっているんだと思う。私も一緒におもしろがればよかったな。さらに今後も世界紀行を展開していくのなら私からも提案が二つ、三つある。松屋にメールを送ってみようかな。

日本人は食べ物に関してだけ「保守」ではない、という意見を聞いたことがある。かつてサッカーのトルシエ監督付き通訳だったフローラン・ダバディ氏が言っていた。新しく開店したエスニックのお店に行こうよ、と誘うと日本人は皆即答で行こう行こうとなるのに、フランス人はのってこない。ダイエット中だとか何らかの理由をつけるが、実は食べ物に対しては保守的で好奇心がないのだと。

松屋には入ったことがなくても、こうした外食チェーンが外国人なしでは回らないことはよく知っている。10年以上も前のことだが、あるとき中国人の女子学生が泣きながらバイト先の過酷な労働環境とオーナーのパワハラについて訴えてきた。話を聞くとあまりに酷いので電話して抗議してやろうと思ったが、ほかの教師に止められた。私が文句を言ったのでは逆効果だから別の手を考えようと。実際その方がよかった。かっとして行動してはいけない(笑)。

しかし別の件では「かっとなって」行動に移して成功したこともある。日本語学校で大学進学をめざす2年目の男子生徒が「ビザが半年しかもらえなかった」と相談してきたことがあった。そんなはずはない。優秀で欠席もない中国人学生で、しかも日本語一級試験と大学入試も近く、超忙しい時期にである。きっと何かの間違いだ、事務室で相談したら?と言うと、事務の人は取り合ってくれなかった、入管は一度決定したことはメンツがあって変えないから、と言われたらしい。おかしいだろう、よっぽどのことがないかぎりビザは1年おりるのだ。「私、入管へ行ってくる」と言うと、「ムダよ」と周囲にあきれられ、笑われたが、入管の埼玉出張所はそんなに遠くないし、とにかく電話じゃダメな気がした。

学生と一緒に列に並んでいるとき私は鬼の形相だったにちがいない。そのままの形相を窓口に突っ込み、「うちの学校の模範生なんです。半年しかビザが出ない理由を説明してもらえませんか」と怒りをぶつけた。奥のほうで何やらひそひそガサゴソやっていた。部屋を見回すと、不安そうな顔つきの外国人たちがベンチに座り低い声で話をしたり、窓辺にたたずんでいたり、また私たちの方を見やったりしていた。重い空気が支配していた。

しばらくして呼ばれたので行ってみると、全く拍子抜けした。「こちらの手違いでした」。

やっぱり来てよかった。要するに「日本人」を連れてきたから再度チェックしたのだろうね。その場でビザを変更してくれた。学生はその後国立大学の経済学部に進学した。

 

映画に行ったら隣の人がずっと泣いていた話

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映画のレビューを書く気はないので、こちら『家族を想うとき』をどうぞ。一度引退を表明したケン・ローチ監督がどうしても撮りたかった映画。監督がめちゃめちゃ怒っているのがよくわかる。私たち皆の問題だぞ、目を逸らすなよ、直視してあとは自分で考えろ。そう言っているみたいだ。

つい先日のセブンイレブンの「決定」、宅配代行や外食産業や下請け工事業…ブラックで人間性を奪う労働環境はどこの国も同じようだ。労働者の権利は失われ、仕事は選べず不安定な働き方をせざるをえない。個人事業主とかフリーランスといっても名ばかりで、実際は実はフランチャイズなどの奴隷でしかなく、終わりのない競争に巻き込まれていく。儲かるのは誰?ごくごく少数の人間だけ。

この日は水曜でお昼の回だったのに、有楽町の劇場は最前列を除いてほぼ満席だった。そして私が気になったのは隣に座った若い女性だ。始まってけっこうすぐ、フランチャイズの宅配ドライバーとして「独立」する主人公の悪戦苦闘ぶりが描かれていくに合わせて、鼻をすすりだし、ハンカチで目頭を押さえる。涙を誘うシーンは映画全体を通してみてもとっても少ないと思う。ケン・ローチ監督はむしろ絶妙なユーモアを交え、視線はあくまで温かい。

しかし隣のお嬢さんは、映画のファミリーがこれでもかこれでもかと危機や不遇に見舞われるたびに、小さく息を呑み、また声を押し殺すようにして泣くのである。自分の生活、あるいは過去の経験とダブるところがあるのか。それともあのファミリーの、お互いを思いやる気持ちに心打たれてなのか。

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https://natalie.mu/eiga/gallery/news/359745/1257454

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父親役クリス・ヒッチェンは配管工として20年以上働いたあとで、40歳を過ぎてから俳優になったという人。子役の二人もすばらしかった。

映画といえばこの冬は楽しみなのがいくつもある。来週はいよいよお待ちかね、ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』そして今日から封切りのこの世界の(さらにいくつもの)片隅に

 

悲報!はてなの『フランドルの四季暦』ファンにお知らせ

昨日は「スローな焚書はやめてくれ」(←すみません、勝手に変えちゃった)というエントリを投稿した(id:mamichansan)さん。マミーさんは読んだ本のレビューがすごくいい。もう何度もそのことは書いているのだが、たとえばこちら『フランドルの四季暦』(マリ・ケヴェルス著)。このエントリのおかげで私はマミーさんの存在を知ることができた。思い出深いし、今改めて読んでも良いレビューである。

mamichansan.hatenablog.com

当時ベルギー滞在だった私は、実際にベルギーのフランドル(=フランダース)のこの舞台を訪ねるのである。それを記事にし、マミーさんに連絡して読んでもらった。シェルshell (id:shellbody)さんは本を買い、感想も書いてくださった。

日本で翻訳が出たことは、ベルギーのオランダ語カルチャー雑誌にも紹介されたし、ベルギー人の大学教授で新聞にコラムを書いている人からは「日本にはこのレベルの本を受容できる読者層がまだあるのか。羨ましい。ベルギーにはもうなくなった」という言葉をいただいた。

著者マリ・ケヴェルスの館をちょっとお見せしよう。

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敷地は全部で7ヘクタールあったそうだが分割され、相続主が違うらしい。邸宅自体は650㎡ということだ。

なぜ今この話かというと、この邸宅は去年(2018年)売りに出されたのである。詳しい事情は知らないのだが、お孫さんに当たる人が決断をしたのだ。買った人はどうするのかな。情報が入ったらお知らせしたいと思う。

では今日はここまで。また次回に!

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(マリ・ケヴェルス邸にがあった頃の写真。鉄道を通したら水脈が枯れて池も無くなった)

ジョージア料理「シュクメルリ」松屋の世界紀行応援中

シュクメルリ

響きの良いすてきな名前!ジョージア国(旧名グルジア)の料理であり、ちょっと前から巷で話題になっていて、いろいろおもしろいことがあるので紹介したいと思う。

で、まずこのシュクメルリ、作ってみた。そしておいしくいただいた。誰だ、祝メルリ!なんてオヤジギャグを飛ばそうとしている人は?

できあがりはこんな風。

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ひとことで説明せよ、と言われたらチキンのガーリック・クリーム煮。なんとなくわかるでしょ。作り方も難しくなさそうだとわかる。

レシピはどこから来たかというと、1980年代に買った「世界の家庭料理」といったタイトルのフランス語レシピ本。もうとっくに処分してしまって手元にないが、気にいった料理はメモしてある。

その本には先日扱ったボルシチビーツはスーパー野菜 食卓紅化計画!やグヤーシュ(グラーシュとも)など簡単に作れる料理が紹介されていて、その中にシュクメルリも入っていた。材料はこれだけ。

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ゆるいレシピ

材料があまりに少なくて寂しいので非番のトルーパーさんたちにもお出まし願って、少し盛り上げてもらおう。

万歳トルーパーさんの下は、その前の赤いのはトウガラシ

サラダ油が50㏄(塩の右)。ニンニクを見て驚くな。レシピには50グラムと書いてある。多過ぎね?とトルーパーたちが心配している。なので30グラムにした(下の写真右真ん中)。

ニンニクのそばにあるのはかれこれ40年は使っているニンニク 潰し器。手が汚れなくていいのだが、潰すのに意外に力が必要である。包丁の腹で潰して刻んだ方が結局は早くて確実だった。コップの中は生クリームと牛乳半々。これを潰したニンニクと混ぜておく(*)。味付けは塩とトウガラシ、と書いてある。

丸鶏をさばく。(もちろん水炊き用鶏肉のセットを買えば便利だし、自分の好きな部位を組み合わせても良い)。さばいたのが写真上左。計ってみると750グラム。三人のメイン料理としては最適な分量だと思う。

②さばいた鶏に塩・トウガラシで味をつけ、油をふりかけてオーブン200度で20分くらい焼く。写真左下。もう少し色がつくとよかったな。食べてみたけど中までちゃんと焼けていた。

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③焼きあがったら器に並べ、(*)のクリームをかけ、再びオーブンで10分くらい。カロリーを気にしない人はバターを乗せて焼くとよい。写真右下。

できあがりは最初の写真にもどる。

夫はパンとビール(写真:ベルギーのルプルス・イベルナテュス)の係。残念ながら8000年の歴史を持つジョージアワインとはいかなかった。ジョージアワインといえば現在映画が上映中。公式HP→「映画で旅する自然派ワイン」公式サイト

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パン:CHAMONIX -BOULANGERIE- | シャモニー -ブーランジェリー-

ビール:Beers Lupulus – Belgian craft beers – Brewery Lupulus

 

松屋の「シュクメルリ定食」を食べにきたジョージア大使館員たち

松屋といえば牛丼とかカレーというイメージで、私は他にどんなメニューがあるかさっぱり知らなかった。しかしジョージア大使館員たちは知っていた。ぼ~っと生きてなどいなかった。「松屋世界紀行ジョージア料理 店舗限定 鶏もも肉を使った”にんにく”と”とろけるチーズ”のホワイトシチュー シュクメルリ定食Shkmeruli(Georgia)Set Meal 790円」を目指してやってきたのである。

その後ジョージア大使館のティムラズ・レジャバ臨時代理大使(写真手前のかた)自身もツイッターで発信。これがまた嵐を巻き起こし、「売り切れだった」「自分も食べたかったのに残念」と嘆く人が続出した。この限定メニューは12月15日までだったのだ。すると松屋さんやるね。翌16日には公式ツイッターで「皆様の応援のおかげで、2020年1月中旬には全店販売が決定しました‼️」と報告してきた。

義理堅い大使はすかさずこのようなツイートを。

 またいつのまにか大使のウィキペディアティムラズ・レジャバ - Wikipediaができており、それを読むと大使のことがもっと好きになってしまう。

f:id:cenecio:20191220164819p:plainティムラズ・レジャバ - Wikipedia

1988年生まれの大変にお若い大使さん。父のアレキサンダー・レジャバ氏は生物工学者で、広島大学に留学していたとか。したがって息子のティムラズさんは日本の中学に通っていた。どうりで日本語が堪能なわけである。そしてティムラズさんも大学は日本を選び、早稲田大学加藤典洋教授らに師事、2011年同大学国際教養学部を卒業、とある。ご一家で日本と深い縁のある、さらに凄い経歴の方が大使を務めてくださっているのだ。

しかしティムラズさんが注目を浴びるのはシュクメルリ定食の件が初めてではない。去る10月の天皇即位の儀の折、ジョージアから参列したサロメ・ズラビシュヴィリ大統領と一緒に公の場に登場。そのとき着ていたジョージアの民族衣装が『スター・ウォーズ』のジェダイの騎士の衣装に似ていると話題になったそうだ。(↑ウィキペディアの写真)

 

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この民族衣装はチョハという名前らしい。

https://i.pinimg.com/564x/0f/3e/af/0f3eafddf4c4d0f8c39624b3ee071240.jpg

(画像:ピンタレスト

ちょっとネットで探しただけでもたくさん出てくるジョージアの民族衣装。こんな可愛い子も!もちろん女性のも豪華でうっとりする。見ていると時間を忘れる。

ではまた次回!

 

🌸外で大きな葉っぱを拾ってきて昼寝をしている猫にかぶせるいたずら^^

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ピンクな世界から足を洗う前に珊瑚作り &黄金の丸鶏ローストの季節がやってきた。(ビーツ3)

マイケル・ジャクソンの”Beat It”が頭から離れなかったこの2か月。

もらったビーツで料理を作ってきたが(前の2記事参照)、そろそろ別れを告げる時が来たようだ。ピンクなパスタとかピンクなパンとか、そんなものは作らない。「これからの季節、ピンク色の水炊きなども好いかな」(ni-runi-runi-ruさまのコメント)ダメです。作りませんから。おだててもムダです。

とはいえ、前回予告した普通に辛いカレー、これは作った。前のスパイスに今回はコショウやトウガラシを入れ、牛乳をココナッツミルクに変えた。具としてはエビ、枝豆、アスパラガス、ジャガイモ。ナンも手作りした。

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ピンクカレーとナン

家族に食べさせるまえにちょっと試食。辛いけどまろやか、やはりビーツの甘みがあるな。「ビーツは色だけでなく味の特徴も出すだろうから良いと思う。(isourounomitu さまのコメント)おっしゃる通りでビーツは甘いのである。一見カブに似ているが近縁種ではなくアカザ科。ニンジンやスイートコーンよりも糖分を多く含み、最も甘い野菜の一つだそう(ウィキペディアによる)。

ビーツは「食べる輸血」という異名があり栄養満点だし、朝ビーツの汁を牛乳に入れて飲む人もいるそうだ。が、酢漬けのビーツを一度食べて土臭いと思い、苦手意識を持つ人も多いらしい。私の意見では生は苦手でもボルシチのようなシチューならどなたも抵抗なく食べられると思う。

ビーツの話を書いてから周りの人がいろいろなことを教えてくれる。中国上海では戦前からボルシチ罗宋汤)は家庭料理だったとか。ビーツの中国名は甜菜根。こちら中国人女性のレシピ、写真入りで手順が簡潔でよい↓。

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https://www.xiachufang.com/recipe/100419029/

たとえば東京では、 焼き小龍包が有名な「上海大王生煎」さん(葛飾西新小岩)にはロシアンスープという名でメニューに載っているとか。

またjerichさまがすごいことを教えてくださった。

業務スーパーに「ボルシチの素」売っていますが、私はボルシチとして食べたことはなく加熱せずにパンに挟んで食べちゃってます(塩分多め)。ボルシチの素とオートミールは健康的な非加熱備蓄食料になると思っています 2019/12/10

ボルシチの素?どんなものだろう。これは見てみたい。好奇心にかられて早速近くの業務スーパーへ自転車を飛ばした。業務スーパーは外国の不思議なものや、どうやって食べるかよくわからないものがたくさん売っていて、見るだけで刺激的だ。「ボルシチの素」ってつまり四角い平らな箱に入っているレトルトカレーのようなもの?

かと思ったら瓶詰だった。リトアニアで中には野菜がゴロゴロ入っていて驚くほど良心的。倍の水で温めろと書いてある。別の鍋(圧力鍋など)で煮込み用の肉何でもいいので柔らかく調理し、合体させたらボルシチができあがってしまう。ただトマトの味が少し強いかも。jerichさま、いつもありがとうございます!

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ピンクな世界から足を洗う前に珊瑚作り

もうひとつ最後に挑戦したのは珊瑚チュイルである。ビーツが珊瑚の色となるレースみたいな飾りのこと。(「ビーツ チュイル」と並べてググってみてください。たくさん出ます)

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写真:オードブルとして ポテトサラダ(下の段がビーツ)に珊瑚の羽飾り。

作り方・分量はこちらを参考にした。皿のアクセントに〈シンプルレースチュイル〉|樋口直哉(TravelingFoodLab.)|note

ビーツのしぼり汁と水、小麦粉、サラダ油が材料のすべて。よく混ぜたらおたまでフライパンに流し込む。直径10センチくらい。

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何枚も作って冷ましておく。作り方は簡単なのに料理が華やかになるのでおすすめ。色がつかない白いのもステキ。(ビーツ終わり)

 

黄金の丸鶏ローストの季節がやってきた

さて鶏の丸裸を見たくない人、ベジタリアン&ヴィ―ガンの人はここからは読まない方がいいですね。チキンの話。(チキン=卑怯の意味ではないよ)

皆さんのお宅ではどうだろうか。うちは年に何度も丸鶏を焼く。といっても一回で食べきれる大きさ、すなわち1キロ前後の、かなり小さいサイズだからね。以前2.5キロのを通販で注文してしまい、うまく焼けずえらい目にあった。自宅のオーブンのサイズを考慮に入れなかったから(汗)。

1キロ前後の鶏は700~1000円未満で買えるのでお得だと思う。(ブランド鶏はもっと高いが)。食べ残した部分は翌日、小さくほぐしてマヨネーズなどであえてサンドイッチの具やグラタンやサラダにも使える。

話題にしたいのは焼き方で、今年初めてブライン(brine)法を試してみた。今まで、つまり70年代から丸鶏は皮全体に塩とオリーブオイル、またはバターなどを塗ってお腹にハーブ類(そのときあるもの)を詰め、180~200度で焼いていた。シンプルなのが一番おいしいと思っていたし、方法を変えようとは全く思わなかった。日本に帰ってからは、鶏のお腹にもち米や栗などの詰め物をしたり、皮と身の間にマリネード液を塗ったり、そうしたバリエーションはあったが、ブライン、すなわち丸鶏を塩水に24時間漬け込んでから低温で焼くという方法はやってみる気がなかったのである。

驚くほどみずみずしい、しっとりしたチキンが焼きあがるというのだ。アメリカやイギリスではこの方法で七面鳥や鶏を焼く人が多いという。

レシピはいろんな人が少しずつ違うことを言っているが、肝要なのは塩水につける。そのあと低温で焼く。これだけ。

やってみたのだ。1リットルの水に60グラムの塩。ボールに入れて冷蔵庫で24時間。(写真上右)

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翌日、取り出して水分をふき取る。オリーブオイル適量を塗り、腹にローズマリー、ニンニクなどを詰め、糸で縛って焼く。(もちろん縛らなくてもいい)

ここで問題になるのが温度だ。低温って何度?イギリス人シェフは90度といい、日本人のどなたかは130度という。鶏の大きさやオーブンにもよるだろう。私は120度で2時間焼き、そのあと210度に上げて様子を見ながらこんがり色がつくまで20分くらい焼いた。

写真左下はいっぺん取り出して様子をみたところ。その右は焼き上がり。途中2~3回、天板のシートに落ちた油を刷毛で取り、鶏全体に塗っている。こんがりといい色に焼けた。

試食。

どう?しっとりしていた?前のやり方よりいいと思った?

皆さんはこう聞いてくるだろう。私は今回は失敗したと思う。塩辛い。1リットルに塩60グラムは多すぎる。あるいは24時間じゃなくもっと時間を短くしなければ。

温度はもしかしたらもっと低温の方がよいのかも。次回は100度でやってみようかなと思っている。そのときはまた報告するね~。

ではまた!

禁断のピンクな食卓 華麗なピンクカレーに挑戦の巻(ビーツその2)

 絶賛ピンク化計画進行中!

初めてのかたは前の記事を読んでくださいね。ビーツはスーパー野菜 食卓紅化計画!&無農薬の野菜に虫食いあとがないわけ

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とにかくなんでもビーツを使ってみる。ピクルスやジャムのほかに、今日はまずコロッケであるが、ビーツの汁を吸ってジャガイモがみごとに怪しいほどのピンク色に染まった。一見スウィーツかと思うピンクのお団子だ。これだけ見たら「何これ!」とビビるかな。

ビーツの味がするかというとそうではない。というのも右上の「黒トリュフ入り・ゲランド塩 」を使ったのでむしろトリュフの匂いと味がする。これは春にもらったからそろそろ使いきらないといけないのだ。そんなわけで黒トリュフ塩入りピンクコロッケのひと品。

 

華麗なピンクカレー

つぎに挑戦したのはたまうきさまni-runi-runi-ru から教えてもらったピンクカレー。私は初めて知ったのだが、鳥取県はビーツの産地として有名らしい。「鳥取県産ビーツ」をブランドにしようと、野心満々、ユーモア精神いっぱいの職員(たち)がいるのだろうね。なんともおもしろいことを考えた。

ピンク華麗(カレー)なんてインド人もびっくり!ほかにもピンク醤油とかピンクうどんとか…。想像するのがちょっと怖い領域まで手を広げている。鳥取県やるな。

http://www.ba-tottori.com/img/brand/hanakifujin.jpg

http://www.ba-tottori.com/brand.html

このような美しい四姉妹キャラクターを創出し、華貴婦人シリーズを展開。左から

次女優梨華(まりか)ダンス好き、

四女莉梨華(りりか)甘えん坊さん、

三女砂梨華(さりか)読書家、

長女優梨華(ゆりか)バイオリンの名手。

ピンク華麗(カレー)は鳥取市の古民家カフェ「大榎庵」でいただける。貴婦人のドレス体験もできるし、近くには国指定重要文化財、フレンチルネッサンス様式の「仁風閣」もあるとのこと。

さてピンクなカレー、私も作ってみよう。

まずスパイスはうちに何があるかな。クミン(粒)、ガラムマサラターメリック、シナモン、オールスパイスはある。ニンニクとショウガも必須。

ないものはカルダモンとかコリアンダー。前あったのだが、あまり使わないため賞味期限が切れて廃棄。カイエンペッパー、これも先日捨ててしまった。家族があまりに辛いのを嫌うために最近は全然出番がない。コショウやトウガラシ系で辛さは調節できるし、カレーパウダーを一振り入れ、味をしめることもできる。

クミンシード、ニンニク・ショウガのみじん切りを弱火の油でじっくり炒める。(網で濾す。うちでは使うのは油だけ。粒粒が舌にあたるのを好まないので)その油でほかのスパイスを炒める。

ビーツは薄くスライスしてマッシュルームと炒め、ブイヨンを注ぎ、牛乳適量を入れ、5分くらい煮る。最後に鶏ささみ(他の用途で前日に調理済み)を一口サイズに切ったものを入れ完成。

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私のピンクカレー

ビーツの土臭さは消え、ビーツの甘みが引き出されているが、味は完全にカレー。辛くない優しいお味のカレー。
そうなると自分用にスパイスの効いたカレーを作ってみるのもいいなと思い始めた。次回はそれかもね。

ところでレトルトも売っているそう。(買わないけど)

www.hanakifujin.com

 

叔父と ボルシチと渋谷ロゴスキーと。

貨物船の船長だった叔父は、成績も優秀だったが語学の才能にも恵まれ、中でもロシア語は堪能だった。寄港地は主にアフリカ、フランス(マルセイユ)、ソ連で、よく母や私におみやげを買ってきてくれた。ロシア人とは仕事以外の付き合いも多く、家庭によばれたり地域のダンスパーティに参加したりと親交が深かったようだ。ロシアの話が実に楽しそうなので「私も行きたいよ」と言うと「ロシア語を勉強してからね~」とかわされていた。

今の新宿高層ビル群からは想像もつかないが、当時新宿の叔父の家は2階建ての民家がぎっしり立ち並ぶ住宅街にあり、そこに文化服装学院の8階建ての円形校舎がそびえたち、よい目印となっていた。たいていは新宿で食事に連れていってもらったが、ある日渋谷へ行こうと言う。それがロシア料理の老舗「渋谷ロゴスキー」で、現在渋谷店は閉店したが銀座では営業中。http://www.rogovski.co.jp/

真っ赤なボルシチには驚いたものだ。色がちょっと怖い。おそるおそる食べ始めた記憶がある。でも味はまったく覚えていない。実は私の視線をくぎ付けにし、全感覚を虜にした料理が他にあったのだ。それは「きのこと鶏肉のつぼ焼き」(Chicken and mashroom cream sauce in a cup)という料理。鶏肉のホワイトシチューが入った壺に、帽子をかぶせるようにパン生地を載せて丸ごとオーブンで焼いたものだ。パンをスプーンでこわし、中のシチューに沈めて混ぜながら食べる。熱さと格闘しながら食べている間、私は喩えようのない幸福感に包まれたものだ。

今改めてメニューを見てみると「ズワイガニのつぼ焼き」というのもある。ズワイガニも思い出深い。ロシア産ズワイガニは巨大で、足一本持つとまるで剣で、チャンバラでも始めたくなってしまう。結婚してからだが、叔父がソ連から東京へ送らせたコンテナのズワイガニを、発砲スチロールの小さめの箱に詰め替えてうちに送ってきたことがあった。たくさん足があるのだから近所へおすそ分けしようと思って、足一本握って「ソ連カニですけど食べますか」と尋ねて回った。どこのお宅でも「え、ソ連?」と驚かれ、何の料理に使おう、何がいいと思う?とお喋りが始まったものである。後日何を作ったか皆さん報告してくれた。多かったのは「カニクリームコロッケカニの身たくさんバージョン」(笑)。

さてボルシチの話にもどり、銀座ロゴスキーのメニューを見てみるとボルシチには2種類ある。

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http://www.rogovski.co.jp/oshokuji0.htm

私が食べたのは下の方だったと思う。東急プラザの渋谷ロゴスキー、懐かしいな。今渋谷は、到底追いつけないような速さで変わりつつあるからよけいに…。

 

今日はコメントのお返事も書きたかったのだが、ちょっと時間がないので次回にまた。実は日曜が町内会の餅つきで、朝8時から3時ころまでお手伝いしてきた。年なのですぐに疲れてしまい、今日(火曜)もまだあちこちが痛い。とほほ・・・

 

ビーツはスーパー野菜 食卓紅化計画!&無農薬の野菜に虫食いあとがないわけ(ビーツ1)

ビートの歌、マイケル・ジャクソンも歌ってるね~Beet It♪ ビートルズLet It Beet♪

え、綴りが違うって?ふふふ。今日は野菜のビート、一般にビーツと呼んでいるあの野菜についての話。(*実は10月初め頃書いた記事です。本日後半を加筆してやっとUPします^^

かの有名なベートーヴェンBeethovenもビーツと関係があるって知ってた?Beetはビーツ、hovenはhofの複数形でhofは英語ならガーデンに当たる。なのでビーツ菜園、ビーツ畑くらいの意味になり、そこに出身を表すVan(よくオランダ系の苗字に見られる)がついている。

ベートーヴェンのおじいちゃんなんて、完璧なオランダ名Lodewijk Van Beethovenであり、ベルギーのメヘレン(Mechelen)で1712年に洗礼を受けた記録が残っている。ナチスの時代、ベートーヴェンがフランドル系であることが問題視されたとか。プロパガンダ的には非ドイツ的な色合いがあることはまずいので、祖先はフランドル出身ではないという論文を捏造させたらしい。

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さて、なぜいきなりビーツかといえば、母が家庭菜園で初めてビーツを作ったのである。今年はビーツと芽キャベツに挑戦よ~と言っていたが、本当にビーツ第一号を送ってきた。ちなみに種も簡単に手に入り、深めのプランターで栽培できるらしい。私はやらないけど。

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グリーンフィールド 野菜有機種子 ビーツ/ビート <デトロイト> [小袋] A035

ビーツは海外では広く食べられている。よくサラダやピクルスで見るし、ロシアや東欧諸国ではシチューやスープになる。最も有名なのはボルシチだろう。ボルシチという料理は思い出深くて、私にこの話をさせると長くなり、キャプテン翼が片足を振り上げると回顧モードに入り、長い長いエピソードが展開し、試合が進まなくなり、次回に続く…で終わると同様、軌道を外れてしまう危険があるため今日は料理のことだけに集中したい。

そういえば以前私はガラパゴス化するフランスのすしチェーンについて書いたのだが、その例としてビーツを使ったこんな「すし」を載せた。

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フランスSushi Shop 進化する寿司とその無尽蔵なアイディア -2-
すしのネタになるほど馴染んでいるのだろう。しかし脇役ビーツをこうして主役にしてしまうなんて。

夫はフランス時代、ビーツのピクルスが苦手だったと告白。私の企む食卓紅化計画を断念させようとしているのか。あの赤い色が嫌だと言う。たぶん私の握る包丁やまな板の上に広がる赤い汁が怖いのだろう。

赤じゃなく赤紫あるいは紅色と言ってほしい。あの色はベタシアニンというポリフェノールである。ビーツはビタミンやカリウムなどすごくたくさんの栄養を含み、天然のオリゴ糖も入っているし、腸内環境を整えるからいいことずくめのスーパーフードなのだ。

まずは葉っぱをゆでてみよう。上の写真で葉っぱが虫食いなのは無農薬だから当たり前。虫食いのことで以前BUNTENさんがコメントを書いてくださった。それについてはあとで述べる。葉っぱはホウレンソウの要領で茹でると、特にクセもなくおいしくいただけた。

次に根っこの部分だ。調理前の注意だが、色の薄いエプロンや白いシャツなどはやめた方がいい。赤い色がついて落ちなくなるから。

根はよく洗ってから、皮のまま切って使った。短冊切り、いちょう切り、何でも。

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シチューを作る要領でよい。そこにビーツが加わるだけなのだから。上は牛肉(煮込み用の肉)と玉ねぎ、人参、ジャガイモ。セロリやキャベツも入れたらなお良い。お宅の冷蔵庫に入っているもので十分、そしてお宅の作り方でよろしい。

ちょうどチンゲン菜があったので緑をプラス。白いのはサワークリームで、ビーツは乳製品と相性が良いと言われ、必ず添えられている。サワークリームは買わなくてもヨーグルトと生クリームを混ぜればOK.

すると母がすかさず第二弾「もっと大きく育ったよ」を送ってきた。

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第二弾は確かに大きくて、根だけで合わせて400g近くあった。初回の根の2倍はある。葉っぱは虫食いだらけなので今回は切り落としたそう。そのままでよかったのにな…。

スープ1.

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根っこは皮ごと良く洗ってスライサーで千切り(写真下)。ビーツ適量を玉ねぎ、にんにくと炒めてからミキサーにかける。固形スープで味付け。牛乳を少し入れると色がピンクになる。ジャガイモを入れてもよい(右上)。

残ったビーツはビンに詰めて酢漬けにし冷蔵庫で保存すれば少しずつ使える。

スープ2.

茎でもスープは作れる。茎と玉ねぎ(↓上)を炒めてブイヨンを注ぎ、マッシュしたジャガイモが少し残っていたのでそれも入れた。ミキサーにかける。今回は牛乳や生クリームを入れないので色が濃い。例のごとく飽きもせずサワークリームを添える(写真下)。

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他にもいろいろ作ってみた。スパゲッティのソースを作るときにトマトとビーツ、コロッケを作るとき、ポテトとビーツ(もちろん紅色のコロッケができる)…と今のところはおおらかに何にでも混ぜ、楽しんでいる。以前は写真を撮って残しておくなど考えもよらなかったが、野菜をくれる母に感謝の気持ちもこめて一枚は撮ろうかなと思っている。

すると先日ジョヴァンナid:giovannnaさんがコメント欄でよいアプリを教えてくれた。

料理の写真はFoodieというアプリで撮影すると、
美肌アプリのごとく、写りがいいので重宝しております。

ああ、もっと早く知っていればよかった。Foodieはさっそくスマホに入れた。今後は美肌な料理写真をお目にかけられるかも。ジョヴァンナさんのお料理ブログはこちら→

something-new.hatenablog.com

 

野菜に虫食いあとがないのはなぜ?( BUNTENさんの疑問)

BUNTEN 

 そういえば、子供の頃はキャベツといい柑橘類といい必ず虫が付いていたものですが、今は見かけません。無農薬を標榜する野菜にも虫食い痕を見かけるのは希というのがなぜなのかよくわからない。

ごもっとも。私もちょっと考えてみた。全く農薬を使わないとリスクが大きすぎる。かといって農薬や殺虫剤が問題視される昨今、多くの農家は低農薬、減農薬の道を行くのではないかな。昔と違って今は作物の見た目がよくないと売れないし、農家さんもいろいろ大変だと思う。

しかしネットをかぶせて防虫したり、完全温室栽培に切り替えたり(オランダの農法。狭い国土ながらアメリカに次いで世界第二位の輸出国)。あるいは虫を見つけ次第、地味に手で取り除いたりする生産者さんもいる。その場合は少量しか作れないがいろいろな種類を手掛けることで有名シェフなどと提携して活路を見出している。(下の記事では「虫はおじいちゃんが箸で取り除いている」白菜の写真が載っている)

野菜や果物を育てているJ.パーキンソン (id:PSP-PAGF)さまにもご意見を聞いてみたいな。

母の野菜は虫食い痕と虫だらけだが、ちっともかまわない。カタツムリはよく野菜についてくる。その野菜はよく洗い、痕は取り除くがたいていは火を通して食べるので問題はない。小さい虫だったら野菜を酢水やお湯で洗えばきれいに落ちる。

前にも書いたが、カタツムリには「よく来たな。まあ座れ」と声をかけ、しばらく自分で育てている。以前も載せた写真をもう一度ひっぱってこよう。

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(卵の殻はカタツムリの殻の成長に必要。1~2か月もして大きくなったら外に放してやる)

地主恵亮さん(じぬし けいすけ。1985年福岡生まれ。武蔵野美術大学卒。東京農業大学非常勤講師)という方の記事無農薬野菜にどのくらい虫がいるのか調べる | 多摩川源流大学が楽しくてためになる。きっとBUNTEN さんにも皆さんにも気にいってもらえると思うので、ぜひ!


長くなったので今日はこれまで。

アフガニスタンと日本の共通点は?それは二つあって…

中村哲医師の死を悼む

ゆうべから今朝は喪に包まれた。いや、嘆きの叫びと言うべきか。よんばばさんからもあまりに悲しい報せ - よんばば つれづれ、悲痛な声が聞こえてきた。よんばばさんはペシャワール会員で、2015年に中村哲氏の講演を聞いたことがあり、そうした過去記事なども↑中にまとめてある。

だけど全然わからない。どうしてこんなことになるのか。中村さんのほかに運転手やボディガードの人たち全員、六人も一瞬のうちに尊い命を奪われた。中村さんの無念さはいかばかりだろう。

今朝テレビをつけたら、ABC(オーストラリア放送)では中村さんのこれまでの功績を振り返り、死を悼む特集になっていた。BBCも詳しい。フロントガラスの銃弾穴を見るのは辛いが。

www.bbc.com

 

ツイートは多すぎて読み切れない。その中で、中村氏からの最後のレポートがこちらに載っていると教えてもらった。次回レポートは来年3月の予定だった…。

www.nishinippon.co.jp 「集団的自衛権を考える」

  

アフガニスタンと日本の共通点はなにかと聞かれ…

私がベルギー・ブリュッセルで移民学校オランダ語講座に通っていたころの話。なぜ「移民学校」かは過去記事参照移民学校の日々 -1- アフガニスタン出身の人たちとたくさん出会った。だがあまりゆっくり話をする機会はなかった。滞在の終わり近くのある日、若い女性が「ボールペン貸して」と言ってきたので「いいわよ」。実は話をするきっかけを作りたかったのだ。

「日本人ですってね」

アジアのいろんな国の出身者がいる中で、日本人は私一人だけだったから珍しいのかなと最初は思った。一応「私は移民難民枠じゃないの。オランダ語を習いに来てるだけ」と説明しておいた。

彼女はなんと20歳になったばかり。家族とともに安全な地を求めてアフガニスタンから逃れてきた。申請してから実現するまで何年もかかる。ベルギーにいること、来られたこと、それはすでに恵まれた境遇にあることを示している。実際教養ある家庭の出身で、イスラム教徒だがスカーフなどは身につけず、ジーンズをはいて、はっきりものを言う人だった。

ベルギーの生活はどうかと聞いてみると「夜、静かでよく眠れるから嬉しい」とにっこり。そして聞いてきた。

アフガニスタンと日本は似ているところがあるんだけど、わかる?」

え、なんだろ。共通点?面積じゃないよね。人口は全然違うし。まずいな。何にも出てこない。だってアフガニスタンのこと知らないんだもの。

私から返事が来ないのをみるとニンマリ笑って、自分はアフガニスタンにいるとき、学校で日本について習っているからいろいろ知っている。教えてあげようと言う。

「一つは地震国。日本もたくさん地震があるでしょ。温泉も。アフガニスタン地震と温泉があるのよ。」知らなかったな、温泉。

「あとね、人間が優しいところ。弱い人を助けたりするところ。一生懸命働くところ。そこはアフガニスタンの人間と同じね」

これを聞いたとき、私はすごく間抜けな顔をしていたと思う。口ぽっかーんだった。何ですって、日本人が優しい人助けをする国民?働き者というのはわかるが。

彼女は日本人の人道支援活動について、学校の教師や親からよく聞かされていたのだという。井戸や水路を作ってくれた、医者や薬も送ってくれた…などと数え上げる。しかも日本人はイスラムの宗教や生活を尊重してくれ、市民とも友好的だった。そういった諸々のことは父親が詳しく知っており、日本人は優しい、日本人には感謝の念しかないと話していたそうだ。私もやっとそこで、以前テレビの特集番組で見た中村医師のことを思い出し、ああわかった、あそこにつながるのだなと思った。

さらに驚きなのは「私の学校にはね、日本人の学生たちから励ましの手紙が届いたのよ」という。9.11の後だ。「私は男子学生からの手紙(を割り当てられて)、楽しいイラストと英語の言葉が書いてあった」。

「学生」が中学生か高校生かはわからなかったが、とにかくアフガニスタンの子どもたちに手紙を送ることを発案し、またとりまとめて届けてくれた、人なり組織があったのだ。

そして今また中村さんのことを思うと、悲しみに胸が張り裂けそうになる。アフガニスタンの人たちも同じ悲しみにくれていると思う。

心よりご冥福をお祈りします。

 

最後にこのツイートを!

12月7日(土曜) ETV特集・選 追悼 中村哲さん「武器ではなく 命の水を」

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ノラの仔猫エリその後 &猫って撫でたり抱っこできなくてもいいんだね。

ノラ猫との交情の日々を書いたノラの仔猫 ひと夏のお客さん は多くの人に読んでいただいた。アナリティクス(*下の表)で見ると9600pv(ページビュー)だった。後編ノラの仔猫 エリとの別れ も読んでくださった方は6000以上いらしたようだ。つい最近も、あの子どうなりましたか、続編を書いてくださいという丁寧なコメントもいただいたので少し書いておこうと思う。

ところで、猫って膝に乗せたり抱っこしたり頬ずりする、そんな生き物じゃないの?私は長いことそう思っていた。猫のほうからも「かまって」とスリスリしてきたり甘えるような鳴き声を出してくるし…。

わが家では9年前に二羽のカラスにつつかれていた仔猫を保護し、そのまま飼っている。親きょうだいは近くには見つからず、引き取ってもらうあてもないため飼うことにしたのだ。生後2か月と小さかったこともあり、家族にも環境にもすぐに慣れ、膝に座るどころか、エドワード・ゴーリーの猫(ネットですぐに写真が出る)みたいにたいてい私の肩に乗っている。鳥じゃあるまいし。

つまり私たちはほかに猫を飼った経験がなく、自分の猫しか知らないわけだが、それでもうちの猫とエリは違うなとなんとなく感じていた。ノラ猫というところは同じでも。説明しにくいのだが「愛玩」という言葉から遠い感じがした。

保護活動をしている人にその話をしてみた。「エリはもらわれていったけど慣れるかしら。私はついに触ったことがないのよ」。すると、現在も6匹の保護猫を自宅で世話している彼女は言う。生後半年のノラ猫をオス・メス一匹ずつ保護し、5年以上が経つが、メスのほうは絶対に触らせないし、自分がいきなり立ち上がると怯えたりしてなかなか気を許さないと。5年たっても!驚いた私は、ではどうやって病院へ連れていくのかと尋ねると「後ろからそっと洗濯ネットをかぶせるのよ。暴れるけどね」と言うのだ。だから無理にスキンシップをはかることはない。猫のほうも、この人間は信用できるとわかっている。もちろん遊びを通してコミュニケーションはちゃんと取れているから大丈夫、良好な関係だと話してくれた。

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エリは6か月の幼猫とはいえ、すでに自立した風格を漂わせていた。凛とした佇まいで、媚びる感じがまるでなかった。見た目の華奢さや、痩せて汚れた姿態に騙されてはいけない。かわいそう、助けてあげなくちゃ、という人間側の勝手な思い込みを寄せ付けない雰囲気があった。

人間に対しては非常に興味があるようで、物怖じせず近づいていくのに、境界線はきちんと引いていた。自分は猫に好かれる、慣れていると思っている人間たちが手を伸ばすと、ことごとくパンチを食らわせ容赦がなかった。食事係りの私に対しては、ちゅ~るがついた指を舐めてくれたことはあったかな。

猫の散歩はただの息抜きや気晴らしではなく、学びだということもエリから教わった。独り立ちし、そしてこれからも生き延びるには欠かせない学習だ。まずは乱暴な成猫のノラたちを避ける。公園など集まる場所も危険だが、うちの車庫にいたときでさえ、一度襲われそうになった。だから常に周囲を見渡して注意を怠らない。

それからよく匂いを嗅いでいた。植え込みや電柱の下、猫じゃらしがたくさん生えている茂み、大きな甕や鉢のうしろなどだ。いろいろな匂いにはいろいろな情報が詰まっているのだろう。

一度街路樹の根元をクンクンやっていたとき「エリちゃ~ん」と遠くから声をかけたことがあった。私の声だとわかる。しかし目の隅でこちらを一瞥しただけで「今忙しいの。気を散らさないで」といわんばかり。真剣そのものだった。そのまま5分くらい一つ所に留まっていた。そうやって匂いを学習し、整理し、頭の中に地図を描いているのだろう。昼下がりの散歩についていくことで私も多くを学んだ。

すべてが楽しく新鮮で、たくさんの時間を一緒に過ごしたにもかかわらず、前にも話したが、エリとの別れを惜しむ余裕はなくあっけない幕切れとなった。

エリを迎えに来る予定日、私は旅行中で留守だったのである。担当の人が捕獲機(jflkg4uさんがブログに載せているようなもの)を持ってきてエサを置き、車庫内に設置。その後エリを捕まえていった。もちろん事前に電話やメールで打ち合わせをしてはいたが。

喪失感は想像以上だった。シクシクとした痛みをこうも長く引きずるとは思わなかった。また華やいでいた我が家の前も、魔法が解けたように急にみすぼらしい場所に変わった。いつも人が集まってエリを取り巻き、にぎやかだったのに…。映画『パディントン』をご覧になった人ならわかってもらえるかな。ほら、パディントンが通るだけで街路がパッと明るく華やかになるような…。あの小さな猫がもたらした幸福を改めてかみしめたものだ。

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新しい飼い主さんは、エリを引き取りに行ったときの感想をこのように書いていた。

「捕獲機の中をのぞいたら、物凄く怖い顔で唸りあげてくれました。大人のオス猫顔負けの低くドスの効いた声、睨みを効かせた強い目…」

いかにもエリらしい。自由なノラ生活の終わり。あるいは幼年期の終わり。避妊手術もした。エリは最初の一か月は警戒して威嚇してばかりだったようで、飼い主さんは苦労したことと思う。

しばらくしてまた様子を知らせてくれた。夜鳴きが激しいという。昼は窓から外が見えるからいいのだが、夜になると望郷の念からか泣きわめき、障子をガリガリ破ってしまう。プラスチック製に張り替えても一晩持たなかったと。

これを読んで私は「喪失感」などと感傷に浸っていたことを恥じた。エリや飼い主さんがどれほど大変かちっともわかっていなかった。猫を飼っている方はきっと経験済みだろうと思う。猫にとって、引越や住む場所を変えるのは大変なストレスだ。しかもノラから家猫になる。病院で手術やワクチン接種を受ける。狭いケージの中で暮らす。エリは急激な変化にどんなにか戸惑ったことだろう。そして飼い主さん一家はそれを受け止めなければならないのだ。

以前知り合いから聞いた話を思い出した。そこのお宅はより広い新築のマンションに引っ越した。すると飼い猫が暴れる。それも壁をかじり、ドアに突進するといった風に。父親は止めようとするが猫は狂ったように泣き喚き、暴れまわる。ついに父親が怒って「わかった。外へ行け」とドアを開けてしまうのだ。猫は飛び出していった。その日は雨ふりだった。皆で近所を懸命に探したが、猫はついに見つからなかったという。実に悲しい話で、なんと声をかけてあげたらいいかわからなかった。

エリは多くの時間をケージの中で過ごし、そこへ先住猫が時々のぞきにくるという生活だった。だが先住猫は「王子さまのように」皆の視線を一身に集めて育ってきたので、エリの存在があまり気に入らないらしい。

エリは病院へ連れて行くのも一苦労だったようだ。しかしワクチン接種の二回目も終わり、最近はケージから出て閉め切った部屋のなかで遊んだり寛いだりしているようだ。

あれからもう二か月。つい最近の写真を見たら、ふっくらと丸く柔和な顔つきになっており、私たちの知るエリとは別の猫のようだった。飼い主さんとよく遊ぶようで安心した。あとは先住ちゃんと仲良くなってくれることを祈るのみ。

何でもよく食べると言っていた。よいことだ。エリは何でもおいしそうに食べてくれた。あるとき私は夕食用に、一本釣りのカツオを買ってきた。もしかしてエリちゃん食べるかしら。細かく刻んで持っていくとあっという間に平らげた。おいしかったというように舌をペロペロ動かし、まだ欲しい様子。だからまた持っていった。いっそのことダイニングテーブルで一緒に食べたいねえ。一緒になんか飲む?(あ、未成年だった!)そんな言葉もかけたくなる食べっぷりと満足げな顔つきだった。ホタテも大好きだ。

ところで話は逸れるが、酒を飲む猫といえば池波正太郎の猫を思い出す。手元に本があるのでちょっと引用する。

池波さん:「私には猫がいます。書斎で原稿を書いていて、夜遅くちょっとひと休みのとき、ウィスキーを一口。それを猫にも習慣づけましてね。はじめは逃げていたのに、この頃は原稿を書く手を休めるとそばに来て”ニャオー、忘れないでね”というように顔を見るんですよ」

『種を蒔く日々 九十歳を生きる』秋山ちえ子著より

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エリの近況報告がてら、思いついたことを書いてみました。

今日は終わります。

 

アナリティクス 過去12か月のスクショ(2019)

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このレポートは 2019/12/02 8:52:04 に作成されました

エリの話は 5番目の10月23日。

 

🌸ステキなツイート

トルコのSarper Dumanさん、すでに多くのフォロワーがいて有名な方です。前足が一本ない猫がすごく可愛い。ほとんどが保護猫だそう。

犬カフェ &ストーブとCiaoちゅ~るの魔力からは逃げられません。

フランスの犬カフェ Le WAF

前回スパイダーマンの相棒は猫 &世界一可愛い魚屋さん に続き、今日も明るい話題で暗い日本を照らします(笑)。

https://i1.wp.com/creapills.com/wp-content/uploads/2019/11/lille-waf-cafe-chiens-adoption-7.jpg?w=1400&ssl=1

Crédits : Le WAF Café

このフランスのサイトhttps://creapills.com/、前回も紹介したが、世界のあちこちから拾ってきたいい話やステキなおしゃれなものをいっぱい見せてくれる。今日は犬の話から。

creapills.com

(↑こちらが記事です)

フランス北部リール市の旧市街に犬カフェ “Le WAF”はある。ここでは保護犬たちとの触れ合いを通して、訪問者に家庭へ引き取ってもらうことを目指している。もうすでにこの2年で50匹が温かい住み家を見つけたというから、大成功と言えるだろう。

フランスの犬カフェのヒントはタイ・バンコクだという。タイでは犬カフェは国内外から人が集まる人気スポットになっており、コーギーだけ、シベリアンハスキーだけ、というところもあるそうだ。私も以前記事を読んだのだが、入場料を払って犬と遊べるところ、くらいに考えてあまり注目しなかった。

こちら5月のタイの記事(同じサイト)。

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https://creapills.com/cafe-corgis-thailande-chiens-20190509

フランスでは年間約6万匹もの犬が捨てられるそうだ。森や道路に捨てる人もあれば、飼い主の死亡、病気やケガ、高齢者施設に入るために飼えなくなって保健所などに持ち込む人もいる。どんな理由があれ、人間の都合なわけで犬にはなんの落ち度もないのだ。

www.youtube.com

犬カフェ “Le WAF”は、SNSyoutubeを使って積極的に啓蒙活動をしている。子どものいる家族は引き取り手として最適だろう。カフェでおいしいクッキーやマフィンなどを食べながらワンちゃんたちと遊び、時間をかけて考えてもらう取り組みをしている。

保護犬といえばいの一番に思い浮かべるのは、こちらスズメ天狗。 (id:chairoitenten)さん。漫画仕立てで「立てば子ぐま、寝てればモップ、遊ぶ姿はテディベア」というてんすけ君と、飼い主スズメさんの楽しい日常をユーモラスに描いている。てんすけ君がとっても可愛いくて癒される。

また保護関連でこちらの方チャンスパパ (id:chancepapa)さんも楽しいだけじゃなくすごく学ぶことが多い。読者のみなさんも自分の飼い猫&犬だと思って読みながら、ともに泣き笑いしているに違いない。温ったかいコメント群を見てそう思う。

あたたかい、といえばこれからの季節の人気者ってダレだ? - チャンスとティアラ+ココテン.「人気者」の答え、言っちゃいますけどゴメンね。「ストーブくん」。チャンスパパさんはそう呼んでいる。きっと愛情を込め、感謝の気持ちで呼んでいるだろう。なんせ北海道だからね。このエントリの日付を見ると10月18日というのに改めて驚いてしまう。今年の東京はまだ上着がいらなかった頃。

ストーブくんはチャンスパパさんのブログには何十回と出てくる頻出単語。ちなみに私のには一回も出ない語彙。ストーブ、ないんだもの。先日とにほさんにも言ったことであるが、こたつがあるお宅も羨ましい。うちにはないし実家にもない。みなさんのお宅はどう?両方あったり?

先日、こんなツイートを見つけた。(ユカワさんというアーティストのかた)

こちらでは「ストーブくん」ではなく「 あったか様」という神。猫は畏敬の念でいっぱい(笑).。猫はみんなあったかさま教徒である。

こちらJenny (id:jflkg4u) さんも賢く美しい保護猫、その名も猫ちゃーと暮らしている。これまでにノラ猫の保護活動、捕獲のやり方などについても詳しく書いている。たとえばこちら。一気に3匹捕獲 敷地内の野良ちゃん - おひとりさまライフ 保護猫ちゃんと一緒

保護活動のみなさんには頭がさがる思いだ。みなさんに心から感謝したい。

今日のエントリは思わず吹き出してしまった。ちゅーるの歌、つい、うたっちゃいません? - おひとりさまライフ 保護猫ちゃんと一緒

うんうん、ついつい歌っちゃう。Ciaoちゅ~る、ご存じないかたのために書くと、いなばペットフード会社の猫用おやつで、他のおやつと違う点は液状だということ。これがすごいんだな。猫は魔法にかかったように無我夢中で食べる。いや舐める。そしてもうないの、もっとくれ、とこちらを責めるような目つきで見るのだ。海外では猫用コカイン(cat crack, kitty crack)と呼ばれているらしい。日本へ一時帰国する人は大箱(Jennyさんのエントリに載っている)を頼まれるらしい。いなばペットフードはこの人気に気をよくして犬用ちゅ~るも売り出した。

実は最近、ちゅ~るのクリスマスプレゼントを用意した。

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ピンクの袋の中が全部ちゅ~る。これとドライフードの大袋をプレゼントしたい猫がいる。みなさん、覚えているだろうか。エリちゃんだ。エリの話は10月に2回に分けて書いた。その後どんなふうか、後日簡単にお伝えしようと思う。

今日はもう長くなったので、また次回に!

 

🌸コメントに感謝します。

ni-runi-runi-ru

 魚屋の猫、Dogの名に恥じない立派な風貌です。サンクトペテルブルクレニングラード)は以前cenecio様が書かれていた町のそこかしこに猫のオブジェある町。エルミタージュ美術館には猫警備員も。猫に助けられた町。

ヤバい💦そんなことを書いていましたか。書いたかもしれない。老化現象が思わぬ速度で進行中。困ったなあ。次回「ねえねえ、 サンクトペテルブルクって…」と始まったらSTOPかけてくださいね。いや「レニングラードではね…」とか「スターリングラードで…」と言うかもしれない。

親切に教えてくれたたまうきさまとぐりぐらファンの皆様にはこちら。